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眺
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なが
ふりがな文庫
“
眺
(
なが
)” の例文
野中教師ゆっくり教壇から降り、
下手
(
しもて
)
のガラス戸に寄り添って外を
眺
(
なが
)
める。菊代は学童の机の上に腰をかける。華美な和服の着流し。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ぢや、
姉
(
ねい
)
さんは
何方
(
どちら
)
が
好
(
すき
)
だと
仰
(
おつ
)
しやるの」と、妹は姉の手を引ツ張りながら、
面
(
かほ
)
顰
(
しか
)
めて
促
(
うな
)
がすを、姉は空の
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
眺
(
なが
)
めやりつゝ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
好きな
巻煙草
(
まきたばこ
)
をもそこへ取出して、火鉢の灰の中にある
紅々
(
あかあか
)
とおこった炭の
焔
(
ほのお
)
を無心に
眺
(
なが
)
めながら、二三本つづけざまに
燻
(
ふか
)
して見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
部屋の
隅
(
すみ
)
にころがされて、泣き叫ぶ赤児の声も耳にはいらないのか、一日じゅう寝そべったまま、
天床
(
てんじょう
)
か壁をぼんやりと
眺
(
なが
)
めていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なじみの芸者を無人島の松の木の下に立たして
眺
(
なが
)
めていれば世話はない。それを野だが油絵にでもかいて展覧会へ出したらよかろう。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
(———そして、この妹も上の妹も、まだ二人ながら「
娘
(
とう
)
ちゃん」でいる有様を、両親達は草葉の蔭からどのように
眺
(
なが
)
めておいでか)
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
で、仕様事なしに山の頂から、ズツと東の方を
眺
(
なが
)
めて居ますと、
遙
(
はる
)
か向ふから
蜒々
(
うねうね
)
とした細い川を
筏
(
いかだ
)
の流れて来るのが見えました。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
お幸は強い性質の子でした。丘の三本松は
好
(
い
)
い形であると
眺
(
なが
)
めることはあつても、感情的な弱い涙をそれに注がうとはしませんでした。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
いつも森のなかのように静かで、たえず空の方をながめては、また何か考えあぐんだように、間もなく沼の底ふかく
眺
(
なが
)
め込むのでした。
寂しき魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
僕
(
ぼく
)
はその
顔
(
かお
)
を
眺
(
なが
)
めた時、
思
(
おも
)
わず「ずいぶんやせましたね」といった。この
言葉
(
ことば
)
はもちろん滝田
君
(
くん
)
に
不快
(
ふかい
)
を
与
(
あた
)
えたのに
違
(
ちが
)
いなかった。
滝田哲太郎君
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人
(
ひと
)
と
人
(
ひと
)
との
間
(
あひだ
)
に
少
(
すこ
)
しでも
隙間
(
すきま
)
が
出来
(
でき
)
ると
見
(
み
)
ると
歩
(
ある
)
いてゐるものがすぐ
其跡
(
そのあと
)
に
割込
(
わりこ
)
んで
河水
(
かはみづ
)
の
流
(
なが
)
れと、それに
映
(
うつ
)
る
灯影
(
ほかげ
)
を
眺
(
なが
)
めるのである。
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
部屋には薄暗いランプが
点
(
とも
)
されて、女主の後から三男の
繁三
(
しげぞう
)
が黒い顔に目ばかりグリグリさせて、田舎から来た子供の方を
眺
(
なが
)
めていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
若僧は最前より妙信のものいえるを顧みざるがごとく、下手の方を
眺
(
なが
)
めたりしが、この時
蹌踉
(
そうろう
)
としてたましいうつけたる姿に歩み出づ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
私は、むさぼるように、十八枚からなるその設計図を、いくどもくりかえして
眺
(
なが
)
め入った。じつに、巧妙をきわめた設計図である。
人造人間の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昼過ぎ、昭青年は姫に生飯を持って行って食べさせたあと、二人は川へ向いた苫を少し掻き分けて、対岸の景色を
眺
(
なが
)
めていました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ヘンデルは空っぽのホールを
眺
(
なが
)
めて、「この方がおれの音楽がかえって立派に聴える」と負け惜しみを言わなければならなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
『お
前
(
まへ
)
は
亞尼
(
アンニー
)
とか
云
(
い
)
つたねえ、
何
(
なん
)
の
用
(
よう
)
かね。』と
私
(
わたくし
)
は
靜
(
しづ
)
かに
問
(
と
)
ふた。
老女
(
らうぢよ
)
は
虫
(
むし
)
のやうな
聲
(
こゑ
)
で『
賓人
(
まれびと
)
よ。』と
暫時
(
しばし
)
私
(
わたくし
)
の
顏
(
かほ
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
