美事みごと)” の例文
出来ない相談だから仕方がない。美事みごと撃退されてしまった。俺は駄目だよ。勧められることは上手だが、勧めることはあか下手ぺただからね
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
汽車は右の肩からちゝしたこしの上迄美事みごとに引き千切ちぎつて、斜掛はすかけの胴を置き去りにして行つたのである。かほ無創むきずである。若い女だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
養鶏談の長かりけるうちに眼前の料理場にてはレデーケーキも美事みごとに出来上り、一人の料理人はとり俎板まないたに載せてその肉をき始めたり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
首を長くして待っていると、わしの計画は美事みごと図に当って、間もなくその新聞の社会面に、麗々しく、大体こんな風な記事が掲載された。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
てんで人のところでないらしく考えられるので、移民がすくないらしい、甲州の野呂川谷などから見ると非常に美事みごとな処である
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
ひと生血いきちをしぼりたるむくひか、五十にもらで急病きうびやう腦充血のうじうけつ、一あさ此世このよぜいをさめて、よしや葬儀さうぎ造花つくりばな派手はで美事みごとおくりはするとも
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
雑司ぞうし御墓おはかかたわらには、和歌うた友垣ともがきが植えた、八重やえ山茶花さざんかの珍らしいほど大輪たいりん美事みごとな白い花が秋から冬にかけて咲きます。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そこは貴下をわずらわした方が、巧みにカムフラージュにもなるし、またお手際も私どもより遥かに美事みごとであろうと思うのです。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ肉が肥えてあごにやわらかい段を立たせ、眉が美事みごとで自然に顔を引き立たせたのでやや見どころがあるように見える。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
とりあかみどりはねをして、のどのまわりには、黄金きんまとい、二つのほしのようにきらきらひからせておりました。それはほんとうに美事みごとなものでした。
青年の盛りともいうような頬や鼻には美事みごとな照りを含んでいて、少し硬いくらいな額の明るい広さもそっくりだった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その艱難かんなんを利用しておのれの人格を一層高くするという意味で書いた歌に、(原詩略す)実にどうも美事みごとな言葉です。
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
のぼくだりに五十体ずつ並んで、それはまことに美事みごとなもので、当寺の五百羅漢と並んで有名であります。
美事みごとじゃ!』と父は叫びました。『してこの大したきんの薔薇の何処が気に入らなくて泣くのかね?』
大小長短は作る家の意にまかせ、大なるを以て人にほこる。さをの末にひらき扇四ツをよせて扇には家の紋などいろどりゑがく、いろ紙にて作るものゆゑ甚だ美事みごとなり。
あなたのこそ美事みごとですよ わしが、ひつぱつてだいなしにしましたわい どれくしをもつてをりますよ
復一の観察するところによると、真佐子は美事みごと一視同仁いっしどうじんの態度で三人の青年に交際していた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この食事をした場所で岩の上に実生みしょうのかたまりがあったのを、木下君がいたずら半分に採られたのであったと思う、その当時はあんなに美事みごとの盆栽になろうとは思わなかったが
利尻山とその植物 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たちまあいちやんは洋卓テーブルしたつたちひさな硝子ガラスばこがつきました。けてると、なかにはちひさな菓子くわしがあつて、それに『おあがり』と美事みごとちひさな乾葡萄ほしぶだういてありました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
五年目ごねんめには田地でんち取返とりかへし、はたけ以前いぜんよりえ、山懷やまふところ荒地あれち美事みごと桑園さうゑんへんじ、村内そんないでも屈指ゆびをり有富いうふう百姓ひやくしやうおはせたのです。しかもかれ勞働辛苦らうどうしんくはじめすこしかはらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
地獄の鬼だって、そんなむごたらしい事ばかり追い廻しちゃ居まい——それほど芸とやらが大事なら、美事みごと私も成敗しておくれ。お察しの通り欽さんは私の命まで打込うちこんだ深間さ。
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
わたくし愛馬あいばもうしますのは、良人おっとがいろいろとさがしたうえに、最後さいごに、これならば、と見立みたててくれたほどのことがございまして、それはそれはさしい、美事みごと牡馬めうまでございました。
土噐どきの形状紋樣もんように至つては多言たげんを要せず、實物じつぶつを見たる人はさらなり、第七回の挿圖さしづのみを見たる人も、未開みかいの人民が如何にしてく迄に美事みごとなるものを作り出せしかと意外いぐわいの感をいだくならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
三田は又なみなみと酒をみたしたコツプを高く捧げて、美事みごとに干した。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
おれが手に持っておる、このかつおが欲しいので、こんな悪戯いたずらをするのだろう、おれは貴様達に、そんな悪戯いたずらをされて、まざまざとこの大事なうおを、やるような男ではないぞ、今己おれはここで、美事みごとにこれを
