)” の例文
此辺の百姓にはまだ、子供を学校に出すよりは家に置いて子守をさした方がいと思つてる者が少くない。女の子は殊にさうである。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
串戯じやうだんはよして、些細さゝいことではあるが、おなじことでも、こゝは大力だいりきい。強力がうりき、とふと、九段坂だんざかをエンヤラヤにこえてひゞきわるい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
旅行をする折にも手がこはばるとけないからといつて、ピアノを汽車のなかに担ぎ込んで、ひまさへあれば鍵盤キイを打つてゐる人である。
虚偽うそツ、し其れならば、姉さん、貴嬢あなたの苦悶を私に打ち明けて下すつてもいぢやありませんか、秘密は即ち不信用の証拠です」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『いや今日こんにちは、おゝきみ今日けふ顏色かほいろ昨日きのふよりもまたずツといですよ。まづ結構けつこうだ。』と、ミハイル、アウエリヤヌヰチは挨拶あいさつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あの島国の方に引込んで海の魚が鹹水しおみずの中でも泳いでいればいような無意識な気楽さをもって東京の町を歩いていた時に比べると
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いや馬鹿ばやしいやだ。それよりかつゞみつて見たくつてね。何故なぜだかつゞみおとを聞いてゐると、全く二十世紀の気がしなくなるからい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
更に第三、第四と、他の鍵を注意ぶかく試して行ったが、やはりけない。結局一本も役立たぬと知ったらまた癇癪が起って来た。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
一寸親子の愛情に譬えて見れば、自分の児は他所よその児より賢くて行儀がいと云う心持ちは、濁って垢抜けのしない心持ちである。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
このうちつぶせ!』とうさぎこゑあいちやんはせい一ぱいおほきなこゑで、『其麽そんなことをすればたまちやんを使嗾けしかけるからいわ!』とさけびました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
冷評ひやかした。乃公は決して嬉しがっているもんか、弱り切っているんだ。その証拠には此子をんな目に遭わせてもいと言った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あの御母さんに、商売のことなんか解るものですか。人間は牛馬のように駆使こきつかいさえすれあいものだと思っている人間だもの」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かたわら卓子テーブルにウイスキーのびんのっていてこっぷの飲み干したるもあり、いだままのもあり、人々はい加減に酒がわっていたのである。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それじゃア手前は『夫婦めおと斬り』だな! こいつアい所で邂逅ぶつかった。逢いてえ逢いてえと思っていたのだ。ヤイ侍よく聞きねえ。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
随分怜悧りこう芸妓げいしゃでも、い加減に年を取った髯面ひげづら野郎でも、相手にせずに其処へ坐らせて置いて少し上品な談話でも仕て居ると
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何有なあに、これでいさ、澤山たくさんだ。何うにか辛抱しんぼうの出来んこともあるまい。人間は、肉は喰はなくつても活きてゐられる動物よ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
遊佐は気が小いからかない。ああ云ふ風だからますま脚下あしもとを見られて好い事を為れるのだ。高が金銭かね貸借かしかりだ、命に別条は有りはしないさ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
で、祖父じじいは、猫をあんまり可愛かあいがっちゃ、けないけないって言っておりましたけれど、そのの猫は化けるまで居た事は御座ございません。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
可愛かあいらしい手を出してひざしたなでつてる、あゝ/\可愛かあいだ、いまのうくすりるよ、……煙草たばこ粉末こなぢやアかへつてけない
稀に外国に出て行ったところの商人らはこの風俗のかないということを知って、いろいろに言う者がないでも無いけれども
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
源七にむかって、なんでもいから是非刺青ほりものをしてくれと頼んだのですが、老爺じいさんも素直にうんとは云わなかったそうです。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうすると先生の研究は直言すれば死の前早くも死んでいるのである。学者はそれでいのか、私は立ちどころにノーと答える事に躊躇しない。
中には保存して置いてもいが、も少し香料でも余計に附けて手入れを好くしてしい。一般に仏蘭西フランスの男のひげは悪いにほひがすると云ふ答もあつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もしれ私一人ひとりの好みを云へば、やはり、犬よりは狼がい。子供を育てたり裁縫したりする優しいめす白狼はくらうい。
世の中と女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
A フン、それは相談さうだんをしないはうわるいんだが、むかふで相談さうだんしなけりや此方こつちから相談さうだんしかけたらいぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
幽霊種ゆうれいだねがないというのはちと妙なものですが、実際私の経験という方からいっては、幽霊談皆無といってもいのです、もっともこれは幽霊でない、夢の事ですが
