さう)” の例文
教会へは及ばずながら多少の金を取られてる、さうして家庭かない禍殃わざはひ種子たねかれでもようものなら、我慢が出来るか如何どうだらう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そのとき買物かひものざるひとつ。さうして「三十五錢さんじふごせん俥賃くるまちんられたね。」と、女房かみさんふと、またむすめそばて、「ちがふよ、五十錢ごじつせんだよ。」とふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
げんへば、貴方あなた生活せいくわつふものをないのです、れをまつたらんのです。さうして實際じつさいことたゞ理論りろんうへからばかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
モリエエルに取つては其れもまた悲痛の種である。さうして「いやその為では無い」と云つたが、バロンとわが妻との関係を言ふには忍び無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
毎日うして二人で働いてゐたが、時々飛入りに手伝に来る職人があつた。此奴こいつが手伝に来ると、屹度きつと娘を叱り飛ばす、さうしてミハイロに調戯からかふ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
考へて見れば無理むりの無い所で、さうして此間このかんの事は硯友社けんいうしやのヒストリイからふと大いにあぢは一節いつせつですよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
※等あねらふこといたつくれえどんなことされつかわかんねえから」勘次かんじ自棄やけ蕎麥そばからちつけ/\しつゝいつた。かれさうして一目ひとめもおつたをなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうしてつたところ始終しゞふそとで、たま其下宿そのげしゆくつたこともあつたけれど、自分じぶん其様そん初々うひ/\しいこひに、はだけがすほど、其時分そのじぶん大胆だいたんでなかつたとふことをたしかめた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ひたすら良人に逢ひたいと云ふ望で張詰めた心が自分を巴里へもたらした。さうして自分は妻としての愛情を滿足させたと同時に母として悲哀をいよいよ痛切に感じる身と成つた。
巴里にて (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼女はとゞまつて、さうして忍ぶべく決心した。彼女の苦しい辛い境遇に堪へようと決心した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
しかしいつまで川水を汲むでばかりも居られぬので、一月ばかりして大仕掛おほじかけ井浚いどさらへをすることにした。赤土からヘナ、ヘナから砂利、と一丈余も掘つて、無色透明むしよくとうめい無臭むしうさうして無味の水が出た。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
さうして歌の能事は其處に盡きる。此意味に於て『酒ほがひ』一卷は明治の歌壇に於ける他の何人の作にも劣る事のない貢獻であると思ふ。フリツ・ルンプに寄せた歌の中から氣に合つた二三首を拔く。
吉井君の歌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
さうして、わかい男の剃りたてのかほの皮膚の下から
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さうして、それは、その、きいちやんたるものがきつけて、れいしきで、「そんなものはない。」とつたが、これは教育けういくのあるむすめわかつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして無口な子が時時ときどきこと交りに一つより知らぬ讃美歌の「夕日は隠れてみちは遥けし。我主わがしゆよ、今宵こよいも共にいまして、寂しきこの身をはぐくみ給へ。」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さうして其眼そのめにはあたゝか健全けんぜんかゞやきがある、かれはニキタをのぞくのほかは、たれたいしても親切しんせつで、同情どうじやうつて、謙遜けんそんであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうして挿絵さしゑ桂舟けいしう担当たんとうするなど、前々ぜん/\の紙上から見るとすこぶ異色いしよくを帯びてました、ゆえこれだいる、我楽多文庫がらくたぶんこ生命せいめいだいまたしばら絶滅ぜつめつしたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私は全然まるで砂漠さばくの中にでも居る様な寂寞せきばくに堪へないでせう、さうすると又た良心は私のはなはだ薄弱であることを責めるでせう、墓所はかまゐりましても、教会へ参りましても
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
さうして加減かげんのところで、突込つゝこんでさぐつてると、たしかさはるものがある。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さうして何時いつかしらなにかを計画たくらむでゐたある力が
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
出てさうして、何処へ? 何処へ?
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
半時間毎はんじかんごとくらゐかれ書物しよもつからはなさずに、ウオツカを一ぱいいでは呑乾のみほし、さうして矢張やはりずに胡瓜きうり手探てさぐりぐ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
九里は又マロニエの幹を長い棒麺麭ぼうパン、梢の枝振えだぶりを箒、白樺を「砂糖漬の木」などと言つた。さうして三人が歩きなが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さうして、まあところへ、しかるべきうちむで、にはには燈籠とうろうなり、手水鉢てうづばちも、一寸ちよつとしたものがあらうといふ、一寸ちよつと氣取きどつた鳥屋とりやといふことはなしきまつた。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今だにひとばなしのこつてるのは、此際このさいの事です、なんでも雑誌を売らなければかんとふので、発行日はつかうびには石橋いしばしわたしかばんの中へ何十部なんじふぶんで、さうして学校へ出る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、想像さうざう矢張やはりわるはうへばかりはしらうとする。如何どうかすると、恋人こひゞとつたことを、すでうごかすべからざる事実じゞつめてしまつてゐる。さうして、其事実そのじゞつのうへに、色々いろ/\不幸ふかう事実じゞつをさへきづきあげてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さうしてわかいをとこつよ体臭にほひをいらだたす。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一人坊主ひとりばうず)だとうてさわいでござるから丁度ちやうどい、だれわし弟子でしになりなさらんか、さうして二三にん坊主ぼうず出來できりや、もう(一人坊主ひとりばうず)ではなくなるから、とんんでくござらう。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
薄紅ときいろ撫子なでしこと、藤紫ふじむらさき小菊こぎくかすかいろめく、友染いうぜんそつ辿たどると、掻上かきあげた黒髪くろかみ毛筋けすぢいて、ちらりと耳朶みゝたぼと、さうして白々しろ/″\とある頸脚えりあしが、すつとて、薄化粧うすげしやうした、きめのこまかなのさへ
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうしてゆめ小式部こしきぶた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)