トップ
>
恨
>
うら
ふりがな文庫
“
恨
(
うら
)” の例文
女神は、その岩にさえぎられて、それより先へは一足も
踏
(
ふ
)
み出すことができないものですから、
恨
(
うら
)
めしそうに岩をにらみつけながら
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
日頃
恨
(
うら
)
んでいたおせいが、この上二重三重の不倫を犯したとしても、まだおつりが来る程有難く、かたじけなく思われたに相違ない。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この冷やかな調子と、等しく冷やかな反問とが、登場の第一歩においてすでにお延の意気込を
恨
(
うら
)
めしく
摧
(
くじ
)
いた。彼女の予期は
外
(
はず
)
れた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
格別に受居しこと成れば
勿々
(
なか/\
)
以て
意趣
(
いしゆ
)
意恨
(
いこん
)
など有べき樣御座なく候により私しに於て
更々
(
さら/\
)
恨
(
うら
)
みとは存じ申さず候
就
(
つい
)
ては格別の御
慈悲
(
じひ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
つまり光子さんにはそういう
恨
(
うら
)
みあるとこいさして、市会議員に頼まれたもんですから、どんな
悪辣
(
あくらつ
)
なことかてしかねへんのです。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
先刻、今井田が来ていたときに、お母さんを、こっそり
恨
(
うら
)
んだことを、恥ずかしく思う。ごめんなさい、と口の中で小さく言ってみる。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その返事は極めて尋常に極めておとなしく書いたのであつたが何分それでは物足りないやうに思ふてまた終りに
恨
(
うら
)
みの言葉を書きて
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
たしか
左樣
(
さう
)
と
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
りまするけれど
今
(
いま
)
は
少
(
すこ
)
しも
恨
(
うら
)
む
事
(
こと
)
をいたしません、なるほど
此話
(
このはな
)
しを
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さらぬが
旦那樣
(
だんなさま
)
の
價値
(
しんしやう
)
で
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ひきおこすから困る。雨の日など、
折角
(
せっかく
)
ターキーが送ったブロマイドが泥だらけじゃ、申訳ない。若い女の子に
恨
(
うら
)
まれては、ワシャ
辛
(
つら
)
い。
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
その時私は妹が私を
恨
(
うら
)
んでいるのだなと気がついて、それは無理のないことだと思うと、この上なく
淋
(
さび
)
しい気持ちになりました。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
平凡な言葉にかえって無限の
恨
(
うら
)
みがこもっている。きのうの日暮れまで働いていた人が、その夜の明け明けにもはや命が消える。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
追憶
(
つゐおく
)
に
堪
(
た
)
へなくなつてはお
品
(
しな
)
の
墓塋
(
はか
)
に
泣
(
な
)
いた。
彼
(
かれ
)
は
紙
(
かみ
)
が
雨
(
あめ
)
に
溶
(
と
)
けてだらりとこけた
白張提灯
(
しらはりちやうちん
)
を
恨
(
うら
)
めし
相
(
さう
)
に
見
(
み
)
るのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
土地に
馴染
(
なじみ
)
があるわけではなし、仕舞には、医者どのさえ診に来てくれはしなくなった。
恨
(
うら
)
めた身ではねえ、喧嘩にもならねえ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
誰
(
だれ
)
が
戦争
(
せんそう
)
で
儲
(
まう
)
け、
誰
(
だれ
)
が
何
(
なん
)
の
恨
(
うら
)
みもない
俺達
(
おれたち
)
に
殺
(
ころ
)
し
合
(
あ
)
ひをさせるか、
誰
(
だれ
)
が
死
(
し
)
を
賭
(
と
)
して
俺達
(
おれたち
)
のために
闘
(
たたか
)
ひ、
何
(
なに
)
が
俺達
(
おれたち
)
を
解放
(
かいほう
)
するかを
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
今となつてみると、新雪の輝やく富士山がよく見えぬからと言つて、
出洒張
(
でしやば
)
つた杉木立の梢を
恨
(
うら
)
んだのは、
勿体
(
もつたい
)
ない気がする。
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
無論、寄手のうちに交っている切支丹宗門の者や徳川幕府に
恨
(
うら
)
みを含んでいる者は、一揆の長く持ち堪えることを望んでいたかも知れない。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「うん。
尤
(
もっとも
)
じゃ。なれども他人は
恨
(
うら
)
むものではないぞよ。みな
自
(
みずか
)
らがもとなのじゃ。恨みの心は
修羅
(
しゅら
)
となる。かけても他人は恨むでない。」
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
わが御主君たるゆえに、非には目をふさぎ、理には事を曲げて、
強
(
し
)
いて
忿怒
(
ふんぬ
)
の言を
弄
(
ろう
)
し、信長公を故なく
恨
(
うら
)
む仔細では断じてございませぬ。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『僕も不幸にして郡視学を叔父に持たなかつた』とかなんとか言ひたい放題なことを書き散らし、普通教育者の身を
恨
(
うら
)
み
罵
(
のゝし
)
り
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
良心の
苛責
(
かしゃく
)
になやまされるわけだが、何十分の一ぐらいの責任しかないのだから、あまり
恨
(
うら
)
むな怒るなと
了解
(
りょうかい
)
を求めている。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
本懐! ……貴殿にとっては拙者は、父の敵でござろうが、拙者にとっても貴殿は、父の敵の
嫡宗
(
ちゃくそう
)
、
恨
(
うら
)
みがござる! 果たし合いましょうぞ!
