トップ
>
獣
>
けもの
ふりがな文庫
“
獣
(
けもの
)” の例文
旧字:
獸
そこで、その啼声だが——聞いた者の話では、人でなく、鳥でなく、虫でなく、どうも
獣
(
けもの
)
の声らしく、その調子は、あまり高くない。
こま犬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そう云って、多田刑事は、小さい
紙片
(
しへん
)
を手渡した。警部は
獣
(
けもの
)
のように低く
呻
(
うな
)
りつつ、多田の聞書というのを読んだ。「よし、会おう」
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そも/\
熊
(
くま
)
は
和獣
(
わじう
)
の王、
猛
(
たけ
)
くして
義
(
ぎ
)
を
知
(
し
)
る。
菓木
(
このみ
)
の
皮虫
(
かはむし
)
のるゐを
食
(
しよく
)
として
同類
(
どうるゐ
)
の
獣
(
けもの
)
を
喰
(
くらは
)
ず、
田圃
(
たはた
)
を
荒
(
あらさ
)
ず、
稀
(
まれ
)
に
荒
(
あら
)
すは
食
(
しよく
)
の
尽
(
つき
)
たる時也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
博識家
(
ものしり
)
めいた言ひ振りだが、吾々の祖先は今の婦人と同じやうな着方をしたもので、いつも
獣
(
けもの
)
の皮にばかりくるまつてゐた彼等は
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この小さな、緑色に
繁茂
(
しげ
)
り栄えた島の中には、
稀
(
まれ
)
に居る大きな
蟻
(
あり
)
のほかに、私たちを
憂患
(
なやま
)
す
禽
(
とり
)
、
獣
(
けもの
)
、
昆虫
(
はうもの
)
は一匹も居ませんでした。
瓶詰地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
果して、一人の若者が、月光の中へ現われた。肩に何か
停
(
と
)
まっている。長い太い尾をピンと立てた、非常に気味の悪い
獣
(
けもの
)
であった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ローズ・ブノワさんは
動物
(
どうぶつ
)
が
好
(
す
)
きで、
動物
(
どうぶつ
)
の方でもローズ・ブノワさんが
好
(
す
)
きです。だからこそ
鳥
(
とり
)
や
獣
(
けもの
)
のいうことがわかるのです。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
彼の叫びと呪いの声は絶えず聞こえたれど、その声は人とも
獣
(
けもの
)
とも分かぬ一種の兇暴
獰悪
(
ねいあく
)
の唸り声に圧せられんとしつつあるなり。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
五日、
七日
(
なぬか
)
、
二夜
(
ふたよ
)
、三夜、観音様の前に
静
(
じっ
)
としていますうちに、そういえば、今時、
天狗
(
てんぐ
)
も
※々
(
ひひ
)
も居まいし、第一
獣
(
けもの
)
の
臭気
(
におい
)
がしません。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜叉
(
やしゃ
)
と
獣
(
けもの
)
のたましいを一つに持つような体熱からまだ
醒
(
さ
)
めきれないでいるにしても——余りに思いきった
殺戮
(
さつりく
)
に眼がくらむ心地がする。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大体
(
だいたい
)
に
於
(
おい
)
て
申
(
もう
)
しますと、
天狗
(
てんぐ
)
の
正体
(
しょうたい
)
は
人間
(
にんげん
)
よりは
少
(
すこ
)
し
大
(
おお
)
きく、そして
人間
(
にんげん
)
よりは
寧
(
むし
)
ろ
獣
(
けもの
)
に
似
(
に
)
て
居
(
お
)
り、
普通
(
ふつう
)
全身
(
ぜんしん
)
が
毛
(
け
)
だらけでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
山となく、野となく、人でも
獣
(
けもの
)
でもあらゆるものを乗り越え踏みつけ、唯真直に一文字に存分に駈けて駈けて駈けぬいて見たくなった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
獣
(
けもの
)
の
牙
(
きば
)
をならべるように、
遠
(
とお
)
く
国境
(
こっきょう
)
の
方
(
ほう
)
から
光
(
ひか
)
った
高
(
たか
)
い
山脈
(
さんみゃく
)
が、だんだんと
低
(
ひく
)
くなって、しまいに
長
(
なが
)
いすそを
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
へ、
没
(
ぼっ
)
していました。
しいたげられた天才
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
良人の父親と
醜
(
みにく
)
いちぎりを結ぶにいたっては、
獣
(
けもの
)
にもひとしいと云う事は、いくら
無智
(
むち
)
な女でも知っているはずであるのに……。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そして牢屋のほうでは、ふしぎにも、数かぎりない鳥や
獣
(
けもの
)
がやってきて、牢屋から森まで、すっかりせんりょうしてしまっています……。
銀の笛と金の毛皮
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
章一のすぐ
後
(
うしろ
)
を歩いていた一人の
遊人
(
あそびにん
)
は、章一の倒れた時その
脚下
(
あしもと
)
から一
疋
(
ぴき
)
の猫のような小さな
獣
(
けもの
)
