)” の例文
深谷の姿はドアがほとんど八目どころまで開いたのに見えなかった。まるでドアが独りでに開いたようだった。安岡はゾッとした。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼は一位の幕の隙間から、おずおずと外を覗いて見た。だが、安心したことには、そこには彼を見つめている一つの顔もなかった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二分ずつ、り減らされてゆくのではあるまいか——どうりんを絶した使い手にしろ、疲れぬ肉体というものを持っている筈がない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇蹟なきに世キリストの教へに歸依きえせば、是かへつて一の大いなる奇蹟にて、他の凡ての奇蹟はその百一にも當らじ 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「成程八日目に神農樣の罰が當つて死んぢや、が惡いな。——川柳せんりうにはうまいのがあるよ、『神農は時々腹も下して見』とね」
「本当に危なかったわ。ほんの二、三くらいだったわ。わたしの額のところを、弾丸がすっと通っていったの、はっきりと分かってよ」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
またこれをたとへばあらまし三百六十五文はらふべき借金しやくきんを、毎月まいつき二十九文五づゝの濟口すみくちにて十二はらへば一年におよそ十一文づゝの不足ふそくあり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
地震直後ぢしんちよくごから大正たいしやう十三四ねんごろまでのやうに十ドル以上いじやうさがつたこともあるけれども、平均へいきんしてづ四乃至ないしさがつてると状況じやうきやうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
と、言うが早いか、どんぶりの水を口にもってゆかずに、一、二りの赤い熱頭にえあたまの上へ、こごんだまま、ザブッとぶっかけてしまった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と一りんおなじことを、おなじ調子でいうんですもの。私のかどへ来ましたまでに、遠くからちょうど十三たび聞いたのでございます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
というのは監獄のはいわゆる四めしとかで南京米なんきんまいが四割入っているようだが、部落には白い米などはただの一粒もなかったからである。
国内に流通する小判、一判なぞがどんどん海の外へ流れ出して行き、そのかわりとして輸入せらるるものの多くは悪質な洋銀であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大きいのでせいぜい二、三四方、小さいのは虫眼鏡ででも見なければならないような色紙の片が漉き込まれているのである。
浅草紙 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その中に砂を深さ五ばかり入れてならし、その上に白砂糖を薄くいて又砂を入れるという風に何段にもして、砂を一杯入れるのである。
一年は三百六十五日、過ぐるはつかの間である。七日とは一年の五十一にも足らぬ。右の手を挙げて左の指を二本加えればすぐに七である。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ幾分か優しいように着こなすだけであって着物の仕立方したてかたは同じ事である。帯は幅一すん位、たけは八尺位、まあ細帯ほそおびのようなものです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
手から一の何十分の一の外の手套の上には一旦溶けた雪が更に氷つて指の屈伸の跡を殘して氷り附いてゐる。それを囓る。
佐渡が島のこと (旧字旧仮名) / 江南文三(著)
主人は云い訳を云ったが、要するに五桐火鉢では儲からない、ということであり、売れただけの払いということであった。
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うっすりとあるかなきかのまゆの下にありあまる肉をかろうじて二三上下うえしたに押し分けつつ開きし目のうちいかにも春がすみのかけたるごとく
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
が、今、そうして保名やすな狂乱もどきにボンヤリ突っ立ってる喬之助には、玄蕃の剣眼けんがんから見て、正に一りんの隙もないのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのときすでに研究けんきゅうは、九どおりできあがっていたんだ。その大体だいたいのことは、浮浪者ふろうしゃがもちげしたノートに、暗号あんごうをつかって書いてある。
一グラムとは一もんめまうして三ゲレンとは三わりにして硝盃コツプに三十てきはんゲレンぢやが、見てういふ工合ぐあいにするのだ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにれはれたものだ、うやつてうするとひながら急遽あわたゞしう七尻端しりはしをりて、其樣そんゆわひつけなんぞよりれが夾快さつぱりだと下駄げたぐに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
天明調はどこまでも引しめて五もすかぬやうに折目正しく着物きもの着たらんが如く、天保調はのろまがはかまを横に穿うがちて祭礼のぜに集めに廻るが如し。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そのかわりおれいは二まではずもうし、羽織はおりもおまえ進呈しんていすると、これこのとおりお羽織はおりまでくだすったんじゃござんせんか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「あの垣根かきねの竹が今朝けさはまだ出なかったの……それが今はあんなに出てしまって五ばかり下が透いたから、なんでも一寸五分くらいは引いたよ」
