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一片
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ひとひら
ふりがな文庫
“
一片
(
ひとひら
)” の例文
土
(
つち
)
一升、
金
(
かね
)
一升の日本橋あたりで生れたものは、さぞ自然に恵まれまいと思われもしようが、全くあたしたちは
生花
(
きばな
)
の
一片
(
ひとひら
)
も愛した。
旧聞日本橋:22 大門通り界隈一束(続旧聞日本橋・その一)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その時ふいと目をやると、さつきまでは何んにもなかつたその墓石の傍らに、何んかの花の莟らしいものが
一片
(
ひとひら
)
ぽつんと落ちてゐた。
生者と死者
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
そろそろ夕方らしい透った藍色が加わって、その隅っこに、黄色く陽に染った小さな雲の
一片
(
ひとひら
)
が浮いていた。彼はフウーッと息をはいた。
プウルの傍で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
雪は五寸許りしか無かつたが、
晴天
(
はれ
)
続きの、塵
一片
(
ひとひら
)
浮ばぬ透明の空から、色なき風がヒユウと吹いて、吸ふ息毎に鼻の穴が
塞
(
つま
)
る。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
山伏は
大跨
(
おおまた
)
で、やがて
麓
(
ふもと
)
へ着いた時分、と、
足許
(
あしもと
)
の杉の
梢
(
こずえ
)
にかかった
一片
(
ひとひら
)
の雲を透かして、里
可懐
(
なつかし
)
く麓を望んだ……時であった。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
さながら人なき家の如く堅くも表口の障子を閉めてしまった土弓場の
軒端
(
のきば
)
には折々時ならぬ
病葉
(
わくらば
)
の
一片
(
ひとひら
)
二片
(
ふたひら
)
と
閃
(
ひらめ
)
き落ちるのが殊更に
哀
(
あわれ
)
深く
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
未来を覗く
椿
(
つばき
)
の
管
(
くだ
)
が、同時に揺れて、
唐紅
(
からくれない
)
の
一片
(
ひとひら
)
がロゼッチの詩集の上に音なしく落ちて来る。
完
(
まった
)
き未来は、はや
崩
(
くず
)
れかけた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御小刀
(
おこがたな
)
の跡
匂
(
にお
)
う梅桜、
花弁
(
はなびら
)
一片
(
ひとひら
)
も
欠
(
かか
)
せじと大事にして、昼は
御恩賜
(
おんめぐみ
)
頭
(
かしら
)
に
挿
(
さ
)
しかざせば
我為
(
わがため
)
の玉の冠、かりそめの
立居
(
たちい
)
にも
意
(
き
)
を
注
(
つけ
)
て
落
(
おち
)
るを
厭
(
いと
)
い
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さてその
一片
(
ひとひら
)
を
手繰
(
たぐ
)
らんと為るに、長きこと帯の如し。好き程に裂きては
累
(
かさ
)
ね、累ぬれば、皆積みて一冊にも成りぬべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
蓮華の
一片
(
ひとひら
)
が、散るほどの変化も起らなかった。おかんの心の中の目算では、五年ばかりも蓮の
台
(
うてな
)
に坐って居ただろう。
極楽
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
されば
余
(
よ
)
として、
終生
(
しふせい
)
忘
(
わす
)
るゝ
事
(
こと
)
の
出來
(
でき
)
ぬのは、この
權現臺
(
ごんげんだい
)
の
遺跡
(
ゐせき
)
で、
其所
(
そこ
)
の
地
(
ち
)
を
踏
(
ふ
)
む
時
(
とき
)
は
勿論
(
もちろん
)
、
遺物
(
ゐぶつ
)
の
一片
(
ひとひら
)
を
手
(
て
)
にしても、
直
(
す
)
ぐと
其當時
(
そのとうじ
)
を
思出
(
おもひいだ
)
すのである。
探検実記 地中の秘密:02 権現台の懐古
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
春の曙の夢は千々に乱れて薄紅の
微笑
(
ほゝえみ
)
、カラカラと鳴り渡る
銀
(
しろがね
)
の噴泉、
一片
(
ひとひら
)
の花弁、フツと吹けば涙を忘る——泣いて泣いて泣き明した後の清々しさ……と
嘆きの孔雀
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
と言って、お銀様は小判の
一片
(
ひとひら
)
を指の上にのせて、目分量を試むるかのように、お雪ちゃんの眼の前に示し
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
凡
(
およそ
)
物を
視
(
み
)
るに
眼力
(
がんりき
)
の
限
(
かぎ
)
りありて
其外
(
そのほか
)
を視るべからず。されば人の
肉眼
(
にくがん
)
を以雪をみれば
一片
(
ひとひら
)
の
鵞毛
(
がまう
)
のごとくなれども、
数
(
す
)
十百
片
(
へん
)
の
雪花
(
ゆき
)
を
併合
(
よせあはせ
)
て一
片
(
へん
)
の鵞毛を
為
(
なす
)
也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
石の上に、
早咲
(
はやざき
)
の梅が散って、
一片
(
ひとひら
)
、二片、附いているのが、春らしくもない、つまらなそうに見えた。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
