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柔
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やわら
ふりがな文庫
“
柔
(
やわら
)” の例文
咽喉から流れるままに口の中で
低唱
(
ていしょう
)
したのであるが、それによって長吉はやみがたい心の苦痛が幾分か
柔
(
やわら
)
げられるような心持がした。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
クリームの色はちょっと
柔
(
やわら
)
かだが、少し重苦しい。ジェリは、
一目
(
いちもく
)
宝石のように見えるが、ぶるぶる
顫
(
ふる
)
えて、羊羹ほどの重味がない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とろとろと、
曇
(
くもり
)
もないのに
淀
(
よど
)
んでいて、夢を見ないかと勧めるようですわ。山の形も
柔
(
やわら
)
かな
天鵞絨
(
びろうど
)
の、ふっくりした
括枕
(
くくりまくら
)
に似ています。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
竜之助の剣術ぶりは、
形
(
かた
)
の如く
悪辣
(
あくらつ
)
で、文之丞が門弟への扱いぶりは
柔
(
やわら
)
かい、その
世間体
(
せけんてい
)
の評判は、竜之助よりずっとよろしい。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鳶
(
とび
)
いろの眼と、ユウマアのみなぎった、人のいい顔をしてる。この
年齢
(
とし
)
まで、独身を通してきた。
長刀
(
なぎなた
)
の名手なのだ。
渋川流
(
しぶかわりゅう
)
の
柔
(
やわら
)
もやる。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
が、ふと何んだかそれで立派な下駄が出来そうな気がして来た。すると間もなく、吉の顔はもとのように満足そうにぼんやりと
柔
(
やわら
)
ぎだした。
笑われた子
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
春の風なら
柔
(
やわら
)
かになでるのだけれど、これは先陣が、つと頬を切ってゆくと、後陣がまた、すいと刺してゆく。夏なら人をもゆるしてやる。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
セエラは、初めの一二ヶ月の間は、素直に働いていれば、こき使う人達の心も、そのうちには
柔
(
やわら
)
ぐだろうと思っていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
また「秋の歌」のうちで「白く
灼
(
や
)
くる夏を惜しみつつ、黄に
柔
(
やわら
)
かき秋の光を味わわしめよ」といって人生の秋の黄色い淡い
憂愁
(
ゆうしゅう
)
を描いている。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
大「えゝ道具は
麁末
(
そまつ
)
でござるが、主人が心入れで、自ら隅田川の
水底
(
みずそこ
)
の水を汲上げ、
砂漉
(
すなごし
)
にかけ、水を
柔
(
やわら
)
かにして
好
(
よ
)
い茶を入れましたそうで」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
真綿
(
まわた
)
のように
柔
(
やわら
)
かい雪の上を
駈
(
か
)
け
廻
(
まわ
)
ると、雪の
粉
(
こ
)
が、しぶきのように飛び散って小さい
虹
(
にじ
)
がすっと映るのでした。
手袋を買いに
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「ごんじ」は蓑によく用いる「うりき」の別名で、ある地方では「おっかわ」ともいう、青皮の意である。「まだ」に似ているが、「まだ」より
柔
(
やわら
)
かい。
蓑のこと
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
白い
柔
(
やわら
)
かな
円石
(
まるいし
)
もころがって来、小さな
錐
(
きり
)
の形の
水晶
(
すいしょう
)
の粒や、
金雲母
(
きんうんも
)
のかけらもながれて来てとまりました。
やまなし
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
エリフは学識経験においては三人に劣れども、同情において優れるためややヨブの心を
柔
(
やわら
)
ぐるにおいて成功する。最後にエホバ御自身現われて親しく教示する。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
コロップは
柔
(
やわら
)
かで少しも刃を傷める
患
(
うれ
)
いが無いから
夫
(
それ
)
で之をそッと其剣先へ刺込で
衣嚢
(
かくし
)
へ入れて来たのだ余
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
涼風
(
すずかぜ
)
ならぬ一陣の
凄風
(
せいふう
)
、三人のひっさげ
刀
(
がたな
)
にメラメラと赤暗い
灯影
(
ほかげ
)
を
揺
(
ゆる
)
がした
出会
(
であ
)
い
頭
(
がしら
)
——とんとんとんと
柔
(
やわら
)
かい女の足音、部屋の前にとまって両手をついた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柔
(
やわら
)
かな
腹
(
はら
)
の
鱗
(
うろこ
)
の
間
(
あいだ
)
に、一
面
(
めん
)
に
釘
(
くぎ
)
がささりまして、そこから
血
(
ち
)
が
流
(
なが
)
れだし、そのまま
死
(
し
)
んでしまいました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
夫
(
そ
)
