交際つきあひ)” の例文
昨夜は概して非常に機嫌よく交際つきあひの面白い男らしく談笑してゐた。未婚で當市に親戚らしいものはない。血醒い兇行の演ぜられた
無法な火葬 (旧字旧仮名) / 小泉八雲(著)
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあひぎらひで、籠勝こもりがちな、夫人ふじん留守るすしたいへは、まだよひも、實際じつさいつたなか所在ありかるゝ山家やまがごとき、窓明まどあかり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それに引代へて私の家は、両親共四十の坂を越した分別盛り、(叔父は三十位であつた。)父は小心な実直者で、酒はほん交際つきあひに用ゆるだけ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きみの様に金回かねまはりがくないから、さう豪遊も出来ないが、交際つきあひだから仕方がないよ」と云つて、平岡は器用な手付てつきをして猪口ちよくくちけた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
格式は一等本座いつとうほんざと云ふので法類仲間はふるゐなかまはヾく方だが、交際つきあひや何かに入費いりめの掛る割に寺の収入しうにふと云ふのは錏一文びたいちもん無かつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
今度の旅行で、お互に気心も呑み込み合つたし、将来結婚の話が持ち上るかも知れないんだけど、それまでとにかくお交際つきあひしてみるつもりだわ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
お前さんがそんな賤しい仕事をしてる為にわたしは貴婦人に交際つきあひが出来ないぢや無いの。わたしはもうお前さんに愛憎あいさうが尽きたから此家このうちを出てきます。
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
仕事屋しごとやのおきやう今年ことしはるより此裏このうらへとしてものなれど物事ものごと氣才きさいきて長屋中ながやぢゆうへの交際つきあひもよく、大屋おほやなれば傘屋かさやものへは殊更ことさら愛想あいさう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
交際つきあひを狭めたからとて落付けるものでもない、交際を拡げたところで落付けるものでもない。えいツ、なるままだと、肚を決めるこそ人間本懐なのである。
よもやまの話 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
正月からの交際つきあひや仕事の上の諸入費で、親分の平次が首も廻らないことを、八五郎はよく知つてゐたのです。
やくして各々妻にも其趣そのおもむきを云聞いひきかせ是より兩家べつしてむつましく交際つきあひけり然るに兩人の子供こども丈夫ぢやうぶ成長せいちやうなすうちはや吉三郎十三歳と成し時ちゝの茂兵衞大病たいびやうわづら種々しゆ/″\療養れうやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むかし、ある物識ものしりが、明盲あきめくらの男を戒めて、すべて広い世間の交際つきあひは、自分の一量見をがむしやらに立てようとしてはいけない、相身互ひの世の中だから、何事にも
今では何方にでも万一ひよつとしたことの有れば骨を拾つて遣らうか貰はうかといふ位の交際つきあひになつたも皆親方の御蔭、それに引変へ茶袋なんぞは無暗に叱言を云ふばかりで
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「それぢや、青木君とあの瑠璃子夫人とは、さう大したお交際つきあひでもなかつたのですね。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
お座敷にはちやんとお二方の机並べて、男女合宿の書生交際つきあひ、奥様役もかたみ代はり。
今様夫婦気質 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
私は中庸ちゆうようといふことを知らない。私は生れてから、自分の性質と反對の、積極的な強い性格の人々との交際つきあひでは、絶對的な服從と決定的な反抗との間に、どんな中庸をも知らなかつた。
しや神樣のいかりに觸れるやうなことがあつたら、都家みやこやとは町内の交際つきあひを絶つといふことにまでなつたけれど、幸ひに秋から冬にかけて惡い病も流行はやらず、近在きんざいみな豐作ほうさくで町もうるほふたから
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
左様さやうですつてネ、雛妓はんぎよく落籍ひかして、月々五十円の仕送りする交際つきあひも、近頃外国で発明されたさうですから——我夫あなた、明日の教会の親睦会しんぼくくわいは御免を蒙ります、天長節は歌舞伎座へ行くものと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
まであんずることはあるまい。交際つきあひのありがちな稼業かげふこと途中とちうともだちにさそはれて、新宿しんじゆくあたりへぐれたのだ、とおもへばむのであるから。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「もし、それが気になるなら、わたくしの方はうでも御座ござんすから、御父様おとうさまなか直りをなすつて、今迄通り御交際つきあひになつたらいぢやありませんか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いいえ、それがね、お交際つきあひがまるでないんですからね。口に出しては云ひませんけれど、やつぱり寂しいんでせう。
温室の前 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
が、狭い村内の交際つきあひは、それでは済まない。殊には、さまでもない病気に親切にも毎日廻診に来てくれるから、是非顔出しして来いと母にも言はれた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三日交際つきあひをしたら植村樣のあと追ふて三途の川まで行きたくならう、番町の若旦那を惡いと言ふではなけれど、彼方とはたちが違ふて言ふに言はれぬ好い方であつた
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんと愛想も義理も知らな過ぎるではありませんか、銭が無ければ女房かゝの一枚着を曲げ込んでも交際つきあひは交際で立てるが朋友ともだちづく、それも解らない白痴たはけの癖に段〻親方の恩を被て
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
右は、Aが金持でBが貧しい場合だが、もしそれが反対であつても、必竟AがBを、「あんな奴でも偉いのかなァ」と思ふ、つまり交際つきあひの上でAがBより優勢になることは同前なのだ。
心理的と個性的 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
