物思ものおも)” の例文
鼻筋はなすぢ象牙彫ざうげぼりのやうにつんとしたのがなんへば強過つよすぎる……かはりには恍惚うつとりと、なに物思ものおもてい仰向あをむいた、細面ほそおも引緊ひきしまつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このはなしは、やがて、きさきのおみみにまでたっすると、きさきけても、れても、そのたま空想くうそうかんで、物思ものおもいにしずまれたのであります。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
物思ものおもがほ若者わかものえりのあたりいやりとしてハツと振拂ふりはらへば半面はんめん瓦斯燈がすとうひかり蒼白あをじろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女は、少しの間、物思ものおもはしげだつた。が、やがて身を起しながら、快活に云つた——
先のこゝろよげなる氣色けしきに引きかへて、かうべを垂れて物思ものおもひのていなりしが、やゝありて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
月兎ぐわつうさぎ時計とけいつて物思ものおもはしげにそれをながめました、それからかれはそれを茶碗ちやわんなかひたしてまたそれをてゐました、しかかれ自分じぶん最初さいしよつた『それは上等じやうとう牛酪バターでした』と言葉ことばよりほかなに
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此時このときロミオ物思ものおもがほにて一ぱうる。
うなだれて物思ものおもひ立てる
秋の一夕 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
物思ものおもはするはなをぐさ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
すると、つきは、物思ものおもがおに、じっと自分じぶんていたが、そのまま、くろくものうしろにかくれてしまったことをあざらしはおもしたのであります。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
御内端おうちばすぎてのお物思ものおもひくよ/\ばかあそばせばこそ昨日今日きのふけふ御顏色おいろもわるし御病おわづらひでもあそばしたら御兩親をふたかたさまはさらなることなりまをすも慮外りよぐわいながらいもとおもふぞとての御慈愛じあい姉上あねうへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「忍ぶれど色ににけり我恋は」と謂ひしはすゐなる物思ものおもひ、予はまた野暮なる物思ものおもひに臆病の色に出でてあをくなりつゝむすぼれかへるを、物や思ふと松川はじめ通学生等に問はるゝたび
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
学者がくしゃは、しばらくたたずんで、むかし、このてらうつくしいあまさんが、夜々よるよるそらあおいで、つきひかりに、くも姿すがたに、物思ものおもいにしずんだ姿すがた想像そうぞうしたのであります。
三つのかぎ (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんこゝろなにもぼうつとして物思ものおもひのないところかれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、面白おもしろくない、なさけないかなしい心細こゝろぼそなかに、何時いつまでわたしめられてるのかしら、これが一せうか、一せうがこれか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのあとで、うつくしいちょうは、ひと物思ものおもいにしずみました。ちょうは、人間にんげんつくったまちにいってみたくなったのです。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はらわたえざらんぎりなきこゝろのみだれ忍艸しのぶぐさ小紋こもんのなへたるきぬきてうすくれなゐのしごきおび前に結びたる姿(すが)たいま幾日いくひらるべきものぞ年頃としごろ日頃ひごろ片時かたときはなるゝひまなくむつひしうちになどそここゝろれざりけんちいさきむね今日けふまでの物思ものおもひはそも幾何いくばく昨日きのふ夕暮ゆふぐれふくなみだながらかたるを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にんまえには、さびれていく田園でんえん景色けしきがしみじみとながめられたのです。年上としうえ子供こどもは、くろひとみをこらして、遠方えんぽうをじっと物思ものおもわしげにつめていました。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なににつけてもしのばるゝはまたひとことなりしがおもひきやじようさま明日今日きのふけふのお物思ものおもいのちにかけておしたひなさるゝぬしはとへば杉原すぎはららうどのとや三輪みわ山本やまもとしるしはけれどたづぬるひとぞとかなしさ御存ごぞんければこそ召使めしつかひのれふしをがみてのおたのぢやうさま不憫いとしやとおもはぬならねどひとなんとして取持とりもたるべき受合うけあひては
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「これからどこへいくのですか。」と、つきはたずねました。はこは、だまって、物思ものおもいにしずんでいましたが
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
秀吉ひできちは、両手りょうてあたまうえんで、ぼんやりと、遠方えんぽうをながめながら、物思ものおもいにしずんでいました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
毎日まいにちのように、あか姫君ひめぎみは、ぼんやりととおくのそらをながめて、物思ものおもいにしずんでいられました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょう長吉ちょうきち学校がっこうからかえると、自分じぶんのへやにはいってつくえまえにすわって物思ものおもいにしずんでいました。そとゆきれていて、子供こどもらがみんなさもうれしそうにしてあそんでいる、そのこえこえてきます。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
物思ものおもいにふけっていられました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)