れから私は構わない、構おうと
云
(
いっ
)
た所が構われもせず、
罷
(
や
)
めようと云た所が罷められる訳けでない、マア/\
言語
(
げんぎょ
)
挙動を
柔
(
やわら
)
かにして決して人に
逆
(
さから
)
わないように
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
況
(
まし
)
てお葉は男を恐れるような弱い女では無かったが、恋に
柔
(
やわら
)
げられた
此
(
この
)
女は日頃の気性に似も
遣
(
や
)
らず、自分の男を捉えて来ることは躊躇して、
唯
(
ただ
)
往来で折々逢う毎に
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ものの二
丁
(
ちょう
)
ばかりも
進
(
すす
)
んだ
所
(
ところ
)
が
姫
(
ひめ
)
の
御修行
(
ごしゅぎょう
)
の
場所
(
ばしょ
)
で、
床一面
(
ゆかいちめん
)
に
何
(
なに
)
やらふわっとした、
柔
(
やわら
)
かい
敷物
(
しきもの
)
が
敷
(
し
)
きつめられて
居
(
お
)
り、そして
正面
(
しょうめん
)
の
棚
(
たな
)
見
(
み
)
たいにできた
凹所
(
くぼみ
)
が
神床
(
かんどこ
)
で
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
河のようにぬめぬめした海の向うには、
柔
(
やわら
)
かい島があった。島の上には白い花を飛ばしたような木がたくさん見えた。その木の下を牛のようなものがのろのろ歩いていた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その
柔
(
やわら
)
かい筋肉とは無関係に、
角化質
(
かくかしつ
)
の堅い
爪
(
つめ
)
が短かく
尖
(
さき
)
の丸い
稚
(
おさ
)
ない指を
屈伏
(
くっぷく
)
させるように
確乎
(
かっこ
)
と並んでいる。
此奴
(
こいつ
)
の
強情
(
ごうじょう
)
!と、逸作はその爪を眼で
圧
(
おさ
)
えながら言った。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
炉には
樫
(
かし
)
、
櫟
(
くぬぎ
)
、
桑
(
くわ
)
などをくべたが、桑が一番火の
保
(
も
)
ちがよく、熱も
柔
(
やわら
)
かだと云うので、その切り株を
夥
(
おびただ
)
しく燃やして、とても都会では思い及ばぬ
贅沢
(
ぜいたく
)
さに
驚
(
おどろ
)
かされたこと。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一方にはまた我々のいう
猫柳
(
ねこやなぎ
)
、春さき銀色の
柔
(
やわら
)
かな毛で
蔽
(
おお
)
われた若芽をつけて、それがまたやや猫か犬かの形に似ているものも、山陰その他のかなり弘い地域にわたって
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
けれどもただ一つ見つけたものがあった、レイモンドに撃たれて曲者が倒れた場所で、自動車の運転手がかぶるたいへん
柔
(
やわら
)
かな皮帽子を拾った。その他には何一つ無かった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
客観写生の技に苦心して来た人の俳句は、その心に映った自然を描写するために、前に言った如く、その自然は
柔
(
やわら
)
かき粘土の如く作者の手の
赴
(
おもむ
)
くままに形を成すものである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
京子は、ボイルのような、
羅衣
(
うすもの
)
を着ていた。
然
(
しか
)
し、その簡単な衣裳は、却って彼女の美に新鮮を与え青色の模様の下に、躍動する雪肌は、深海の
海盤車
(
ひとで
)
のように、
柔
(
やわら
)
かであった。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼女は、膝の下に起伏する、
肥
(
こ
)
え太った腹部の
柔
(
やわら
)
か
味
(
み
)
を、寧ろ快くさえ感じていました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あたかも道路改修中の
柔
(
やわら
)
かいアスファルトの層の中へ前足を突っ込んでしまった。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
冬の日の弱い
日影
(
ひかげ
)
を、くもり
硝子
(
ガラス
)
と窓かけで更に弱めに病室の中で、これが今朝生れたといううす赤い
柔
(
やわら
)
かい骨も何もないような肉体を手に受けとらせられると、本当に
変
(
へん
)
な気もちになる。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
柔
(
やわら
)
かに
言
(
い
)
う
意
(
つもり
)
であったが、
意
(
い
)
に
反
(
はん
)
して
荒々
(
あらあら
)
しく
拳
(
こぶし
)
をも
固
(
かた
)
めて
頭上
(
かしらのうえ
)
に
振翳
(
ふりかざ
)
した。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
もう四人は
草原
(
くさはら
)
の中へはいっています。しばらくすると、草が
深
(
ふか
)
く
茂
(
しげ
)
っている
柔
(
やわら
)
かい
地面
(
じめん
)
に、足がめり
込
(
こ
)
んでいくのがわかります。もう少し行くと、
膝
(
ひざ
)
のところまで
泥
(
どろ
)
の中にはまり
込
(
こ
)
みます。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
『何じゃと』と父の一言、
其
(
その
)
眼光の鋭さ! けれども
直
(
す
)
ぐ父は顔を
柔
(
やわら
)
げて
