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仇
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あだ
ふりがな文庫
“
仇
(
あだ
)” の例文
彫刻といふものに何の理解もない法王は、この芸術家の折角の注文を
仇
(
あだ
)
に聞き過して、どうしても定めの椅子につかうとしなかつた。
茶話:11 昭和五(一九三〇)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
御夢想
(
ごむさう
)
の
藥
(
くすり
)
ぢやに……
何
(
なん
)
の
病疾
(
やまひ
)
も
速
(
すみや
)
かに
治
(
なほ
)
るで、
買
(
か
)
ひないな……
丁
(
ちやう
)
ど、
來合
(
きあ
)
はせたは、あなた
樣
(
さま
)
お
導
(
みちび
)
きぢや……
仇
(
あだ
)
には
思
(
おも
)
はれますな。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
情
(
つれ
)
なかりし昔の報いとならば、此身を
千千
(
ちゞ
)
に
刻
(
きざ
)
まるゝとも
露壓
(
つゆいと
)
はぬに、
憖
(
なまじ
)
ひ
仇
(
あだ
)
を
情
(
なさけ
)
の御言葉は、心狹き妾に、恥ぢて死ねとの御事か。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
年齢のころは、見たところ二十四か五といったところだったが、たいへん
仇
(
あだ
)
っぽいところから、或いはもっと年増なのかも知れない。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
もう三十二三にはなっているのだろう、着崩れた着物の下から、何か
仇
(
あだ
)
めいた匂いがして
窶
(
やつ
)
れた河合武雄と云ってもみたい女だった。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
われを君が
仇
(
あだ
)
と
思
(
おぼ
)
し給ふ
勿
(
なか
)
れ、われは君のいづこに
在
(
いま
)
すかを
辨
(
わきま
)
へず、また見ず、また知らず、
唯
(
たゞ
)
この涙に
暮
(
く
)
るゝ
面
(
おもて
)
を君の方に向けたり。
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
第十五条
怨
(
うらみ
)
を構へ
仇
(
あだ
)
を報ずるは、野蛮の陋習にして卑劣の行為なり。恥辱を
雪
(
そそ
)
ぎ名誉を全うするには、
須
(
すべか
)
らく公明の手段を
択
(
えら
)
むべし。
修身要領
(新字旧仮名)
/
福沢諭吉
、
慶應義塾
(著)
当のおせきにも分っていた——がいわゆる
仇
(
あだ
)
をなして隠然公然、多くの男の慰み者に堕し、うまく立廻って小金は蓄めたか知れないが
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
と、格子戸の奥の障子が、土間をへだてて明るみ、やがて障子が開き
行燈
(
あんどん
)
をさげた
仇
(
あだ
)
っぽい女が、しどけない姿をあらわしました。
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「幸吉は挙げられている。——成瀬屋に
仇
(
あだ
)
をするのが幸吉でないという証拠は、幸吉がいない時、なんか凄いことをやるに限るだろう」
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その上、重く堅い
巌
(
いわお
)
を火の力により
劈
(
つんざ
)
き、山形にわたくしを積み上げさせたということは、
仇
(
あだ
)
おろそかのすさびに出来る仕事ではない。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
イヤ、愚かものである丈けに、我身の危険などは顧みず、ただ恨みに燃えて、同類を裏切った首領に
仇
(
あだ
)
を報いようとするかも知れない。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこには
仇
(
あだ
)
があり、迫害があり、うるさい情実や
陥穽
(
かんせい
)
があるにしても、土地そのものだけには懐かしまずにはいられない力がある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「分りません。しかし、いまにきっと現われますよ、奴はヤンセンの
仇
(
あだ
)
を討つために、どこかで僕を狙っているに違いありませんからね」
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
尚
(
なお
)
も並木で五割
酒銭
(
さかて
)
は天下の法だとゆする、
仇
(
あだ
)
もなさけも一日限りの、人情は薄き掛け
蒲団
(
ぶとん
)
に
襟首
(
えりくび
)
さむく、
待遇
(
もてなし
)
は
冷
(
ひややか
)
な
平
(
ひら
)
の
内
(
うち
)
に
蒟蒻
(
こんにゃく
)
黒し。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼等の考えによると、戦争は怨みを植え
仇
(
あだ
)
を構える。そこで、各国共に今後は一層武を練り、軍艦製造所を設くれば兵器製造所をも増す。
列強環視の中心に在る日本
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
この本陣の奥ふかく紛れこんでいたのだが、その
自
(
みずか
)
ら名乗るごとく、旅のおんな占い師にしては、すこぶる
仇
(
あだ
)
すぎる風俗なので。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
唯懐
(
ただおもひ
)
を
亡
(
な
)
き人に寄せて、形見こそ
仇
(
あだ
)
ならず書斎の壁に掛けたる半身像は、
彼女
(
