あめ)” の例文
「なれど今『あんちおきや』の帝は、あめが下に並びない大剛の大将と承つた。されば悪魔ぢやぼも帝の御身には、一指をだに加へまじい。」
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、俺たちのす処は、退いて見ると、如法にょほうこれ下女下男の所為しょいだ。あめが下に何と烏ともあろうものが、大分権式を落すわけだな。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここにあめ佐具賣さぐめ一三、この鳥の言ふことを聞きて、天若日子に語りて、「この鳥はその鳴くこゑいと惡し。かれみづから射たまへ」
重仁五八国しらすべき才あり。雅仁何らのうつは物ぞ。人の徳をえらばずも、あめしたの事を五九後宮こうきゆうにかたらひ給ふは父帝ちちみかどの罪なりし。
あめ鈿女うずめすなわちその胸乳むなちを露わし裳帯もひもを臍の下に抑えて向い立つと、さしもの高鼻たちまち参ったと『日本紀』二の巻に出づ。
一世の崇仰すうぎょうを得たことは勿論であって、後にはあめが下を殆どおのが心のままにしたようにわれ、おのれも寛仁の二年の冬には
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「……とすれば、い女などは、あめした、二人に限ったものではない。またさほど、女ひでりにかわいている道誉でもなかろうが」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真率なる快活なる宗近家の大和尚だいおしょうは、かく物騒な女があめしたに生をけて、しきりに鍋の底をき廻しているとは思いも寄らぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
湊合そうがふがなんだ。あめしたに新しい事は決してない。ふん。己の前にあるやうな永遠が己の背後にもあるといふことは、己もたしかに知つてゐる。
……ところで婆さんは、やっぱり虫が知らせたのか、婚礼が済んで三日目に、そこには病気も歎きもないあめなるエルサレムへ旅立ちました。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
やはりあめしたに新しいものは一つもないと思ってひとりで感心して帰って来たのであった。(昭和九年六月『中央公論』)
女神は、命のあまりの乱暴さにとうとういたたまれなくおなりになって、あめ岩屋いわやという石室いしむろの中へおかくれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
さらに同書によれば命は『天地あめつちの初りの後、あめ御領田みしらたおさ供奉つかえたてまつりき』とあるので、農耕に親しまれた事も判然する。
ははははは、あめしたに屋根のない気楽な身分。わしに用のある時は、この首尾の松の下へ来て、川へ石を——さようさ三つほうることに決めよう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あゝわが血族うからよ、あゝ上より注がれし神の恩惠めぐみよ、汝の外誰の爲にかあめの戸の二たび開かれしことやある。 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
『直毘の霊』の中にはまた、中世以来の政治、あめしたの御制度が漢意からごころの移ったもので、この国の青人草あおひとぐさの心までもそのこころに移ったと嘆き悲しんである。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
中臣の遠祖が、あめノ二上に求めた天ノ八井やゐの水は、峰を流れ降つて、此岩にあたつてたぎち流れる川なのであらう。姫は瀬音のする方に向いてたなそこを合せた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
風速かざはやの三浦廻うらみ、貝島のこの高殿は、あめなるや不二をふりさけ、清見潟満干みちひの潮に、朝日さし夕日照りそふ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉だすき 畝火うねびの山の 橿原かしはらの 日知ひじりの御代みよゆ あれましし 神のことごと つがの木の いやつぎつぎに あめの下 知ろしめししを そらみつ やまとを
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
よいはさつさ——あめの岩戸も押開く、神の社に松すゑて、すは三尺のつるぎをぬいて、神代かみよすすめて獅子ししをどり……
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むかし三保松原みほのまつばら伯良はくりやうといふ漁夫れふしがゐました。松原によく天人が遊びに降りてくるのを見て、或日あるひその一人のあめの羽衣を脱いであつたのをそつと隠しました。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
もし夫唱婦和が人の本性ほんしょうに基いたものであるなら、諾冊二尊だくさつにそんあめ御柱みはしらの廻り直しもなさらないでしょうし
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
老女はあめの下の奇しき事どもを多く知れるものにて、世には法皇の府の僧官カルヂナアレ達も及ばざること遠しとぞいふ。
淡紅色ときいろ薔薇ばらの花、亂心地みだれごゝち少女をとめにみたてる淡紅色ときいろ薔薇ばらの花、綿紗モスリンうはぎとも、あめの使ともみえるこしらへもののそのはねを廣げてごらん、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あめしたの田をことごとく公田とする原則は久しく動かなかったけれども、それとても制定の始めがあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「今は急速に兵を挙げ、一挙に六波羅を討伐し、探題北条範貞のりさだを誅し、宮方の堅き決心のほどを、あめが下に知らしめますること、何より肝要かと存ぜられまする」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『こはうつゝとも覺え候はぬものかな。扨も屋島をば何としてのがれ出でさせ給ひけん。當今あめが下は源氏のせいちぬるに、そも何地いづちを指しての御旅路おんたびぢにて候やらん』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
