ひつ)” の例文
はなすと、いことに、あたり近所きんじよの、我朝わがてう※樣あねさま仰向あをむけ抱込だきこんで、ひつくりかへりさうであぶないから、不氣味ぶきみらしくもからはおとさず……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもつたる大形おほがた裕衣ゆかたひつかけおび黒繻子くろじゆすなにやらのまがひものひらぐけがところえてはずとれしこのあたりのあねさまふうなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
吃驚びつくりした鴉は一あしあし後方うしろ退しさつて、じつと蛇の頭を見てゐたが、急に厭世的な顔をしたと思ふと、そのまゝひつくりかへつて死んでしまつた。
すかし見れば彼の十七屋となやのの飛脚に相違なしよつて重四郎は得たりとしりひつからげて待つほどに定飛脚ぢやうひきやくかきたりし小田原挑灯を荷物にもつ小口こぐち縊付くゝりつけ三度がさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
武は容赦ようしやなくグイと頭をひつこませる、鱒どのも飛んだ粗相そさうをしたと気がついて、食ひついたところをはなす其途端にバシヤリと音して、鱒は舟のなかとりことなり升た。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
いきなり奈良茂ならもの側にあつた鮫鞘さめざや脇差わきざしひつこぬいて、ずぶりと向うの胸へつつこんだんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女がその靜かな跫音あしおと羅紗らしやへりでつくつた上靴で消して、廊下を歩いて行くのをじつと見たときとか、ごた/\してまるでひつくり返したやうな寢室の内を覗いて——多分日傭女ひやとひをんなに向つて
思ひ切つたる大形おほがた裕衣ゆかたひつかけ帯は黒繻子くろじゆすと何やらのまがひ物、ひらぐけが背の処に見えて言はずと知れしこのあたりの姉さま風なり
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
愚図々々ぐづ/\してはられぬから、我身わがみわらひつけて、つた。ひつかゝるやう、きざいれてあるのぢやから、さいたしかなら足駄あしだでも歩行あるかれる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
論語はい本だ。い本だからと言つて、それで人生がひつくりかへるものなら、この世は幾度かう引くり覆つてゐる筈だ。
持出もちいだせば雲助どもは是は有難う御座りますと手ん/″\に五六ぱいヅツひつかける所へ藤八ソレさかな銘々めい/\に金二分づつやるに雲助はイエ親方是は入やせんと辭退じたいなすを馬鹿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
祖父ぢいさまはそれを請取うけとり、銀貨をひつくらかへし、兎見角見とみかくみして、新らしい銀貨だとおつしやつて二ツともそのまゝ私に下すつて、まだ書物かきものがあるからといつて急に私にあちらへ行けとおつしやましたから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
はだか飛込とびこんだ、侍方さむらひがたふねりはつたれども、ほのほせぬ。やつとのおもひでふねひつくらかへした時分じぶんには、緋鯉ひごひのやうにしづんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
博士は指先で充血した眼の上瞼うはまぶたつまんで、酸漿ほほづきのやうにひつくり返さうとしたが、直ぐ鼻先に邪魔物が飛び出してゐて、どうも思ふやうにならない。
切下きりさげられあつと玉ぎる一聲と共に落せし提灯のぱつ燃立もえたつあかりに見れば兄なる長庵が坊主天窓ばうずあたま頬冠ほゝかぶ浴衣ゆかたしりひつからげ顏をそむけて其場にたゝずみ持たる脇差わきざし取直し再度ふたゝびかうよと飛蒐とびかゝるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
からう、からう、そりやざぶりとぢや。」とをけさかしまにして、小兒こどもかたから背中せなかひつかぶせ
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
Kは脳振盪なうしんたうを起してそのまゝひつくり返つて死んでしまつた。相手は相変らず身動みうごきもしない。
それからぼくうちはししたを、あのウふねいでくのがなんだかうたつてくけれど、なにをいふんだかやつぱりとりこゑおほきくしてながひつぱつていてるのとちがひませんもの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小戻こもどりして、及腰およびごしに、ひつくやうにバスケツトをつかんで、あわててすべつて、片足かたあしで、怪飛けしとんだ下駄げたさがしてげた。どくさうなかほをしたが、をんなもそツとつてる。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よくせき土地とち不漁しければ、佐渡さどから新潟にひがたへ……といたときは、枕返まくらがへし、と妖怪ばけものつたも同然どうぜん敷込しきこんだ布團ふとんつて、きたからみなみひつくりかへされたやうに吃驚びつくりした。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じやからかさ脊筋せすぢさがりにひつかつぎたるほどこそよけれ、たかひくのみちの、ともすれば、ぬかるみのはねひやりとして、らぬだにこゝろ覺束おぼつかなきを、やがて追分おひわけかたいでんとして
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたしう、それまでに、幾度いくたびうづにくる/\とかれて、おほきみづに、孑孑蟲ぼうふらむしひつくりかへるやうなかたちで、つてはげられ、つかんではたふされ、げてはたふされました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それではうちかへりませう。)と米磨桶こめとぎをけ小脇こわきにして、草履ざうりひつかけてがけのぼつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、手酌てじやくひつかけながら叔父をぢつた——ふる旅籠はたご可懷なつかしい。……
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おしつくねるやうにひつかけてふさいだのが、とにかく一寸ちよつとなまめかしい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)