つたが
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そして処々に一かたまりの
五月
(
さつき
)
や
躑躅
(
つつじ
)
が、真っ白、真っ赤な花をつけて、林を越して向うには、広々と
群青
(
ぐんじょう
)
色の海の面が
眺
(
なが
)
められます。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そういう雨の日を、たかちゃんも遊びに来ず、私はよく一人で
硝子戸
(
ガラスど
)
に顔をくっつけて、つまらなそうに雲のたたずまいを
眺
(
なが
)
めていた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼はささやき声になって、ソッと天井を
眺
(
なが
)
めた。この男もやっぱり、人間
豹
(
ひょう
)
がまだどこかに
潜
(
ひそ
)
んでいるかもしれないと考えたのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
明治十二年
(
めいじじゆうにねん
)
に
船
(
ふね
)
で
横濱
(
よこはま
)
に
着
(
つ
)
きまして、その
頃
(
ころ
)
出來
(
でき
)
てゐました
汽車
(
きしや
)
で
東京
(
とうきよう
)
へ
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちゆう
)
、
汽車
(
きしや
)
の
窓
(
まど
)
からそこら
邊
(
へん
)
の
風景
(
ふうけい
)
を
眺
(
なが
)
めてをりました。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
長庵は
横目
(
よこめ
)
でジロリと
眺
(
なが
)
め
空嘯
(
そらうそふ
)
けば十兵衞は何れ
歸村
(
きそん
)
を致せし上御禮の仕樣もありぬべしと
親
(
ちか
)
しき中にも
禮義
(
れいぎ
)
を知る弟が心ぞしほらしき
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
というわけはその晩方、化学を習った一年生の、生徒が、自分の前に来ていかにも不思議そうにして、豚のからだを
眺
(
なが
)
めて居た。
フランドン農学校の豚
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それから彼は、晩になるとよく星を
眺
(
なが
)
めました。ことに、屋根の上にあがって、
林檎
(
りんご
)
やなんかをかじりながら、星を見るのが愉快でした。
彗星の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ちょうどいま、小人は長持の中から
縫取
(
ぬいとり
)
のしてある
胸着
(
むなぎ
)
を取りだして、感心した顔つきでその
古風
(
こふう
)
なつくりかたを
眺
(
なが
)
めています。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
『どうも無造作すぎるな』とわたしは、思わず
湧
(
わ
)
き上がる
嫌悪
(
けんお
)
の情をもって彼女のぶざまな様子をじろじろ
眺
(
なが
)
めながら、心の中で考えた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
周囲には厳重な
柵
(
さく
)
がめぐらされ、私はその間から、ちょうどお仕置を見物する昔の人のような
恰好
(
かっこう
)
で
眺
(
なが
)
めなければならなかった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ある日のこと、
祇園精舎
(
ぎおんしょうじゃ
)
の門前に、彼はひとりでションボリと立っていました。それを
眺
(
なが
)
められた釈尊は、静かに彼の
許
(
もと
)
へ足を運ばれて
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
『お
前
(
まへ
)
の
髮
(
かみ
)
は
刈
(
か
)
らなくッては』
帽子屋
(
ばうしや
)
は
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
さも
珍
(
めづ
)
らしさうに
愛
(
あい
)
ちやんを
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
ましたが、
軈
(
やが
)
て
先
(
ま
)
づ
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
しました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
もとより拾い上げた幾多の作物を
眺
(
なが
)
めて、その中に昔とは劣る色々な性質を気附くことが出来る。中で一番著しいのは、模様の喪失である。
地方の民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それから、くる/\と
卷
(
ま
)
いてポケツトにさし込んで來た
週
(
しう
)
刊
雜誌
(
ざつし
)
をひろげて、この春に來る外國
映
(
えい
)
畫のスチルを
眺
(
なが
)
めはじめた。
坂道
(旧字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
目まぐるしい坂下の町をしばらく
眺
(
なが
)
めていると天から地から満ち
溢
(
あふ
)
れた日光の中を影法師のような一隊が横町から現われて坂を上って来た。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
わずかに五銭六厘を
懐
(
ふところ
)
にせる奴は驚きかつ惜しみて、
有意的
(
こころありげ
)
に御者の
面
(
おもて
)
を
眺
(
なが
)
めたり。好意を無にせられたる世話人は腹立ちて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人生のこと、恋愛のこと、お天気のこと、文学のこと、女は何でもとり混ぜて喋り、それから
凝
(
じっ
)
と遠方を
眺
(
なが
)
