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単衣
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ふりがな文庫
“
単衣
(
ひとへ
)” の例文
旧字:
單衣
二十七日の十時に船はポオト・サイド港に
入
(
い
)
り申し
候
(
さふら
)
ひき。暑気
俄
(
にはか
)
に加はり、薄き
単衣
(
ひとへ
)
となりて
甲板
(
かふばん
)
に
居
(
を
)
り
候
(
さふら
)
へど堪へ難くも
候
(
さふらふ
)
かな。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
銘仙
矢絣
(
やがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
に、白茶の
繻珍
(
しゆちん
)
の帯も
配色
(
うつり
)
がよく、
生際
(
はえぎは
)
の美しい髪を油気なしのエス巻に結つて、幅広の
鼠
(
ねず
)
のリボンを生温かい風が煽る。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
絶え入るやうな悲鳴が続いて、明石縮らしい
単衣
(
ひとへ
)
の肩の辺に出来た赤黒い
汚点
(
しみ
)
が、見る見る裡に胸一面に拡がつて行くのだつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
三千代は
何
(
なに
)
にも答へずに
室
(
へや
)
の
中
(
なか
)
に
這入
(
はいつ
)
て
来
(
き
)
た。セルの
単衣
(
ひとへ
)
の
下
(
した
)
に襦袢を
重
(
かさ
)
ねて、
手
(
て
)
に大きな白い
百合
(
ゆり
)
の
花
(
はな
)
を三本
許
(
ばかり
)
提
(
さ
)
げてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
船室に残つてゐた
単衣
(
ひとへ
)
と夏帽子とを棺に入れて
舁
(
かつ
)
ぎ、お袋さんがおい/\泣きながら棺の後について行つてH院の共同墓地に埋めましたがね
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
▼ もっと見る
「飛んだこと、
何
(
ど
)
んなダラシの無い奥様でも、まさか十月になる迄、旦那様に
単衣
(
ひとへ
)
をお着せ申しては置きませんからネ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
かかるけはひの、いと
香
(
かう
)
ばしくうち匂ふに、顔もたげたるに、
単衣
(
ひとへ
)
うち掛けたる几帳のすきまに、暗けれど、うち身じろぎ寄る気はひ、いと
著
(
しる
)
し。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又立てつゞけに、一人でのみこんで、殆ど房一に口を開く隙を与へないこの男は、セルの
単衣
(
ひとへ
)
を着て、その上に太い白帯をぐるぐる巻きにしてゐた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
居て見、首筋が薄かつたと
猶
(
なほ
)
ぞいひける、
単衣
(
ひとへ
)
は
水色
(
みづいろ
)
友仙
(
ゆふぜん
)
の涼しげに、
白茶
(
しらちや
)
金
(
きん
)
らんの丸帯少し幅の狭いを結ばせて、庭石に下駄直すまで時は移りぬ。
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
実際平安朝は表面は衣冠束帯
華奢
(
くわしや
)
風流で文明くさかつたが、伊勢物語や源氏物語が裏面をあらはしてゐる通り、十二
単衣
(
ひとへ
)
でぞべら/\した女どもと
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
茶柳条
(
ちやじま
)
のフラネルの
単衣
(
ひとへ
)
に
朝寒
(
あささむ
)
の羽織着たるが、御召
縮緬
(
ちりめん
)
の染直しなるべく見ゆ。貫一はさすがに聞きも流されず
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
お末が
単衣
(
ひとへ
)
の上に羽織を着て、メレンスの結び下げの男帯の代りに、後ろの見えないのを幸ひに一とまはりしかない短い女帯をしめるやうになつた頃から
お末の死
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
……
旅
(
たび
)
の
単衣
(
ひとへ
)
のそゞろ
寒
(
さむ
)
に、
膚
(
はだ
)
にほの
暖
(
あたゝ
)
かさを
覚
(
おぼ
)
えたのは一
杯
(
ぱい
)
のカクテルばかりでない。
焚火
(
たきび
)
は
人
(
ひと
)
の
情
(
なさけ
)
である。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
双子縞
(
ふたこじま
)
の
単衣
(
ひとへ
)
に黒い小倉の角帯をしめ、或は赤ン坊の様に周囲を剃り落し、真中を固く饅頭形に残してあつた。丁度お椀の蓋でも被つて居るやうなものであつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
