しぶ)” の例文
新字:
お葉は十分にしぶりながらも、かなりの好奇心を燃やしてゐるらしく、八五郎に引かれて庭を迂廻うくわいして、離屋の前に立つてゐるのです。
んぼんでも、不意に二人でいんだら、うち喫驚びつくりしますがな。』と、お光は自家うちへ小池を伴なつて歸るのをしぶる樣子であつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かききなお百姓ひやくしやう子供こどもあをかきましたが、つてべてたびしぶさうなかほをして、べかけのをてゝしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何うで盲目縞の筒袖に三尺を脊負つてて來たのだらうから、しぶを買ひに行く時かすりでも取つて吹矢ふきやの一本も當りを取るのが好い運さ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで『立派りつぱなユーモリスト』なるしぶ先生せんせいこれして、『世界中せかいぢうのひつくりかへるあしたかな』とやつたんだ。どうだわかつたか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
かやしぶわびし。子供こどものふだんには、大抵たいてい柑子かうじなり。蜜柑みかんたつとし。輪切わぎりにしてはちものの料理れうりにつけはせる。淺草海苔あさくさのりを一まいづゝる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ら、爺樣ぢいさま鐵火箸かなひばしばさつて、骨接ほねつぎつてとこだが、いそがところひでつちやつた」勘次かんじはそれでもくちしぶつておもやうにいへなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれ全身ぜんしんしぶかきちやいろ法衣ころもまとつてゐた。あしえなかつた。たゞくびからうへえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんのためだとおもふと、しづめる妙法めうはふで——露骨ろこつに、これを説明せつめいすると、やきもちしづめ——そのしぶさ、ゆかしさ、到底たうてい女人藝術げいじゆつ同人どうじんなどの、かんがへつくところのものではない。
それでも仲々階下したにさへしぶつて、二人限きりになれば何やら密々ひそ/\話合つては、袂を口にあてて聲立てずに笑つてゐたが、夕方近くなつてから、お八重の發起で街路へ出て見た。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
といつてなげきましたが、ひめはいよ/\しぶるばかりで、すこしもきいれる樣子ようすがありませんので、おきなのつけようがなくなつて、どうしても宮中きゆうちゆうにはあがらぬといふことをおこたへして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
叔父おぢさん、わたくしはもうかほあらつてましてよ。』と、睡醒ねざめしぶわたくしかほあほいだ。
そこあいちやんは隨分かなりながあひだローリーてう議論ぎろんをしました、ローリーてうつひにはしぶつらしてねて背中せなかけて、『わたしはおまへより年上としうへだよ、わたしはうつてる』とたゞつたばかりなので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
夫人ふじんはいひしぶつたが、どくさうに病人びやうにんていふのだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
羽蟲はむしはくるしいつめしたで、いひしぶつてゐましたがおもつて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しぶりたるうれひに濁る。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
上林かんばやし しぶの方より
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
さんしぶくて、暫らくガヂヤガチヤやつてゐたやうですから間違ひは御座いません。——何んでしたら、お仲を呼びませうか」
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
『いえ、あのおさるさんがかににぶつけたのも、きつとわたしのやうなしぶかきで、自分じぶんつてべたといふのはおまへさんのやうなあまかきですよ。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
駄々だゞぬて、泣癖なきくせいたらしい。へのなり曲形口いがみぐちりやう頬邊ほゝべた高慢かうまんすぢれて、しぶいたやうな顏色がんしよく
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うめなんぞじつて、おとつゝあはらゑぐいてやつからつてろ」勘次かんじとうからしぶつてしたでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しぶひにときかすりでもつて吹矢ふきや一本いつぽんあたりをるのがうんさ、おまへさんなぞは以前もと立派りつぱひとだといふからいま上等じやうとううん馬車ばしやつてむかひにやすのさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
A 馬鹿ばかだなア、しぶ六とはおれ變名へんめいぢやないか。『立派りつぱなユーモリスト』『日本にほん一のユーモリスト』としておれ盛名せいめいらないとは、親友甲斐しんいうがひのないにもほどがあるぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
と、いひますと、ひめ案外あんがいかほをしてこたしぶつてゐましたが、おもつて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
その趣味しゆみしぶれいげると、三上みかみがその著名ちよめいなる東京市内出沒行脚とうきやうしないしゆつぼつあんぎやをやつて、二十日はつかかへつてないと時雨しぐれさんは、薄暗うすぐら部屋へやなか端座たんざして、たゞ一人ひとり双手もろて香爐かうろさゝげて、かういてゐる。
そのうちに、あつはひなかまつてかきあなからは、ぷう/\しぶ吹出ふきだしまして、けたかきがそこへ出來上できあがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
店者たなもの風の四十男、しぶい好みですが、手堅いうちにも贅があつて、後金の緩んだ雪駄を穿く人柄とは見えません。
しか病氣びやうきうまませるくすり赤玉あかだまではすぐにはなほらなかつた。それでかれはおしな厄介やくかいつもりで、つぎあさはや朋輩ほうばいはこばれた。卯平うへいしぶつたかほむかへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さけびます。おきなすこしぶつてゐると、それにはかまはずに
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
B アんだ、隱居いんきよだの熊公くまこうだのしぶ六だのと。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「歸る前に、——場所が場所だし、傳三は船頭だから船の道具を少しは持つて居たことだらう。しぶを塗つた細引なんかなかつたか、隣りの駄菓子屋で訊いて見よう」
さすがに本人は言ひしぶりましたが、訊き上手の平次が、いろ/\鎌をかけて引出したところでは、將軍秀忠の命を狙つたといふ疑ひで、宇都宮十五萬石を召上げられ
二十七八のしぶを塗つて陽へ干したやうな、そのくせ何處か小意氣なところのある若い衆です。
ガラツ八も最初はしぶりましたが、向柳原の叔母の家に居ても、親分の平次の家に居ても、居候に變りはないのですから、結局晩酌ばんしやくと御馳走と、お琴の美しさを滿喫するのが景物で
奧方は言ひしぶりましたが、擧げた顏が平次の熱心な瞳に逢ふと、思ひ切つた調子で
「こいつは船具だよ。しぶを引いた三つ繰りで雜穀屋などにある品物ぢやねえ」
石津右門のしぶるのも構はず末廣町の自宅に持つて歸り、一と晩止めて、ほんの少しばかり手を入れた上、翌る日は上屋敷に持參、家老石津右門と、用人大垣伊右衞門立合の上、開いて見ると
そんな話になると、お袖の話はひどくしぶります。
長崎屋は一寸答へにしぶりました。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
小僧は一寸言ひしぶりました。
お春はしぶりました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)