つか)” の例文
そして後ではたまらない淋しさに襲われるのを知りぬいていながら、激しい言葉をつかったり、厳しい折檻せっかんをお前たちに加えたりした。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「御父さまはきっと私達わたしたちが要らない贅沢ぜいたくをして、むやみに御金をぱっぱっとつかうようにでも思っていらっしゃるのよ。きっとそうよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先年せんねん自分じぶんに下されしなり大切の品なれども其方そのはうねがひ點止もだし難ければつかはすなりと御墨付おんすみつきを添てくだんの短刀をぞたまはりける其お墨付すみつきには
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それではたねあかしの手品てじな同樣どうやうなぐさみになりません、おねがひまをしましたのはこゝこと御新造樣ごしんぞさまひとうぞなんでもおをしへなさつてつかはさりまし。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
飯綱の本尊は陀祇尼天だきにてんということであるが、その修験者は稲荷いなりとも関係があって、よく狐をつかって法術を行うということであります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ひそめ、こんどは体でもわるくせねばよいがと案じていたが、それくらいな望みなれば、かなえてつかわしてもさしつかえないではないか
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そもじ事はいとけなき折より心得よろしきものとおもい、一しお親しく思いしが、このほど御文拝しいらざる事まで申つかわし候なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼女は「だいなし」ということば無暗むやみつかう癖があった。ややもすると「だいなしにあつい」とか、「だいなしに遅くなった」とかいった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これからわしもうすところをきいて、十ぶん修行しゅぎょうまねばならぬ。わし産土うぶすなかみからつかわされたそち指導者しどうしゃである、ともうしきかされた。
ストラボンの説に昔マヨルカとミノルカ諸島の民熟兎過殖ふえすぎて食物をい尽くされローマに使をつかわし新地を給い移住せんと請うた事あり
おうさまは、おんないているのをて、家来けらいつかわして、そのいている理由いわれをたずねられました。いもうとは、一始終しじゅうのことを物語ものがたりました。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かうして津下にばかり金をつかはせては気の毒だ。軍資を募るには手段がある。我々も人真似に守銭奴をおどして見ようではないかと云つた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この八月はちがつ十五日じゆうごにちにはてんからむかへのものるとまをしてをりますが、そのときには人數にんずをおつかはしになつて、つきみやこ人々ひと/″\つかまへてくださいませ
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
此方から参ったのは剣術つかいのお弟子と見えてやっこじゃの傘をさして来ましたが、其の頃町人と見るとひどい目に合わせます者で
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天つ神の御子、こよ奧つ方にな入りたまひそ。荒ぶる神いとさはにあり。今天より八咫烏やたがらすつかはさむ。かれその八咫烏導きなむ。
隅の方で時折大きく団扇うちわつかう音がする。専務車掌がよろめきながら、荷物を並べた狭い通路を歩きくそうに通って行った。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
さりながら慈悲深き弥陀尊みだそんはそのままには置き給わず、日影の東に回るや否、情ある佐太郎をつかわし給えり、彼はうり茄子なす南瓜かぼちゃ大角豆ささげ
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
「乱暴してはいけない、——私は右京亮さまからつかわされた上使だ」代二郎が云った、「——どうか除村にそう取次いでくれ」
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さっそく御殿ごてんにお召使めしつかいになるおつもりで、皇子の大碓命おおうすのみことにお言いつけになって、二人をしのぼせにおつかわしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
一人の弟のことなればと、苦き顔もせで兄はいふまままた十万を与へしに、またそれをさへつかひ果して、例の通りに無心に来ること前の如し。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「これこそあ、耕平の野郎の、代金しろきんだぞ。無暗なことにあつかわれねえぞ。この金は、金として、取って置かなくちゃ。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
さてまた此大したお金を何ぞいことにつかたいと思ふにつけ、さき/\のかんがへが胸のうちに浮んで来ましたが、いづれも夢か幻のやうくうな考へでした。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
○これからは、作ができてから、つかうものなら遣ってもらうようにしたいと思う。とうからもそう思っていたが、このごろは特にその感が深い。
校正後に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
暮につか煤掃すすはきの煤取りから、正月飾る鏡餅かがみもちのお三方さんぼうまで一度に買い調えなきゃならないというものじゃなし、おへッついを据えて、長火鉢を置いて
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
もっともいけないのは、この神が不誠実にも、予言者をつかわして人々を盲目にすることだ。それも彼らを苦しませるための理由を得るためにだ。