いやいや、老いたる母の肩にさえ、どこからか舞ってきた桃花の
一片
(
ひとひら
)
が、
紅
(
あか
)
く点じているではないか。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屍骸の
膓
(
はらわた
)
にうごめいている
蛆
(
うじ
)
の一匹々々をも分明に識別させたのであったが、
今宵
(
こよい
)
の月はそこらにあるものを、たとえば糸のような清水の流れ、風もないのに散りかゝる桜の
一片
(
ひとひら
)
二片
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頃
(
ころ
)
は春の
末
(
すえ
)
ということは庭の桜が
殆
(
ほとん
)
ど散り尽して、
色褪
(
いろあ
)
せた
花弁
(
はなびら
)
の
未
(
ま
)
だ
梢
(
こずえ
)
に残って
居
(
い
)
たのが、若葉の
際
(
ひま
)
からホロ/\と
一片
(
ひとひら
)
三片
(
みひら
)
落つる
様
(
さま
)
を今も
判然
(
はっきり
)
と
想
(
おも
)
いだすことが出来るので知れます。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
赤い大きい日は地平線上に落ちんとして、空は半ば金色半ば
暗碧色
(
あんへきしょく
)
になっている。
金色
(
こんじき
)
の鳥の翼のような雲が
一片
(
ひとひら
)
動いていく。高粱の影は影と蔽い重なって、荒涼たる野には秋風が渡った。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
もそろもそろに
滞
(
とどこほ
)
る鉛の電車、
一片
(
ひとひら
)
の
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
わかき命は
一片
(
ひとひら
)
の
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
水
(
みづ
)
の
面
(
も
)
の
一片
(
ひとひら
)
を
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
一片
(
ひとひら
)
の
下
(
もと
)
に
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
日傘
(
ひがさ
)
さして橋の上渡り来るうつくしき女の藤色の
衣
(
きぬ
)
の色、あたかも藤の花
一片
(
ひとひら
)
、一片の藤の花、いといと小さく、ちらちら眺められ候ひき。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
柔風
(
やわかぜ
)
にも
得
(
え
)
堪
(
たえ
)
ない花の
一片
(
ひとひら
)
のような少女、
萩
(
はぎ
)
の花の上におく露のような
手弱女
(
たおやめ
)
に描きだされている女たちさえ、何処にか骨のあるところがある。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
遮ぎる雲の
一片
(
ひとひら
)
さえ持たぬ春の日影は、
普
(
あま
)
ねく水の上を照らして、いつの間にかほとぼりは波の底まで
浸
(
し
)
み渡ったと思わるるほど暖かに見える。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さらば往きて
汝
(
なんぢ
)
の陥りし
淵
(
ふち
)
に沈まん。沈まば
諸共
(
もろとも
)
と、彼は宮が
屍
(
かばね
)
を引起して
背
(
うしろ
)
に負へば、その
軽
(
かろ
)
きこと
一片
(
ひとひら
)
の紙に
等
(
ひと
)
し。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
此家から程近い住吉神社へ行つては、昔を語る事多き大公孫樹の、まだ
一片
(
ひとひら
)
も落葉せぬ枝々を、幾度となく仰ぎ見た。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
秋の頃、黄色い粉を吐いた花の
乾固
(
ひかたま
)
った死骸や、小さく黒く見える実や、それも僅かに彼方の枝に二つ、
此方
(
こちら
)
の枝に一つある位で他に
一片
(
ひとひら
)
の葉の影も止めていなかった。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
其間
(
そのうち
)
、
正午
(
ひる
)
になつたので、
一先
(
ひとま
)
づ
座敷
(
ざしき
)
へ
引揚
(
ひきあ
)
げ、
晝餐
(
ちうさん
)
の
饗應
(
きやうおう
)
を
受
(
う
)
け、それから
又
(
また
)
發掘
(
はつくつ
)
に
掛
(
かゝ
)
つたが、
相變
(
あひかは
)
らず
破片
(
はへん
)
が
出
(
で
)
る
位
(
くらゐ
)
。
漸
(
やうや
)
くそれでも
鯨骨
(
げいこつ
)
の
一片
(
ひとひら
)
と、
石槌
(
いしづち
)
、
打石斧
(
だせきふ
)
、
石皿
(
いしざら
)
の
破片
(
はへん
)
など
掘出
(
ほりだ
)
した。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「いいえ、
緋牡丹
(
ひぼたん
)
の
一片
(
ひとひら
)
でございましょう」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一片
(
ひとひら
)
二片
(
ふたひら
)
三片
(
みひら
)
……
青白き公園
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
さながらや、
一片
(
ひとひら
)
の
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
……
此處
(
こゝ
)
へ
來
(
き
)
ます
途中
(
とちう
)
でも、
出
(
だ
)
して
手
(
て
)
に
持
(
も
)
てば
人
(
ひと
)
が
見
(
み
)
る……
袂
(
たもと