の飛びだして走ったのを見た。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
まあ、お
互
(
たが
)
いに
自分
(
じぶん
)
の
生
(
う
)
まれついた
身分
(
みぶん
)
に
満足
(
まんぞく
)
して、
獣
(
けもの
)
は
獣同士
(
けものどうし
)
、
鳥
(
とり
)
は
鳥同士
(
とりどうし
)
、
人間
(
にんげん
)
は
人間同士
(
にんげんどうし
)
、
仲
(
なか
)
よく
暮
(
く
)
らすほどいいことはないのだ。
猫の草紙
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
で、もしも或る不吉な
獣
(
けもの
)
が道を横切るようなことさえなかったなら、この素敵もない金額はどこまで殖えて行くとも見当がつかなかった。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
鳥も
獣
(
けもの
)
も
斉
(
ひと
)
しく涙を流している涅槃像だけに、質屋にかかっているのは情ない。作者はそれを「世のさまや」と歎じたのである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
この
木彫
(
きぼり
)
や
金彫
(
かねぼり
)
の様々な
図
(
ず
)
は、
瓶
(
かめ
)
もあれば天使もある。羊の足の神、羽根のある
獣
(
けもの
)
、不思議な鳥、または
黄金色
(
こがねいろ
)
の
堆高
(
うずたか
)
い果物。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
古代スメリヤ人が馬という
獣
(
けもの
)
を知らなんだのも、彼等の間に馬という字が無かったからじゃ。この文字の精霊の力ほど恐ろしいものは無い。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
これは草でも、木でも、虫でも、鳥でも、
獣
(
けもの
)
でも、人でも、その点はなんら変わったことはない、つまり生物はみな同じだ。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
言葉でもろくに通じないくらいだのに、男は
烏帽子
(
えぼし
)
もかぶらず女は
髪
(
かみ
)
もさげず、はだしで山川を歩くさまはまるで
獣
(
けもの
)
のようではありませんか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
遠ざかりながら人の声とも
獣
(
けもの
)
の声とも知れぬ音響がかすかに耳に残って、胸の所にさし込んで来る痛みを吐き気のように感じた次の瞬間には
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「如何でござるな。」郎等の話を聞き
完
(
をは
)
ると、利仁は五位を見て、得意らしく云つた。「利仁には、
獣
(
けもの
)
も使はれ申すわ。」
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見ると、その白い
柔
(
やわ
)
らかな岩の中から、大きな大きな青じろい
獣
(
けもの
)
の骨が、横に
倒
(
たお
)
れて
潰
(
つぶ
)
れたという風になって、半分以上掘り出されていました。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
或日黄金丸は、用事ありて里に出でし
帰途
(
かえるさ
)
、独り
畠径
(
はたみち
)
を
辿
(
たど
)
り
往
(
ゆ
)
くに、
只
(
と
)
見れば
彼方
(
かなた
)
の山岸の、野菊あまた咲き乱れたる
下
(
もと
)
に、黄なる
獣
(
けもの
)
眠
(
ねぶ
)
りをれり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
獣
(
けもの
)
のようなおめきとともにたたら足を踏んで縁にのめり出たが、あらためるまでもなく、傷は、右膝に食い入ったばかりで、骨には達していない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
貴女に取つてはほんにどうでもよいやうな小さい
獣
(
けもの
)
ですけれど、私にしたらどんなに孤独慰められるか、………私、弱虫と思はれたくありませんが
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
此方
(
こち
)
向けば子鴉あはれ、
其方
(
そち
)
向けば犬の子あはれ。
二方
(
ふたかた
)
の鳥よ
獣
(
けもの
)
よ。ひとしけくかはゆきものを、同じけくかなしきものを、いづれ
別
(
わ
)
きいづれ隔てむ。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それが、寝まき姿のしどけない
風
(
なり
)
をして、不意にこの場へ現われて呼びかけたのは、人でなくして
獣
(
けもの
)
でありました。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
幕が
開
(
あ
)
いた。
覿面
(
てきめん
)
に死と相見ているものは、
姑息
(
こそく
)
に安んずることを好まない。老いたる処女エルラは、老いたる夫人の階下の部屋へ、檻の
獣
(
けもの
)
を連れて来る。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
譬
(
たと
)
えば一箇の
獣
(
けもの
)
と
相搏
(
あいう
)
って之を獲ようとして居る間に、四方から出て来た獣に脚を
咬
(
か
)
まれ腹を咬まれ肩を
攫
(
つか
)
み裂かれ背を攫み裂かれて倒れたようなものである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
なにかここにある物をあそこまで運んで行きたいと思う場合、鳥や
獣
(
けもの
)
や
蟻
(
あり
)
・
蜂
(
はち
)
・
蜻蛉
(
とんぼ
)