める顔つきをする。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
景色
(
けしき
)
は
大
(
おほき
)
いが
變化
(
へんくわ
)
に
乏
(
とぼ
)
しいから
初
(
はじ
)
めての
人
(
ひと
)
なら
兔
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
自分
(
じぶん
)
は
既
(
すで
)
に
幾度
(
いくたび
)
か
此海
(
このうみ
)
と
此
(
この
)
棧道
(
さんだう
)
に
慣
(
な
)
れて
居
(
ゐ
)
るから
強
(
しひ
)
て
眺
(
なが
)
めたくもない。
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
ただ『大和物語』などに書いてあるのは、その晩はちょうど好い
月夜
(
つきよ
)
で、じっと山を
眺
(
なが
)
めていると悲しくなった。それで男は
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ただ、赤いユニホォムを着た、でぶの
爺
(
じい
)
さんが、米国一流のハムマア投げ、と、きかされ、もの
珍
(
めずら
)
しく、
眺
(
なが
)
めていたのだけ
記憶
(
きおく
)
にあります。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
待合
(
まちあい
)
にしてある次の間には幾ら病人が
溜
(
た
)
まっていても、翁は小さい
煙管
(
きせる
)
で雲井を吹かしながら、ゆっくり盆栽を
眺
(
なが
)
めていた。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
犬のふざけがすんでしまうと、私は例の紙を
眺
(
なが
)
めたが、実を言えば友の描いたものを見て少なからず面くらったのであった。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
本郷三丁目で
留
(
とま
)
ると、下車する人々のために長い間
手間
(
てま
)
どつた。私は人に押され押され、車掌台に立つて往来を
眺
(
なが
)
めてゐた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
僕はいつものように海岸通りを、海を
眺
(
なが
)
めたり船を眺めたりしながらつまらなく
家
(
いえ
)
に帰りました。そして葡萄をおいしく喰べてしまいました。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして、ばたばた
近寄
(
ちかよ
)
つて
來
(
き
)
た
夏繪
(
なつゑ
)
と
敏樹
(
としき
)
を
靜
(
しづか
)
にさせながら、
二人
(
ふたり
)
を
兩方
(
りやうはう
)
から
抱
(
いだ
)
きよせたまま
蜂
(
はち
)
の
動作
(
どうさ
)
を
眺
(
なが
)
めつゞけてゐた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
彼女はうぶな田舎娘のような
仕種
(
しぐさ
)
で長い袂を八つ口に挾み、また拍手をうけた。茂緒はそれを、何か芝居でもみるような気もちで
眺
(
なが
)
めていた。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
彼はちょっと泣声をやめて、動き出した
蜘蛛
(
くも
)
を
眺
(
なが
)
めた。それからまた泣きだしたが、前ほど本気ではなかった。自分の泣声に耳を澄していた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
座
(
すわ
)
って居て行路の人を
眺
(
なが
)
むるのは、
断片
(
だんぺん
)
の芝居を見る様に面白い。時々は
緑
(
みどり
)
の
油箪
(
ゆたん
)
や振りの
紅
(
くれない
)
を遠目に見せて嫁入りが通る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして、毎日
従兄
(
いとこ
)
と一緒に、浜へつれて行つてもらつて、
漁夫
(
れふし
)
たちの網をひくのを見たり、沖の方に、一ぱいにうかぶ帆舟を
眺
(
なが
)
めたりしました。
さがしもの
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
ずいぶん
辺鄙
(
へんぴ
)
な処なんだなあと思いながら、人気の無いのを幸い、今まで眼深にかぶっていた帽子をずり上げて、木立を透かして遠くを
眺
(
なが
)
めた。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
それとともに新しく連れて来られた自分の周囲をしみじみと
眺
(
なが
)
めまわして見る心の落着きをも彼は取り
戻
(
もど
)
したのであった。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
私は
草
(
くさ
)
の中へ
腰
(
こし
)
を降ろすと
煙草
(
たばこ
)
を取り出した。
妻
(
つま
)
も私の
横
(
よこ
)
へ
座
(
すわ
)
つて落ちついたらしく、
暮
(
くれ
)
て行く空の
色
(
いろ
)
を
眺
(
なが
)
めてゐた。——
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
但馬守
(
たじまのかみ
)
は
懷
(
なつ
)
かしさうに
言
(
い
)
つて、
築山
(
つきやま
)
の
彼方
(
かなた
)
に、
少
(
すこ
)
しばかり
現
(
あら
)
はれてゐる
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めた。
紀
(
こつな
)
も
身體
(
からだ
)
がぞく/\するほど
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
慕
(
した
)
はしく
思
(
おも
)
つた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
眺
常用漢字
中学
部首:⽬
11画
“眺”を含む語句
眺望
打眺
見眺
一眺
眺入
其眺矚
再眺
後眺望
眺尽
眺矚
眺行
繰眺