“一本:ひともと” の例文
“一本:ひともと”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花26
泉鏡太郎4
北原白秋4
永井荷風3
小川未明2
“一本:ひともと”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 戯曲2.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.5%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
戸田茂睡が江戸名所の記『むらさき一本ひともと』、浅井了意が『慶長見聞記けいちょうけんぶんき』等またしかり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一本ひともとあしつえつき、片手に緋総ひぶさ結びたる、美しき文箱ふばこを捧げて、ふらふらと出できたる。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神武寺じんむじあたりより、萬兩まんりやうふさやかにいたるを一本ひともとかへりて
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二坪に足らぬ市中まちなかの日蔭の庭に、よくもこう生い立ちしな、一本ひともと青楓あおかえで、塀の内に年経たり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かえって羽について来るか、くちばしから落すか、植えないすみれの紫が一本ひともと咲いたり、たでが穂をあからめる。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひょいと腰をもたげて、這身はいみにぬいと手を伸ばした様子が、一本ひともと引抜ひんぬきそうに見えたので、
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると青々とした水のおもてがぎらぎらする日の光りにうつっ一本ひともとの大きな合歓ねむの木が池の上に垂れかかっていた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
像を懸けたる一本ひともとの葡萄は、早く熱のために葉をこがし、その幹は傾きて、首を垂れ憐を乞ふ如くなり。
孔雀の羽のいろ/\はそのより受くるやしなひおなじきに、色彩の變化は一本ひともとごとに殊なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
貴老は。……貴老だとて違いはしません。法衣ころもを召そうと思えば、お思いなさいます、と右左、峯に、一本ひともと燃立つような。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——だがこの、幼い一本ひともとの武蔵野の草をわが畑へ入れたことが、どんな結果をまねくにいたるか、そこまでは彼も思いおよんでいなかった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒髪高く乱れつつ、一本ひともとの杉のこずえに火をさばき、艶媚えんびにして嫋娜しなやかなる一個の鬼女きじょ、すっくと立つ——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠近おちこち木間このま隠れに立つ山茶花さざんか一本ひともとは、枝一杯に花を持ッてはいれど、㷀々けいけいとして友欲し気に見える。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そのうち一本ひともと根からって、逆手さかてに取ったが、くなくなしたやつ胴中どうなかを巻いて水分かれをさしてれ。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つてはて、所々ところ/″\一本ひともと一輪いちりん途中とちうてた、いろ/\のはなつては
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふりなかばを前へ折つて伏せたと思ふと、ひざのあたりから下へ曲げてい込んだ、うしろに立つた一本ひともとはん
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たけながき女のきぬ、低い天井から桂木のせなのぞいて、薄煙うすけむり立迷たちまよふ中に、一本ひともと女郎花おみなえし
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このうるはしき物語たゞちにやみぬ、そは我等路の中央たゞなかに、にほひやはらかくして良きある一本ひともとの木を見たればなり 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
銃槍じゆうそう忍返しのびがへしを打ちたる石塀いしべいあふれて一本ひともとの梅の咲誇れるを、ななめに軒ラムプの照せるがそのかどなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ゆきれし一本ひともとにれのもと、なかばこはれし長椅子ベンチに、
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
杜蔭もりかげ一本ひともとあざやかな紅葉もみじが、水のように静かな空気の中に、なにかしらそそのかすような熱情をかしこんでいるようだった。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこに紅梅の風情は無いが、姿見に映る、江一格子えいちごうしの柳が一本ひともと
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「むらさきの一本ひともと故に武蔵野の草は皆がら憐れとぞ見る」という歌があります。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その頃、どうかすると美妙が、じりじりしているのを、錦子は見逃みのがさなかった。小説は「はぎの花妻名誉の一本ひともと」を発表してもらえることになっていた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その人のいま居る背後うしろに、一本ひともとの松は、我がなき母の塚であった。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は立止って、家の前にある一本ひともとのただ白く咲いた柿の木を見上げていた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
……ちょっと柳が一本ひともとあれば滅びた白昼のくるわひとしい。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と「むらさき一本ひともと」にはあり、天明ごろの「蜘蛛の絲卷」には、
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
むらさき一本ひともと』にも芝の宇田川うだがわを説くくだり
その木戸口に、柳が一本ひともと、二人をおお被衣かつぎのように。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頂の松一本ひともと、濃く黒き影あざやかに、左に傾きて枝垂しだれたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むらさき一本ひともとにも芝の宇田川うだがはを説くくだり
