雨風あめかぜ)” の例文
雨風あめかぜの患のない、人目にかゝる惧のない、一ばんらくにねられさうな所があれば、そこでともかくも、かさうと思つたからである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おや! お弟子の誰かでも帰って来たのかしら? と、立ち上ろうとすると、家を吹き飛ばしそうな、恐ろしい雨風あめかぜの音だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして、雨風あめかぜにさらされてふるくなったもんが、しめきったままになって、うちには、ひとんでいるとはおもわれませんでした。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
物語ものがたりき、此像このざうはいするにそゞろに落涙らくるゐせり。(りやく)かくてたる小堂せうだう雨風あめかぜをだにふせぎかねて、彩色さいしき云々うん/\
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
建てかけるが早いか、風と云い雨と云う曲者くせものが来てこわしてしまう。地ならしをするか、雨風あめかぜ退治たいじるかせぬうちは、落ちついてこの世に住めぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なが年月としつきあひだ雨風あめかぜにさらされてこはれてしまひ、完全かんぜんのこつてゐるものがきはめてすくないのは殘念ざんねんなことであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
こんな雨風あめかぜの日はだいじょうぶだと思うたら、今朝けさんなって見てみたら、ちゃんと納屋なやの戸があいとったん。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
大變な雨風あめかぜで傘も何もさせやしないのよ。姐さんは、お金がないと困るつて、信玄袋だけ持つて逃げたの。
梅龍の話 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
もとは三本マストの大きな船であったのだが、ずいぶん永い間雨風あめかぜに曝されていたので、ぽたぽた水を滴らしている海藻が大きな蜘蛛の巣のように周囲にぶら下っていたし
りわたったなつの日、風の夜、ながれる光、星のきらめき、雨風あめかぜ小鳥ことりの歌、虫の羽音はおと樹々きぎのそよぎ、このましいこえやいとわしい声、ふだんきなれている、おと、戸の音
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
だから私が折々ぐつたり疲れて歸つたり、少からず雨風あめかぜに惱まされて歸つたときでも、不平の云ひやうもなかつた。ぶつ/\云つたりすれば、彼を怒らすことが分つてゐたから。
そのフクロウたちが、雨風あめかぜにむかってうなっている声を耳にしますと、思わずぞっとしてしまいます。しかも、その一羽にでも見つかったら、いったいじぶんの身はどうなるでしょう。
つたやかつらの気味悪きみわるかおにまつわりつくのをはらいのけて、たびたびこけにすべりながら、やっとおやしろまえまで出ますと、もうすっかり雨風あめかぜやぶれたふるいほこらが一つ、そこにっていて
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なににしろおはかまえって瞑目めいもくすれば、かならず良人おっとのありし面影おもかげがありありとうつるのでございますから、当時とうじわたくしにとりてそれがなによりのこころなぐさめで、よほどの雨風あめかぜでもないかぎ
雨風あめかぜに任せていたむ牡丹かな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「八日。雨風あめかぜ。夜雪。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
もし(いゝやわることをしたおぼえもないから、那樣そんな氣遣きづかひちつともい。)とうありや、なん雨風あめかぜござらばござれぢや。なあ那樣そんなものではあるまいか。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふゆわりごろから、はるのはじめにかけては、よく雨風あめかぜのつづくことがあります。こうしてやまゆきけるのでした。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
屍骸は今でもあの男の家の跡に埋まつて居ります。尤も小さなしるしの石は、その後何十年かの雨風あめかぜさらされて、とうの昔誰の墓とも知れないやうに、苔蒸こけむしてゐるにちがひございません。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こいでいるほうの男は、見たところ、まずしい漁師りょうしのようでした。こがらで、やせこけて、いかにも雨風あめかぜに打たれたという顔をしていました。そして、うすっぺらな、すりきれた上着うわぎを着ていました。
ましたかほで、長煙管ながぎせる一服いつぷくスツとときかぜつて、ざツざツと雨風あめかぜつた。うちではない、戸外おもてである、暴模樣あれもやうしのつく大雨おほあめ。……
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ははむすめは、戸外こがいさけ雨風あめかぜおとみみまして、火鉢ひばちのそばでおはなしをしていました。それはよるの八ごろでありました。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
