)” の例文
二、三日れていた笹村の頭も、その時はもうしずまりかけていた。自分が女に向ってしていることを静かに考えて見ることも出来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
海が幾日もれて、山中の食料がつきた場合には、対岸の牡鹿おじか半島にむかって合図の鐘をくと、半島の南端、鮎川あゆかわ村の忠実なる漁民は
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それほど、人間の存在は、力のない小さいものになって、唯、伊豆山中をふきれる豪雨と、風の吠える声と、闇ばかりが、天地であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雨強く風はげしく、戸をゆすり垣を動かす、物凄ものすさまじくるる夜なりしが、ずどんと音して、風の中より屋の棟に下立おりたつものあり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくまでに悩まさるる不幸を恨み、ひるがへりて一点の人情無き賤奴せんどの虐待を憤る胸の内は、前後も覚えずれ乱れてほとほと引裂けんとするなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さうして、其くもみねをよく見ると、真裸まはだか女性によせう巨人きよじんが、かみみだし、身をおどらして、一団となつて、れ狂つてゐるやうに、うまく輪廓をらした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
難破船は、薄やみの中に、れ狂う怒濤どとうの中に、伝奇小説の中で語られた悲しき運命の船のごとくに、とり残された。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
これまで猩々がれ出すと、鞭でおどすことにしてゐたので、今度も鞭を出した。猩々は鞭を見るや否や、直ぐに戸口から走り出て梯子を駆け下りた。
なぜなら、あきから、ふゆにかけて、すさまじいかぜきつのって、おきくるったからでした。彼女かのじょは、いつしか、青年せいねんこいするようになりました。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼は手早く台所の棚から、カンテラを取り出すと、取り乱す容子もなく、灯を点じて、戸外同様に風雨のれ狂ふ広間の方へと、勇ましく立ち向つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
列車は最大速力ではしっていました。あらしはなおれ狂うていたが、そのときは少しく穏かになって遠のいたようでした。その代り雨が降りだしました。
キチガイのようにれ狂い、さけぶアヤ子を、両腕にシッカリとかかえて、身体からだ中血だらけになって、やっとの思いで、小舎こやの処へ帰って来ました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「このれじゃアどうドタバタ騒いでもそとへ物音の洩れっこはねえ。なア若えの、ゆっくり朝まで斬りあうぞ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼女に会ひてより和らげられし我が心も、度々の夢に虎伏す野に迷ひ、獅子ゆるほらに投げられしより、再びれに暴れて我ながらあさましき心となれり。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
恐れて寄り付かず、仕方がありませんから、れ狂う父さんを、仲のいちさんとお祷りに来た道尊さんにお願いして私はちょっと抜け出して来ました
地平線まで黒い影に鎖される頃から、篠つくような驟雨が襲ってきて、電光と雷鳴とがその間をれ狂った。
土地 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
たてがみを風になびかしてれる野馬のように、波頭は波の穂になり、波の穂は飛沫ひまつになり、飛沫はしぶきになり、しぶきは霧になり、霧はまたまっ白い波になって
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
蒼白い流れはもうらい瀬になって、頂には、春もすでになかばを過ぎた今でも、雪に包まれてあろうハーゲン・ゲビルゲ Hagen-Gebirge と
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
それは炭坑の底に働いている坑夫に、天気が晴れているのかれているのかが分らないのと同様である。
お晝過ぎからは模樣もやうで、雪も降り出した。私たちはずつと勉強部屋で過した。暗くなつて、私はアデェルに本とお稽古けいこをしまつて階下したへ行つてもいゝと云つた。
三十五年前、日本国を荒れにらしたる電火的革命家も、今はここに鎮坐ちんざして、静かなる神となり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
六月の二十日頃に出た手紙は、海のれるのと霧が深いのとで未だ同じ港に滞在して、目的の地を踏むことも出来ずに居ると言つてよこした。お節は待遠しい思をした。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
我らを縛せし機運の鉄鎖、我らをとらえし慈忍の岩窟いわやはわが神力にてちぎりてたり崩潰くずれさしたり、汝られよ今こそ暴れよ、何十年の恨みの毒気を彼らに返せ一時に返せ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二人が賭博の卓に倚つて、人の金を取つたり、人に金を取られたりしてゐたことも幾晩であらう。カルネワレの祭の頃、二人で町中まちなかれ廻り跳ね廻つたのも幾度であらう。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
去るほどに三匹の獣は、互ひに尽す秘術剽挑はやわざ、右にき左に躍り、縦横無礙むげれまはりて、半時はんときばかりもたたかひしが。金眸は先刻さきより飲みし酒に、四足の働き心にまかせず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
愈よ戦端せんたんを開く時には英国と共々に軍艦を以て品川沖をまわると、乱暴な事を云うて来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