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
温い言葉に飢えていた私は、そう言われた時、妙に
柔
(
やわら
)
かい素直な心になった。祖母の胸に
縋
(
すが
)
りついて泣いて見たいような気にもなった。子供が母親に甘えるような気で私ははっきりと答えた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
眞
(
ほ
)
ンの
少時
(
しばらく
)
ではあつたけれども、周三の頭は全ての壓迫から
脱
(
まぬが
)
れて、
暗澹
(
あんたん
)
たる空に薄ツすりと
日光
(
につくわう
)
が射したやうになつてゐた。眼にも心にも、たゞ紅い花が見えるだけだ。何しろ彼の心は
柔
(
やわら
)
いでゐた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
吾輩は、すこし気の毒になったから、心持ち言葉を
柔
(
やわら
)
げた。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と苦しみながらも、私に言葉を
柔
(
やわら
)
げて願うようにいった。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
このプデンは匙で
掬
(
すく
)
って食べる位の
柔
(
やわら
)
かさがいいのです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
柔
(
やわら
)
こう
肌
(
はだえ
)
にそよぎ入って
終
(
つ
)
いうとうとと
睡
(
ねむ
)
くなる。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
空気草履
(
くうきざうり
)
の
柔
(
やわら
)
かさ。
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
夢幻
(
ゆめまぼろし
)
ともわかぬに、心をしづめ、眼をさだめて見たる、片手はわれに枕させたまひし元のまま
柔
(
やわら
)
かに力なげに
蒲団
(
ふとん
)
のうへに垂れたまへり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
秋蘭は古風な水色の
皮襖
(
ピーオ
)
を着て、紫檀の椅子に
凭
(
よ
)
りながら手紙の封を切っていた。彼女は朝の挨拶を
済
(
すま
)
すと足の痛みの
柔
(
やわら
)
ぎを告げて礼を述べた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
西洋紙にあらざるわたしの草稿は、反古となせば家の
塵
(
ちり
)
を
掃
(
はら
)
うはたきを作るによろしく、
揉
(
も
)
み
柔
(
やわら
)
げて
厠
(
かわや
)
に持ち行けば
浅草紙
(
あさくさがみ
)
にまさること数等である。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鳥は
柔
(
やわら
)
かな
翼
(
つばさ
)
と、
華奢
(
きゃしゃ
)
な足と、
漣
(
さざなみ
)
の打つ胸のすべてを
挙
(
あ
)
げて、その運命を自分に託するもののごとく、向うからわが手の
中
(
うち
)
に、安らかに飛び移った。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼
(
か
)
れ其妻に向いては殆ど
柔
(
やわら
)
か過るほど柔かにして全く鼻の先にて使われ居し者なり、
斯
(
かく
)
も妻孝行の男は此近辺に二人と見出し難し、
等
(
とう
)
の事柄にして殆ど異口同音なり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
かの女は
柔
(
やわら
)
かく光る逸作の小さい眼を指差し、自分の丸い
額
(
ひたい
)
を指で突いて
一寸
(
ちょっと
)
気取っては見たけれど、でも他人が見たら、およそ、おかしな
一対
(
いっつい
)
の男と女が、毎朝、
何処
(
どこ
)
へ
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
また我が
頬
(
ほお
)
を
撫
(
な
)
でながら
踵
(
かかと
)
の肉でさえ己のここよりはすべすべして
柔
(
やわら
)
かであったと云った。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
虚静
(
きょせい
)
を要とし物にふれ動かず——とある
擁心流
(
ようしんりゅう
)
は拳の
柔
(
やわら
)
と知るや、容易ならぬ相手とみたものか、小蛇のようにからんでくる指にじっと手を預けたまま、がらりと態度をあらためて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
藤「云いなよ/\、あゝやってお
柔
(
やわら
)
かに仰しゃる事だから、云わないと
宜
(
い
)
けないよ、隠し立てをしちゃア
彼方
(
あっち
)
も
盗賊
(
どろぼう
)
、
此方
(
こっち
)
も盗賊、
然
(
そ
)
う幾らも盗賊と
心易
(
こゝろやす
)
くしちゃア困るから云いなよ」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
英吉利
(
イギリス
)
の軍艦が来て、去年生麦にて日本の薩摩の
侍
(
さむらい
)
が英人を殺したその罪は全く日本政府にある、英人は
只
(
ただ
)
懇親
(
こんしん
)
を
以
(
もっ
)
て交ろうと思うて
是
(
こ
)
れまでも有らん限り
柔
(
やわら
)
かな手段ばかりを
執
(
とっ
)
て居た
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
柔
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
“柔”を含む語句
柔和
柔軟
温柔
柔弱
物柔
柔順
柔術
柔媚
柔々
柔肌
柔道
優柔
柔婉
手柔
柔嫩
柔輭
柔毛
柔手
御柔軟
柔情
...