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滑
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すべ
ふりがな文庫
“
滑
(
すべ
)” の例文
訓練された七名の警官は、まるで霧のように静かに
滑
(
すべ
)
りこみました。階下の廊下は
淡
(
あわ
)
い
灯火
(
とうか
)
の光に夢のように照らし出されています。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その左右は苔の付いた崖で、僅かながらいつも水が湧き出ているため、石段は薄く氷に掩われてい、喜兵衛はそこで三度も
滑
(
すべ
)
った。
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
逃隠れをしようにも、裾の長い着物が足
纏
(
まと
)
いになって、物に
躓
(
つまず
)
いたり、
滑
(
すべ
)
ったりする。罎は
仆
(
たお
)
れて残った葡萄酒が畳へ流れました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
日本
(
につぽん
)
アルプスの
上高地
(
かみこうち
)
の
梓川
(
あづさがは
)
には、もといはなで、
足
(
あし
)
が
滑
(
すべ
)
るといはれたほど
澤山
(
たくさん
)
ゐたものですが、
近頃
(
ちかごろ
)
はだんだん
減
(
へ
)
つて
來
(
き
)
たようです。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
それは自己と外界との円満に調和した境地で、ちょうど天体の端から、無限の空間に足を
滑
(
すべ
)
らして落ちるような心持だとか聞いた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
あの朝、私は便所にいたので、皆が見たという光線は見なかったし、いきなり暗黒が
滑
(
すべ
)
り
墜
(
お
)
ち、頭を何かで
撲
(
なぐ
)
りつけられたのだ。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
が、ウッカリ当局者が
滑
(
すべ
)
らした
口吻
(
くちぶり
)
に由ると不法殺人であって、殺されたものは支那人や朝鮮人でないのは明言するというのだ。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「與左吉の拾つた小判は、若旦那が懷ろから取出して、そつと
滑
(
すべ
)
らせ、與左吉に拾はせたに違ひない——と吉太郎が言ひますぜ」
銭形平次捕物控:301 宝掘りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
老いも、若きも、富めるも、貧しきも、男も、女も、絶望し混雑し、一塊となって、互いに他の身体の下へ
滑
(
すべ
)
り込もうと争った。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
振りかざした自慢の十手、ひゅうっ! と風を切って喬之助の肩へ——落ちんとして、横に
滑
(
すべ
)
った。喬之助が
体
(
たい
)
をかわしたのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おこのが
払
(
はら
)
った
手
(
て
)
のはずみが、ふと
肩
(
かた
)
から
滑
(
すべ
)
ったのであろう。
袂
(
たもと
)
を
放
(
はな
)
したその
途端
(
とたん
)
に、
新
(
しん
)
七はいやという
程
(
ほど
)
、おこのに
頬
(
ほほ
)
を
打
(
う
)
たれていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
彼はなお通りを横切ろうとして、為に突き飛ばされ、ねばねばしたアスファルトの上に
滑
(
すべ
)
りころげ、危うく
轢
(
ひ
)
きつぶされるところだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ぢや、ロザマンド・オリヴァは?」とメァリーが
仄
(
ほの
)
めかした。この言葉は我にもあらずメァリーの唇から
滑
(
すべ
)
り出たらしかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
俊男はまた
頽默
(
ぐつたり
)
考込むだ。絲のやうな雨が瓦を
滑
(
すべ
)
ツて
雫
(
しづく
)
となり、
霤
(
あまおち
)
に落ちて
微
(
かすか
)
に響くのが、何かこツそり
囁
(
さゝや
)
くやうに耳に入る。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
忽
(
たちま
)
ち
燈
(
ともしび
)
の光の消えて
行
(
ゆ
)
くやうにあたりは全体に
薄暗
(
うすぐら
)
く灰色に
変色
(
へんしよく
)
して来て、満ち
来
(
く
)
る
夕汐
(
ゆふしほ
)
の上を
滑
(
すべ
)
つて
行
(
ゆ
)
く
荷船
(
にぶね
)
の
帆
(
ほ
)
のみが
真白
(
まつしろ
)
く
際立
(
きはだ
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
濡
(
ぬ
)
れた道を遠泳会の一行は
葛西川
(
かさいがわ
)
の
袂
(
たもと
)
まで歩いた。そこから放水路の水へ
滑
(
すべ
)
り
込
(
こ
)
んで、舟に
護
(
まも
)
られながら海へ下って行くのだ。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
然しトルストイは理想を
賞翫
(
しょうがん
)
して生涯を
終
(
おわ
)
る理想家で無い、トルストイは一切の
執着
(
しゅうちゃく
)
煩悩
(
ぼんのう
)
を軽々に
滑
(
すべ
)
り
脱
(
ぬ
)
ける木石人で無い
