舞台ぶたい)” の例文
旧字:舞臺
洋服を着て派手はで舞台ぶたいに立つことと嫁を貰う資格とを無理に結びつけて誰かがこの白痴の少年の心に深々と染み込ませたものらしい。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
死顔しにがほ」も「くろわらひも」なみだにとけて、カンテラのひかりのなかへぎらぎらときえていつた、舞台ぶたい桟敷さじき金色こんじきなみのなかにたヾよふた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
けれどももとより、舞台ぶたいにはなんの仕掛しかけもありませんし、さるは人形の中にじっとかがんでいますので、だれにも気づかれませんでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
舞台ぶたいはまだ昔のままになっていました。かべった側面と、背景に二つのアーチがあって、そこから以前の時代と同じ装飾そうしょくが見えました。
京都きょうとに行ったことのある人は、きっとそこの清水きよみず観音様かんのんさまにおまいりをして、あのたか舞台ぶたいの上から目の下の京都きょうとまちをながめ
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
身動きのならないほど客の込み合う中で、彼は釣革つりかわにぶら下りながらただ自分の事ばかり考えた。去年の疼痛とうつうがありありと記憶の舞台ぶたいのぼった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何々屋なになにや後家ごけさんが、おびってやったとか。酒問屋さけとんやむすめが、舞台ぶたいしたかんざししさに、おやかねを十りょうしたとか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ながいにせよ、またみじかいにせよ、かくこの無意識むいしきからをさましたときが、わたくしたちの世界せかい生活せいかつはじまりで、舞台ぶたいがすっかりかわるのでございます。
舞台ぶたいはいふまでもなくさくらそのの女しゆ人ラアネフスカヤの邸宅ていたく廣間ひろまで、時ははる、その方の名家もやがて沒落ぼつらくといふかなしい運命うんめいの前にあるのだが
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そしてれがすむともなく一婦人ふじんが、R打合うちあわせをしたあとでR通訳つうやく説明せつめいにつれて舞台ぶたいのぼつた。そしてピアノの伴奏ばんそう独唱どくせうをはじめた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
舞台ぶたい花道はなみち楽屋がくや桟敷さじきのるゐすべて皆雪をあつめてそのかたちにつかね、なりよくつくること下のを見て知るべし。
金星音楽団の人たちは町の公会堂のホールの裏にある控室ひかえしつへみんなぱっと顔をほてらしてめいめい楽器をもって、ぞろぞろホールの舞台ぶたいから引きあげて来ました。
セロ弾きのゴーシュ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれは広告こうこくのびらを書いて、ほうぼうにはり出したり、二、三まいの板でかれは舞台ぶたいをこしらえたりした。
母は仕立屋の職人にしたいという希望を持っていたが、アンデルセンみずからは舞台ぶたいに立つことを望んで、十四歳のときただひとり首都のコペンハーゲンをめざして旅立った。
絵のない絵本:02 解説 (新字新仮名) / 矢崎源九郎(著)
自転車じてんしゃうえちいさなはこ舞台ぶたいなかには、見覚みおぼえのあるあかトラのていました。七、八にん子供こどもがあめをわなければ、おじさんは、説明せつめいをはじめないのがつねでありました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もりまくさつちて、双六谷すごろくだに舞台ぶたいごと眼前めのまへひらかれたやうに雪枝ゆきえおもつた。……悪処あくしよ難路なんろ辿たどりはしたが、までときつたともおもはず、べつそれために、とおも疲労つかれさない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一昨日おとついは、一字の男総出で、隣村の北沢から切組きりくみ舞台ぶたいを荷車で挽いて来た。昨日は終日舞台かけで、村で唯一人ただひとりの大工は先月来仕かけて居る彼が家の仕事をやすんで舞台や桟敷さじきをかけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
絶好ぜっこう舞台ぶたい
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
芝居がおわると、人形たちはみんな、舞台ぶたいに呼びだされました。そして、わたしは、工科大学の学生からブドウ酒を一ぱい、ごちそうになりました。
江戸えどばん女形おやま瀬川菊之丞せがわきくのじょう生人形いきにんぎょうを、舞台ぶたいのままにろうッてんだ。なまやさしいわざじゃァねえなァれている。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
東のすみに一夜作りの舞台ぶたいを設けて、ここでいわゆる高知の何とか踴りをやるんだそうだ。舞台を右へ半町ばかりくると葭簀よしずの囲いをして、活花いけばな陳列ちんれつしてある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
