何方いづかた)” の例文
文中里恵のために分疏して、「当方後室も泉蔵様始家内御一統へ宜申上候様被申付候、未大喪中同人よりは何方いづかたへも書状相控罷在候」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
渡さんと思ひしがまてしばし主人が八山へ參り町奉行の威光ゐくわうを落すなと仰られしはこゝなりと平石は態と聲高こわだかに拙者は何方いづかたに參るも帶劔を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
明日より何方いづかたへ行かむとするぞ。汝が魂、何処いづこにか在る。今までの生涯は夢なりしか。うつゝなりしか。まこと人の心に神も仏も無きものか。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おんあるひと二年目にねんめせていまあるじ内儀樣かみさま息子むすこ半次はんじはぬもののみなれど、此處こゝ死場しにばさだめたるなればいやとてさら何方いづかたくべき
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何方いづかたから来て何方へ行くか少しも見当がつかぬ。しかし火星の人が暗黒星を示すに用いる信号は分かっている。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
事もなげにこちらに近より、男のすぐ前を通りて何方いづかたへか行き過ぎたり。この人はその折の恐ろしさより煩ひ始めて、久しく病みてありしが、近き頃せたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
誰か知る、山の腰低く垂れて翼なき族人たびびともなほ登るをうるは何方いづかたなるやを。 五二—五四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
近江の石亭が雲根志うんこんしにいはく(前編灵異之部)信濃国高井郡渋湯しぶゆ村横井温泉寺の前に星河とてはゞ三町ばかりの大河あり、温泉寺の住僧遷化せんげの前年に、此河中へ何方いづかたよりともなく
何方いづかたにも出づる事能はじと思ひつゝ行けば、路は俄に思ひもよらぬ岩石の間を縫ひて、遙かに前山の麓に通じ、更に劍拔矗立したる材木の如き岩を繞りて、猶も奧なる山間に達す。
日光山の奥 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
何方いづかたより一銭の入金もあるまじきをおもへば、こゝに思慮をめぐらさゞるべからず。
一葉の日記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
……いにしへ見し人は、二三十人が中に、僅に一人ひとり二人ふたりなり。あしたに死し、ゆふべに生まるるならひ、ただ水のあわにぞ似たりける。知らず、生れ死ぬる人、何方いづかたより来りて、何方いづかたへか去る。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
横笛愈〻こゝろまどひて、人の哀れを二重ふたへに包みながら、浮世の義理のしがらみ何方いづかたへも一言のいらへだにせず、無情と見ん人の恨みを思ひやれば、身の心苦こゝろぐるしきも數ならず、夜半の夢屡〻しば/\駭きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
奥州筋おうしうすぢ近来きんらい凶作きようさく此寺このてら大破たいはおよび、住持ぢうじとなりても食物しよくもつとぼしければそう不住すまず明寺あきでらとなり、本尊ほんぞんだに何方いづかた取納とりおさめしにやてらにはえず、には草深くさふかく、まこと狐梟こけうのすみかといふもあまりあり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何方いづかたトモナク迷ヒ行ケリ、(中略)其外治部少輔ぢぶせういうガ息女ドモ多カリシガ、天下免許ヲ蒙リテ都ノ傍ニたゝずミケレドモ、人ノ情ハ世ニ有ル程昨日ニカハル習ナレバ、洛中ニすみカネテ西山辺ニ身ヲのが
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何方いづかたの雲路にわれも迷ひなん月の見るらんこともはづかし
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何方いづかたゆ流れ来ぬるや、黒星よ、真北の空に
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何方いづかたに向きて長ぜむ。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
夜々よよの通ひは何方いづかた
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくさんと云るをきゝ共に涙にくれたりしがやがてお文は父母ふたおやの前にたり兩手をつきたゞ今お兩方樣ふたかたさまのおはなしを承まはり候に父樣は何方いづかたへかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
