“坊(ぼう)” の例文
もういっぽうは、男の子がひろって、いまに赤(あか)ん坊(ぼう)でも生れたら、ゆりかごに使うんだ、と言いながら、持っていってしまいました。
「坊(ぼう)や、困(こま)ったな。お家(うち)のある町(まち)がわからなくては。」と、おじいさんは子供(こども)をいたわりながら、小(ちい)さな手(て)を引(ひ)いて歩(ある)いてきました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
土肥の吝(しわ)ん坊(ぼう)が、藩では、いちばんの金持ちだといわれておる。吾々の親父も、みんな、貴公の親父から、利息金を借りているんだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、詳(くわ)しく道(みち)を教(おし)えてくれました。坊(ぼう)さんは涙(なみだ)をこぼして、手(て)を合(あ)わせて拝(おが)みながら、ころがるようにして逃(に)げていきました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
寺の坊(ぼう)さんは、びしょぬれになっている法師の着物をきかえさせ、あたたかいものを食(た)べさせて、できるだけ心をおちつかせました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
とおかあさんは言いながら、赤(あか)ん坊(ぼう)のようなかわいたその子の口をすうてやりますと、子どもはかわきもわすれてほおえみました。
「ええ、ええ、一目で覚えてしまいましたわ。名前からして、禅(ぜん)の坊(ぼう)さんみたいで、変わっていたからでもありましょうけれど。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
小倉はその性格が煮え切らないところから、この事件の進展に対し、何らの役目を勤めることのできない一の木偶(でく)の坊(ぼう)に過ぎなかった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
狐にだまされたのなら狐が狐に見えないで女とか坊(ぼう)さんとかに見えるのでしょう。ところが私のはちゃんと狐を狐に見たのです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
桑の実の小母(おば)さん許(とこ)へ、※(ねえ)さんを連れて行ってお上げ、坊(ぼう)やは知ってるね、と云って、阿母(おふくろ)は横抱に、しっかり私を胸へ抱いて
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
喜び勇んで椅子からとび下りそうになったが、おいしいおやつにありついた赤(あか)ん坊(ぼう)みたいに、足をちょいとばたつかせるだけで我慢(がまん)した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
下宿の婆さんもけちん坊(ぼう)の欲張り屋に相違ないが、嘘は吐(つ)かない女だ、赤シャツのように裏表はない。おれは仕方がないから、こう答えた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
多「惣吉さん、此方(こっち)へお出でなさえ、今迄坊(ぼう)ちゃんを可愛がったなア、世辞で可愛がった狸阿魔だから、側へ行かないが好(え)え」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれど、坊(ぼう)やの鹿(しか)は、花をみたこともないので、花とはどんなものだか、春とはどんなものだか、よくわかりませんでした。
里の春、山の春 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おむつをきらう赤(あか)ん坊(ぼう)のようだ。仲仕が鞭でしばく。起きあがろうとする馬のもがきはいたましい。毛並(けなみ)に疲労の色が濃(こ)い。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
王さまは坊(ぼう)さんをひとりつれてきました。この人は幽霊(ゆうれい)に話しかける役(やく)だったのです。三人は木の下にこしをおろして、気をつけていました。
その翌日(あくるひ)、こんな噂(うはさ)がぱつと立(た)ちました。昨日(きのふ)の乞食(こじき)のやうなあの坊(ぼう)さんは、あれは今(いま)、生佛(いきぼとけ)といはれてゐるお上人樣(しやうにんさま)だと。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
母様(かかさま)痛いよ/\坊(ぼう)の父様(ととさま)はまだ帰(か)えらないかえ、源(げん)ちゃんが打(ぶ)つから痛いよ、父(とと)の無いのは犬の子だってぶつから痛いよ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なんの木偶(でく)の坊(ぼう)——とひと口に云ってしまえばそれ迄(まで)ですが、生きた人間にも木偶の坊に劣ったのがないとは云えません。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さあさあ、行きなされ、わしがこうして、うしろから見てたげましょうわい。このわしが、なんの坊(ぼう)をおおかみにやるものかね!」と、百姓(ひゃくしょう)は
今日で云わば手伝(てつだい)とか、立(た)ちん坊(ぼう)とか、日雇取(ひようと)りとか云う類で、もとは夙や散所とも似たものであったでありましょう。
たといその包みを拾ったものが、乞食でも、かったい坊(ぼう)でも、喪主(もしゅ)のつぎ、会葬者の第一番に焼香する資格があるのだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ねえ、坊(ぼう)や、お前が家(いえ)の中で書くものは、どれもこれも音楽(おんがく)じゃないよ。家の中の音楽は、部屋(へや)の中の太陽(たいよう)と同じだ。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
その結果夜中になって、その男を桜(さくら)ン坊(ぼう)の寝床から脱け出させる。現(うつつ)とも幻(まぼろし)ともなく彼は服を着て、家の外にとび出すのだ。一寸(ちょっと)夢遊病者(むゆうびょうしゃ)のようになる
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがては墨染(すみぞめ)にかへぬべき袖(そで)の色(いろ)、發心(はつしん)は腹(はら)からか、坊(ぼう)は親(おや)ゆづりの勉強(べんきよう)ものあり、性來(せいらい)をとなしきを友達(ともだち)いぶせく思(おも)ひて、さま/″\の惡戯(いたづら)をしかけ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
表面(うわべ)は円転滑脱の八方美人らしく見えて、その実椿岳は容易に人に下(くだ)るを好まない傲岸(ごうがん)不屈の利(き)かん坊(ぼう)であった。
