感情かんじやう)” の例文
そこで、感情かんじやうがいしてるなと、此方こつちではおもつてる前方せんぱうが、くだん所謂いはゆる帳場ちやうばなるもの……「貴女あなた、これはつてかれますか。」とつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、せいうへ共通きようつうといふことが、たして、思想しさう感情かんじやう共通きようつうといふことよりも、重大ぢうだい影響えいきやうがあるかどうか疑問ぎもんである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分じぶん好運かううん衰勢すゐせいにだらしなく感情かんじやう動亂どうらんさせるなどははなはだしばしばぼくのおかることだが、そして、ぼくいへどへてそれが全然無ぜんぜんないとははないが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
貴方あなたなどは、才智さいちすぐれ、高潔かうけつではあり、はゝちゝとも高尚かうしやう感情かんじやう吸込すひこまれたかたですが、實際じつさい生活せいくわつるやいなやたゞちつかれて病氣びやうきになつてしまはれたです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わか女性ぢよせいたいして、じゆん感情かんじやうももつてゐたから、誘惑いうわくふのはあたらないかもれなかつたけれど、色々いろ/\条件でうけんと、同棲生活どうせいせいくわつ結果けつくわからると、かれ本能ほんのう
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
成功せいこうした其時そのときうれしさも思出おもひいでるが、しかおほくは其時そのとき一處いつしよつたともの、んだのや、とほざかつたのや、いろ/\それを懷出おもひいだして、時々とき/″\へん感情かんじやうたれもする。
すべてひと感情かんじやう動物どうぶつで、しきときには何事なにごとたのしくえ、かなしきときには何事なにごとかなしくおもはるゝもので、わたくしいま不圖ふとこの悽愴せいさうたる光景くわうけいたいして物凄ものすごいとかんじてたら
あらゆるいとはしいつよ感情かんじやうたないではられぬ——をあらためさせなければまなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
頭腦づなう比較的ひかくてき明暸めいれうで、理路りろ感情かんじやうむのか、また感情かんじやう理窟りくつわくるのか、何方どつちわからないが、かくもの筋道すぢみちけないと承知しようちしないし、また一返いつぺん筋道すぢみちくと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とほ以前いぜんから紛糾こゞらけてたがひ感情かんじやうざした事件じけんがどんな些少させうなことであらうとも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お房のはたしかに智識の無いかはの眼で、あきらかに感情かんじやう放縱ほうじうなことを現はしてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それにもまさ感情かんじやう平明へいめいをおもふ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
本人ほんにんは、引手茶屋ひきてぢややで、勘定かんぢやう値切ねぎられたときおなじに、これ先方むかう道具屋だうぐや女房かみさん)も感情かんじやうがいしたものとおもつたらしい。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あま猛烈もうれつてるので、地主ぢぬし感情かんじやうがいして、如何どう中止ちうししてもらひたいと掛合かけあひるのである。
いたつて元氣げんきな、壯健さうけんな、立派りつぱしろ頬鬚ほゝひげの、快活くわいくわつ大聲おほごゑの、しかい、感情かんじやうふか人間にんげんである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
竹村たけむらはその温順おとなしさと寛容くわんようなのに面喰めんくらはされてしまつた。彼女かのぢよやはらかで洗煉せんれんされた調子てうしから受取うけとられる感情かんじやうると、しかしかんがかたが、きはめて自然しぜんえるのであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
勘次かんじほとんど事毎ことごと冷笑れいせうまなこもつられてるのであつたがしかしそれがいや感情かんじやうかれあたへるよりも、かれかれふところ幾分いくぶん餘裕よゆうしやうじてたことがすべての不滿ふまんつぐなうてなほあまりあることであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だからわたくしはらそこ依然いぜんとしてけはしい感情かんじやうたくはへながら、あの霜燒しもやけの硝子戸ガラスどもたげようとして惡戰苦鬪あくせんくとうする容子ようすを、まるでそれが永久えいきう成功せいこうしないことでもいのるやうな冷酷れいこくながめてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
道徳の形骸けいがいや、ひられた犧牲ぎせいやらをこばみましたけれども、今わが内心ないしんに新しくき起つて來た道徳的な感情かんじやうをもつて、初めてやみの中にさぐり求めてゐたあるものをつかんだやうな氣がするのです。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
昨日きのふ小膽せうたんつたことも、つきさへも氣味きみわることも、以前いぜんにはおもひもしなかつた感情かんじやうや、思想しさうありまゝ吐露とろしたこと、すなは哲學てつがくをしてゐる丁斑魚めだか不滿足ふまんぞくことふたことなども
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
發掘はつくつ開始かいしされたが、わるときには何處どこまでもわるいもので、東面とうめん地主ぢぬし西面せいめん地主ぢぬしとは、感情かんじやう衝突しようとつなにつて、西面せいめんはうへ無だんけるとはしからんとかなにとか
下人は、それらの屍骸の腐爛ふらんした臭氣に思はず、はなを掩つた。しかし、その手は、次の瞬間しゆんかんには、もう鼻を掩ふ事を忘れてゐた。或る強い感情かんじやうが、殆悉この男の嗅覺を奪つてしまつたからである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)