十二
単衣
(
ひとへ
)
に於ける色
襲
(
がさ
)
ねの美を見るやうに、一枚の切抜きを又一枚の別のいろ紙の上に
貼
(
は
)
りつけ、その色の調和や対照に妙味尽きないものが出来るやうになつた。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
麦稈帽
(
むぎわらばう
)
をかぶつた
単衣
(
ひとへ
)
に
絽
(
ろ
)
の古びた羽織を着たかれの姿は、午後の日の暑く照る
田圃道
(
たんぼみち
)
を静かに動いて行つた。町は
市日
(
いちび
)
で、近在から出た百姓がぞろ/\と通つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
本堂の
廊下
(
らうか
)
には
此処
(
こゝ
)
で
夜明
(
よあか
)
ししたらしい
迂散
(
うさん
)
な男が今だに
幾人
(
いくにん
)
も
腰
(
こし
)
をかけて
居
(
ゐ
)
て、
其
(
そ
)
の中には
垢
(
あか
)
じみた
単衣
(
ひとへ
)
の
三尺帯
(
さんじやくおび
)
を解いて平気で
褌
(
ふんどし
)
をしめ直してゐる
奴
(
やつ
)
もあつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
小弁慶の
単衣
(
ひとへ
)
を着た男は、相手が猪口をとり上げたのを見ると、早速徳利の尻をおさへながら
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は薄い
筒袖
(
つゝそで
)
の
単衣
(
ひとへ
)
もので、姉の死体の横はつてゐる仏間で、私のちよつと上の兄と、久しぶりで顔を合せたり、姉が懇意にしてゐた尼さんの若いお弟子さんや、光瑞師や
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
その翌朝早く
姉妹
(
きやうだい
)
は身仕度し、子供等にも
単衣
(
ひとへ
)
を着更へさせ、婆やに留守を頼んで置いて、
冷
(
すゞ
)
しいうちに家を出た。長ちやんは近道をよく知つて居てズン/\先へ歩いて行く。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
壁にはおせいの紫めいせんの
単衣
(
ひとへ
)
や、シュミーズや、富岡の
浴衣
(
ゆかた
)
の寝巻がぶらさがつてゐた。
観音開
(
くわんおんびら
)
きのダイヤガラスのはいつた窓には赤い塗りの小さい姫鏡台が置いてあつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
彼の
単衣
(
ひとへ
)
はへなへなにしとつて体にまつはりつき、彼の足のうらは脂汗のためにねちこちして、坐つて居る時にはその足の汗と変な温かさとが彼の尻に伝うて来て、蚤は好んでそこに集つて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
銘仙絣
(
めいせんがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
が一枚と、柄のいゝ真岡の
浴衣
(
ゆかた
)
とがちやんと仕立ててあるのを出して、これはこなひだ近々にお暇乞に行くといふ手紙を出して置いたので、奥さんが内証で拵へといて渡されたのだから
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
ほととぎす山に
単衣
(
ひとへ
)
を著れば啼く何を著たらば君の帰らん
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
立枠
(
たてわく
)
模様の
水浅葱
(
みづあさぎ
)
、はでな
単衣
(
ひとへ
)
を
著
(
き
)
たれども
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
乳あらはに女房の
単衣
(
ひとへ
)
襟浅き
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
を脱いで、明石縮の
単衣
(
ひとへ
)
に換へた。手提を取り上げた。彼女の小さい心は、今狂つてゐた。もう何の思慮も、分別も残つてゐなかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
ふつと
斯
(
こん
)
な事が胸に浮んだ。今日に限つて特別に阿母さんの
身体
(
からだ
)
が鉄色の
銚子縮
(
てうしちヾみ
)
の
単衣
(
ひとへ
)
の下に、ほつそりと、白い
骨
(
ほね
)
計りに見えた様な気がする。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
あさましく覚えて、ともかくも、思ひわかれず、やをら起き出でて、
生絹
(
すずし
)
なる
単衣
(
ひとへ
)
一つ着て、すべり出にけり。君は入りたまひて、ただ一人
臥
(
ふ
)
したるを、心やすく
思
(
おぼ
)
す。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと其群の一人——古い手拭を
被
(
かぶ
)
