)” の例文
旧字:
子供こどもたちは、かってな理屈りくつをつけて、さおにさおをして、どうかしてたかえだまでとどくようにしたいと苦心くしんしていました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
レールを二本前の方にぎ足しておいて、鉄のかんに似たものを二つ棺台のはしにかけたかと思うと、いきなりがらがらという音と共に
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は巻煙草の灰をふなばたの外に落しながら、あの生稲いくいねの雨の夜の記憶を、まざまざと心に描き出しました。が、三浦はよどみなくことばいで
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ははア、それはなんでもないことじゃ。はかまぎのある者を見つけだして、それを人柱にすればよい。なんと名案であろうがな」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ぞくかみ申子もうしごよわいなどともうしますが、けっしてそのようなものではなく、この立派りっぱ成人せいじんして、父親ちちおや実家じっかあとぎました。
暖簾をはいる彼女のうしろ姿を見届けて、半七は二、三軒先の荒物屋へ寄ると、まだ若い女房が火鉢のまえでぎ物をしていた。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『しかし。』と郡視学は言葉をいで、『是方こつちから其を言出しては面白くない。町の方から言出すやうになつて来なければ面白くない。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
タネリがゆびをくわいてはだしで小屋こやを出たときタネリのおっかさんは前の草はらでかわかしたさけかわぎ合せて上着うわぎをこさえていたのです。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その男の子——兎三夫とみお君は爾来じらい、母方のせい鴨田を名乗って、途中で亡くなった母の意志をぎ、さてこんなことになったのです
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……たきつけを入れて、炭をいで、土瓶どびんを掛けて、茶盆を並べて、それから、扇子おおぎではたはたと焜炉の火口ひぐちあおぎはじめた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから、あの神のてがらを記念してやる印に、猿田彦さるたひこという名まえをおまえがいで、あの神と二人のつもりでわたしに仕えよ
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
中婆ちゅうばあが横向きに木の椅子に腰かけて、何かぎしていた。これも明るい頭巾をかぶっていた。二人ともよく肥っていた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
喜太郎が死ねば、河内屋の大身代は、叔母のお米か、お米の妹で佐久間町の丁子屋茂三郎に貰われている、お富にがせる外はなかったのです。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
不幸にもその祖父祖母の間には一人の子供も無かつたので、藤田の系統けつとうがしむる為めに、二人は他の家から養子を為なければならなかつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
筒井はたえかねて自ら裏戸に走り出て見たが、夕はもはや夜をいで道のべ裏戸近くに人かげはなく、暖かい夜の夕靄ゆうもやさえそぞろに下りていた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そんなわけで、爺は、他人よりも余計働いたにもかかわらず、親からいだ財産まで、すっかり無くしてしまった。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「暫くの仙院の塵をいで、ひとへに此の后闈こうゐの月に宿せん」と云ったあたり、此時代の文章として十分の出来である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とお父さんは鼻の上へこぶしを二つぎ足して天狗てんぐ真似まねをした。正三君はなんのことだやだらサッパリわからない。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ですが、大江匡房おおえまさふさの家書家統をいで、六韜りくとう奥義おうぎきわめられたとか。ご高名は、この地方でも隠れはありません」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに至って竜之助は女の怖るべきことを初めて悟ったかの如く、深い歎息のほかには言句ごんくげなかった有様でしたが、ややあって独言ひとりごとのように
と、それからそれへとはなしつづけていきひまい、ドクトルはみみをガンとして、心臓しんぞう鼓動こどうさえはげしくなってる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
頼朝が逝去せいきょするとともに、頼家が家督かとくを相続したが、朋党ほうとう軋轢あつれきわざわいせられて、わずかに五年にして廃せられ、いで伊豆の修禅寺しゅぜんじ刺客しかくの手にたおれた。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一挺の櫓と一枚か二枚ので、自由自在に三十六なだを突破しながら、「絶海遥かにめぐる赤間関」と来る。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
乳呑児ちのみごのまま復一を生みのこして病死した当家の両親に代って復一を育てながら家業をぐよう親類一同から指名された家来筋の若者男女だったのだから。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
池田瑞仙は自己が寛政九年正月十三日に江戸に著き、妻沢が八月六日に、養子杏春が十一月四日にいで至つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ぎはぎだらけの防水したカーキ色の上衣に、泥のなかをひきずりまわしたような布目もわからないコールテンのズボンをはき、採鉱用の鉄鎚てっついを腰にさし
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