かのをんな
)
が十九の春の色を
苦
(
ねんごろ
)
に
手写
(
しゆしや
)
して、
嘗
(
かつ
)
て
貽
(
おく
)
りしものなりけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
も見ずに
迯
(
にげ
)
さりけり斯ることの早兩三度に及びし故
流石
(
さすが
)
の久八も
憤
(
いきど
)
ほり我が忠義の
仇
(
あだ
)
と
成事
(
なること
)
如何
(
いか
)
にも/\
口惜
(
くちを
)
しや今一度
逢
(
あう
)
て異見せん者を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
過日もさる物識りから承りましたが、
唐土
(
もろこし
)
の何とやら申す侍は、炭を呑んで
唖
(
おし
)
になってまでも、主人の
仇
(
あだ
)
をつけ狙ったそうでございますな。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人に
怨恨
(
えんこん
)
を有し
讐敵
(
しゅうてき
)
となるものは、死後も同様に考え、
冥土
(
めいど
)
に入りてそのうらみをむくい、その
仇
(
あだ
)
を報ずることと信じておる。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
その方は実務の人で忙しい体ですから、今も現にペテルブルグへ急いでおられます。かようなわけで一刻の時も
仇
(
あだ
)
やおろそかになりません。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
あるひは
反
(
そ
)
り返るほど
後
(
うしろ
)
に振向きたる若衆の顔を描き、半分しか見えざる
仇
(
あだ
)
な
身体付
(
からだつき
)
によりて
巧
(
たくみ
)
に余情を紙外に
溢
(
あふ
)
れしめたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「いや、それがかえって
仇
(
あだ
)
となるようでは、お互いに困るから、気をつけて帰り給え、君の旦那というのが、非常に腹を立っているそうだ」
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夫の
仇
(
あだ
)
を討とうという一心でござりますから、
顔色
(
かおいろ
)
の変ったのを見せまいと、一角の寝床へそっと来て、顔を横に致しまして
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
なおその上に神というものを認めて居りますけれども、どんな神でもあるいは腹を立てて人民に害を与え
仇
(
あだ
)
を加える事がある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
〽常から
主
(
ぬし
)
の
仇
(
あだ
)
な気を、知っていながら女房に、なって見たいの慾が出て、神や仏をたのまずに、義理もへちまの皮羽織……
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして失える希望と
仇
(
あだ
)
に過ごした光陰を歎く旧い悩みを喚びおこしながら、珍らしくも、ぼんやりと門前に立ちどまった。
孤独
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
だから晴賢討伐の勅命まで受けているが、それも政略的な意味で、必ずしも主君の
仇
(
あだ
)
に報ゆるという素志に、燃えていたわけではないのである。
厳島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
他は犬われは狐、とても
適
(
かな
)
はぬ処なれば、
復讐
(
あだがえし
)
も思ひ
止
(
とど
)
まりて、
意恨
(
うらみ
)
を
呑
(
のん
)
で過ごせしが。大王、
僕
(
やつがれ
)
不憫
(
ふびん
)
と
思召
(
おぼしめ
)
さば、わがために
仇
(
あだ
)
を返してたべ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
それをも
強
(
し
)
いて振り落して全く新しい天地を見出そうと
勉
(
つと
)
めているのである。その努力の効果は決して
仇
(
あだ
)
でない事は最近の作品が証明している。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
艶
(
つや
)
ッぽい
節廻
(
ふしまわ
)
しの身に
沁
(
し
)
み入るようなのに
聞惚
(
ききほ
)
れて、
為永
(
ためなが
)
の
中本
(
ちゅうほん
)
に出て来そうな
仇
(
あだ
)
な
中年増
(
ちゅうどしま
)
を想像しては能く
噂
(
うわさ
)
をしていたが、或る時尋ねると
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
然し、ともかく、精神病院の生活よりはマシであったことは確かであるから、二週間の野球見物を
仇
(
あだ
)
オロソカに思っているわけではないのである。
神経衰弱的野球美学論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もしや、過ぎし曲者の
由縁
(
ゆかり
)
の者にて、
仇
(
あだ
)
を報ぜんとするのでは有るまいか。油断のならぬと気着いた時に、ぞっとした。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
生
(
い
)
きた
相手
(
あいて
)
にいう
如
(
ごと
)
く、
如何
(
いか
)
にもなつかしそうに、
人形
(
にんぎょう
)
を
仰
(
あお
)
いだおせんの
眼
(
め
)
には、
情
(
なさけ
)
の
露
(
つゆ
)
さえ
仇
(
あだ
)
に
宿
(
やど
)
って、
思
(
おも
)
いなしか、
声
(
こえ
)
は一
途
(
ず
)
にふるえていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
