小舟こぶね)” の例文
ところが、そのはこはしずまないで、小舟こぶねのように、ぷかぷかうかんでいきました。そして、なかには水一てきはいりませんでした。
そのあひだうか牡蠣舟かきぶね苔取のりとり小舟こぶねも今は唯ひて江戸の昔を追回つゐくわいしやうとする人のにのみいさゝかの風趣を覚えさせるばかりである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
汽船きせんからはろされた小舟こぶねが、りくしてきました。それから、しばらくして、外国人がいこくじんとおとうさんはその小舟こぶねりました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
丁度ちやうどわたしみぎはに、朽木くちきのやうにつて、ぬましづんで、裂目さけめ燕子花かきつばたかげし、やぶれたそこ中空なかぞらくも往來ゆききする小舟こぶねかたちえました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
海の上には、かりゅうどのおおぜい乗っている小舟こぶねがずっと並んでいて、そこからダン、ダンと鉄砲てっぽうをうっているのが見えます。
見るとかれらはみんなまえのばん入れてやった所にいて、このきれいな小舟こぶねはもう何か月もかれらの家であったかのようによくねいっていた。
この突起をツクといい、またツコともチコともいう人があるが、ツクのほうは古い日本語であって、小舟こぶねなどにも古くからツクがついていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「お頭領かしら、さっきのどさくさまぎれに、もうひとりの男が、とも小舟こぶねを切りおとして、逃げッちまったようですぜ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そよ風になびく旗、河岸や橋につながれた小舟こぶね、今日こそ聖ヨハネの祭日だという事が察せられます。
たくさんの小舟こぶねが、それぞれたいまつをつけて、静かな水のおもてをすべって行きました。しかし、たいまつをつけていたからといって、それはウナギをるためではありません。
それはちょうど今日こんにちボルネオのパプアじんやシンガポールあたりの海岸かいがんかけるのと同樣どうよう陸地りくちとの交通こうつうはたいてい小舟こぶねつたものです。(第二十七圖だいにじゆうしちず)なぜこんなところむのでせうか。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
といって、おこって一人ひとりずんずん小舟こぶねって、日本にっぽんくにげて行きました。そして摂津せっつ難波なにわまでてそこにみました。それがのちに、阿加流姫あかるひめかみというかみさまにまつられました。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
身体からだは汚れて居るし、髪はクシャ/\になって居る、何は扨置さておき一番先に月代さかいきをしてれから風呂に這入ろうと思うて、小舟こぶねのっおかに着くと、木村のおむかえが数十日前から浦賀に詰掛つめかけて居て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人のひとりは小舟こぶねより
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そのあいだうか牡蠣舟かきぶね苔取のりとり小舟こぶねも今は唯いて江戸の昔を追回ついかいしようとする人の眼にのみいささかの風趣を覚えさせるばかりである。
家来は、ひとに気づかれないように、親船おやぶねからそっと小舟こぶねをおろすと、すぐさまそれにのりこんで、主人しゅじんのあとをってこいでいきました。
運河うんがの岸を歩きながら、わたしはたびたびミリガン夫人ふじんと、アーサと、それからかれらの美しい小舟こぶねのことを思い出していた。
また、ある漁船ぎょせんは、よるあめなかをさびしくこいでいると、あちらから一そうの小舟こぶねがやってきて、おともなくすれちがう。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アシは、人間のよりも高く、びっしりとしげるものですから、小舟こぶねでさえも、その中にわけいることはできません。
大波おほなみたゞよ小舟こぶねは、宙天ちうてん搖上ゆすりあげらるゝときは、たゞなみばかり、しろくろくも一片いつぺんをもず、奈落ならく揉落もみおとさるゝときは、海底かいていいはなるの、あかあをきをさへるとひます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「それはかたじけない。しかし、そこにあげてあるような小舟こぶねではどうにもならぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つりの帰りらしい小舟こぶねがところ/″\のやうに浮いてゐるばかり、見渡みわた隅田川すみだがはは再びひろ/″\としたばかりかしづかさびしくなつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