そういう風にして三人なりあるいは六人なりの人をつかわして版を刷らせるのですが、版摺はんずりは大抵二人で一人は刷り上げたのをまとめる役目である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
最初の金子かねは雑誌の費用につかつて仕舞しまつたので、其れと感いた妹は又一年程ののちに二度目の五十円を送つて呉れたが
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
伯父おじのへそくりを盗み出した十万円は、二十日間の旅でつかいはたした。ポケットには、かろうじて今夜の宿賃に足りるほどの金が残っているばかりだ。
女妖:01 前篇 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところで、申すまでもなく、そこらに抜かりはありますまいが、吉良さまのほうへ、いくらかおつかわしになった——。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
藤田重右衛門と言ふのは、昔は村でも中々の家柄で祖父の代までは田の十町も所有して、小作人の七八人もつかつた事のある身分だといふことである。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
米国のはいになり米国の土になった彼女は、しんに日本が米国につかわした無位無官の本当の平和の使者つかいの一人であったと。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
紀州につかわされました方々が、天一坊が偽者であるという証拠を得られずに却ってほんものであるという証拠を伝えて参りました時の御奉行様の御失望
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
これも同じ頃に信州中野の人がお犬さまを借りて急いで帰る途中、ふと彼のいましめを忘れて茶屋に休んで昼食をつかった。
奥秩父 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そこで主上におかせられては、侍臣花山院師賢もろかた卿へ、兗竜こんりゅう御衣ぎょいをお着せになり、御輿おんこしに乗らせて比叡山へつかわし
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とても相談さうだん相手あいてにはならぬの、いはゞ太郎たらう乳母うばとしていてつかはすのとあざけつておつしやるばかり、ほんに良人おつとといふではなく御方おかたおに御座ござりまする
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ハハ。ともかくも御前にまいってとりなしてつかわす故、控えおれと申し聞けまして、そのまま出仕致しましたが」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お春は駕籠を下り立って、いくらかの酒代さかてを二人につかわし、礼の言葉を後に聴いて、小走りに急ぎながら、物寂しい夜半の寺内へはいってしまうのでした。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
午前六時を過ぐるころ、艦隊はすでに海洋とうの近くに進みて、まず砲艦赤城あかぎを島の彖登湾につかわして敵の有無を探らしめしが、湾内むなしと帰り報じつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そして、月々きまつてもらふお小つかひをすこしづゝ郵便ゆうびんちよ金にしはじめ、いつも母がくれるお中げんお歳の金も今までのやうに無駄むたには使つかはないことにした。
ワザワザ旅費をつかって仏蘭西まで行って、仏蘭西の監獄に入れられて仏蘭西人までを欺く必要もなかったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
孔子が魯から衛に入った時、召を受けて霊公にはえっしたが、夫人の所へは別に挨拶あいさつに出なかった。南子がかんむりを曲げた。早速さっそく人をつかわして孔子に言わしめる。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
姉さんは壮健じょうぶそうに成ったばかりでなく、晴々とした眼付で玉木さん達の噂をした後に、めったに口にしたことのない仮白こわいろなぞをつかうほど機嫌が好かった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ケメトスの評判は次第しだいに四方へ広がって、ついにその土地の王様の耳にはいりました。王様は珍しいことに思われて、人をつかわしてケメトスを招かれました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あんまり遅すぎてもぐずぐずしていたようだし、そこをうまくやろうと、そのことばかりに心をつかっている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
その通りの言渡いいわたしだ、去年中からしきりに帰国の事を申しつかわして今か今かと待っていたけれどもそちらにも忙しい事があって帰れないというのは是非もない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
本名は川島金之助といってある会社の株式係をしていたがつかい込みの悪事があらわれて懲役に行ったのである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お前の思う通りにしろだが、東京へ出てから二年許りのあいだつかった金は、地所を抵当に入れて借りた金だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「はい、実は私は、恥を申しませんければ解りませんが、主人の金を大分つかひ込みましたので御座います」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
早速さっそくこれをゆるし宗伯を熱海につかわすこととなり、爾来じらい浅田はしばしば熱海に往復おうふくして公使を診察しんさつせり。
ならぬ! ならぬ! なりませぬ! この者共をつかわすことまかりならぬゆえ、とッとと帰らッしゃい!