幾本いくほん)” の例文
あおい、うつくしいそらしたに、くろけむりがる、煙突えんとつ幾本いくほんった工場こうじょうがありました。その工場こうじょうなかでは、あめチョコを製造せいぞうしていました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
せきの水は濁って大へんに増し、幾本いくほんものたでやつゆくさは、すっかり水の中になりました。飛びむのは一寸ちょっとこわいくらいです。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いづれも古い家屋かをくばかりで、此処こゝらあたりの田舎町の特色がよく出てた。町の中央に、芝居小屋があつて、青い白いのぼり幾本いくほんとなく風にヒラヒラしてた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
これよりはわが大日本帝國だいにつぽんていこく領地りようちであること表示ひやうしするために、幾本いくほん日章旗につしようき海岸かいがんひるがへしていても、一朝いつてう此處こゝ立去たちさつたあとことは、すくなからず氣遣きづかはれるのである。
屋根にはイルミネーションがつき、前面には金銀のまくが下がり、幾本いくほんものはたがにぎやかに立ちならび、すべて新吉の町につくったものと少しもわりませんでした。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
石畳の上は、あわい燈のあかりでぬるぬる光っていた。温い夜風が、皆の裾を吹いて行く。井戸の中には、幾本いくほんも縄がさがって「ううん、ううん」うなり声が湧いていた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ことよるであつた。むかしんだいへ一寸ちよつと見富けんたうかない。さうだらう兩側りやうがはとも生垣いけがきつゞきで、わたしうちなどは、木戸内きどうち空地あきち井戸ゐどりまいてすもゝ幾本いくほんしげつてた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をちのやなぎといふのも、はっきりと、何本なんぼんあるとも、どのくらゐ距離きよりにあるともいはれないで、まづほのかないろあひで、幾本いくほんならんでゐるといふかんじをおこさせるためなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
まつみきめたやうあかいのが、かへして幾本いくほんとなくなら風情ふぜいたのしんだ。あるとき大悲閣だいひかくのぼつて、即非そくひがくした仰向あふむきながら、谷底たにそこながれくだおといた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其処そこには静脈と動脈の血管が幾本いくほんあつまっていて肺臓も腎臓じんぞうも顔を出しているしことに動脈管は下の睾を連結しているからサア何処どこをどう破っていいかそれが一番むずかしい。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
日曜には次郎もかかさず朝倉先生といっしょに下赤塚の駅におりたが、そのたびごとに、かれは、建物の位置とにらみあわせて、つつじその他の小さな樹木を幾本いくほんかずつ植えかえた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すぐうしろの寺の門の屋根やねにはすゞめつばめが絶えなくさへづつてゐるので、其処此処そここゝ製造場せいざうば烟出けむだしが幾本いくほんも立つてゐるにかゝはらず、市街まちからは遠い春の午後ひるすぎ長閑のどけさは充分に心持こゝろもちよくあぢははれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
クリスマスのころになると、ずいぶん若い木が、幾本いくほんも切りたおされました。
これから案内あんないれてき、はしわたると葭簀張よしずばり腰掛こしか茶屋ぢやゝで、おく住居すまゐになつてり、戸棚とだなみつつばかりり、たないくつもりまして、葡萄酒ぶだうしゆ、ラムネ、麦酒ビールなどのびん幾本いくほんも並んで
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
幾本いくほんとなく並んだ松と松との間はせまい。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
はしって、わたしは、ぜんちゃんのいるところへもどりました。しょうちゃんも、幾本いくほんとなくにぎって、かたきうちをしようと、いさんでけてきました。
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ジョバンニは、いつか町はずれのポプラの木が幾本いくほん幾本いくほんも、高く星ぞらにかんでいるところに来ていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、このものには、幾本いくほんあしがあって、それがへびのように、電信柱でんしんばしら街灯がいとうはしらに、まきついて、つめからがしたたっている。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
ジョバンニは、いつか町はずれのポプラの木が幾本いくほんも幾本も、高く星ぞらにうかんでいるところに来ていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いい音楽おんがくこえてくる坂道さかみちを、あかぼうをのせてのぼると、そこにはさくら幾本いくほんもあって、みごとにはないていました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの、黒い山がむくむくかさなり、そのむこうにはさだめない雲がけ、たにの水は風よりかる幾本いくほんの木はけわしいがけからからだをげて空にむかう、あの景色が石の滑らかなめんに描いてあるのか。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ある太郎たろうは、野原のはらへいってみますと、ゆきえたあとに、土筆つくしがすいすいと幾本いくほんとなくあたまをのばしていました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人がその白い道を、かたをならべて行きますと、二人の影は、ちょうど四方に窓のあるへやの中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪ののように幾本いくほんも幾本も四方へ出るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「だって、かえっておいでなさるかもしれないわ。わたしは、おとっさんが見当けんとうのつくように、ろうそくのともしてあげるわ。」と、むすめはいって、まどぎわに幾本いくほんとなく
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりがその白い道を、かたをならべて行きますと、二人ふたりかげは、ちょうど四方にまどのあるへやの中の、二本のはしらかげのように、また二つの車輪しゃりんのように幾本いくほん幾本いくほんも四方へ出るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おまえは、毎日まいにち出歩であるくことがきだから、このむらはずれから十あちらのまちるまで、電信柱でんしんばしらかず幾本いくほんあるか、かぞえてみれ。それをてたら財産ざいさんけてやる。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
この山吹やまぶきもとには、あたらしいが、幾本いくほんつちやぶってあたましていました。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また幾本いくほんとなく起重機きじゅうきのそびえたつ、おおきな鉄工場てっこうじょうあらわれるのでした。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
年郎としろうくんと、吉雄よしおくんは、ある学校がっこうかえりにおともだちのところへあそびにゆきました。そのおうちには、一ぽんおおきないちじゅくのがあって、そのえだしてつくった苗木なえぎが、幾本いくほんもありました。
いちじゅくの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)