狸問答 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
あまり美事みごとの出来だからと云うて、廻沢めぐりさわから大きな水瓜すいか唯一個かついで売りに来た。緑地に黒縞くろしまのある洋種の丸水瓜まるすいかである。重量三貫五百目、三十五銭は高くない。井戸にやして、午後切って食う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「おい、今日はばらだ。これは美事みごとだ。」
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
「ううむ、美事みごとだった」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あと十二分すれば、極めて正確に夫人の身体に、ちょいとした変化が起るような薬品をその皮膚にすりこむことにも美事みごと成功したのであった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勝手かつてばたらきの女子をんなども可笑をかしがりて、東京とうきやうおにところでもなきを、土地とちなれねばのやうにこはきものかと、美事みごと田舍ゐなかものにしてのけられぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御馳走はかわがわでて尽くる事なし。続いて来れるは西洋チサのしんのみをりたる上等のサラダ、サラダを喫しおわりし時美事みごとなる寄物よせものず。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「体裁だけはすこぶる美事みごとなものさ。しかし内心はあの下女よりよっぽどすれているんだから、いやになってしまう」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「我ら蛍に手をふれたことも十年振りでござる。わらべの頃に宵々にはよく狩りに出たものだが、いつまでも童のようにしてはいられぬ。美事みごとな蛍だ。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
三階の棟柱むなばしらには、彼女の夫の若かった時の手跡しゅせきで、安政三年長谷川卯兵衛建之——と美事みごとな墨色を残している。
「然うさ。赤石君も始終悪辣あくらつなことをやるから、正当防衛で仕方がない。美事みごと仇を討ってやったのさ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
大小長短は作る家の意にまかせ、大なるを以て人にほこる。さをの末にひらき扇四ツをよせて扇には家の紋などいろどりゑがく、いろ紙にて作るものゆゑ甚だ美事みごとなり。
金次郎はなかなか腕の出来た人であったが、仏を彫刻することは不得手ふえてであって、仏に附属するところの、台座とか、後光とかいうようなものの製作が美事みごとであった。
今度こんど其上そのうへちひさなびんが一ぽんありました、(『たしかにまへには此處こゝかつた』とあいちやんがひました)びんくびには、『召上めしあがれ』と美事みごとだい字でつた貼紙はりがみむすびつけてありました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「——名月の宵、箱根間道太閤道の辻堂にて、非業に相果つる五或は七のしかばねを見る可し、いずれも救いがたき五悪の輩乍ら末期の引導頼み入るもの也——」と美事みごとな筆跡で書いてあるのです。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
美事みごとにやりおおせた彼は、疲れ切った身体を、どことも知れぬ漁村の暗闇の海辺に投げ出して、そこで夜の明けるのを待ち、まだ乾き切らぬ着物を着、変装をほどこして、村人達が起きでぬ内に
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まあ聞いてくれ、パーシウス、わしは美しいヒポデイミヤ姫と結婚しようと思っている。ところが、こうした場合、花嫁に対して何か遠い国から持って来た美事みごとな珍品を贈るというならわしになっている。
もし之を美事みごとに仕止めるようだと、莫大なる会費を出して射撃倶楽部クラブ員になって練習を積むのに比べて、簡易と経済に於て天地霄壌しょうじょうの差がある。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
しかも去秋こぞの小豆は一粒としていたんでいず、去秋の美事みごとな近年にない豊作のあらわれが、この小豆にさえ見られた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
混ぜてベシン皿かあるいは丼鉢どんぶりばちへ入れて弱い火で十分間ほど焼きますとまた一層ふくれ上って美事みごとな物が出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
たゞこの成長おほきうならんことをのみかたりて、れい洋服ようふくすがた美事みごとならぬつとめに、手辨當てべんたうさげて昨日きのふ今日けふいでぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其中そのうちには、さすが御大名丈おだいみやうだけあつて、惜氣をしげもなく使つかふのがこの畫家ぐわか特色とくしよくだから、いろ如何いかにも美事みごとであるとやうな、宗助そうすけにはみゝあたらしいけれども
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
舞踊にもひいで、容貌は立並んで一際ひときわ美事みごとであったため、若いうちに大橋氏の夫人として入れられた。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
まったと思って飛び下りると美事みごと泥濘ぬかるみのところへ転んでしまった。手を擦り剥いたよ、こんなに
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
せがれ同苗どうみょう長兵衛ちょうべえというものがあって、これが先代からの遺伝と申すか、大層美事みごとひげをもっておった人物であったから、世間から「髯の長兵衛」と綽名あだなされていたという。
そして、その容貌にもいやまして、彼女の身体は美事みごとでした。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)