)
の
中
(
なか
)
で
兩手
(
りやうて
)
で
裂
(
さ
)
けば、
裂
(
さ
)
けたのが
一層
(
いつそ
)
、
一片
(
ひとひら
)
でも
世間
(
せけん
)
へ
散
(
ち
)
つて
出
(
で
)
さうでせう。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此家から程近い住吉神社へ行つては、昔を語る事多き
大公孫樹
(
おほいてふ
)
の、まだ
一片
(
ひとひら
)
も落葉せぬ枝々を、幾度となく仰ぎ見た。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
松高くして花を隠さず、枝の
隙間
(
すきま
)
に夜を照らす
宵重
(
よいかさ
)
なりて、雨も降り風も吹く。始めは
一片
(
ひとひら
)
と落ち、次には二片と散る。次には数うるひまにただはらはらと散る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一片
(
ひとひら
)
は北に向って、一片は東に向って、見る間に、それらが影も形もなくなってしまう。その
果敢
(
はか
)
ない煙の姿を上に映して、
遅鈍
(
ちどん
)
なブリキ屋根は、悲しみもしなければ、憂えもしないようだ。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
源五の背にも、
一片
(
ひとひら
)
とまっていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一片
(
ひとひら
)
二片 三片……
青白き公園
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
と、唇か、
瞼
(
まぶた
)
か。——
手絡
(
てがら
)
にも襟にも
微塵
(
みじん
)
もその色のない、ちらりと緋目高のような
紅
(
くれない
)
が、夜の霜に
山茶花
(
さざんか
)
が
一片
(
ひとひら
)
溢
(
こぼ
)
れたようにその姿を
掠
(
かす
)
めた。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
較々
(
やや
)
霎時
(
しばし
)
して、自分は
徐
(
おもむ
)
ろに其
一片
(
ひとひら
)
の公孫樹の葉を、水の上から摘み上げた。そして、
一滴
(
ひとつ
)
二滴
(
ふたつ
)
の
銀
(
しろがね
)
の雫を口の中に
滴
(
た
)
らした。そして、いと丁寧に塵なき井桁の端に載せた。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
二人の唇の間に林檎の花の
一片
(
ひとひら
)
がはさまって
濡
(
ぬ
)
れたままついている。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
空をゆく
一片
(
ひとひら
)
の白雲。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軽
(
かる
)
く
其
(
そ
)
の
黒髪
(
くろかみ
)
を
戦
(
そよ
)
がしに
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
もなしに、
空
(
そら
)
なる
桜
(
さくら
)
が、はら/\と
散
(
ち
)
つたが、
鳥
(
とり
)
も
啼
(
な
)
かぬ
静
(
しづ
)
かさに、
花片
(
はなびら
)
の
音
(
おと
)
がする……
一片
(
ひとひら
)
……
二片
(
ふたひら
)
……
三片
(
みひら
)
……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
加之
(
しかのみならず
)
、此一面の明鏡は又、
黄金
(
こがね
)
の色のいと鮮かな
一片
(
ひとひら
)
の小扇をさへ載せて居る。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
後がたちまち
真暗
(
まっくら
)
になるのが、白の
一重芥子
(
ひとえげし
)
がぱらりと散って、
一片
(
ひとひら
)
葉の上に
留
(
とま
)
りながら、ほろほろと落ちる風情。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「は、」と声が
懸
(
かか
)
る、袖を絞って、
袂
(
たもと
)
を肩へ、
脇明
(
わきあけ
)
白き花
一片
(
ひとひら
)
、手を
辷
(
すべ
)
ったか、と思うと、
非
(
あら
)
ず、緑の
蔓
(
つる
)
に葉を開いて、はらりと船へ投げたのである。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お夏は片手をついて腰をかけて、土間なる駒下駄の上へ
一片
(
ひとひら
)
の雪かとばかり爪先をかけて、うっかりとなった。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
魚
(
うお
)
の渇けるがごとく
悶
(
もだ
)
ゆる白歯に、傾く
鬢
(
びん
)
からこぼるるよと見えて、
衝
(
つ
)
と
一片
(
ひとひら
)
の花が触れた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
秋山氏は、
真中
(
まんなか
)
に据えた
大
(
おおい
)
なる大理石の
円卓子
(
まるテエブル
)
に
肱
(
ひじ
)
をつき、椅子にかかって憩いながら、かりそめに細巻をくゆらしていたので、もっとも
裸体
(
はだか
)
で、
纏
(
まと
)
えるは
一片
(
ひとひら
)
の布あるのみ。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“一片”の意味
《名詞》
薄く小さいものの一枚。
大きな固まりのうちの一かけら。
わずか。ほんの少し。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
“一片”で始まる語句
一片付
一片食
一片々々
一片着
一片紙
一片雲
一片餉
一片二片