屍骸は今でもあの男の家の跡に埋まつて居ります。尤も小さなしるしの石は、その後何十年かの雨風あめかぜさらされて、とうの昔誰の墓とも知れないやうに、苔蒸こけむしてゐるにちがひございません。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「きょうのばんまでというお約束やくそくだったでしょう。だけど、この雨風あめかぜでは、できていてもとどけられないでしょう。」
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
……雨風あめかぜ猶豫ためらつて、いざと間際まぎはにも、卑怯ひけふに、さて發程たたうか、めようかで、七時しちじ急行きふかう時期じきごし、九時くじにもふか、ふまいか。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また、あるときは、あちらのそら電光いなびかりがして、かみなりり、しばらくすると、くろくも野原のはらうえがって、雨風あめかぜおそい、あのをもみにもんだのです。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
車夫わかいしゆ雨風あめかぜにぼやけたこゑして
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、小使こづかいさんが、わすれたのか、こいのぼりは一晩ひとばんじゅう、雨風あめかぜにさらされたとみえます。そして、半分はんぶんぬれながらも、あらしにけず、元気げんきでした。
心は大空を泳ぐ (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんと並々なみなみならぬ心遣こころづかいと、努力どりょくが、そのかたむけられていることか。たとえば、雨風あめかぜかれても容易よういれそうもない、じょうぶなえだえらばれていました。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、玄関げんかんのあたりで、ちいさいこえがしました。そのこえは、雨風あめかぜおとに、半分はんぶんされてしまったのです。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのことであります。ここからとおはなれたまちにあった、鉄工場てっこうじょう主人しゅじんは、このかね雨風あめかぜにさらされているということをいて、しいものだとおもいました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこから、五、六けんはなれたところに、ふとおやのかきのが、っていました。いくねんとなく雨風あめかぜにさらされてきたので、はだれて、えだは、がりくねっていました。
僕のかきの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、これからは、雨風あめかぜわれて、あちらへげ、こちらへげなければなりません……。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
それなのに、自分じぶんがそのをとっていいものだろうか。雨風あめかぜおとに、みみをすましながら
高い木とからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのよるから、ひどい雨風あめかぜになりました。二日二晩ふつかふたばんあたたかなかぜいて、あめりつづいたので、ゆきはおおかたえてしまいました。その雨風あめかぜあとは、いい天気てんきになりました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
丹塗にぬりのやしろも、なが月日つきひ雨風あめかぜにさらされて、くちたり、こわれたりして、そのたびに、村人むらびとによっててかえられたけれど、まだわずかに、むかし面影おもかげだけは、のこっていました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またしいしなでもなかったから、そのままにしていえうちへいれずにおきますと、その雨風あめかぜれて、ほんとうによるあいだに、エプロンは、どこへかんでいってしまったのです。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小鳥ことりは、やっと、燈台とうだいっている、そのちいさなしまきました。最初さいしょ燈台とうだい屋根やねまろうとしましたが、そこはひじょうな雨風あめかぜであって、ちいさなとりは、とされてしまったのでした。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真夜中まよなかのことでした。ふとみみをすますと、雨風あめかぜがつのっていました。
心は大空を泳ぐ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふもとのまちは、田畑たはたとなり、やまうえ鐘楼しょうろうは、むかし形見かたみとして、半分はんぶんこわれたままながあいだのこり、そこには、あおさびのかねが、雨風あめかぜにさらされてかかっていたけれど、だれも、それをらすものがない。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、おもおもいに、雨風あめかぜなかかえってゆきました。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)