かは)” の例文
伯父の家に戻つてからの生活は、以前と少しもかはらないものであつた。退院した翌日から、掃除、飯焚などの水仕事を私はやつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
東洋と西洋とは、その風俗習慣に就て、いろいろかはつた点が多い中で、特に黒子に関する観方ほどかはつてゐるものはなからうと思はれる。
東西ほくろ考 (新字旧仮名) / 堀口九万一(著)
かはつた土地で知るものは無し、ひて是方こちらから言ふ必要もなし、といつたやうな訳で、しまひには慣れて、少年の丑松は一番早く昔を忘れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
保雄夫婦の心では九年間の郊外生活にいたので、市内に住んで家が新しく成つたら心持も新しく成つてかはつた創作も出来やうと思ふのと
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
皚々がい/\たる雪夜せつやけいかはりはなけれど大通おほどほりは流石さすが人足ひとあしえずゆき瓦斯燈がすとうひか皎々かう/\として、はだへをさす寒氣かんきへがたければにや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下から見た部屋を起き上ってたてから見たすべてのかはり方や、目の廻るやうな不思議さは、次第々々になくなって来た。
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
さはれ紅葉は徳川時代の所謂好色文士とは品かはれり、一篇の想膸、好色を画くよりもむしろ粋と侠とを狭き意味の理想にらし出でたりと見るは非か。
曳出ひきだされた飛脚ひきやくは、人間にんげんうして、こんな場合ばあひもたげるとすこしもかはらぬつらもたげて、ト牛頭ごづかほ見合みあはせた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「姉さん、僕は貴嬢が母のかはつてる為めに、僕を疎遠になさるとか、あしき母より生れたる僕の故を以て……」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おもへば不思議や、長寛二年の秋八月廿四日は果敢なくも志渡しどにてかくれさせ玉ひし日と承はれば、月こそかはれ明日は恰も其日なり。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
詩人の蒲原有明かんばらありあけ氏は、どんない景色を見ても、そこで何かべねば印象が薄いといつて、かはつた土地へたんびに、土地ところの名物をぱくづきながら景色を見る事にしてゐる。
からしばらくのあひだ勘次かんじ以前いぜんとはかはつておつぎをひとはなしてすことがやうつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
エヒミチはいまなほの六號室がうしつと、ベローワのいへなんかはりもいとおもふてゐたが、奈何云どういふものか、手足てあしえて、ふるへてイワン、デミトリチがいまにもきて自分じぶん姿すがた
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かはつた娘さんに自分のオペラの情人たちの戀物語を聞かせるなんてことが、く世間普通のことでゝもあるやうに、さうやつてあなたが靜かに私の話を聞いてゐるといふことですよ。
と、榮一は幾年か隔てゝ會ふたびに不思議なほどかはつてゐる妹の顏を見入つた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
瀧口の胸は麻の如く亂れ、とつおいつ、或は恨み、或は疑ひ、或は惑ひ、或は慰め、去りては來り、往きては還り、念々不斷の妄想、流は千々にかはれども、落行く末はいづれ同じ戀慕の淵。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
種物屋の暖簾のれんは、昔と少しもかはらずに、黒い地に白く屋号をぬいて日に照されてゐるのを見た。氷屋の店では、赤い腰巻をした田舎娘ゐなかむすめが二三人腰をかけて、氷水をさじですくつて飲んでゐた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
鳥は木をはなれて女の持つてゐる籠に下りて来る。一つは半ば戸口に這入りかけてゐる。女の足の下には、見たことのないかはつた草の花が咲いてゐる。一間程の幅の、珍らしい装飾であつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
のべけるに亭主も此程すゞもりにての敵討かたきうちの事此邊迄かくれなくあつぱ御本望ごほんまうを達せられしだん先々大悦なりとしゆくともに悦び其夜はさけさかななど出して種々に待遇もてなしけるにぞ友次郎等は以前にかはらぬあるじ侠氣をとこぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「さうだ。かはつた手品ならもう一人位あつていゝだらう。」
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
昨日きのふかはらぬ慣例しきたりに從へばよい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
オデオン座で新しく演じて居るパウル・アンテルムの新作劇「日本にほんほまれ」はその芸術的価値はかく、目先がかはつて居るので大入おほいりを続けて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第一その名称からして全くかはつてゐる。日本でのほくろは、漢字の黒子、黶子、又は痣に当るのである。
東西ほくろ考 (新字旧仮名) / 堀口九万一(著)
高士世に容れられざるの恨みも詮ずるところはかはることなし、よし/\、我図らずも十兵衞が胸に懐ける無価の宝珠の微光を認めしこそ縁なれ、此度こたびの工事を彼にいひつ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
説教はいつにかはらず面白く出来たので、ビイチヤアは上機嫌で教会を出ようとした。
ところが、丁度ちやうどわたしせつひまもらつて、かはつた空氣くうきひに出掛でかけやうとおもつてゐる矢先やさき如何どうでせう、一しよ付合つきあつてはくださらんか、さうして舊事ふるいことみんなわすれてしまひませうぢやりませんか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
斯ういふ風に、人々の視線が集まつたのは、かく毛色のかはつた客が入つて来た為、放肆ほしいまゝな雑談をさまたげられたからで。もつとの物見高い沈黙は僅かの間であつた。やがてた盛んな笑声が起つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
話頭はなしかはりて爰に松田の若黨わかたう吾助は主人喜内を討果うちはたしてかねての鬱憤うつぷんを散じ衣類一包みと金子二百兩を盜み取やみに紛れて備前國岡山を立去しが豐前國ぶぜんのくに小倉こくらの城下に少しの知音ちいん有ければ此に便りて暫く身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あゝ、確かにあなたは少しかはつてゐる。」と彼は云つた。
られぬ、とかはりはない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何物でもかはつた物は見逃すまいとする良人をつとから「自動車をおごるから」などとそゝのかされて下宿を出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
浮世の渡りぐるしき事など思ひめぐらせば思ひ廻すほど嬉しからず、時刻になりて食ふ飯の味が今更かはれるではなけれど、箸持つ手さへ躊躇たゆたひ勝にて舌が美味うまうは受けとらぬに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
するに異な物なれば何事も包まず打あけて言べし豫々かね/″\其方の宿は他人と聞たれば二兩持行もちゆくとも世話の仕樣にかはりは有まじ然れば五兩の金をみな持行もちゆきて宿へやるどぶすてるより無益むえきなり夫より五兩の中二兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
形はおほむ手毬てまりの様に円く大きく盛上り、色はかはつた種種しゆ/″\複色ふくしよくを出して、中にはえた緑青ろくしやう色をした物さへある。すべて鉢植でなく切花きりばな硝子罎がらすびんに挿して陳列して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
自分が主でも無い癖に自己おのが葉色を際立てゝかはつた風を誇顔ほこりが寄生木やどりぎは十兵衞の虫が好かぬ、人の仕事に寄生木となるも厭なら我が仕事に寄生木を容るゝも虫が嫌へば是非がない
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
秋の霜夜の冷えまさりて草野の荒れ行く頃といへば、彼の兎すら自己が毛を咬みて挘りて綿として、風に当てじと手をいとほしむ、それにはかはりて我〻の、纔に一人の子を持ちて人となるまで育てもせず
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
巴里も羅馬も南洋の島もかはりがないからだ!
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)