危険きけん)” の例文
旧字:危險
狼群ろうぐん鉄砲てっぽうをおそれて日中はあまりでないし、また人間の姿すがたが見えると、さっさとげてしまうので、この日は別段べつだん危険きけんもなかった。
そして、もう一こくもここにいるのが危険きけんになりましたときに、二人ふたり相談そうだんをして、どこか安全あんぜんなところへのがれることにいたしました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『どうして、岩のようにじょうぶだ』とその紳士しんしが言った。『十人に九人までは死ぬものだが、あれは肺炎はいえん危険きけんを通りこして来た』
アラシは、いかりくるっていたものですから、危険きけんをさけようともしないで、めくらめっぽうにニールスめがけて、とびかかりました。
つねに命令にそむき、侮辱ぶじょくし、反対の行動をとった自分である。それをいま、富士男は一身の危険きけんをおかして一命を救ってくれた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし、一休いっきゅうさんをんだ伊予局いよのつぼねは、后宮きさきのみや嫉妬しっとのため、危険きけんがせまったので、自分じぶんから皇居こうきょをのがれることになりました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
主人しゅじんのためにはいのちをすてて主人の危険きけんすくう犬がよくありますが、しろ公もまたそういう忠実ちゅうじつな犬にちがいありません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
間道かんどうからもぐりこんで、とりでをかきまわすというあぶない役目、鉱山かなやまあな細曳ほそびき一本でりさがるよりは、まだ危険きけんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
し一歩をあやまらんか深谷中に滑落こつらくせんのみ、其危険きけんふべからず、あだかも四足獣の住所にことらずと云ふべし。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
みずから君子ぶるのをいとうがため、横道ながら注解的に右のことを述べて、再び本題に立ち返って話をすれば、年を追うに従って俗化する危険きけんあるを思うがゆえに
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それでS、Hとこゝでつたのをさいわひにわたし手軽てがるにそのことはなしたのであつた。するとS、Hは「危険きけんだな——」といふやうな口吻こうふん卒然そつぜんらしたものであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そのほか言葉ことばにつくせぬ数々かずかず難儀なんぎなこと、危険きけんなことにわれましたそうで、歳月つきひつとともに、そのくわしい記憶きおく次第しだいうすれてはっても、そのときむねにしみんだ
天然てんねん設計せっけいによる平衡へいこうみだす前には、よほどよく考えてかからないと危険きけんなものである。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
全線中で一ばん危険きけん場所ばしょになっている急勾配きゅうこうばいのカーブにさしかかるにはまだだいぶがあるので、わたしは安心あんしんしてまた腰をおろすと、いろいろと内地の家のことなどを思いだして
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
三人は危険きけんの身の上をしばし忘れて、ほのぼのと明るい月に向きあっていた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
糟谷かすやはいかれないともいえず、危険きけん意味いみあるつま下女げじょと子どもとにまかせてでるのはいかにも不安ふあんだし、糟谷かすやはとほうにれてしまった。おりよくもそこへ西田にしだがひょっこりはいってきた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「三千代さんの病気は、急に危険きけんおそれでもありさうなのかい」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ、あの危険きけん絵姿えすがたのあるへやだけはあけませんでした。
もし危険きけんなことがきたら ドアをあけてそとに出たらいい
こうして、ニールスは、やっと一つの危険きけんからまぬがれはしましたが、こんどは、もっと大きな危険にせまられることになりました。
そこは危険きけんな場所とは思われなかった。それにせんからわたしは、この中がいったいどんな様子になっているのだろうと思っていた。
うみいろつめていた船長せんちょうが、突然とつぜん危険きけん警告けいこくはっしましたが、もうまにあわなかった。ふねは、ひどいおとをたて、暗礁あんしょう衝突しょうとつしたのです。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きみ、ボートは危険きけんだ、あれを見たまえ、しおはひいたが暗礁あんしょうだらけだ、あれにかかるとボートはこなみじんになってしまうぞ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いつめられた手長猿てながざるのように、蛾次郎のほうは、だんだん危険きけんな枝へはいうつって、いくら竹童でも、もうここまではこられまいと安心していたが、ふいに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたし勿論もちろんどつちが危険きけんだかといふ明白めいはく意識いしきなくして、たゞ漠然ばくぜんなかば謙遜けんそん気持きもちつたのであつたが、S、Hがまたさうふう謙遜けんそん意味いみこたへたのに出会であつて
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
相議するやひさし、余奮つて曰く、水をふて此嶮所けんしよを溯る何かあらん、未だ生命を抛つの危険きけんあるをずと、しふあへて余をさんするものなし、余此に於てやむを得ずかたく後説を
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