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
猫は嘉ッコの手から
滑
(
すべ
)
り落ちて、ぶるるっとからだをふるわせて、それから一目散にどこかへ走って行ってしまいました。
十月の末
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
大きい石で畳んだ路が、日に照らされて
艶々
(
つやつや
)
して、何だか
滑
(
すべ
)
っこい工合に町の中へ上っている。しばらくして、僕たちはその方へ降りて行った。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
が
今
(
いま
)
の
我
(
わ
)
が
身
(
み
)
の
小
(
ちひ
)
さいことに
氣
(
き
)
がつくと
共
(
とも
)
に、それが
矢張
(
やつぱり
)
自分
(
じぶん
)
のやうに
滑
(
すべ
)
り
落
(
お
)
ちた一
疋
(
ぴき
)
の
鼠
(
ねずみ
)
に
過
(
す
)
ぎないことを
知
(
し
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
あるいは侍従がうっかりと口を
滑
(
すべ
)
らせて、父の憤怒を惹き起こしたのではないか。そうして、自分に救いを求めたのではないかと思いあたった。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかしながら高山の山腹を少しずつ見えない速度で、しかし支うべからざる圧力で、
収効果的
(
エフェクチブ
)
に
滑
(
すべ
)
り落ちる氷河のような力は生じないであろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そこには、しびれる様に甘い匂と、ツルツル
滑
(
すべ
)
っこい触感と、全身で笑みくずれている巨大なる桃色の花があったのだ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
熱がひどく出ているらしい。彼はそれを測るために検温器を取ろうとした。だが、その検温器は彼の手から
滑
(
すべ
)
って床の上で真二つに折れてしまった。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
しかし、それは、
西風
(
にしかぜ
)
であって、
高
(
たか
)
い
嶺
(
みね
)
を
滑
(
すべ
)
った
夕日
(
ゆうひ
)
は、
雪
(
ゆき
)
をはらんで
黒雲
(
くろくも
)
のうず
巻
(
ま
)
く
中
(
なか
)
に
落
(
お
)
ちかかっていたのです。
深山の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして人麿はこういうところを歌うのに決して軽妙には歌っていない。飽くまで実感に即して
執拗
(
しつよう
)
に歌っているから軽妙に
滑
(
すべ
)
って行かないのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
刺せばいい。こん畜生は馬鹿に利巧な奴で、あべこべにあなたの方へ馳け出して来て、跨の下から逃げてゆきます。あいつの毛皮は油のように
滑
(
すべ
)
ッこい
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
つるつる
滑
(
すべ
)
る乳臭い唇だ。姪は叔父を見ながら
蝸牛
(
かたつむり
)
のような
拳
(
こぶし
)
を
銜
(
くわ
)
えようとして、ぎこちなく鼻の横へ
擦
(
す
)
りつけた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
こんなにも
滑
(
すべ
)
っこかったか、と驚かれる夜の板の間であった。伸子は、寂しいので、益々体を揺り動かして歩いた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ヤマハハ尋ね来たりて、どこに隠れたかと柴の
束
(
たば
)
をのけんとして柴を
抱
(
かか
)
えたるまま山より
滑
(
すべ
)
り落ちたり。その
隙
(
ひま
)
にここを
遁
(
のが
)
れてまた
萱
(
かや
)
を苅る翁に逢う。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
他
(
ほか
)
の
家鴨達
(
あひるたち
)
は、こんな、
足
(
あし
)
の
滑
(
すべ
)
りそうな
土堤
(
どて
)
を
上
(
のぼ
)
って、
牛蒡
(
ごぼう
)
の
葉
(
は
)
の
下
(
した
)
に
坐
(
すわ
)
って、この
親家鴨
(
おやあひる
)
とお
喋
(
しゃべ
)
りするより、
川
(
かわ
)
で
泳
(
およ
)
ぎ
廻
(
まわ
)
る
方
(
ほう
)
がよっぽど
面白
(
おもしろ
)
いのです。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
平均を失ったその鉄の梁は、今にもずるずると
滑
(
すべ
)
って、骨組だけの八階建のその大建築を、てっぺんからぶち抜いて、がらがらと落ちて行きそうだった。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
其處
(
そこ
)
で
廷丁
(
てい/\
)
は石を
庫
(
くら
)
に入んものと
抱
(
だ
)
き
上
(
あげ
)
て二三歩
歩
(
ある
)
くや手は
滑
(
すべ
)
つて石は
地
(
ち
)
に
墮
(
お
)
ち、
碎
(
くだ
)
けて
數
(
すう
)
十
片
(
ぺん
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
かっぽれに
滑
(
すべ
)
って
転倒
(
ころ
)
び、
手品
(
てずま
)
の太鼓を杯洗で鉄がたたけば、清吉はお房が傍に寝転んで
銀釵
(
かんざし
)
にお前そのよに酢ばかり飲んでを稽古する馬鹿騒ぎの中で
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「なんて、意気地がない。男ざかりが、