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
垣の内、新緑にして柳一本ひともと、道をのぞきて枝垂しだる。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その女のつれが、摘んで、渡すのを、自分の見つけたのと二本ふたもと三本みもと、嬉しそうに手にした時……いや、まだ、その、一本ひともと、二本、三本をかぞえない時であった。
磯馴松そなれまつ一樹ひとき一本ひともと、薄い枝に、濃い梢に、一ツずつ、みどり淡紅色ときいろ、絵のような、旅館、別荘の窓灯を掛連ね、松露しょうろが恋に身を焦す
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貧しさに堪へてさびしく一本ひともとの竹を植ゑ居りこのあかつきに
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山川のどよみの音のすさまじきどよみのそば一本ひともと
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
地に空に春風のわたるほどは物みな燃え立って富貴ふうきに色づくを、ひそかなる黄を、一本ひともとの細き末にいただいて、住むまじき世に肩身狭くはばかりの呼吸いきを吹くようである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて少年は袂を探って、一本ひともとの花を取出した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眞黄色まつきいろ公孫樹いてふ一本ひともと
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
瓦斯燈がすとうがほんのりともれて、あしらつた一本ひともと青柳あをやぎが、すそいて、姿すがたきそつてて、うただいしてあつたのをおぼえてる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私はそんなだいそれたことは考えもいたしませんが『紫の一本ひともとゆゑに』(むさし野の草は皆がら哀れとぞ思ふ)と申しますように、大姫君の妹様というだけでお思いになるのかとおそれおおい申しようですが
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
トあの大提灯を、釣鐘が目前めのまえへぶら下ったように、ぎょっとして、はっと正面へつままれた顔を上げると、右の横手の、広前ひろまえの、片隅に綺麗に取って、時ならぬ錦木にしきぎ一本ひともと
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おしい事に、雨露うろ霜雪そうせつさらされ、むしばみもあり、その額の裏に、彩色した一叢ひとむらの野菊の絵がほのかに見えて、その一本ひともとの根に(きく)という仮名かながあります。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枯枝かれえを張りし一本ひともと
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
山跡やまとの 一本ひともとすすき
花のえご、香の一本ひともと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
花のえご、香の一本ひともと
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
むらさき一本ひともと
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数ある江戸名所案内記中その最も古い方に属する『むらさき一本ひともと』や『江戸惣鹿子大全えどそうがのこたいぜん』なぞを見ると、坂、山、くぼ、堀、池、橋なぞいう分類のもとに江戸の地理古蹟名所の説明をしている。
中川徳基が、昔の研究はまず地理から始めなければならぬ、といって『むらさき一本ひともと』『江戸咄えどばなし』『江戸雀えどすずめ』『江戸真砂えどまさご六十帖』などいう書物や、古絵図類を集めていたのもこの頃であった。
明治十年前後 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
「女と二人逢いながら、すたすた(かねやす。)の向うまで、江戸を離れる男ッてのがお前さん江戸にありますか。人目にそうは見えないでも、花のような微酔ほろよいで、ここに一本ひともと咲いたのは、稲葉家のお孝ですよ。清葉さんとは違いますわ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
分けて今年はあたたかさに枝垂しだれた黒髪はなおこまやかで、中にも真中まんなかに、月光を浴びて漆のように高く立った火の見階子ばしごに、袖を掛けた柳の一本ひともと瑠璃天井るりてんじょうの階子段に、遊女のもたれた風情がある。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其處そこ花籠はなかごから、一本ひともと白百合しらゆりがはらりと仰向あをむけにこぼれてちた……ちよろ/\ながれにかげ宿やどる……百合ゆりはまた鹿も、ひめも、ばら/\とつゞいてこぼれた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふもとからあがろうとする坂の下の取着とッつきところにも一本ひともと見事なのがあって、山中心得さんちゅうこころえ条々じょうじょうを記した禁札きんさつ一所いっしょに、たしか「浅葱桜あさぎざくら」という札が建っていた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
既に幾処いくところの実景の夢と符合するさへ有るに、またその殊に夢の夢なる一本ひともと百合のここに在る事、畢竟ひつきよう偶合に過ぎずとは謂へ、さりとては余りにかの夢とこの旅との照応急に、因縁深きに似て、などかくは我を驚かすの太甚はなはだしき!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一体全体菊というものは、一本ひともとさびしきにもあれ千本八千本ちもとやちもとにぎわしきにもあれ、自然のままに生茂おいしげッてこそ見所の有ろう者を、それをこの辺の菊のようにこう無残々々むざむざと作られては、興も明日あすも覚めるてや。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
美女たをやめ背後うしろあたる……山懐やまふところに、たゞ一本ひともと古歌こか風情ふぜい桜花さくらばな浅黄あさぎにも黒染すみぞめにも白妙しろたへにもかないで、一重ひとへさつ薄紅うすくれなゐ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて平野橋、一本ひともと二本蘆の中にまじったのが次第に洲崎のこのあたり土手は一面の薄原すすきばら、穂の中から二十日近くの月を遠く沖合の空に眺めて、潮が高いから、人家の座敷下の手すりとすれずれの処をゆらりと漕いだ、河岸についてるのは川蒸汽で縦に七そうばかり。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
野の中に、一本ひともとの、木蓮の木があり、白絹細工のような花が、太陽に向かって咲き揃っているのを見、(美しくて清らかで、若々しくて、まるで頼母様のようですこと)と思い、一輪の花の中へ分け入った時、木蓮の花の、倍もありそうな巨大な、そうして血のように赤い蜘蛛くもが、突然、頭上うえから、舞い下がって来た。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)