つまり身分不相応ふそうおうに力を表門にそそぎて美麗びれい宏壮こうそうに築き上げ、人目を驚かし、しかして裏門は柱が曲り、戸がち、満足に開閉することも出来ず、出入りにも危険きけんならしむるがごときものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一休いっきゅうさんの頓智とんちというものは、まるで、とぎすましたやいばのような、するどさで、もし、一休いっきゅうさんが、仏門ぶつもんはいってとくをみがいたのでなければ、大分だいぶ危険きけんなようにさえおもわれるところもあるくらいです。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
そうして、おまえがりっぱに、わしのいいつけをまもりおおせたなら、もう、おまえのからだから、危険きけんなことはえさってしまう。おまえはもう、おそろしいまぼろしを、見ないようになるのじゃ。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
もちろん、たった一人、大道ぐらしをつづけてゆくことの危険きけんなことはよくわかっていた。それはさんざん、つらい経験けいけんもしている。
ですから、もうふえを吹くのをやめて、灰色ネズミたちがどこへいこうとかってにさせておいても、すこしも危険きけんはないわけです。
てきにねらわれるということからいえば、地上ちじょうにいるだけにどれほど、わたしたちのほうが、危険きけんであるかしれないでしょう。
平原の木と鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えいうるさいとばかりに海蛇はケートをはたとける、けられてもケートは一生けんめい、わが身の危険きけんを忘れて右にたおれ、左にころびながら、その手をはなさない。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いかなる戒刀かいとう達人たつじんも、飛道具とびどうぐのまえに立っては危険きけんなので、わざと身をうっせたものだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じく大刀根岳よりはつするものたり、数間ことかなら瀑布ばくふあり、而して両岸をかへりみれば一面の岩壁屏風びやうぶの如くなるを以て如何なるあやうき瀑布といへども之をぐるのほかみちなきなり、其危険きけん云ふべからず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
危険きけんが多いとはいいうる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしは現在げんざいあらゆる危険きけんから庇護ひごされていることはわかっているのに、恐怖きょうふがいよいよつのって、もうふるえが出るまでになっている。
「たしかに危険きけんで、注意ちゅういしなければならぬことだった。それをどうして、なんともせずに、ほうってきたのだろうか。」
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは危険きけんでむずかしい仕事であった。大きなこの木は氷と雪をかぶっているので、それはずいぶん困難こんなんな仕事であった。
「やあ、危険きけん! 危険きけん! おまえさんにゃさわれない。」といったが、たか屋根やねがっていてりられなかった。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうかぜですよ、なんだか天気てんきがおかしくなりました。こういうは、たかはなまっているのは危険きけんです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしの心臓しんぞうは、まるでそこになにか危険きけんがせまったようにどきついた。
もしここをしたが最後さいご自分じぶんたちは、いつどこで、どんな危険きけんにさらされないともかぎらないだろう。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「や、危険きけん! 危険きけん!」と、あとじさりをすると、電信柱でんしんばしらをたたいて、ははははと大口おおぐちけてわらった。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま飛行機ひこうきといったが、たまにひとには便利べんりかしれないが、職業しょくぎょうとなって、毎日まいにちっているひとのことをかんがえれば、どれほど、このふねより危険きけんおお職業しょくぎょうかわからない。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたりが、やっとおちついて、むかしのような平和へいわがきたとおもったら、いつのまにか、人間にんげんこころわってしまって、信用しんようどころか、なんだか危険きけんで、油断ゆだんができなくなったよ。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そうだ、人間にんげんのできることで、自分じぶんにできぬというはずはない。」と、ぎしりをして、たとえ危険きけん場所ばしょへでも、親方おやかたのぼるところへは、自分じぶんのぼっていったのでした。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それよりか、自分じぶんが、そんをせずに、うまく危険きけんからのがれたことをよろこんだのでありました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねずみは、このうち付近ふきんにすむことの危険きけんをつくづくとかんじました。そして、やはり、自分じぶんは、あのみぞふちかえるほうがいいとおもいました。ちょうど、あめれて、そらには、つきていました。
ねずみとバケツの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひきのありは、あのあかこそ危険きけんだと、おかあさんやおとうさんがいわれたのだから、ゆくのはよしたがいいといいました。けれど、ほかの三びきのありは、どうしてもいってみるといいはりました。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)