然るに君、黒船以来毛唐の種が段々内地雑居を初めてから、人間様のなかでも眼色めいろの変つた奴が幅を利かしたが、俺達犬社会では毛唐だねらされてイヤモウ散三な目に遇つた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
由「じゃアねえさん、馬はれねえのを頼んでおくれ、いゝかえ馬に附ける物があるから、間違まちげえちゃアいけねえよ……何しろ虻が大変てえへんで……あゝ玉子焼が出来た、おゝ真白まっしろだ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そらあをかつた。それはきつ風雪ふうせつれた翌朝よくてうがいつもさうであるやうに、なにぬぐはれてきよあをかつた。混沌こんとんとしてくるつたゆきのあとのはれ空位そらぐらひまたなくうるはしいものはない。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
わがきみをはじめ、一どうはしきりに舟子達かこたちはげまして、くる風浪ふうろうたたかいましたが、やがてりょうにんなみまれ、残余のこりちからつきて船底ふなぞこたおれ、ふねはいつくつがえるかわからなくなりました。
重吉の案外に平穏へいおん無事な海の上の年月に比べて家の中には人生の波がれ騒いだ。陸の船頭役であるいねは、実枝みえがまだ二た誕生も来ぬ時にきゅうに倒れて、からだ半分が利かなくなった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
鶴見もまた、藤原南家なんけの一の嬢子じょうしと共に風雨のくるう夜中をさまよいぬいた挙句あげくの果、ここに始めて言おうようなき「朝目よき」光景を迎えて、その驚きを身にみて感じているのである。
もとよりかゝ巨魚きよぎよくることとてとても、引上ひきあげるどころのさわぎでない、あやまてば端艇たんてい諸共もろとも海底かいてい引込ひきこまれんず有樣ありさま、けれど此時このときこの鐵鎖くさり如何どうしてはなたれやうぞ、沙魚ふかつか、わたくしけるか
くわふるに寒風かんきを以てし天地まさに大にれんとす、嗟呼ああ昨日迄は唯一回の細雨さいうありしのみにして、ほとん晴朗せいろうなりし為め終夜熟睡じゆくすゐ、以て一日の辛労しんらうかろんずるを得たるに、天未だ我一行をあはれまざるにや
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
『実は今夜少しばかり話がありますから、それでお泊りなされというのだから、お泊りなされというたらお泊りなされ』と語気ことばがややろうなって参りました。舌も少し廻りかねるていでございました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お勢のやまいほかから来たばかりではなく、内からも発したので、文三に感染かぶれて少し畏縮いじけた血気が今外界の刺激を受けて一時にれだし、理性の口をも閉じ、認識の眼をくらませて、おそろしい力をもっ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
が、決して、今夜、その場でらしゅうしてはなりませぬぞ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
おのれこよひはれんぞと、 青き瓶袴も惜しげなく
文語詩稿 五十篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
るゝ群は今来たり。
山が れた
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
きょうは二百十日の由にて朝よりれ模様なり。もう思い切って宿を発つことにする。発つ前に○○寺に参詣して、親子の新しい墓を拝む。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すでに宵闇は迫り、江上の風波はしきりとれていた。今暁からの東南風たつみかぜは、昼をとおして、なおもさかんに吹いている。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして、その雲の峰をよく見ると、真裸まはだか女性にょしょうの巨人が、髪を乱し、身を躍らして、一団となって、れ狂っている様に、旨く輪廓りんかくを取らした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しなしたり! とかれはますますあわてて、この危急に処すべき手段を失えり。得たりやと、波と風とはますますれて、このはしけをばもてあそばんとくわだてたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は手早く台所の棚から、カンテラを取り出すと、取り乱す容子もなく、灯を点じて、戸外同様に風雨のれ狂う広間の方へと、勇ましく立ち向った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
翁は、外にれ狂う吹雪も知らぬ如く、全く時間と空間の裡から、見捨てられた人のように眤として身動きもせずに跪ずいて神に何事をかいのりを捧げていた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
我手して露の玉に湿うるほふ花のかしらをうち破る夢を見、又た或時は、春におくれて孤飛する雌蝶の羽がひを我が杖の先にて打ち落す事もあり、かつてらかりしものを
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ほんの一度目が醒めて、はげしい音を立てゝ俄かに風がれ、雨が瀧のやうに降り注いでゐるのを聞き、ミラア先生が私の側に寢てゐるといふことを感じただけであつた。
この海の上は、今にもわれわれの命を奪おうとするほどれ、わめいている。そして、われわれの家は宙天から地底じぞこへまで揺れころぶ。そこには火もなく、ともしびさえもない。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
次の日も例刻になれば狂女は又ひ来れり。あるじは不在なりとて、をんなをして彼ののこせし二品ふたしなを返さしめけるに、前夜のれに暴れし気色けしきはなくて、殊勝に聞分けて帰り行きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)