その日を始めとして、美人鷹匠はその
仇
(
あだ
)
めいた姿を毎日空地に現わした。夕方引揚げる時には鳥籠は空っぽで、雀も鳩も売切れという
繁昌
(
はんじょう
)
ぶりだった。
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
そうして今度は前よりもウンと彼奴の金を使ってやるんだ。事によると彼奴めが俺に
仇
(
あだ
)
を討ち
終
(
おお
)
せた時が身代限りをしている時かも知れぬから見ておれ
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ある日、レーネットの
仇
(
あだ
)
は報ぜられた。——彼は印刷工場の仲間たちといっしょにいた。彼らは彼を好かなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それでも
爭
(
あらそ
)
はれぬ
證擔
(
しようこ
)
は、眼と眉がお房にそつくりで、若い時分はお房よりも
仇
(
あだ
)
ツぽい女であツたらうと思はれる。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
『でも、あの
樣
(
やう
)
に
澤山
(
たくさん
)
乘
(
の
)
つては
端艇
(
たんてい
)
も
沈
(
しづ
)
みませうに。』といふ、
我身
(
わがみ
)
の
危急
(
あやうき
)
をも
忘
(
わす
)
れて、
却
(
かへ
)
つて
仇
(
あだ
)
し
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
氣遣
(
きづか
)
ふ
心
(
こゝろ
)
の
優
(
やさ
)
しさ、
私
(
わたくし
)
は
聲
(
こゑ
)
を
勵
(
はげ
)
まして
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そう心に呟きながら、
猪口
(
ちょく
)
をはこぶ、彼女の
仇
(
あだ
)
ッぽい瞳に、ほんのりと浮んで来たのは、夜目にも、白く咲いた花のような、かの女がたの
艶顔
(
えんがん
)
だった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
未来の細君をもって
矚目
(
しょくもく
)
された本人へ
文
(
ふみ
)
をつけた恋の
仇
(
あだ
)
とは夢にも知らず、「やあ」と云って武右衛門君に軽く
会釈
(
えしゃく
)
をして
椽側
(
えんがわ
)
へ近い所へ座をしめた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
……手短かに言えば、つまりその、私が人類の
仇
(
あだ
)
悪魔につけいられるまでには、一年とはかからなかったのです。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
一年
(
ひととせ
)
と二月は
仇
(
あだ
)
に過ぎざりき、ただ
貴嬢
(
きみ
)
にはあまり早く来たり、われには
遅
(
おそ
)
く来たれり、
貴嬢
(
きみ
)
は
永久
(
とこしえ
)
に来たらざるを
希
(
こいねが
)
い、われは一日も早かれとまちぬ
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
置いて見たか解らないが、何時でも
是方
(
こっち
)
の親切が
仇
(
あだ
)
になる——貴様くらい長く世話したものも無い——それだけの徳が貴様には
具
(
そな
)
わっているというものだ
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
従って彼の「
船車
(
せんしゃ
)
にも積まれぬ御恩、
仇
(
あだ
)
で返す身のいたずら」というごとき言葉もきわめて空虚にしか響かない。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
そなたはいよいよ
神
(
かみ
)
として
祀
(
まつ
)
られることになり、
多年
(
たねん
)
連添
(
つれそ
)
った
良人
(
おっと
)
として
決
(
けっ
)
して
仇
(
あだ
)
やおろそかには
考
(
かんが
)
えられない。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
だが
口惜
(
くや
)
しかんべえ、なあお高! 人に
怨
(
うら
)
みがあるものか、ねえものか、鬼になって棚田の家に
仇
(
あだ
)
を返してやれ! 生き代り生まれ代って
祟
(
たた
)
りをしてやれ。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
涙
(
なみだ
)
か
藥鍋
(
くすりなべ
)
の
下
(
した
)
炭火
(
ずみび
)
とろ/\と
消
(
き
)
え
勝
(
がち
)
の
生計
(
くらし
)
とて
良醫
(
りやうい
)
の
手
(
て
)
にもかゝられねば
見
(
み
)
す/\
重
(
おも
)
り
行
(
ゆ
)
く
心
(
こゝろ
)
ぐるしさよ
思
(
おも
)
へば
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
も
神
(
かみ
)
も
佛
(
ほとけ
)
も
我爲
(
わがため
)
には
皆
(
みな
)
仇
(
あだ
)
か
今
(
いま
)
この
場合
(
ばあひ
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
血の出るほどの苦しき
金
(
かね
)
をも調達して最愛の妻や病児をも
跡
(
あと
)
に残して、あかぬ別れを
敢
(
あ
)
えてしたるなるに、慈愛はなかなか
仇
(
あだ
)
となりて、他に語るも恥かしと
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
仇
漢検準1級
部首:⼈
4画
“仇”を含む語句
仇敵
仇討
復仇
仇打
仇讐
仇人
恋仇
仇花
讐仇
仇光
仇英
仇口
仇十州
仇名
仇気
仇白
仇心
仇吉
仇家
仇敵視
...