泡
(
あわ
)
アふっくらって
可笑
(
おか
)
しくなるよ。おや、なんてえ
滑
(
すべ
)
っこい肌だろう」
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
断崖はかなりに高いので、ややもすれば真っ逆さまに落ちそうである。その上に
湿
(
しめ
)
りがちの岩石ばかりで、踏みしめるたびに水が
滲
(
し
)
み出して
滑
(
すべ
)
りそうになる。
世界怪談名作集:06 信号手
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
私は急いで格子を
滑
(
すべ
)
り下りて、すぐ左手の隣りの
家
(
うち
)
ではまだ
潜戸
(
くぐり
)
を閉めずにあったので、それを幸いと、そこの入口に身を忍ばせて
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
に腰を掛けながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
妻がぎごちなそうに手を挙げて髪をいじっている間に彼れは思い切って半分ガラスになっている引戸を開けた。滑車がけたたましい音をたてて鉄の溝を
滑
(
すべ
)
った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
……暁の、とだけ十日かかって、やっと真似だけ弾けますと、夢になってもう手が違い、心では思いながら、三の手が一へ
滑
(
すべ
)
って、とぼけたような
音
(
ね
)
がします。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前に横たえてある棒をしっかり
握
(
にぎ
)
っているうち、車は
滑
(
すべ
)
りだし、深い穴のなかに
陥
(
お
)
ちてゆきます。再び、登りだしたときは、背も
反
(
そ
)
るような急角度の
勾配
(
こうばい
)
でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
滑
(
すべ
)
らないためにいゝ思ひつきだが、どうも、疣かなんかのやうで、見た目にも、感じがよくないから、あれは、横筋のやうなものにしてはどうかとおつしやるんです。
医術の進歩
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
深い滝道の——霧と
山苔
(
やまごけ
)
で
滑
(
すべ
)
りそうな断崖を——岩にしがみつきながら下へ降りてゆく様子である。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同じ黄色な菓子でも飴のやうに
滑
(
すべ
)
つこいのはぬめぬめした油絵や水で洗ひあげたやうな水彩画と同様に近代人の繊細な感覚に快い反応を起しうる事は到底不可能である。
桐の花とカステラ
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
トンチトンチたちは舟から上って、舟を引き上げると
滑
(
すべ
)
り
木
(
ぎ
)
を手分けして探した。そのうちに、ひとりがエゾウバユリやエゾエンゴサクの料理のつまった穴を見つけた。
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
さなかつらというつる草をついてべとべとの
汁
(
しる
)
にしたものをいちめんに塗りつけて、人が足を
踏
(
ふ
)
みこむとたちまち
滑
(
すべ
)
りころぶようなしかけをさせてお置きになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
どんなに堅いお方でも
其処
(
そこ
)
は
男女
(
なんにょ
)
の
情合
(
じょうあい
)
で、毛もくじゃらの男でも、
寝惚
(
ねぼけ
)
れば
滑
(
すべ
)
っこい手足などが肌に触れゝば気の変るもの、なれども山之助お繼は互に大事を祈る者
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
船檝
(
ふねかじ
)
を具え飾り、さな
葛
(
かずら
)
という蔓草の根を臼でついて、その汁の
滑
(
なめ
)
を取り、その船の中の
竹簀
(
すのこ
)
に塗つて、蹈めば
滑
(
すべ
)
つて仆れるように作り、御子はみずから布の衣裝を著て
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
わが世の
終
(
はて
)
の日数の経ちゆく如く、この痩せ細つたる手指をそうて、わが
指金
(
ゆびがね
)
も
滑
(
すべ
)
り落ちる。
法王の祈祷
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
久野は舵のところから「うん」と
曖昧
(
あいまい
)
な返辞をしながら、
鐘
(
かね
)
ヶ
淵
(
ふち
)
から
綾瀬
(
あやせ
)
川口一帯の広い川幅を
恍惚
(
こうこつ
)
と見守っていた。いろいろな船が眼前を横ぎる。白い短艇が向うを
滑
(
すべ
)
る。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
常に
鶯
(
うぐいす
)
を飼っていて
糞
(
ふん
)
を
糠
(
ぬか
)
に
交
(
ま
)
ぜて使いまた
糸瓜
(
へちま
)
の水を
珍重
(
ちんちょう
)
し顔や手足がつるつる
滑
(
すべ
)
るようでなければ気持を悪がり地肌の
荒
(
あ
)
れるのを最も
忌
(
い
)
んだ
総
(
す
)
べて絃楽器を弾く者は絃を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
滑
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
“滑”を含む語句
滑稽
滑々
滑車
滑川
上滑
滑石
円滑
滑走
滑稽談
滑脱
潤滑油
滑稽感
狡滑
地滑
氷滑
滑稽雑談
滑稽納所
滑稽劇
滑落
滑稽的
...