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万象眠る夜の床 人に
逐
(
お
)
はれし人の子の 天地を
恨
(
うら
)
む力さへ 涙と共に
涸
(
か
)
れはてて
空
(
むなし
)
く急ぐ滅亡を 如何に見玉ふ我神よ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
山谷が驚いて豹一の顔を見ると、怖いほど
蒼白
(
あおじろ
)
み、唇に血がにじんでいた。子供に
似合
(
にあ
)
わぬ
恨
(
うら
)
みの眼がぎらぎらしていた。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ときどきは
鬱々
(
うつうつ
)
として生命を封付けられる
恨
(
うら
)
みがましい生ものの
気配
(
けは
)
いが、この半分
古菰
(
ふるこも
)
を冠った池の方に立ち
燻
(
くすべ
)
るように感じたこともあるが
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そのとき、
子供
(
こども
)
らは
恨
(
うら
)
めしそうに、こちらを
見
(
み
)
たが、いずれも
顔色
(
かおいろ
)
は
青
(
あお
)
く、
手足
(
てあし
)
がやせて、
草履
(
ぞうり
)
を
引
(
ひ
)
きずって
歩
(
ある
)
くのも
物憂
(
ものう
)
そうなようすであった。
子供は悲しみを知らず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
元来平和な白は、
卿
(
おまえ
)
が意地悪だからと云わんばかり
恨
(
うら
)
めしげな情なげな泣き声をあげて、黒と共に天狗犬に向うて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
つりこまれて一緒に笑い出した友だちが、しまいにはおなかを痛くして、わけもなしに
肚
(
はら
)
を立てて、こう
恨
(
うら
)
みがましく福子を責めることさえあった。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
金蔵は、いちずに何をか
怨
(
うら
)
み
恨
(
うら
)
んで鉄砲を習い出したが、今が今、その
企
(
くわだ
)
ての
怖
(
おそ
)
ろしさに我と慄えてしまったのです。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼が罪なくて牢獄の人となった時には
勿論
(
もちろん
)
人を
恨
(
うら
)
まなかった、弟子などが
集
(
あつま
)
って来て、
頻
(
しき
)
りに弁護せよ弁護せよと勧告するけれど
断乎
(
だんこ
)
として
肯
(
うけが
)
わない。
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
は
其
(
そ
)
の
後姿
(
うしろすがた
)
を
見送
(
みおく
)
ると
又
(
また
)
更
(
さら
)
に
恨
(
うら
)
めしいあの車を
見送
(
みおく
)
つた時の一
刹那
(
せつな
)
を
思起
(
おもひおこ
)
すので、もう
何
(
なん
)
としても
我慢
(
がまん
)
が
出来
(
でき
)
ぬといふやうにベンチから
立上
(
たちあが
)
つた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
といいざまヒュウ/\と続け
打
(
う
)
ちに十二三も
打
(
う
)
ちのめせば、孝助はヒイ/\と叫びながら、ころ/\と
転
(
ころ
)
げ𢌞り、さも
恨
(
うら
)
めしげに源次郎の顔を
睨
(
にら
)
む所を
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かれらはいいつけられて
為朝
(
ためとも
)
を
討
(
う
)
ちに
来
(
き
)
たというだけで、もとよりおれにはあだも
恨
(
うら
)
みもない
者
(
もの
)
どもだ。そんなものの
命
(
いのち
)
をこの上むだにとるには
忍
(
しの
)
びない。
鎮西八郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
その眼は情熱に輝きみちみち、その唇は何とも形容の出来ない
恨
(
うら
)
みに固く
鎖
(
とざ
)
されて、その撫で上げた前髪の
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
には汗の玉が
鈴生
(
すずな
)
りに並んで光っていた。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
思えば、名あるお武家さまを
縁者
(
えんじゃ
)
に持ちたいなどと大それた望みを起したお父つぁんやお
母
(
っか
)
さんが
恨
(
うら
)
めしい。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
どうか
恨
(
うら
)
みを返してやりたい、——わたしは日毎に
痩
(
や
)
せ細りながら、その事ばかりを考えていました。するとある夜わたしの心に、突然
閃
(
ひらめ
)
いた一策があります。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唐
(
たう
)
の
秦韜玉
(
しんたうぎよく
)
が
村女
(
そんぢよ
)
の
詩
(
し
)
に、
最
(
もつとも
)
恨
(
うら
)
むは
年々
(
ねん/\
)
金線
(
きんせん
)
を
圧
(
つくらふ
)
て
他人
(
たにん
)
の
為
(
ため
)
に
嫁
(
よめいり
