腹立はらだ)” の例文
この不自由ふじゆうな、みにくい、矛盾むじゅん焦燥しょうそう欠乏けつぼう腹立はらだたしさの、現実げんじつ生活せいかつから、解放かいほうされるは、そのときであるようながしたのです。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
腹立はらだたしさに、なかばきたい気持きもちをおさえながら、まつろうにらみつけた徳太郎とくたろうほそまゆは、なくぴくぴくうごいていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其角は秀和が大層腹立はらだつてゐる噂を聞いて、成るべく出会はぬやうに気をつけてゐたが、ある日の事が悪く両国橋の上でばつたりと行き会つた。
皇后は若郎女わかいらつめのことをお考えになればなるほどおくやしくて、そのお腹立はらだちまぎれに、港へおつけにならないで、ずんずん船を堀江ほりえへお入れになり
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
叫哭きょうこくしたくてたまらなかったときに叫哭きょうこくしえないで、叫哭すべき時期じき経過けいかしたいまは、かなしい思いよりは、なさけなく腹立はらだたしさにのぼせてしまった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
はづかしさ、かなしさ、腹立はらだたしさ、——そのときのわたしのこころうちは、なんへばいかわかりません。わたしはよろよろあがりながら、をつとそば近寄ちかよりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
難破船なんぱせん⁈ あはゝゝゝゝ。』と船長せんちやう大聲おほごえわらつた。驚愕おどろくとおもひきや、かれはいと腹立はらだたしかほしかめて
その日からうちじゅうの者はのこらず、大っぴらでわたしに対して憎悪ぞうおを見せ始めた。祖父そふはわたしがそばにると、腹立はらだたしそうにつばをはいてばかりいた。
競技者プレーヤーみん自分じぶんばんるのをたずして同時どうじあそたはむれ、えずあらそつて、針鼠はりねずみらうとしてたゝかつてゐますと、やが女王樣ぢよわうさまいたくお腹立はらだちになり、地鞴踏ぢだんだふみながら
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
腹立はらたたしいのもほかにあるけれどもそれ一場合あるばあひさるにくらしかつたり、とり腹立はらだたしかつたりするのとかはりはいので、せんずればみなをかしいばかり、矢張やつぱり噴飯材料ふきだすたねなんで
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あなたは贈物カドウをあてにしてゐたのですか、エア孃。あなたは贈物が好きですか。」そして彼は私の顏を探るやうに見た、その眼は暗く腹立はらだたしげで、突き通すやうだつた。
わし腹立はらだたせて、また罪惡ざいあくをかさせてくださるな。おゝ、はやなしゃれ。眞實しんじつわし自分じぶんよりも足下おぬし可愛いとしうおもうてゐる、わし自殺じさつをしようと覺悟かくごして此處こゝものであるにって。
天滿與力てんまよりきは、渡船とせんもどしてみたけれど、ほとんど片足かたあし餘地よちもないので、腹立はらだたし舌打したうちして、みぎはつてゐたが、やがてたかく、とらえるやうにこゑげると
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
腹立はらだたしげに、舌打したうちをしていかけると、それを持っていた三太郎猿さんたろうざるは、手をすべらして庭先にわさきやりを落としたので、十兵衛じゅうべえの方をふりかえると、ケン! と人をちゃにした奇声きせいはっしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふくんでこればかりはわたし幸福しあはせさりとて喧嘩けんくわするときもあり無理むり小言こごといはれまして腹立はらだふこともあれどあとさきもなし海鼠なまこのやうなとわらはれます此頃このごろ施療せれうひまがなうて芝居しばゐ寄席よせもとんと御無沙汰ごぶさたそのうちにおさそまをしますあにはおまへさまを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
腹立はらだつわがこころ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼女かのじょは、あれほど、まよったすえに、ようやく決心けっしんをしてきたのを、いまさら代診だいしんにみてもらうまでもないと、いくぶん腹立はらだたしくなりました。
世の中のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしはこの小娘こむすめ下品げひんかほだちをこのまなかつた。それから彼女かのぢよ服裝ふくさう不潔ふけつなのもやはり不快ふくわいだつた。最後さいごにその二とうと三とうとの區別くべつさへもわきまへない愚鈍ぐどんこころ腹立はらだたしかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おまえの腹立はらだちにすこしも無理むりはないのだから、おまえの胸はおれがよくってるから、となりの家へでもいってな、となりのおかあさんにおまえの胸をよく聞いてもらえよ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それは『不幸は單獨では來ない』といふ格言かくげんが眞理であることを證明する爲めに、そして彼等の困難に對して、愈々やつて來る迄は安心がならない腹立はらだたしい苦痛を加へる爲めに
わたしはむなしくそここことめぐって歩いて、しまいには自分に腹立はらだたしくなった。
腹立はらだたしかほをしたものや、ベソをいたものや、こはさうにおど/\したものなぞが、前後ぜんごしてぞろ/\とふねからをかあがつた。はゝかれた嬰兒あかごこゑは、ことあはれなひゞき川風かはかぜつたへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「こら、そんな、お前の口や鼻から出したものがおれに食えるか。無礼なやつだ」と、たいそうお腹立はらだちになって、いきなり剣をいて、大気都比売命おおけつひめのみことを一うちに切り殺しておしまいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
もこがすなる勿体もつたいなけれど何事なにごとまれお腹立はらだちて足踏あしぶみふつになさらずはれもらにまゐるまじねがふもつらけれど火水ひみづほどなかわろくならばなか/\に心安こゝろやすかるべしよし今日けふよりはおにもかゝらじものもいはじおさはらばそれが本望ほんまうぞとてひざにつきつめし曲尺ものさしゆるめるとともとなりこゑ
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「だめだ、こんな時計とけいは、かけだけで……。」と、正二しょうじくんは、なにかしらん腹立はらだたしくなりました。いえかえって、おかあさんにげると
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
伊弉諾命いざなぎのみことはそれをお聞きになると、たいそうお腹立はらだちになって
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
わたしは、ほこりをあびて、まっている時計とけいるたびに、なんだか、かわいそうにおもい、人間にんげんのかってままにたいして、腹立はらだたしくさえかんじました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きよは、とんまなんだよ。」といって、具合ぐあいわるいたこをってきたので、腹立はらだたしそうにこういいました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふたりは、これでは、こちらがばかにされるようながして、腹立はらだたしくなりました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はやく、れてしまえ!」と、腹立はらだちまぎれに、いったものもあります。すずめをっているおとこは、これで生活せいかつをするのか、根気こんきよく、いつまでも仕事しごとをつづけていました。
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあめはやまずに、いつまでもいつまでもるにちがいないと、一人ひとりできめて、くもったそらながら、腹立はらだたしくかんじ、あのそらかって、大砲たいほうでもってみたらと空想くうそうすることがあります。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうちゃんは、しばらく、かなしさも、腹立はらだたしさもわすれてしまいました。
少年の日二景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先生せんせいがやさしいんだ。」と、孝二こうじ腹立はらだたしげにしました。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきちは、このとき、いいれぬ腹立はらだたしさがこみげてきました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)