金色きんいろ)” の例文
ある青年せいねんは、毎日まいにちのように、そらたかく、金色きんいろとりんでゆくのをながめました。かれは、それを普通ふつうとりとはおもいませんでした。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
其中そのなかの一人は同じ村外れの一軒のあばから金色きんいろの光りが輝きいでるのを見て不思議に思つてうかがつて見ますと何様どうでせう
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
薔薇ばら色の翼、金色きんいろの弓、それから薄い水色の衣裳いしやう、——かう云ふ色彩を煙らせた、もの憂いパステルの心もちも佐藤君の散文の通りである。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ヨチヨチ駕籠のそばへ歩いてきて、金色きんいろ金物かなもののみごとなお駕籠へ、手を触れてみようとしていた三つばかりの男の子が、わっと泣きだす。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その時、世界を金色きんいろに光らしている秋の風はその山の斜面を吹きまくり、彼の素膚の脇ばらに冷たくあたった。彼は首を上げて鼻をならした。
人馬のにひ妻 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
そんな金色きんいろの人間なんて、あるはずがありませんから、きっと土人の身につけている衣類が金色なのだろうと察しました。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その全面長く金色きんいろな綿毛を被った形、とんとシジアのこひつじに異ならぬ。それに附会して種々の奇譚が作られたのだと(『自然科学字彙ジクチョネール・デ・シャンス・ナチュレル』四巻八五頁)
けれども、やがて、そのみひかりに指をちょっとふれてみました。すると、その指がすっかり金色きんいろになってしまいました。
けれども、空を見あげれば、そこにはお日さまがニコニコと金色きんいろかがやいていて、世界じゅうに元気をあたえています。
西南にしみなみだろう黒い雲をかすめて赤い金色きんいろの星が光る、流石さすがは昔からかしい大和国を吹く四月の夜の風だ、障子を開けて坐っていると、何時いつのまにか心地よく
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
その下へ来た時、先生は高いこずえを見上げて、「もう少しすると、綺麗きれいですよ。この木がすっかり黄葉こうようして、ここいらの地面は金色きんいろの落葉でうずまるようになります」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時に、光線こうせんのかげんで、そのまッ黒なつばさのつやるような金色きんいろひとみまでがありありと見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紙挾みのほうには、『常松つねまつ法律事務所』と固苦しい大きな活字で名を入れてあり、正金銀行の角封筒には、警察の徽章とよく似た金色きんいろの紋章が鮮やかに刷り出されてある。
「水が綺麗で、風景が好くて、鮎の名所です。彼処あすこのはうろこ金色きんいろで、あぎゃんした甘か鮎は日本国中何処にもなかと申します。焼いてゆずをかけておあがったら頬が落ちますぞ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ぼくの身体はもうほこりにまみれて、かつて倉庫番からめちぎられたときのような金色きんいろ光沢こうたくは、もう見ようとしたって見られなかった。全身ぜんしんつやをうしない、変に黄色くなっていた。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
女も手提の金色きんいろサツクから白粉入を出しておれの使つて居る掛鏡かけかがみを覗き込みながら化粧をしなほした。おれはトランクの底から百フランの紙幣を三枚抜き出してそつと洋袴パンタロンの隠しへ捻ぢ込んだ。
素描 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
地獄ぢごくぶやうにすべむと、あを火鉢ひばち金色きんいろひかつて、座布團ざぶとん一枚いちまい、ありのまゝに、萌黄もえぎほそ覆輪ふくりんつて、しゆとも、とも、るつぼのたゞれたごとくにとろけて、燃拔もえぬけた中心ちうしんが、藥研やげんくぼんで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その蛙は横からみると金色きんいろにかがやいてゐる
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
ですから、金色きんいろ絿髪ちぢれがみをした牧童にでも
顔のまわりは金色きんいろをおびた暗黒であった
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
ピアノが鳴る……金色きんいろ顫音せんおん
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、その輪は金色きんいろに光っていました。太郎は目を見はりました。かつてこんなに美しく光る輪を見なかったからであります。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
併し、金色きんいろの男はどこにもいなかった。「そんな賊が群集の中へ飛込んで来るものか、馬鹿馬鹿しい、何を血迷っているんだ。もっとほかを探して見るがいいや」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしだんだん近寄つて見ると、——僕のタクシイのへツド・ライトがぼんやりその車を照らしたのを見ると、それは金色きんいろ唐艸からくさをつけた、葬式に使ふ自動車だつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのとき、マリアは、天国てんごくの光にさわったため金色きんいろになっている女の子の指さきを見て、やっぱりこの子がいいつけをまもらなかったことを、はっきりと知りました。
でも、いまは金色きんいろではなくて、まっかです。気のせいか、お日さまはおこっているように見えます。だけど、なにを怒っているのだろう、とニールスはふしぎに思いました。