つて
縞
(
しま
)
の
単衣
(
ひとへ
)
を裾短かに端折つた——が何か用が出来たと見えて、急いで自分の方へ下りて来た……と……思ふと、二人は顔を見合せた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
鬘
(
かつら
)
ならではと見ゆるまでに
結做
(
ゆひな
)
したる
円髷
(
まるわげ
)
の漆の如きに、
珊瑚
(
さんご
)
の
六分玉
(
ろくぶだま
)
の
後挿
(
うしろざし
)
を点じたれば、更に
白襟
(
しろえり
)
の
冷豔
(
れいえん
)
物の
類
(
たぐ
)
ふべき無く、
貴族鼠
(
きぞくねずみ
)
の
縐高縮緬
(
しぼたかちりめん
)
の
五紋
(
いつつもん
)
なる
単衣
(
ひとへ
)
を
曳
(
ひ
)
きて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
愛嬌
(
あいきょう
)
のある男だそうで、その時は紺の
越後縮
(
えちごちぢみ
)
の
帷子
(
かたびら
)
に、下へは
白練
(
しろねり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
を着ていたと申しますが、とんと先生のお書きになるものの中へでも出て来そうじゃございませんか。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其時
(
そのとき
)
、
頤
(
あぎと
)
の
下
(
した
)
へ
手
(
て
)
をかけて、
片手
(
かたて
)
で
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
た
単衣
(
ひとへ
)
をふわりと
投
(
な
)
げて
馬
(
うま
)
の
目
(
め
)
を
蔽
(
おほ
)
ふが
否
(
いな
)
や
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今しも書生の門前を
噂
(
うはさ
)
して過ぎしは、此の
女
(
ひと
)
の上にやあらん、
紫
(
むらさき
)
の
単衣
(
ひとへ
)
に赤味帯びたる髪
房々
(
ふさ/\
)
と垂らしたる十五六とも見ゆるは、
妹
(
いもと
)
ならん、
去
(
さ
)
れど
何処
(
いづこ
)
ともなく
品格
(
しな
)
いたく
下
(
くだ
)
りて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「何か私共でも節ちやんに祝つて
進
(
あ
)
げたいが……要りさうな物を
左様
(
さう
)
言つて下さいな……紋附の羽織にでもしませうか、それともこれからのことですから
単衣
(
ひとへ
)
のやうな物が可いか。」
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
色沢
(
いろつや
)
の悪い顔を、
土埃
(
ほこり
)
と汗に汚なくして、小い竹行李
二箇
(
ふたつ
)
を
前後
(
まへうしろ
)
に肩に掛け、
紺絣
(
こんがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
の裾を高々と端折り、重い物でも曳擦る様な
足調
(
あしどり
)
で、松太郎が初めて南の方からこの村に入つたのは
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
代助は
家
(
いへ
)
を
出
(
で
)
る
前
(
まへ
)
に、
昨夕
(
ゆふべ
)
着
(
き
)
た
肌着
(
はだぎ
)
も
単衣
(
ひとへ
)
も悉く
改
(
あらた
)
めて
気
(
き
)
を
新
(
あらた
)
にした。
外
(
そと
)
は寒暖計の
度盛
(
どもり
)
の日を
逐
(
お
)
ふて
騰
(
あが
)
る
頃
(
ころ
)
であつた。
歩
(
ある
)
いてゐると、
湿
(
しめ
)
つぽい
梅雨
(
つゆ
)
が却つて待ち
遠
(
とほ
)
しい程
熾
(
さか
)
んに
日
(
ひ
)
が
照
(
て
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
紬
(
つむぎ
)
の
単衣
(
ひとへ
)
に白ちりめんの帯を巻きて、鼻の下に薄ら
髯
(
ひげ
)
のある三十位のでつぷりと
太
(
ふとり
)
て見だてよき人、小さき紙に川村太吉と書て張りたるを読みて此処だ此処だと車よりおりける、姿を見つけて
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
身のまはりには
単衣
(
ひとへ
)
ものより持ち合せて居ない彼も
震
(
ふる
)
へた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
おくみは
単衣
(
ひとへ
)
のメレンスの長襦袢の
褄
(
つま
)
をくけながら言つた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
と
鄭寧
(
ていねい
)
に云つて再び
答
(
こたへ
)
を促した。阿母さんは未だ
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。見ると、
晃
(