けどけどはぬいもゆゑひさかたのあめ露霜つゆじもれにけるかも 〔巻十一・二三九五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
とかのぞたまふらんそはまた道理だうりなり君様きみさまつまばれんひと姿すがたあめしたつくして糸竹いとたけ文芸ぶんげいそなはりたるを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まことこのみな聖人せいじんなるも、えきしてわたくのごとひくきことあたはず。すなは(一〇〇)能仕のうしづるところあらず。そう富人ふうじんあり、あめりてかきやぶる。
少納言に式部の才なしといふべからず、式部が徳は少納言にまさりたる事もとよりなれど、さりとて少納言をおとしめるはあやまれり、式部はあめつちのいとしごにて
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
すべての木の葉の中で、あめが下の王妃きさいの君とも称ふべき公孫樹いてふの葉、——新山堂の境内のあまそそ母樹ははぎの枝から、星の降る夜の夜心に、ひらり/\と舞ひ離れて来たものであらう。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
情緒の輝やきに充ちてゐる自由な川波に乗つて、何千尺の高さから、大洋の水平線まで、一息に下り切るといふことが、「船さして雲のみを行く心地しぬ、名も恐ろしきあめの中川」
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
第一枚は、青年文士が真青な顔して首うなだれて合掌がっしょうして坐つて居る。その後には肩に羽のある神様があめ瓊矛ぬぼことでもいひさうな剣をげて立つて居る。神様は次の如く宣告する。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「日本書紀」には、「伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉冉尊いざなみのみこと、天の浮橋の上に立たして、共に計りて、底つ下に国や無からんとのり給ひて、すなはあめ瓊矛ぬぼこを指しおろして、滄海を探ぐりしかばここに獲き。 ...
日本天変地異記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
曲芸師——予言者——生花の先生——釣魚家ちょうぎょか——コルネット吹き——映画の監督——発明家——陸軍砲兵少佐——油断のならぬ間諜……と、あめが下にありとある名流を一手に引き受け
いなばの兎の話、鯛の喉から釣り針を取る海神わたつみの宮の話、藤葛ふじかずら衣褌きぬはかまや弓矢に花の咲く春山霞男はるやまのかすみおとこの話、玉が女に化するあめ日矛ひぼこの話、——これらを我々はお伽噺と呼び得ぬであろうか。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
私ア何も知んねえ在郷ざいごもんで、何の弁別わきめえも有りやしねえが、村の神主さまのお説教を聴きにくと、人はあめが下の霊物みたまもので、万物の長だ、是れよりとうといものは無い、有情物いきあるもの主宰つかさだてえから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余の位置は可憐の婦女子がその頼みに頼みし良人おっと貞操みさおを立てんがためしきりに良人を頌揚ほめあげたるのちある差少の誤解よりこの最愛の良人に離縁されし時のごとく、あめしたには身を隠すに家なく
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
三に曰く、みことのりを承はりては必ず謹め、きみをば則ちあめとす。やつこらをば則ちつちとす。天おほひ地載せて、四時よつのときめぐり行き、万気よろづのしるし通ふことを得。地、天を覆はむとるときは、則ちやぶるることを致さむのみ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
二郎が深き悲しみは貴嬢きみがしきりに言い立てたもう理由ことわりのいかんによらで、貴嬢が心にたたえたまいし愛の泉のれし事実の故のみ。この事実は人知れずあめが下にて行なわれしおごそかなる事実なり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
逆臣ぎゃくしん尊氏たかうじめられて、あめした御衣ぎょい御袖おんそでかわく間もおわさぬのじゃ」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ゆふばえやくれなゐにほいむら山にあめの火が書く君得しわが名
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
つめたげのまなこ百千ももちは地にあれ愛にわが足るあめの星星
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
歓喜天そらやよぎりし、 そが青きあめの窓より
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あめにます豊岡とよをか姫の宮人もわが志すしめを忘るな
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
まばゆきけふぞあめにて解き知るなる、——
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あめを衝く立樹にすがるつたかつら
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ひかりや、あめなるうまざし、——
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あめの世に拍手はで打つもす
焔の后 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)