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
崩れ落ちた壁間かべまをのぞくと、そこらいちめん、ぞっとするような白蟻の巣で、五ぐらいの長さの白蟻の子供が、白いネバネバしたものを吐きながら
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
普請ふしんはもう八どおりも進行しんこうしてり、大工だいくやら、屋根職やねややらが、いずれもいそがしそうに立働たちはたらいているのがえました。
「そうです。多分この中に入っていたのでしょう」彼はそう答えながら、直径二位の硝子の管の破片を見せた。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
風袋ふうたいくと四百八もんめか、どうしたいくつだ廿六かな、さうするとひとつが」商人あきんどのいひをはらぬうちにおしな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もちろん、夫子の云われる所は九りんまで常にあやまり無き真理だと思う。また夫子の行われる所は九分九厘まで我々の誰もが取ってもってはんとすべきものだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
古藤は何か自分一人ひとりで合点したと思うと、堅く腕組みをしてこれも自分の前の目八の所をじっと見つめた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なし漸く金一兩一分ときまり直八は道具屋に向ひは付たが金子の持合もちあはせは少々せう/\不足ふそくだがやうやして是を手付として置て行ませうと金一取出し翌日あすあさのこりの金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
固唾かたずを呑んで眼をみはった。向うから来るのは私の乗機と一りん違わぬ陸上の偵察機である。搭乗者も一人らしい。機のマークや番号はむろん見えないが……。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何時いつもならば文三にもと言うところを今日は八したゆえ、お鍋が不審に思い、「お二階へは」ト尋ねると、「ナニ茶がカッくらいたきゃア……いわないでもいいヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ゆえに世に処するものは悪口の六、七は聞流しにすべきもの、意にかいする価値なきものと僕は信ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
忙しい家の嫁や娘は、一日にせいぜい五か一すん、一枚に十年もかかったというものを自慢にしていた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
随分ずいぶん永く——家に十八年も居たんで御座ございますよ。大きくなっておりましたそうです。もう、耳なんか、厚ぼったく、五ぐらいになっていたそうで御座ございますよ。
「ああしんど」 (新字新仮名) / 池田蕉園(著)
その時ラザレフは、最初五ばかりに残った蝋燭をともして、扉の前に立ったのだが、左手が不髄なために一まず手燭を床の上においてから、扉を細目に開いたのだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
もっともお召縮緬を着たのは、あなが奢侈しゃしと見るべきではあるまい。一たん一朱か二分二朱であったというから、着ようと思えば着られたのであろうと、保さんがいう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ふたりは、そのじぶん、上手じょうずでひょうばんの美容師びようしをよんで、頭のかざりから足のくつ先まで、一のすきもなしに、すっかり、流行りゅうこうのしたくをととのえさせました。
但し親方にをはねられるから一円に満たない。問屋のもうけは「五十」一本で凡そ五銭故、その利は比較出来ず大きい。石は野天掘のてんぼりもあるが、大概は中に掘って行く。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大名だいみやう行列ぎやうれつても、五々々/\とほれるといふほどの權威けんゐのあるものに、玄竹げんちく藥箱くすりばこ出世しゆつせした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なるほどなるほどと自分は感心して、小短冊こたんじゃく位の大きさにそれをって、そして有合せの味噌みそをその杓子しゃくしの背で五りんか七厘ほど、一とはならぬ厚さにならしてりつけた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
湯は三口目に一ほど減った。しかし四口目の頭は何時までたっても枕の上から上らなかった。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
それはさしわたし五分ぐらゐの皿形の頭にわづかにそりをうつた短い柄がついてるので、あつにできてるために柄の端を指でもつてみるとちよいと重いといふ感じがする。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
「さあ、もう、引きあげよう。」五程になった煙草を、足のさきでもみ消しながら考えた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
犬には寒さを防ぐ為に大抵物が着せてある。腰から以下を二がりにし上半身の毛を長く伸ばして獅子の形にした犬などは憎さげだ。夫婦づれで乳母車を押して来るのもある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
結局、どちらにがあるといふこともない儘に、紛糾いざこざはいつ果てるともつかなかつた。……
ふるさとびと (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
髪結床かみゆいどこの株を持っていまして、それから毎月三ほど揚がるとかいうことで、そのほかに叔父の方から母の小遣いとして、一分いちぶずつ仕送ってくれますので、あわせて毎月一両
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)