あきら
)
兄
(
にい
)
さんの
白地
(
しろぢ
)
の薩摩
絣
(
がすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
の
裾
(
すそ
)
を両手で
握
(
つか
)
んだ儘阿母さんは泣いて居る。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
新しく出来た住職は、四十二三位で、延びた五分刈頭、
鉄縁
(
てつぶち
)
の強度の眼鏡、
単衣
(
ひとへ
)
にぐる/\巻いたへこ帯、ちよつと見ては
何
(
ど
)
うしても僧侶とは思へないやうな
風采
(
ふうさい
)
であつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
愛嬌
(
あいけう
)
のある男ださうで、その時は紺の
越後縮
(
ゑちごちぢみ
)
の
帷子
(
かたびら
)
に、下へは
白練
(
しろねり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
を着てゐたと申しますが、とんと先生のお書きになるものの中へでも出て来さうぢやございませんか。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
生
(
なま
)
ぬるい
風
(
かぜ
)
のやうな
気勢
(
けはひ
)
がすると
思
(
おも
)
ふと、
左
(
ひだり
)
の
肩
(
かた
)
から
片膚
(
かたはだ
)
を
脱
(
ぬ
)
いたが、
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
脱
(
はづ
)
して、
前
(
まへ
)
へ
廻
(
まは
)
し、ふくらんだ
胸
(
むね
)
のあたりで
着
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
た
其
(
そ
)
の
単衣
(
ひとへ
)
を
丸
(
まろ
)
げて
持
(
も
)
ち、
霞
(
かすみ
)
も
絡
(
まと
)
はぬ
姿
(
すがた
)
になつた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
これで麻の羽織に紋付の
単衣
(
ひとへ
)
、小倉の袴を新調して、初めて江戸以来の着物を脱いだわけである。しかもその羽織たるや大変なもので、浅黄地の袖を、忠臣蔵の義士の様に、だんだら染めにした。
大衆維新史読本:07 池田屋襲撃
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
梅ちやんの着てゐる
紺絣
(
こんがすり
)
の
単衣
(
ひとへ
)
、それは嘗て智恵子の
平常着
(
ふだんぎ
)
であつた!
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
客去りて
車轍
(
くるま
)
の
迹
(
あと
)
のみ
幾条
(
いくすぢ
)
となく砂上に
鮮
(
あざや
)
かなる山木の玄関前、庭下駄のまゝ
枝折戸
(
しをりど
)
開けて、二人の
嬢
(
むすめ
)
の手を
携
(
たづさ
)
へて現はれぬ、姉なるは白きフラネルの
単衣
(
ひとへ
)
に、
漆
(
うるし
)
の如き黒髪グル/\と
無雑作
(
むざふさ
)
に
束
(
つか
)
ね
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
貫一は唯不思議の
為体
(
ていたらく
)
に
呆
(
あき
)
れ惑ひて
言
(
ことば
)
も
出
(
い
)
でず、
漸
(
やうや
)
く泣ゐる彼を
推斥
(
おしの
)
けんと為たれど、
膠
(
にかは
)
の附きたるやうに取縋りつつ、益す泣いて泣いて止まず。涙の
湿
(
うるほひ
)
は
単衣
(
ひとへ
)
を
透
(
とほ
)
して、この
難面
(
つれな
)
き人の
膚
(
はだへ
)
に
沁
(
し
)
みぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と保雄は
怒鳴
(
どな
)
つた。二番目の
抽出
(
ひきだし
)
からは二人の男の子の
着類
(
きるゐ
)
が出て来た。皆洗ひ晒しの木綿物の
単衣
(
ひとへ
)
計
(
ばか
)
りであつた。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
そこで、
栞
(
しをり
)
代りに、名刺を本の間へはさんで、それを籐椅子の上に置くと、先生は、落着かない
容子
(
ようす
)
で、銘仙の
単衣
(
ひとへ
)
の前を直しながら、ちよいと又、鼻の先の岐阜提灯へ眼をやつた。
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“単衣”の意味
《名詞》
(たんい)一重の着物。単物。
「ひとえぎぬ」参照。
(出典:Wiktionary)
“単衣”の解説
単衣(ひとえ、単)とは、平安装束で着用する裏地のない着物のこと。
(出典:Wikipedia)
単
常用漢字
小4
部首:⼗
9画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“単衣”で始まる語句
単衣物
単衣襲
単衣帯
単衣絣
単衣帛髪
単衣羽織
単衣跣足