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片袖
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かたそで
ふりがな文庫
“
片袖
(
かたそで
)” の例文
娘は何か物を
喰
(
た
)
べかけていたらしく、
片袖
(
かたそで
)
の裏で口の中のものを仕末して、自分の忍び笑いで、自然に私からも笑顔を誘い出しながら
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
些
(
さ
)
と凹凸なく
瞰下
(
みおろ
)
さるる、かかる一枚の絵の中に、
裳
(
もすそ
)
の端さえ、
片袖
(
かたそで
)
さえ、美しき夫人の姿を、
何処
(
いずこ
)
に隠すべくも見えなかった。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中には、
片袖
(
かたそで
)
の半分
断
(
ちぎ
)
れかけている者や、脚絆の一方ない者や、白っぽい縞の着物に、所々血を
滲
(
にじ
)
ませているものなども居た。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その影の、一騎、二騎、五騎、七騎とつづいて来る第八番目に、家康が、
鎧
(
よろい
)
の
片袖
(
かたそで
)
もちぎられ、雪や
朱
(
あけ
)
にまみれた姿で、駈けつづいて来た。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夢中
(
むちゅう
)
で
振
(
ふ
)
り
払
(
はら
)
ったお
蓮
(
れん
)
の
片袖
(
かたそで
)
は、
稲穂
(
いなほ
)
のように
侍女
(
じじょ
)
の
手
(
て
)
に
残
(
のこ
)
って、
惜
(
お
)
し
気
(
げ
)
もなく
土
(
つち
)
を
蹴
(
け
)
ってゆく
白臘
(
はくろう
)
の
足
(
あし
)
が、
夕闇
(
ゆうやみ
)
の
中
(
なか
)
にほのかに
白
(
しろ
)
かった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
パー先生は
片袖
(
かたそで
)
まくり、布巾に薬をいつぱいひたし、かぶとの上からざぶざぶかけて、両手でそれをゆすぶると、
兜
(
かぶと
)
はすぐにすぱりととれた。
北守将軍と三人兄弟の医者
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
片袖
(
かたそで
)
をくわえている浜路の後ろに、影のように現われた幽霊の絵を見ていた時、自分の後ろの
唐紙
(
からかみ
)
がするするとあいて、はいって来た人がある。
竜舌蘭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
組み合わした剣のついてる小さな
楕円形
(
だえんけい
)
の赤ラシャを胴につけ、その上、上衣の
片袖
(
かたそで
)
には中に腕がなく、
頤
(
あご
)
には
銀髯
(
ぎんぜん
)
がはえ、一方の足は義足だった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
又
(
また
)
或地
(
あるち
)
のアイヌはコロボツクルの
女子
(
じよし
)
がアイヌに近寄る時には
片袖
(
かたそで
)
にて口を
覆
(
お
)
ひたりと云ひ傳ふ。女子が或種類の衣服を着せしとの
事
(
こと
)
は深く考ふる要無し。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
わが妹を
誘惑
(
ゆうわく
)
して
堕落
(
だらく
)
の
境
(
さかい
)
にひきこもうとしつつあるチビ公をさがしまわった光一がいま松の下陰で見たのはたしかに妹文子の
片袖
(
かたそで
)
とえび茶のはかまである。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
彼女はコートの
片袖
(
かたそで
)
をするすると脱ぎながら「そうお客扱いにしちゃ
厭
(
いや
)
よ」と云った。自分は茶器を
洒
(
すす
)
がせるために
電鈴
(
ベル
)
を押した手を放して、彼女の顔を見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奧田が
組下
(
くみした
)
山田
(
やまだ
)
軍平
(
ぐんぺい
)
と云者喜八が
形
(
かたち
)
を見て
怪
(
あやし
)
み
曲者
(
くせもの
)
待
(
まて
)
と聲を掛ながら既に
捕
(
とら
)
へんと喜八の袖を
押
(
おさ
)
へしにぞ喜八は一
生
(
しやう
)
懸命
(
けんめい
)
と彼の出刄庖丁にて軍平が捕へたる
片袖