グートいきをもかずにむと、ゴロ/\/\とのどまつたからウーム、バターリと仰向あふむけさまに顛倒ひつくりかへつてしまふ。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのうちに国王はくなり、王子が国王の位に即き、次いで自分もまた年をとって亡くなり、それから幾人いくにんもの王が代々後をいで、幾千年もたちましたが
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ぐ目的で丁稚奉公に住み込んだ身の将来これを本職にしようという覚悟かくごも自信もあったのではなかったただ春琴に忠実である余り彼女の好むところのものを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ふむ、甥っ子だが、あんでもそんな人が跡さいだと聞いたっけが、跡取ってから一度もこの別荘さ来た事がねえだ。どんな人だか、誰知るものもねえだが」
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あへて往路を俯瞰ふかんするものなし、荊棘けいきよくの中黄蜂の巣窟すうくつあり、先鋒あやまつて之をみだす、後にぐもの其襲撃しうげきを被ふるもあへて之をくるのみちなし、顔面ためれし者おう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
これが器物として利用せられたのも年久しい事であろうのに、あんな古い記録の次々とがれていたばかりに、近世になるまで依然として一種の珍奇であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
下僕や荷物を持って居る私の旅行と違い、彼らは官命を帯び二人なり三人なり早馬で夜を日にいで追蒐おっかけましょうからどうしても六日間で追付かれる勘定です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
草でも木でも最も勇敢ゆうかんに自分の子孫しそんぎ、自分の種属をやさぬことに全力をそそいでいる。だからいつまでも植物が地上に生活し、けっして絶滅ぜつめつすることがない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たった一人ひとり江戸えどうまれて江戸えどそだった吉次きちじが、ほか女形おやま尻目しりめにかけて、めきめきと売出うりだした調子ちょうしもよく、やがて二代目だいめ菊之丞きくのじょういでからは上上吉じょうじょうきち評判記ひょうばんき
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「銀子さん」と梅子は語をぎつ「其頃私は貴女あなたかつての傷心なげきに同情しましたの、何時でしたか、貴女は夜中に私の寄宿室へやいらしつておつしやつたことがありませう、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それいでは新著百種しんちよひやくしゆ末頃すゑごろ離鴛鴦はなれをしふのを書いたが、それが名を端緒たんちよであつたかと思ふ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
アルプス仕立の羽の帽子をかぶったり、ピッケルをかついだりしたのは少ないが、錫杖しゃくじょうを打ち鳴らす修験者、ぎはぎをした白衣の背におひずるをかぶせ、御中道大行大願成就
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
あひてはおもかくさるるものからにぎてまくのしききみかも 〔巻十一・二五五四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
とにかく商売だって商売道と申します。不束ふつつかながらそれだけの道は尽くしたつもりでございますが、それを信じていただけなければお話にはぎ穂の出ようがありませんです。
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「——ちゃんと、ケージのロープまで、もとのいだやつにつけ直しちゃったんだよ。」
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
と、天保五年以来このかた一度もへた事のない頭を下げると、急に忙しさうな顔をして
夏じゅう寺内のK院の古池でふなを釣って遊んだぎ竿、腰にさげるようにできたテグスや針など入れる箱——そういったものなど詰められるのを、さすがに淋しい気持で眺めやった。
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
珊瑚がいでいってみると、土の中は一めんに銭さしにさした銀貨ばかりであった。珊瑚は自分で自分の目が信じられないので、大成を呼んで一緒にいってしらべると、やはり銀貨であった。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
着物は友禅ゆうぜんメリンスを滅茶滅茶にわせた、和洋折衷わようせっちゅうの道化服、頭には、普通の顔の倍程もある、張りぼての、おどけ人形の首丈けを、スッポリかぶって、その黒い洞穴ほらあなみたいな口から
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お祖父さんの子供の頃は、親のあとをぐ気でいればよかったのじゃ。」
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
侍従長夫妻は、他に子供なく、一九二七年、同二九年相いで他界した。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
儂に代って、あの美しい夢を後の世々まで伝えて下さる人を永いこと探し求めておったのじゃ。……なよたけの話を語りぐ人は貴方なのじゃ。儂の夢をとこしえの後までも語り伝えて下され。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
それを、今夜にかぎって、平気で聞いているお勢どのの心持が解らない、と怪しんでいる間も有ればこそ、それッと炭をぐ、吹く、起こす、かんをつけるやら、なべを懸けるやら、またたく間に酒となッた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そのため夜の当直では、彼等はそろって居眠りし、一通の電報が交替の度にそのまま申しがれ、朝になっても完全な翻訳が出来ていなかったりする。その責任はすべて当直下士官にかかって来る。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)