なども、足でつかんだり口にくわえたりして、持ちあるくことまではする。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
人間も米を食ったり、鳥を食ったり、
肴
(
さかな
)
を食ったり、
獣
(
けもの
)
を食ったりいろいろの
悪
(
あく
)
もの食いをしつくしたあげくついに石炭まで食うように堕落したのは
不憫
(
ふびん
)
である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御衣は
柿色
(
かきいろ
)
のいたうすすびたるに、手足の
爪
(
つめ
)
は
獣
(
けもの
)
のごとく
生
(
お
)
ひのびて、さながら魔王の
形
(
かたち
)
、あさましくもおそろし。
空
(
そら
)
にむかひて、
一二九
相模
(
さがみ
)
々々と、
叫
(
よ
)
ばせ給ふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
そのあたりの国じゅうで生きた
獣
(
けもの
)
の皮を
剥
(
は
)
いだり、獣を
逆
(
さか
)
はぎにしたものをはじめとして、田の
畔
(
くろ
)
をこわしたもの、
溝
(
みぞ
)
をうめたもの、
汚
(
きた
)
ないものをひりちらしたもの
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
さらによく見るとその
炉端
(
ろばた
)
には、鳥の羽根や、
獣
(
けもの
)
の毛や、人間の
骨
(
ほね
)
らしいものが散らばっていた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
が、男はお梶の傍を、影のようにすりぬけると、灯のない
闇
(
やみ
)
を、手探りに廊下へ出たかと思うと、母屋の灯影を
目的
(
めあて
)
に
獣
(
けもの
)
のように、足速く走り去ってしまったのである。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
獣
(
けもの
)
を見ても分かる、
虎
(
とら
)
、
獅子
(
しし
)
、
熊
(
くま
)
などのごとき猛獣は年々その数が減じつつある。もし統計を取ることが出来れば、彼らの減少率のはなはだ
迅速
(
じんそく
)
なることを示すであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
村の人たちは、あれで
金
(
きん
)
さんはいい人だといっていた。が
正九郎
(
しょうくろう
)
は
獣
(
けもの
)
のようにおそれていた。
空気ポンプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「床の荒い格子の側に、何んか人間の踏みつけた足跡があり、その格子はとても人間は潜れませんが、朝の日の這い込むのに
透
(
すか
)
して見ると、
獣
(
けもの
)
の毛が少し付いて居ましたよ」
銭形平次捕物控:243 猿回し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝まだき
外
(
そと
)
に
出
(
い
)
で
候
(
さふらふ
)
に、左右なる砂山に
数多
(
あまた
)
鴨の居る如く見えて
駱駝
(
らくだ
)
の眠り居るが見え申し
候
(
さふらふ
)
。やや日たけ
行
(
ゆ
)
けば、その
獣
(
けもの
)
にうち乗りて
往来
(
ゆきき
)
するアラビヤ人なども多く見え
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
彼は疲れて、青い顔をして、眼色は病んだ
獣
(
けもの
)
のやうに鈍く光つてゐる。不眠の夜が続く。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
ところが、翌朝早くキーシュは
悠々
(
ゆうゆう
)
と村の中へ入って来ました。きまりの悪そうな顔などしていません。背中には殺した
獣
(
けもの
)
から切りとったばかりの
生々
(
なまなま
)
しい肉を背負っています。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
地理は氷解、水ぬるむ、春水、春山の類をいふ。動物は大略
獣
(
けもの
)
、鳥、
両棲
(
りょうせい
)
爬虫
(
はちゅう
)
類、魚、百虫の順序を用ゐる。植物は木を先にし草を後にす、木は花木を先にし草は花草を先にす。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
これを持って熊か
猪
(
しゝ
)
かは知らぬが殺して出よという、神様のお
告
(
つげ
)
か知らん、あゝ有難し有難し、いや
併
(
しか
)
し此の穴の深さは
何
(
ど
)
のくらいあるか知れぬ、
殊
(
こと
)
に
獣
(
けもの
)
も沢山いる様子ではあり
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
枯木を杖にして道をたどっているのではあるまいか。そうして見れば人であろうか。それとも飢え衰えた
獣
(
けもの
)
であろうか。鶴見はその
後影
(
うしろかげ
)
を見送っている。それがだんだん小さくなる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
狩人や漁師は
獣
(
けもの
)
を
獲
(
と
)
り、
魚
(
うお
)
を
捕
(
と
)
りますけれども、その獲物のみでは生きて行かれず、必ずこれを以てやはり農民の米を貰わなければならぬ。それで彼らを乞食と云ったものとみえます。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
そして、さういふ人間を裏返してみると、多くは
獣
(
けもの
)
のやうに見えるものである。
荒天吉日
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
獣
常用漢字
中学
部首:⽝
16画
“獣”を含む語句
禽獣
鳥獣
膃肭獣
野獣
獣類
獣皮
獣肉
獣肉屋
獣物
怪獣
一角獣
人面獣心
雷獣
麝香獣
海獣
獣狩
半獣神
猛獣狩
獣心
若悪獣囲繞
...