へさき金色きんいろの髪を日に乱して伸び上るは言うまでもない、クララである。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金色きんいろの口あたりのよい日本酒につぽんしゆ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
金色きんいろの林檎だのを
またそのあしで、勇敢ゆうかんてきたたかったこともあったでしょう。それがために、かぎは、金色きんいろにぴかぴかとみがかれてひかっていました。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
金色きんいろのウィスキーが、ポトポトとこぼれた。あけみは自分の手を持ちそえて、それを飲んだ。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
池の中に咲いているはすの花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色きんいろずいからは、何とも云えないにおいが、絶間たえまなくあたりへあふれて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。
蜘蛛の糸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
むすめはからだじゅう足のつまさきまで、金色きんいろかみですっかりつつまれています。王さまはじっと立ちどまって、びっくりしてむすめの顔を見つめていましたが、やがてむすめに話しかけて
そうして、緑色みどりいろのあいだから、金色きんいろひかりがもれて、したのしめったうえに、ふしぎな模様もようをかいていました。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あなたは、なんでこのやまのぼりなさるのか……。」と、かえしましたから、青年せいねんは、金色きんいろとりをたずねてきたものだとこたえました。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ちょうど、ひげのしろ老人ろうじんが、そのまえにうずくまって、れい金色きんいろのすいかをげ、カンテラのらしてながめていました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜ゆうべおなゆめた。はじめは白鳥はくちょうが、ちいさなつばさ金色きんいろにかがやかして、そらんでくるようにおもえた。それがわたしむかえにきたふねだったのだ。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
金色きんいろにかがやく、かんせた自動車じどうしゃは、ぬかるみのみちをいくたびか、みぎひだりにおどりながら、火葬場かそうじょうほうへとはしったのです。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなみそらからはしきりに、金色きんいろせんんできました。けれど、ここまでたっせずに、みんな野原のはらうえちてしまいました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは、そのまわりにあつまって、金魚きんぎょをのぞいてたのです。ながいのや、まるいのや、またくろ金色きんいろのまだらなどの金魚きんぎょおよいでいました。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
指輪ゆびわについている宝石ほうせきからは、あおひかりや、金色きんいろひかりが、おんなたちのからだをうごかし、をふるたびにひらめいたのでした。
雪の上の舞踏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にいさん、わたしに、金色きんいろとりたまごと、よるになるとうたうたかいを、お土産みやげにかならずってきてください。」とたのみました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのほしひかりはなんともいえないうつくしいひかりはなっていました。金色きんいろのもあれば、銀色ぎんいろのもある。また緑色みどりいろのもあれば、紫色むらさきいろのも、青色あおいろのもありました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
金色きんいろうまって、天人てんにんはなをまきながらはしっているのが、はっきりえるのだもの。」と、子供こどもはいったのです。
熊さんの笛 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かなたをますと、往来おうらいうえ一人ひとり少年しょうねんが、をまわしながらはしってきました。そして、その金色きんいろひかっていました。太郎たろうをみはりました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太郎たろうはかなたの往来おうらいますと、少年しょうねんが二つのをまわして、はしってきました。その金色きんいろかがやいてえました。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まえそらに、さんらんとして、金色きんいろのししのたてがみのようなくもや、また、まっはなのようなくもが、絵模様えもようのように、ぶことがありました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
金色きんいろのまるいものが、みちうえちていました。ゆりちゃんは、それをひろって、ちいさなつちとしていると、とおりかかった、らないおばさんが
金色のボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
なかでも、ちいさな子供こどもたちは、毎日まいにちれをなして、水面みずもかび、太陽たいようらす真下ましたを、縦横じゅうおうに、おもいのままに、金色きんいろのさざなみをてておよいでいました。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのときの傷痕きずあとふるびてしまって、みきには、雅致がちくわわり、こまかにしげった緑色みどりいろは、ますます金色きんいろび、朝夕あさゆうきりにぬれて、疾風しっぷうすりながら
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)