(
かたそで
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
橘は
矢痍
(
やきず
)
のあとに清い
懐紙
(
かいし
)
をあてがい、その若い男のかおりがまだ生きて漂うている顔のうえに、
袿
(
うちぎ
)
の両の
袖
(
そで
)
をほついて、
綾
(
あや
)
のある方を上にして一人ずつに
片袖
(
かたそで
)
あてかぶせ
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
赤い太鼓腹を
巾
(
はば
)
広く浮かばしている汽船や、積荷最中らしく海の中から
片袖
(
かたそで
)
をグイと引張られてでもいるように、思いッ切り片側に傾いているのや、黄色い、太い煙突、大きな鈴のようなヴイ
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
この日かぎりに、お妃は、おにいさまたちをみごと、
魔法
(
まほう
)
から助けだしたのです。六枚の
肌着
(
はだぎ
)
は、このときもうほとんどでき上がって、ただ六枚めの左の
片袖
(
かたそで
)
だけがたりないだけになっていました。
六羽の白鳥
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
父は
片袖
(
かたそで
)
をまくって腕を
舐
(
な
)
めると剃刀をそこへあててみて
笑われた子
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
宮が顔を
推当
(
おしあ
)
てたる
片袖
(
かたそで
)
の
端
(
はし
)
より、
連
(
しきり
)
に
眉
(
まゆ
)
の
顰
(
ひそ
)
むが見えぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
粧
(
よそお
)
ひし山の
片袖
(
かたそで
)
初紅葉
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
座中は目で探って、やっと一人の膝、誰かの胸、別のまた
頬
(
ほお
)
のあたり、
片袖
(
かたそで
)
などが、風で
吹溜
(
ふきたま
)
ったように、
断々
(
きれぎれ
)
に
仄
(
ほのか
)
に見える。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
圭さんは、
無雑作
(
むぞうさ
)
に
白地
(
しろじ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
の
片袖
(
かたそで
)
で、頭から顔を
撫
(
な
)
で廻す。碌さんは腰から、ハンケチを出す。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いつもなら、
藤吉
(
とうきち
)
を
供
(
とも
)
に
連
(
つ
)
れてさえ、
夜道
(
よみち
)
を
歩
(
あるく
)
くには、
必
(
かなら
)
ず
提灯
(
ちょうちん
)
を
持
(
も
)
たせるのであったが、
今
(
いま
)
はその
提灯
(
ちょうちん
)
を
待
(
ま
)
つ
間
(
ま
)
ももどかしく、
羽織
(
はおり
)
の
片袖
(
かたそで
)
を
通
(
とお
)
したまま、
早
(
はや
)
くも
姿
(
すがた
)
は
枝折戸
(
しおりど
)
の
外
(
そと
)
に
消
(
き
)
えていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
と、話ついでに、のびあがって向こうを見ていると、オオその燕作であろう、
竹
(
たけ
)
ノ
子
(
こ
)
笠
(
がさ
)
に
紺無地
(
こんむじ
)
の
合羽
(
かっぱ
)
、
片袖
(
かたそで
)
をはねて
手拭
(
てぬぐい
)
で
拭
(
ふ
)
きふき、得意な足をタッタと飛ばして、みるまにここへ
駈
(
か
)
けついた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渠は再び草の上に
一物
(
あるもの
)
を見出だせり。近づきてとくと視れば、
浅葱地
(
あさぎじ
)
に白く七宝
繋
(
つな
)
ぎの洗い
晒
(
ざら
)
したる
浴衣
(
ゆかた
)
の
片袖
(
かたそで
)
にぞありける。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
肩
(
かた
)
を
細
(
ほそ
)
く、
片袖
(
かたそで
)
をなよ/\と
胸
(
むね
)
につけた、
風通
(
かぜとほ
)
しの
南
(
みなみ
)
へ
背
(
せ
)
を
向
(
む
)
けた
背後姿
(
うしろすがた
)
の、
腰
(
こし
)
のあたりまで
仄
(
ほのか
)
に