)
の
衣装
(
いしやう
)
を
作
(
つく
)
るといひしは
宜
(
むべ
)
なる
哉々々
(
かな/\/\
)
。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
世を
恨
(
うら
)
む、人間五常の道乱れて、
黒白
(
あやめ
)
も分かず、日を
蔽
(
おお
)
い、月を塗る……魔道の
呪詛
(
のろい
)
じゃ、何と! 魔の呪詛を見せますのじゃ、そこをよう見さっしゃるが
可
(
い
)
い。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とさも
恨
(
うら
)
めしそうに、しかも少しそうはさせませぬという
圧制
(
あっせい
)
の意の
籠
(
こも
)
ったような
語
(
ことば
)
の調子で言った。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
勿体
(
もったい
)
ねえから中央気象台にも教えてやろうか! と思わぬでもなかったが、いつかウソを
吐
(
つ
)
いて、私を
逗子
(
ずし
)
で
酷
(
ひで
)
え目に遭わせた
恨
(
うら
)
みがあるから、止めにしてくれた。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
わしの父、父の父、またわしのあずかり知らない他人、その祖先、無数の人々の結んだ
恨
(
うら
)
みが一団になって渦巻いている。わしはその中に
遊泳
(
ゆうえい
)
しているにすぎない。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
わたしばかりがあなたを恋している、あなたがわたしを恋するというのは口先の気休めに過ぎぬという
大伴坂上郎女
(
おおとものさかのうえのいらつめ
)
の
恨
(
うら
)
みも、そこから解せられなくてはなるまい。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
女の目に涙の
滴
(
しずく
)
が宿りました。女の目に涙の宿ったのは始めてのことでした。女の顔にはもはや怒りは消えていました。つれなさを
恨
(
うら
)
む切なさのみが
溢
(
あふ
)
れていました。
桜の森の満開の下
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そうしたとき母は従順に父の衣類を壁の釘に掛けたりなんかしていたが、
袂
(
たもと
)
の中からお菓子の
空袋
(
からぶくろ
)
や
蜜柑
(
みかん
)
の皮などを取り出して、
恨
(
うら
)
めしそうに眺めながら言うのだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
けっして品物の
安否
(
あんぴ
)
を無視したわけではないが、結果から見て、その行為は品物の安否を無視したことになり、所有者の
恨
(
うら
)
みを買いこそすれ、感謝されはしないであろう。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
みだりにこれを
譴責
(
けんせき
)
し、
甚
(
はなはだ
)
しきは師友を
恨
(
うら
)
むるの
輩
(
やから
)
少からず、迷えるの
甚
(
はなはだ
)
しきにあらずや。
教育談
(新字新仮名)
/
箕作秋坪
(著)
樹の鳴る音、枝の
撓
(
たわ
)
む音、葉の触れ合ふ音、あらゆる世の中の
雑音
(
ざふおん
)
、悲しいとか
佗
(
わび
)
しいとか
辛
(
つら
)
いとか
恨
(
うら
)
めしいとかいふ音が一斉に其処に集つてやつて来たやうにかれは感じた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
宿屋の一室に
端座
(
たんざ
)
し、過去を思い、現在を
慮
(
おもんばか
)
りて、深き憂いに沈み、婦女の身の
最
(
い
)
とど
果敢
(
はか
)
なきを感じて、つまらぬ
愚痴
(
ぐち
)
に同志を
恨
(
うら
)
むの念も起りたりしが、
復
(
ま
)
た思いかえして
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「藤原
宿奈麿
(
すくなまろ
)
朝臣の妻、石川
女郎
(
いらつめ
)
愛薄らぎ離別せられ、悲しみ
恨
(
うら
)
みて作れる歌年月いまだ
詳
(
つまびらか
)
ならず」という左注のある歌である。宿奈麿は
宇合
(
うまかい
)
の第二子、後内大臣まで進んだ。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
半狂亂の母親を相手に、
呪
(
のろ
)
ひと
恨
(
うら
)
みの數々を聞かされるのは、とても我慢が出來ません。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
... 許してくれ給え。お登和さんの御馳走で
食傷
(
しょくしょう
)
してもサラサラ
恨
(
うら
)
みと思わんからね」中川
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
“恨”の解説
恨(ハン)は、朝鮮文化においての思考様式の一つで、感情的なしこりや、痛恨、悲哀、無常観をさす朝鮮語の概念。歴史学者の古田博司は朝鮮文化における恨を「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」と説明している。
(出典:Wikipedia)
恨
常用漢字
中学
部首:⼼
9画
“恨”を含む語句
怨恨
御恨
悔恨
長恨歌
遺恨
逆恨
痛恨
憤恨
意趣遺恨
意恨
多恨
此恨
可恨
恨事
忿恨
恨気
万恨
慙恨
此遺恨
秋恨
...