我等は、未だに揃ひも揃ふて、辻車に飛乗りの、見すぼらしい境涯を、君だけそれでは義が立つまい。ぜひそこまでは、交際つきあひたまへ。然り然り大賛成。おい車夫、奥様にさういふてくれ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
されば彼伊勢屋千太郎は養子の身なれば仲間一同へほどよくわけを爲し逃歸にげかへらんとなせども養父五兵衞が平生仲間交際つきあひさらになさずたぐひ無き吝嗇りんしよく者なれば養子千太郎を連行つれゆきて伊勢五の親爺おやぢに氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、しかし、それが過ぎたらあなたはムア・ハウスやモオトンから、また姉妹らしい交際つきあひや、自分中心の平安、文化的な富の齎らす感覺的な快味くわいみ以外に眼をつけ始めて欲しいと思ふのです。
「いやそんな事もありませんよ。此半年ばかりは、可なり親しくしてゐたやうです。尤もあの奥さんは、大変お交際つきあひの広い方で、僕なども、青木君同様可なり親しく、交際してゐる方です。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「ナニ、ありや、むを得ん交際つきあひサ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
交際つきあひはいい加減にしとけつて云はれたつて、さうはいかないわ。その結果は、存外男にわからないらしいのね
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
三月に一度、今の間に半年目、一年目、年始の状と暑中見舞の交際つきあひになりて、文言うるさしとならば端書にても事は足るべし、あはれ可笑しと軒ばの櫻くる年も笑ふて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それも初めのうちは、夫程それほど烈しくもなかつたので、三千代はたゞ交際つきあひやむを得ないんだらうとあきらめてゐたが、仕舞にはそれが段々かうじて、程度ほうづが無くなる許なので三千代も心配をする。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『為方がない、交際つきあひだもの。』と投げる様に言つて、敷居際に腰を下した。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
偖又半四郎はときうつるに隨ひてゑひは十分にはつおのづから高聲かうせいになり彼町人體の男に向ひ貴樣の樣なる者は道連みちづれになると茶屋なとへ引づりこみ此樣に打解うちとけて酒を呑合のみあひ百年も交際つきあひし如くなして相手の油斷ゆだん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
感謝に溶けし塊の、再び込み上げ来るをば、じつと押さえて何気なく。その事なれば、かならずかならず、お案じなされて下さりまするな。かねても申し上げます通り、一体が交際つきあひ嫌ひの偏屈もの。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
のろり/\と充分したゝか清めて碁盤肌にでも削らうかと僻味ひがみを云つた事もありました、第一彼奴は交際つきあひ知らずで女郎買ぢよろかひ一度一所にせず、好闘鶏しやも鍋つゝき合つた事も無い唐偏朴、何時か大師へ一同みんなが行く時も
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
もう長い交際つきあひでもあり、彼女に対して、自然に親みを加へて行つたといふだけで、別に変つた素振りも見せないでゐるのに反し、奥村の方は、来る度毎に、何処となく
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それはおまへらぬから其樣そんにくていなことへるものゝ三日みつか交際つきあひをしたら植村樣うゑむらさまのあとふて三途さんづかはまできたくならう、番町ばんちやう若旦那わかだんなわるいとふではなけれど
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
叔父をぢんだ。叔母をば安之助やすのすけはまだきてゐるが、きてゐるあひだけた交際つきあひ出來できないほど、もう冷淡れいたんかさねて仕舞しまつた。今年ことしはまだ歳暮せいぼにもかなかつた。むかふからもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
せ我慢では無けれど交際つきあひだけは御身分相応に尽して、平常へいぜいは逢いたい娘の顔も見ずにゐまする、それをば何の馬鹿々々しい親なし子でも拾つて行つたやうに大層らしい
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貢 どうなつたつて、お互にこれまで通りの交際つきあひができれば、それでいいぢやないか。
温室の前 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
此方こちら此通このとほりつまらぬ活計くらしをしてれば、御前おまへゑんにすがつてむこ助力たすけけもするかと他人樣ひとさま處思おもはく口惜くちをしく、我慢がまんではけれど交際つきあひだけは御身分ごみぶん相應さうおうつくして
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
牧子 此の一月つていふもの、だつて、交際つきあひらしい交際つきあひはしてませんわ。さういふ話があつてからでせう、急にこつちへ来なくなつてしまふなんて、随分現金ですわ、二人とも……。
温室の前 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それはお前が知らぬからそんな憎くていな事も言へるものの、三日交際つきあひをしたら植村様のあと追ふて三途さんづの川まで行きたくならう、番町の若旦那を悪いと言ふではなけれど
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あたくしんとこなんかも、主人の方のお交際つきあひさへなければ……。
写真(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
いまからわたしさへあらためれば、のおひととてさのみ未練みれんおつしやるまじく、おたがひにあさ交際つきあひをして人知ひとしらぬうちにけがれをすゝいで仕舞しまつたなら、いまからのちのあのかたためわたしため
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
春秋はるあきはな紅葉もみぢつゐにしてかんざし造物つくりものならねど當座たうざ交際つきあひ姿すがたこそはやさしげなれ智慧ちゑ宏大くわうだいくは此人このひとすがりてばやとこれも稚氣をさなげさりながら姿すがたれぬはひとこゝろわらひものにされなばそれもはづかしなにとせんとおもふほど兄弟きやうだいあるひとうらやましくなりてお兄樣あにいさまはおやさしいとかおまへさまうらやましとくち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)