威張ゐば)” の例文
「はい。そればかりではありません。世界せかいにはわたしどものらないことが數限かずかぎりなくあります。——ちひさなところでひと威張ゐばつてゐることの」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
だが、あんまり威張ゐばれないて、此樣こんくるま製造こしらへては如何どうでせうと、此處こゝまで工夫くふうしたのはこのわたくしだが、肝心かんじん機械きかい發明はつめい悉皆みんな大佐閣下たいさかつかだよ。
其癖そのくせ學校がくかうで、おの/\をのぞきつくらをするときは「じやもんだい、清正きよまさだ。」とつて、まけをしみに威張ゐばつた、勿論もちろん結構けつこうなものではない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、わたくしことわると、かげまはつてさいに、にいさんはあれだからおほきな仕事しごと出來できつこないつて、威張ゐばつてゐるんです。仕樣しやうがない
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此の引力が、やがて無能力者に絶大の權力を與へるやうなことになるのだから、女が威張ゐばりもすれば、ありもせぬはねのばさうとするやうになる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『そんなことをつてにいさんが威張ゐばつても、何時いつまでもにいさんのやうにたら、がさめないのもおなじことです。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「締めろ。三輪の親分も何にか手柄をしなきや引つ込みがつくまい。お前は若旦那の草之助を引立てて威張ゐばつて行け」
けてもいのさ、れは仕方しかたいとあきめるから、おまへなにないでいからたゞ横町よこてうくみだといふで、威張ゐばつてさへれると豪氣がうぎ人氣じんきがつくからね
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とはらぬのでかいげるのに邪魔じやまだから、其所そこ退いてれなんて威張ゐばらして、あと地主ぢぬしわかつて、有合ありあはせの駄菓子だぐわしして、機嫌きげんつたことなどである。
「うそぢやありませんよだ。それが証拠せうこにはおしりのとこにおほきな刀痕かたなきづがついてらあ」と威張ゐばりました。
が、堂堂たる批評家たちの短歌や俳句を批評するのを見ると、不思議にも決して威張ゐばつたことはない。いづれも「わたしは素人しろうとであるが」などと謙抑けんよくの言を並べてゐる。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陰でばかり威張ゐばつても、自分等よりちつとでもえれえ人間の前さ出るともう口も利けねえ。急に眞面目な話も思ひ出せめえ。遠慮なくさつきの話の續きをやつたがいいや。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
『榮子なんか駄目だ。馬鹿。威張ゐばつたつて駄目だよ。あにさんをつたりしてももう聞かないよ。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
忘れてゐた! 成程、ではそのお金の方の立場から、ちよつとばか威張ゐばつてもいゝですか。
すこおもいけれど、かうしてあるけば途中とちう威張ゐばれて安全あんぜんだといふので、下男げなんいさつてあるした。るほどあふひもんと『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだは、人々ひと/″\皆々みな/\みちゆづらせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
威張ゐばりて帰りぬ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
威張ゐばらなくツたつて、なにも、威張ゐばらなくツたつてかまはないから、父爺ちやんさかなつてくれるといけれど、」となんおもつたか與吉よきちはうつむいてしをれたのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大氣焔だいきえんもつ威張ゐばらされるので、品川軍しながはぐん散々さん/″\敗北はいぼく文海子ぶんかいしかへりにつてれといふのもかず、望蜀生ぼうしよくせいれて、せツせとかへ支度じたくした。ぷツぷツおこつてゞある。
「待ちな、もう少し見た方がいゝ、——まだ宵のうちだ。二本差がどんなに威張ゐばつたつて、嫌がる女を、引つ擔いで行くわけにも行くまいぢやないか、落着いて見物するがいゝ」
うもしない、と返事へんじをして、うへへあがつて細螺きしやごかぞへながら、本當ほんたうやな小僧こぞうとつてはい、表向おもてむきに威張ゐばつた喧嘩けんくわ出來できもしないで、温順をとなしさうなかほばかりして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
むかふぢや此方こつち信用しんようがないかもれないが、此方こつちぢやまたむかふに信用しんようがないんだ」と宗助そうすけ威張ゐばつてしたが、御米およね俯目ふしめになつてゐる樣子やうすると、きふ勇氣ゆうきくじけるふうえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おとうとがあんなことをつて威張ゐばつてます。そのくせ、わたしはやのさめた時分じぶんには、おとうとはまだなんにもらないでグウ/″\グウ/″\とねむつてました。わたしにはとりいたのをつてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あれで、これでも萬物ばんぶつ靈長れいちやうだなんて威張ゐばるんですよ、時々とき/″\
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
なまくらでも何んでも浪人者の平太郎『武士の端くれ』と自分でも威張ゐばつた男が、床の上でたつた一と突き、自分の脇差で心臟のあたりを刺されて死んでゐるではありませんか。
れはおまへやだといふのもれてるけれども何卒どうぞれのかたつて、横町組よこてうぐみはじすゝぐのだから、ね、おい、本家本元ほんけほんもと唱歌しようかだなんて威張ゐばりおる正太郎しようたらうとつちめてれないか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「それ、山伏やまぶしつぱ山伏やまぶしなり、なん殊勝しゆしようなか。」と威張ゐばつて、兜巾ときんかたむけ、いらたかの數珠じゆずみにんで、いのるほどに、いのるほどに、いのればいのるほど、おほききのこの、あれ/\おもひなしか
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あつしは呼び付けられて叱られた方で、あんまり威張ゐばれた話ぢやないが——」
てば甘露かんろといふけれどれなんぞは一日々々いちにち/\いやことばかりつてやがる、一昨日をとゝひ半次はんじやつ大喧嘩おほげんくわをやつて、おきやうさんばかりはひとめかけるやうなはらわたくさつたのではないと威張ゐばつたに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もつともいま神樂坂上かぐらざかうへ割烹かつぱう魚徳うをとく)の先代せんだいが(威張ゐばり)とばれて、「おう、うめえものはねえか」と、よつぱらつてるから盤臺ばんだい何處どこかへわすれて、天秤棒てんびんぼうばかりをりまはして歩行あるいたころで。……
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子供こどもなんぞちつとも可愛かあいくはありませんと威張ゐばつたことはれませんかつた。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さう言つて威張ゐばりたかつたんだ、——松五郎はそんな男だよ」
「かうやつて威張ゐばつておいでよ。」
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
父樣とうさま母樣かあさま御褒美ごはうびいたヾくべしと威張ゐばるに、令孃ひめ微笑ほヽゑみながらいさましきをめて、そのやう大將たいしやうたまひても、わたしとはいまかはらずなかよくしてくだされや、大姉樣おほねえさま其外そのほかのおひと夫々それ/\片付かたづき
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「親分、伊勢屋新兵衞が來て、入口で威張ゐばつてますよ」