恩ある人は二年目に亡せて今のあるじ内儀様かみさまも息子の半次も気に喰はぬ者のみなれど、此処を死場と定めたるなればやとて更に何方いづかたに行くべき
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
全体哲学者と理学者とはよくしのぎ合わんとして争う者だが、何方いづかたが事実の上に勝つのか知らん。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
一市間ひといちあひに一度か二度、同じやうなる人四、五人集まり来て、何事か話をなし、やがて何方いづかたへか出て行くなり。食物など外より持ち来たるを見れば町へも出ることならん。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
近江の石亭が雲根志うんこんしにいはく(前編灵異之部)信濃国高井郡渋湯しぶゆ村横井温泉寺の前に星河とてはゞ三町ばかりの大河あり、温泉寺の住僧遷化せんげの前年に、此河中へ何方いづかたよりともなく
たのみ彼の金子を以て何方いづかたへか住込仕送しおくり用人に成んと心掛けしに幸ひ嘉川家にて仕送り用人を召かゝへたしとのことに付多兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてもあやしや車上しやじやうひと萬世橋よろづよばしにもあらず鍋町なべちやうにもあらず本銀町ほんしろかねちやうぎたり日本橋にほんばしにもとゞまらず大路おほぢ小路こうぢ幾通いくとほりそも何方いづかたかんとするにか洋行やうかうして歸朝きてうのちつま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こゝのあるじに行逢ゆきあひ何方いづかたへとたづねければ稲倉いなくら村へゆくとて行過ゆきすぎ給ひぬ。
はゝこゝろ何方いづかたはしれりともらで、ちゝきれば乳房ちぶさかほせたるまゝおもことなく寐入ねいりちごの、ほゝ薄絹うすぎぬべにさしたるやうにて、何事なにごとかたらんとや折々をり/\ぐる口元くちもとあいらしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
眞直まつすぐにとこたへて此處こゝにもくるまめんとはせず日本橋迄にほんばしまできたしといふになにかはらねどことばとほり、河岸かしにつきてまがりてくれよ、とは何方いづかたみぎひだりか、ひだりへいやみぎかたへとまた一横町ひとよこちやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母が心の何方いづかたに走れりとも知らで、乳にきれば乳房に顔を寄せたるまゝ思ふ事なく寐入ねいりちごの、ほう薄絹うすぎぬべにさしたるやうにて、何事を語らんとや、折々をり/\ぐる口元の愛らしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此處を死場と定めたるなれば厭やとて更に何方いづかたに行くべき、身は疳癪に筋骨つまつてか人よりは一寸法師一寸法師とそしらるゝも口惜しきに、吉や手前は親の日になまぐさをやつたであらう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たヾねかしとすてものにして、部屋へやよりそとあしさず、一心いつしんくやめては何方いづかたうつたふべき、先祖せんぞ耻辱ちじよく家系かけいけがれ、兄君あにぎみ面目めんもくなく人目ひとめはずかしく、我心わがこヽろれをめてひる
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
糸子いとこさまにははやさだまるひとおはすなりそれゆゑのおことはりぞと莞爾につこめば、家從かじゆうすこすゝませて、はじめてうけたまはりたり何方いづかたへの御縁組ごえんぐみにやくるしからずはおほせきけられたしと雪三せつざうおもてキツとれば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きつはなして急催促きふさいそく言譯いひわけすべきほどもなくたちま表向おもてむきの訴訟沙汰そしようざたとはれりけるもと松澤まつざは數代すだい家柄いへがら信用しんようあつければ僅々きん/\せん二千にせんかね何方いづかたにても調達てうたつ出來得できうべしと世人せじんおもふは反對うらうへにて玉子たまご四角しかくまだ萬國博覽曾ばんこくはくらんくわいにも陳列ちんれつ沙汰さた
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昨日きのふ何方いづかた宿やどりつるこゝろとてかはかなくうごめては中々なか/\にえもまらずあやしやまよふぬばたまやみいろなきこゑさへにしみておもづるにもふるはれぬ其人そのひとこひしくなるとともはづかしくつゝましくおそろしくかくはゞわらはれんかく振舞ふるまはゞいとはれんと仮初かりそめ返答いらへさへはか/″\しくは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)