その表面(ひようめん)には袈裟襷(けさだすき)といつて、坊(ぼう)さんの袈裟(けさ)のように格子型(かうしがた)に區畫(くかく)した模樣(もよう)をつけたものや、また流水紋(りゆうすいもん)といつて長(なが)い渦卷(うづま)きの模樣(もよう)をつけたものもあり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
王(おう)さまや、坊(ぼう)さんや、貴族(きぞく)や、商人(しょうにん)などが建(た)てるものは、ごくわずかの年月(としつき)しか、つづかないものだと思います。
或る日瀧道(たきみち)の終点で落ち合ひ、神有(しんゆう)電車で有馬へ行つて、御所(ごしょ)の坊(ぼう)の二階座敷で半日ばかり遊んで暮らしたことがあつたが、涼しい渓川(たにがわ)の音を聞きながら
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
御覧の通り木乃伊(ミイラ)の出来損(そこ)ねか又は、子供の作るテルテル坊主の裸体(はだか)ん坊(ぼう)を見るような姿にしてしまいました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この土地(とち)にたいへんえらい坊(ぼう)さまがいられるということを聞(き)いて、二人は、今まで自分たちを養(やしな)ってくれた人形のため、その坊(ぼう)さまにお祈(いの)りをしていただいて
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
飴(あめ)も買(か)わずに、おせん坊(ぼう)へ突(つ)ッ走(ぱし)ったな豪勢(ごうせい)だ。こんな鉄錆(てつさび)のような顔(かお)をしたおいらより、油壺(あぶらつぼ)から出(で)たよなおせん坊(ぼう)の方(ほう)が、どれだけいいか知(し)れねえからの。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おや可笑な子だねえ。この老爺(おぢ)さんは何(ど)うもしはしないよ。リツプ坊(ぼう)は善い子だ。静にお仕よ。」小児の名、その母の顔と声音(こわね)と、これ等は僉(み)なリツプ、フアン
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
爪に火を灯すような、江戸第一番の吝(しわ)ん坊(ぼう)の鳴子屋は、いかにもそれくらいのことがありそうです。
おとよさんの秘密に少しも気づかない省作は、今日は自分で自分がわからず、ただ自分は木偶(でく)の坊(ぼう)のように、おとよさんに引き回されて日が暮れたような心持ちがした。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
刃物や鋏の類がよく、花鋏の如き古流(こりゅう)、池(いけ)の坊(ぼう)、遠州流(えんしゅうりゅう)とそれぞれに特色ある形を示します。よい品になると、日本の鋏類の中でもとりわけ立派なものといえましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
其安穏寺の坊(ぼう)さんであろう、紫紺(しこん)の法衣で母屋(おもや)の棺の前に座って居るのが、此方(こち)から見える。棺は緑色の簾(すだれ)をかけた立派な輿(こし)に納めて、母屋の座敷の正面に据(す)えてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
ぼくが可笑(おか)しがって、吹出(ふきだ)すと、あなたも声を立てて、笑いながら、『土佐の高知の、播磨屋(はりまや)橋で、坊(ぼう)さん、簪(かんざし)、買うをみた』と裾(すそ)をひるがえし、活溌(かっぱつ)に、踊りだしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「いやです、いやです。私には親があるのです。兄弟があるのです。助けて下さい、後生です。本当に木偶(でく)の坊(ぼう)の様に、あなたの云いなり次第になります。離して、離して」
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
千穂子の子供を貰(もら)ってもいいと云ってくれる人であったが、産婆(さんば)の話によると、もう少し、器量のいい赤(あか)ん坊(ぼう)を貰いたいと云う事で、話が沙汰(さた)やみのようになっているのであった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
吉野山(よしのやま)は、古(ふる)くからずいぶん長(なが)く、坊(ぼう)さんその外(ほか)修道者(しゆどうしや)といつて佛教(ぶつきよう)の修行(しゆぎよう)をする人(ひと)が籠(こも)つてゐたことは、明(あき)らかな事實(じじつ)でした。その經驗(けいけん)から、はじめの歌(うた)が出來(でき)たのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いばりやで見(み)え坊(ぼう)で、世界一大金持のようにおもい上がって、ほかの商人たちのなかまを見下(みくだ)しながら、侯爵(こうしゃく)とか伯爵(はくしゃく)とか貴族(きぞく)のやしきによばれて、ぶとう会やお茶の会のなかまになることを
うたぐるのかい? おれはちゃんと見たんだぜ。ズボンのさけ目と手袋(てぶくろ)のやぶれたところから、はっきり黒(くろ)ん坊(ぼう)のようにまっ黒な肌(はだ)がみえたんだ。おめえなんか、どう思っていたかしらねえがね
「あれだ、ああいう木偶(でく)の坊(ぼう)を祭り上げて、いい気になって騒いでいる」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども唯(ただ)私がその事を人に語らず顔色(かおいろ)にも見せずに、御家老様(ごかろうさま)と尊敬して居たから、所謂(いわゆる)国家老(くにがろう)のお坊(ぼう)さんで、今度私を江戸に呼寄(よびよ)せる事に就(つい)ても、家老に異議なく直(すぐ)に決して幸(さいわい)であったが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
思(おもい)の外(ほか)手びろく生計(くらし)も豊かに相見え候のみならず、掛離(かけはな)れたる一軒家にて世を忍ぶには屈竟(くっきょう)の処と存ぜられ候間、お蔦夫婦の者には、愚僧同寮の学僧と酒の上口論に及び、師(し)の坊(ぼう)にも御迷惑相掛け
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『あなた、坊(ぼう)さんでない。ですから、むずかしいですね』
「本尊さまの側に坐っている木偶(でく)の坊(ぼう)って意味さ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日(けふ)もまたのんべりだらりと立(たち)ん坊(ぼう)の河岸の
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「だァれがなるぞ、お坊(ぼう)さんになるぞ」
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)