見
(
み
)
える、
敷居
(
しきゐ
)
に
掛
(
か
)
けた
半身
(
はんしん
)
で
帶
(
おび
)
と
髮
(
かみ
)
のみ
艷
(
あで
)
やかに
黒
(
くろ
)
い。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
やつぱり
片袖
(
かたそで
)
なかつたもの、そして
川
(
かは
)
へ
落
(
おつ
)
こちて
溺
(
おぼ
)
れさうだつたのを
救
(
すく
)
はれたんだつて、
母様
(
おつかさん
)
のお
膝
(
ひざ
)
に
抱
(
だ
)
かれて
居
(
ゐ
)
て、
其晩
(
そのばん
)
聞
(
き
)
いたんだもの。だから
夢
(
ゆめ
)
ではない。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
みどり
児
(
ご
)
を、
片袖
(
かたそで
)
で胸に
抱
(
いだ
)
いて、
御顔
(
おんかお
)
を少し
仰向
(
あおむ
)
けに、
吉祥果
(
きっしょうか
)
の枝を肩に
振掛
(
ふりか
)
け、
裳
(
もすそ
)
をひらりと、片足を軽く挙げて、——いいぐさは
拙
(
つたな
)
いが、
舞
(
まい
)
などしたまう
状
(
さま
)
に
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「その晩橋場の交番の前を怪しい風体のやつが通ったので、巡査が
咎
(
とが
)
めるとこそこそ
遁
(
に
)
げ出したから、こいつ
胡散
(
うさん
)
だと引っ
捉
(
とら
)
えて見ると、着ている
浴衣
(
ゆかた
)
の
片袖
(
かたそで
)
がない」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あれ、
情
(
じやう
)
が
強
(
こは
)
いねえ、さあ、えゝ、ま、
痩
(
や
)
せてる
癖
(
くせ
)
に。」と
向
(
むか
)
うへ
突
(
つ
)
いた、
男
(
をとこ
)
の
身
(
み
)
が
浮
(
う
)
いた
下
(
した
)
へ、
片袖
(
かたそで
)
を
敷
(
し
)
かせると、まくれた
白
(
しろ
)
い
腕
(
うで
)
を、
膝
(
ひざ
)
に
縋
(
すが
)
つて、お
柳
(
りう
)
は
吻
(
ほつ
)
と
呼吸
(
いき
)
。
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
唯吉
(
たゞきち
)
を
見越
(
みこ
)
した
端
(
はし
)
に、
心持
(
こゝろもち
)
、
會釋
(
ゑしやく
)
に
下
(
さ
)
げた
頸
(
うなじ
)
の
色
(
いろ
)
が、
鬢
(
びん
)
を
透
(
す
)
かして
白
(
しろ
)
い
事
(
こと
)
!……
美
(
うつく
)
しさは
其
(
それ
)
のみ
成
(
な
)
らず、
片袖
(
かたそで
)
に
手
(
て
)
まさぐつた
團扇
(
うちは
)
が、
恰
(
あたか
)
も
月
(
つき
)
を
招
(
まね
)
いた
如
(
ごと
)
く、
弱
(
よわ
)
く
光
(
ひか
)
つて
薄
(
うつす
)
りと
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
(お
召
(
めし
)
は
恁
(
か
)
うやつて
置
(
お
)
きませう、さあお
背
(
せな
)
を、あれさ、じつとして。お
嬢様
(
ぢやうさま
)
と
有仰
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいましたお
礼
(
れい
)
に、
叔母
(
をば
)
さんが
世話
(
せわ
)
を
焼
(
や
)
くのでござんす、お
人
(
ひと
)
の
悪
(
わる
)
い、)といつて
片袖
(
かたそで
)
を
前歯
(
まへば
)
で
引上
(
ひきあ
)
げ
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と二
行
(
ぎやう
)
に
最
(
もう
)
一
度
(
ど
)
読
(
よ
)
みながら、つひ、
銀
(
ぎん
)
の
鍋
(
なべ
)
を
片袖
(
かたそで
)
で
覆
(
おほ
)
ふて
入
(
はい
)
つた。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
片袖
(
かたそで
)
を目にあてたが、はッとした風で、また納戸を見た。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
袖
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
“片”で始まる語句
片
片隅
片手
片端
片頬
片方
片時
片側
片膝
片足