桐の花とカステラきりのはなとカステラ
桐の花とカステラの時季となつた。私は何時も桐の花が咲くと冷めたい吹笛の哀音を思ひ出す。五月がきて東京の西洋料理店の階上にさはやかな夏帽子の淡青い麦稈のにほひが染みわたるころになると、妙にカステラが粉つぽく見えてくる。さうして若い客人のまへに …