舞台ぶたい花道はなみち楽屋がくや桟敷さじきのるゐすべて皆雪をあつめてそのかたちにつかね、なりよくつくること下のを見て知るべし。
アントン・チエエホフの名戯曲ぎきよくさくらその」のだいまく目の舞台ぶたいの左おく手には球突塲たまつきばがある心になつてゐる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
調子てうしづいた独唱どくせうが二つばかりつづいた。そしてまえ叙事詩じよじしのやうなものを朗読らうどくした多分たぶん代理大使だいりたいし夫人ふじんだとおもはるゝ婦人ふじん其後そのあとで又舞台ぶたいのうへで朗読らうどくをはじめた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かれの歌を聞いているうちに、目にはなみだがいっぱいあふれたので、舞台ぶたいのすみに引っこんでいた。
中には不思議ふしぎに思う者もあって、舞台ぶたい調しらべてみたり、人形を検査けんさしたりしました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、あきになると、それらのは、かなしいうたをうたって、そらんだのであります。おとこつちなかで、オペラのゆめていました。こちょうのような、少女しょうじょ舞台ぶたいんでいます。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
舞台ぶたいの上の二人は、手を握ったまま、ふいっとおじぎをして、それから
さうして少年せうねんのやぶれたこヽろはつくのはれたけれど、舞台ぶたいのうへで姫君ひめぎみのきられたといふことはわすれられない記臆きおくであつた。また赤毛布あかけつとうらをば、んだ姫君ひめぎみあるいたのも、不可思儀ふかしぎ発見はつけんであつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
今日は粕谷か、明日あす廻沢めぐりさわ烏山からすやまは何日で、給田が何日、船橋では、上下祖師ヶ谷では、八幡山では、隣村の北沢では、と皆が指折ゆびおりかぞえて浮き立つ。彼方の村には太鼓が鳴る。此方こちあざでは舞台ぶたいがけ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
どうしたはずみか、太夫たゆうおどってたあしが、つまずいたようによろよろっとしたかとおもうと、あッというもなく、舞台ぶたいへまともにしちまったんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
比較的静かな舞台ぶたいの裏側では、道具方の使う金槌かなづちの音が、一般の予期をそそるべく、折々場内へ響き渡った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本堂の上り段に舞台ぶたいを作りかけ、左に花道あり、左右の桟敷さじき竹牀簀たけすのこ薦張こもばりなり。土間にはこもしきむしろをならぶ。たびの芝居大概たいがいはかくの如しと市川白猿がはなしにもきゝぬ。
母は仕立屋の職人にしたいという希望を持っていたが、アンデルセンみずからは舞台ぶたいに立つことを望んで、十四歳のときただひとり首都のコペンハーゲンをめざして旅立った。
三度目にじだんだをふんだときに、わたしがカピにれられて舞台ぶたいあらわれることになる。
ほかにも、舞台ぶたいがつくられて、おんな手踊ておどりなどあってにぎやかでした。
どこかで呼ぶような (新字新仮名) / 小川未明(著)
正面しょうめんに広い舞台ぶたいができていました。もなく甚兵衛は、大きなひょっとこの人形をちだし、それを舞台ぶたい真中まんなかえまして、自分は小さなむちを手にち、人形のそばに立って、挨拶あいさつをしました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
本堂の上り段に舞台ぶたいを作りかけ、左に花道あり、左右の桟敷さじき竹牀簀たけすのこ薦張こもばりなり。土間にはこもしきむしろをならぶ。たびの芝居大概たいがいはかくの如しと市川白猿がはなしにもきゝぬ。
すると、幕のりた舞台ぶたいの前を、向ふのはじから此方こつちけて、小走こばしりに与次郎がけてた。三分の二程の所でとまつた。少し及びごしになつて、土間どまなかのぞき込みながら、何かはなしてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もしもすらりとした美しい姿をしていたなら、この男はどのような舞台ぶたいに立っても一流の悲劇役者になっていたことでしょう。英雄的えいゆうてきなもの、偉大いだいなものが、この男のたましいにはみちみちていたのでした。
我国雪のためにさま/″\の難義なんぎはあらまし前にいへるごとくなれども、雪の重宝ちようほうなる事もあり、第一は大小雪舟そり便利べんりちゞみ製作せいさくゆきだう田舎芝居ゐなかしばゐ舞台ぶたい桟敷さじき花道はなみちみな雪にて作る。
舞台ぶたいではもうはじまつてゐる。る人物が、みんなかんむりかむつて、くつ穿いて居た。そこへ長い輿こしかついでた。それを舞台の真中まんなかめたものがある。輿こしを卸すと、なかから又一人ひとりあらはれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)