有樣ありさま)” の例文
新字:有様
しかるにはうとのぞみは、つひえずたちまちにしてすべてかんがへ壓去あつしさつて、此度こんどおも存分ぞんぶん熱切ねつせつに、夢中むちゆう有樣ありさまで、ことばほとばしる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
片手のてのひらにぎり込むを得る程の石にて打ち、恰も桶屋おけやが桶の籠を打ち込む時の如き有樣ありさまに、手をうごかし、次第次第しだい/″\に全形を作り上げしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
じつ前後ぜんご形勢けいせいと、かの七せきふね有樣ありさまとでると、いま海蛇丸かいだまるあきらか何事なにごとをかわが軍艦ぐんかんむかつて信號しんがうこゝろみるつもりだらう。けれどわたくしいぶかつた。
「いや御覽ごらんごと亂雜らんざつ有樣ありさまで」と言譯いひわけらしい返事へんじをしたが、それをいとくちに、子供こども世話せわけて、おびただしくかゝことなどを色々いろ/\宗助そうすけはなしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、なんともなんとも。今日こんにち閣下かくか昇天しようてん御勢おんいきほひにはわたくしどもまるで微塵みぢん有樣ありさまでございましたな。」
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ゆるし下されと幼年に似合にあはず思ひ入たる有樣ありさまに聞居る名主をはじ村中むらぢうの者は只管ひたすら感心かんしんするより外なく皆々口を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが、非常ひじやうひと雜沓ざつたうする、江戸えど十字街じふじがい電車でんしや交叉點かうさてんもあるし、大混雜だいこんざつなか有樣ありさまなんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さぐることも發見みいだすことも出來でき有樣ありさま——それがためにならぬのはれてあれど——可憐いたいけなつぼみそのうるはしい花瓣はなびらが、かぜにもひらかず、日光にもまだ照映てりはえぬうちに
支度したくとても唯今たゞいま有樣ありさま御座ございますからとて幾度いくたびことはつたかれはせぬけれど、なにしうとしうとめのやかましいがるではし、わししくてわしもらふに身分みぶんなにことはない
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
地震ぢしん如何いかなる有樣ありさまおい家屋かをく震盪しんたうし、潰倒くわいたうするかを觀察くわんさつ破壞はくわいした家屋かおくについてその禍根くわこん闡明せんめゐするの科學的知識くわがくてきちしきがなければ、これにたいする防備的考察ばうびてきかうさつかばない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
わたくし此時このときまでほとんど喪心そうしん有樣ありさまで、甲板かんぱん一端いつたん屹立つゝたつたまゝこの慘憺さんたんたる光景ありさままなこそゝいでつたが、ハツと心付こゝろついたよ。
貝塚の實地調査てうさに由りて知るを得べければ、此一事このいちじはコロボックルの日常の有樣ありさまを考ふに付きて深き據とは爲すべからず
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
アンドレイ、エヒミチは恁云かうい病院びやうゐん有樣ありさまでは、熱病患者ねつびやうくわんじや肺病患者はいびやうくわんじやにはもつとくないと、始終しゞゆうおもひ/\するのであるが、れをまた奈何どうすること出來できぬのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
申付られし身なれば此程の有樣ありさまを見て深く心を痛め主人主税ちから之助へ種々藤五郎の詫言わびごとをなし出らう有べきやう申しければ主税之助大いに立腹りつぷくし又しても/\藤五郎の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そうじて主人しゆじんうちにあるときと、そとでしのちと、家内かない有樣ありさまは、大抵たいてい天地てんちちがひあるが家並いへなみさふらふなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かう惡戯いたづらをする年頃としごろむすめもとよりのこと子供こども子供こどもそだげた經驗けいけんのない宗助そうすけは、このちひさいあか夜具やぐ尋常じんじやうしてある有樣ありさまをしばらくつてながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今宵こよひれば如何いかにもあさましい有樣ありさま木賃泊きちんどまりになさんすやうにらうとはおもひもらぬ、わたし此人このひとおもはれて、十二のとしより十七まで明暮あけくかほあはせるたび行々ゆく/\みせ彼處あすこすわつて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身長みのたけしやくちかく、灰色はいいろはりごと逆立さかだち、するどつめあらはして、スツと屹立つゝたつた有樣ありさまは、幾百十年いくひやくじふねん星霜せいさうこの深林しんりん棲暮すみくらしたものやらわからぬ。
此事に付きては後段こうだんべつに述ぶる所有るべけれど、土偶の形状けいじやうはコロボツクル日常の有樣ありさまもととして作りしものならんとの事丈ことだけ此所ここに記し置くべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
しかるに這麼不潔こんなふけつ有樣ありさまでは駄目だめだ。また滋養物じやうぶつ肝心かんじんである。しかるに這麼臭こんなくさ玉菜たまな牛肉汁にくじるなどでは駄目だめだ、また補助者ほじよしや必要ひつえうである、しかるに這麼盜人計こんなぬすびとばかりでは駄目だめだ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
取ひう/\と風を切て振廻す有樣ありさま宛然さながら麻殼をがらあつかふが如くなるにぞ八五郎は是を見て彌々いよ/\きも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ七日なのかばん坂井さかゐばれて、安井やすゐ消息せうそくまで夫婦ふうふ有樣ありさまであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)