)” の例文
また或時あるとき、市中より何か買物かいものをなしてかえけ、鉛筆えんぴつを借り少時しばらく計算けいさんせらるると思ううち、アヽ面倒めんどうだ面倒だとて鉛筆をなげうち去らる。
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と紫玉は、宵闇よいやみの森の下道したみち真暗まっくらな大樹巨木のこずえを仰いだ。……思ひけず空から呼掛よびかけたやうに聞えたのである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
厚さにも二枚け、三枚掛けと色々ある。これは私が仏師になった時代のことだが、今日こんにちではいろいろの大きさの箔が出来ていて調法になっています。
もとより勝手を知って居りますから、忽ちに市四郎が岩角につかまって這い上り、の根へ足をけてのお藤を助けまして、水を飲ませせなさす
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
爺さんは、むっつりと、苦虫を噛みつぶしたような面構えで、炉傍ろばたに煙草をかしていた。弟の庄吾は、婆さんの手伝いで、尻端折しりはしょりになって雑巾ぞうきんけだった。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ばうさんはおもけないいおきやくたらしく、にはかたゝいて小坊主こばうずちや菓子くわしとをつてさせた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それでもとなりではその始末しまつをつけるときにそこらへらばつた小枝こえだその屑物くづものはおしないへあたへたのでおもけないたきゞ出來できたのと、もひとつはいくらでもひがしいたのとで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今日きょうおもけないひとれてるが、だれであるかひとててるがよい……。』
それは村道に接した一軒家で、わらでかこった小屋けがもうその隅にできていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
繞石ぜうせき君に逢はうとは思ひけなかつたので、を開けて這入はひつて来たのも、少時しばらく話したあとくねつた梯子段を寒い夜更よふけに降りてつたのも芝居の人物の出入りの様な気がしてならなかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
何が開国論なものか、存じけもない話だ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なにことおこつたのかと思つて、あがけに、書生部屋をのぞいて見たら、直木なほきと誠太郎がたつた二人ふたりで、白砂糖しろざとうけたいちごつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞさへ、おもけない人影ひとかげであるのに、またかげが、ほしのない外面とのもの、雨氣あまけびた、くもにじんで、屋根やねづたひにばうて、此方こなた引包ひきつゝむやうにおもはれる。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
茶受ちやうけには結構けつこうなお菓子でございますなア……どうも思ひけないことで……とオロ/\泣きながら、口の中でムク/\んでりましたが、お茶がプツと出てたから
あとの僕等と女画家ぢよぐわかとはドリヷル夫婦の自動車に相のりしてモンマルトルへ帰つた。文豪の誕生日の一を想ひけなく斯様かやうに面白く過ごしたのは栄誉である。うしてこの日は僕の誕生日でもあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かれ其日そのひ役所やくしよかへけに駿河臺下するがだいしたまでて、電車でんしやりて、いものを頬張ほゝばつたやうくち穿すぼめて一二ちやうあるいたのち、ある齒醫者はいしやかどくゞつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おもけなくおためにつて……一寸ちよつとうれしいことわたしは。……矢張やつぱり何事なにごとこゝろつうじますのですわね。」と撫子なでしこまた路傍みちばたへ。わすれていたか、と小草をぐさにこぼれる。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へえー……にかえ、貴方あなた神幸かみかうといふ立派りつぱ御用達ごようたしたいしたお生計くらしをなすつたおかたか……えーまアどうもおもけないことだねえ、貴方あなた家宅ところの三でふ大目だいめの、お数寄屋すきや出来できた時に
もうすこしのことで、その安井やすゐおな家主やぬしいへ同時どうじまねかれて、となあはせか、むかあはせにすわ運命うんめいにならうとは、今夜こんや晩食ばんめしすままでゆめにもおもけなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
へえー……河内屋かはちやさん……エーまア道理だうりこそ、此砂張このすばり建水こぼしがおまるといふのは、余程よほど嗜好者すきしやとはぞんじましたが……貴方あなた河内屋かはちやさんでございましたか……おもけないことで……。
いやだんだん事件が面白く発展してくるな、今日はあまり天気がいので、来る気もなしに来たのであるが、こう云う好材料をようとは全く思いけなんだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云うから、礼を云って立っていると、初さんは景気よく段木だんぎつかまえて片足けながら
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此前このまへはづであつたが、ついおそくなつたのでいそいでかへつた。今日けふは其つもりはやうちた。が、御息おやすちうだつたので、又とほり迄行つて買物かひものましてかへけにる事にした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
貴方あなたらないに、縁談がれ程すゝんだのか、わたしにもわからないけれど、だれにしたつて、貴方あなたが、さう的確きつぱり御断おことわりなさらうとは思ひけないんですもの」と梅子はやうやくにして云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)