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
梅林の老人の言ふところによると、いろ/\の不幸や障碍が起るのは、第一家相が悪い、家の入口が正北に向いて居て、便所が鬼門に当つて居るからけないのだ。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
ええ那様そんな事なら訳はないです。それじゃ明朝あしたかく行って、しらべてみて直しますが、そう云う事は長念寺の和尚おしょうところへも行って、次手ついでにおはなしなすったらいでしよう。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
また斯様こんな手紙を送ったと知れたなら大変だ。私はもううでもいが、お前が、さぞ迷惑するであろうから申すまでもないが、読んで了ったら、直ぐ焼くなり、何うなりしてくれ。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
これを教育家その人もなんだか忘れてしまっているような有様である。それではけない。思想の自由から初めて批評の自由となり、公正なる批評に依ってここに輿論というものも現れて来る。
政治趣味の涵養 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
古來こらい我邦わがくに化物思想ばけものしさうはなは幼稚えうちで、あるひほとんかつたとつてくらゐだ。日本にほん神話しんわ化物ばけもの傳説でんせつはなはすくない。日本にほん神々かみ/\日本にほん祖先そせんなる人間にんげんであるとかんがへられて、化物ばけものなどとはおもはれてない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一寸ちょっとお尋ね致しますが」と云った其瞬間、彼は其後をどう云うきかに付いて余り不用意である事に気が付いた。後悔の雲がぱっと頭に拡がった。聞えなければいがと云う願望も同時に起った。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
秀子「けません、私の口から一言でも洩す事は出来ませんよ」夫人
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
『それでは呼んだらいでせう。又といふ機会もないでせうから』
枯淡の風格を排す (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
とあるはい思い付きだ
いいえ、組合のほかに新床が出来たんで、どうのこうのって、何でもいじゃあがあせんか、お客様は御勝手な処へいらっしゃるんだ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
イワン、デミトリチ、グロモフは三十三さいで、かれ此室このしつでの身分みぶんいもの、元來もと裁判所さいばんしよ警吏けいりまた縣廳けんちやう書記しよきをもつとめたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わしは林檎りんごの樹の下へ行っているから、お前もたばねが済んだら彼処あすこへ来てくれないか。あぜを歩くんだぞ、麦を倒すとけないからな
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「叔母さん達のように、ああして子供の側に附いていられるといけれど——叔父さんは、お前、お金の心配もしなけりゃ成らん」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どうも外国人は調子がいですね。少しすぎる位だ。ああ賞められると、天気の方でも是非好くならなくっちゃならなくなる」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『まァ、大層たいそうよろこんでること』あいちやんはおもつてほもつゞけました。『をしへて頂戴てうだいな、ね、わたし此處こゝから何方どつちけばいの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「そんな事をいわずに、物は試しだから一口買ってごらんなさい、しかし度々たびたびけません、あたったら一遍こきりでおよしなさい」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何だべえせえ、自分のとこでなかつたら具合ぐあえが悪かんべえが? だらハア、おらア酒え飲むのさ邪魔さねえば、何方どつちでもいどら。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
烟草たばこゆらし居たる週報主筆行徳秋香かうとくあきか「渡部さん、恐れ入りますが、おついでにおみ下ださいませんか」「其れがい」「どうぞ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こいつア幸いい証人だ——その水品先生に対し、親のかたきとか何とか云って、若エ武士とこの娘とが、切ってかかったはずでごぜえます。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「もうい/\。」森久保氏は百姓のやうなこはつぱしい掌面てのひらを鼻先でり廻す。そして直ぐ説経祭文せつきやうさいもんのやうな節であとの文句を読み続ける。
『断然元子もとこを追ひ出してしづを奪つて来る。いやしくつても節操みさをがなくつてもしづの方がい』といふ感が猛然と彼の頭にぼつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
明日あす訪ねてくれい? さうはかん、僕もこれでなかなか用が有るのぢやから。ああ、貴方も浮世うきよ可厭いやか、僕も御同様じや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何故そんなことをしたかと調べられたら、お前は何にも云わずに泣いていればい。唯それだけのことだとお久は云った。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お前からいふと、おれ虚弱きよじやくだからとひたからうが、俺からいふとお前が強壯きやうさうぎるとひたいね。しか他一倍ひといちばい喧嘩けんくわをするからいぢやないか。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)