帰ってみると、馬ははこやなぎの木につながれて、すっかり仕度ができていて、小舟こぶねはいつでも出発するようになっていた。
若者わかものたちは、たくさんなふねあいだをこぎまわっていますと、このみなとげるために小舟こぶねをおろしているふねもありました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どれもこれもしっかりとつないでありますが、ただ一つ、古い、水のもる小舟こぶねだけは、すぐにほどけそうです。しかし、それはとても使つかいものにはなりません。
わたしたちは、蝙蝠傘かうもりがさを、階段かいだんあづけて、——如何いか梅雨時つゆどぎとはいへ……本來ほんらい小舟こぶねでぬれても、あめのなゝめなるべき土地柄とちがらたいして、かうばんごと、繻子張しゆすばり持出もちだしたのでは
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「このへんは、小舟こぶねもとおらないのね。」
あるのこと、しろふねが一そうこのみなとなかにはいってきました。そしてみなとうち停泊ていはくすると、小舟こぶねいくつもはこんでりくをさしてこいできました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬に引かれた小舟こぶねは、そろそろときしをはなれて、堀割ほりわりしずかな波を切ってすべって行った。両側りょうがわには木があった。後ろにはしずんで行く夕日のななめな光線が落ちた。
永代橋えいたいばし河下かはしもには旧幕府の軍艦が一艘商船学校の練習船として立腐たちぐされのまゝに繋がれてゐた時分、同級の中学生といつものやうに浅草橋あさくさばしの船宿から小舟こぶねを借りてこのへんを漕ぎ廻り
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ひらくでもなしに、弁当べんたう熟々つく/″\ると、彼処あすこの、あの上包うはつゝみゑがいた、ばら/\あし澪標みをつくし小舟こぶねみよしにかんてらをともして、頬被ほうかむりしたおぢいあささまを、ぼやりと一絵具ゑのぐあはいてゑがいたのが
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小舟こぶね晩方ばんがた金色こんじきかがやなみって、ふたたびりくをはなれてあちらにまっている汽船きせんをさしてこぎました。海鳥かいちょうは、うつくしい夕空ゆうぞらにおもしろそうにんでいました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
永代橋の河下かわしもには旧幕府の軍艦が一艘商船学校の練習船として立腐たちぐされのままに繋がれていた時分、同級の中学生といつものように浅草橋あさくさばしの船宿から小舟こぶねを借りてこのへんぎ廻り
水門にかかって、わたしたちは白鳥号の便たよりを聞いた。だれもあの美しい小舟こぶねを見たし、あの親切なイギリスの婦人ふじんと、甲板かんぱんの上のソファにねむっている子どものことを話していた。
あるのこと、猟師りょうしたちが、いくそうかの小舟こぶねっておきていきました。さお北海ほっかい水色みずいろは、ちょうどあいながしたように、つめたくて、うつくしかったのであります。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
小舟こぶねの上はどこもここもめきってあった。ろうかの上に花もなかった。アーサはどうかしたのかしらん。わたしたちはおたがいに同じようなしずみきった顔を見合わせながら立ち止まった。
吹けよ河風上れよすだれ三下さんさがりにめやうたえの豪遊を競うものはまれであったが、その代り小舷こべり繻子しゅす空解そらどけも締めぬが無理かと簾おろした低唱浅酌ていしょうせんしゃく小舟こぶねはかえっていつにも増して多いように思われた。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小舟こぶねちいさく、ちいさくなって、いつしかふねにこぎつくと、ひとふねも、同時どうじに、きあげられて、ふねは、れてゆくそら汽笛きてきらして、いずこへともなくってしまいました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに西にしそらが、あかくなりました。ひょっこりと前方ぜんぽうへ、くろ小舟こぶねなみのうちからかびがりました。あちらにも一つ、ずっととおくのほうにも、豆粒まめつぶのようなのがえています。
海へ帰るおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
またこのみなとから貨物かもつんでゆくために、小舟こぶねはこんでいるふねもありました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ていると、銀色ぎんいろ小舟こぶねは、波打なみうちぎわにこいできました。が、あか花弁かべんえついたように、はたいろがかがやいて、ちょうどかぜがなかったので、はたは、だらりとれていました。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)