およそ)” の例文
およそ雪九月末よりふりはじめて雪中に春をむかへ、正二の月は雪なほふかし。三四の月にいたりて次第にとけ、五月にいたりて雪全くきえ夏道なつみちとなる。
元禄より元文を過ぎ寛保に及ぶまでおよそ五十年間は仮に西洋美術史上の用語を以てすればいはゆる「復興期以前プリミチフ」の時代に相当すべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この細長い部は春より夏にかけて段々長く生長しその節と節との間、すなわち節間の長いものはおよそ二尺にも達するものであります。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
またこれをたとへばあらまし三百六十五文はらふべき借金しやくきんを、毎月まいつき二十九文五づゝの濟口すみくちにて十二はらへば一年におよそ十一文づゝの不足ふそくあり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
亦、天皇、其后へ、命詔ミコトモタしめして言はく、「およそ、子の名はかならず、母名づけぬ。此子の御名をば、何とか称へむ。」かれ、答へもうさく、……。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ぞ出帆したり追々おひ/\かぜも少し吹出ふきいだ眞帆まほを七分に上てはしらせハヤ四國のなだを廻りおよそ船路ふなぢにて四五十里もはしりしと思ふ頃吉兵衞はふねみよしへ出て四方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
法然のいわく、「阿弥陀経はただ念仏往生のみを説くと心得てはならぬ。文に隠顕はあるけれどおよその処は四十八願をことごとく説かれてある訳である」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
唐津より西北、佐志をすぎ、唐房からぶさより上りて一帯の高原をよぎる、くだればすなはち呼子よぶこ、そのあひだおよそ五里ばかり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
およそ南十度西より東十度北即ち南南西から東北東に向って並走して居る数条の連脈から成っているということである。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
仏説によると、地獄にもさまざまあるが、およそ先づ、根本地獄、近辺地獄、孤独地獄の三つに分つ事が出来るらしい。
孤独地獄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その地球の周囲、九万里にして、上下四ほう、皆、人ありて居れり。およそ、その地をわかちて、五大州となす。云々。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一天幕が一家族で、およそ、十二三の天幕が張ってあるのでございます。天幕の中からは人声に混って山羊の声が時々聞えて来る。山羊は彼等の財産なので。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
字餘りにはおよそ三種あり、第一、字餘りにしたるがために面白き者、第二、字餘りにしたるがため惡き者、第三、字餘りにするともせずとも可なる者と相分れ申候。
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
チーズ一│ 10ゾロチ  1ゾロチ およそ  25S クロチ Croszy(50) 12.5
最後に、南極近くの海には一万四千メートルから一万五千メートルの深さ、或は四リイグ(およそ五里)の深さを示す処がある。陸地には、何処にもそんな高さの山はない。
この総人数そうにんずおよそ百余人が屋敷に火を掛け、表側おもてがはへいを押し倒して繰り出したのが、朝五つどきである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかるに静御前義経公に別れ給いし妄念もうねんにや夜な夜な火玉となりて右井戸よりいでし事およそ三百年そのころおい飯貝村に蓮如上人れんにょしょうにん諸人を化益けやくましましければ村人上人を相頼あいたのみ静乃亡霊を
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
およそちょう四方ばかりの間、扇の地紙じがみのような形に、空にも下にも充満いっぱいの花です。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
答『これはいかにも無理むり質問といじゃ。本来ほんらいこちらの世界せかい年齢ねんれいはないのじゃから……。が、人間にんげん年齢ねんれいなおしてたら、はっきりとはわからぬが、およそそ五六百年位ねんぐらいのところであろうか……。』
およそパリへ行つて、文学芸術の修業を心がけ、アヴアン・ギヤルドの運動に眼をつけてゐたほどの人は、詩人A・Mの「面会日」を知つてゐるはずだ。これまた一寸類のない人種展覧会である。
世界人情覗眼鏡 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
のちまた数旬をて、先生予を箱根はこねともな霊泉れいせんよくしてやまいを養わしめんとの事にて、すなわち先生一家いっか子女しじょと共に老妻ろうさい諸共もろとも湯本ゆもと福住ふくずみぐうすることおよそ三旬、先生にばいして或は古墳こふん旧刹きゅうさつさぐ
およそ、事実は反対に近い。むしろ、払われた努力があまりにすくなかった。
農民文学の問題 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
白だ、白だ、白も斯水では、と若者等は云い合わした様に如何するぞと見て居ると、白は向うの堤を川上へおよそ二丁ばかり上ると、身をおどらしてざんぶとばかり濁流、箭のごとき笛吹川に飛び込んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は、また彼の妻が彼の放蕩に愛想を尽して東京の娘の許へ身を寄せてゐたのか——といふことを忘れてゐたので、さう気づくと同時に、およそ口には出せぬ類ひの、平凡な肯定にうなづいたのである。
老猾抄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
山川村庄さんせんそんしやうはさらなり、およそ物の名のよみかた清濁すみにごるによりて越後の里言りげんにたがひたるもあるべし。しかれども里言は多く俗訛ぞくなまりなり、いましばらく俗にしたがふもあり。本編には音訓おんくん仮名かなくださず、かなづけは所為しわざなり。
ここニ堂諭ヲ奉シ、支那字ヲ用テ、法国律語ノ音ヲ釈ス、其旨趣しいしゅハ、およそ原語ノ訳シ難キ者、及ビ之ヲ訳スルモ、ついニ其義ヲ尽シ得ザル者ハ、皆仮リニ意訳ヲ下シ、別ニ漢字ヲ以テ、原字ノ音ヲ照綴しょうてい
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
そもそも享保のむかし服部南郭はっとりなんかくが一夜月明げつめいに隅田川を下り「金竜山畔江月浮きんりゅうさんはんにこうげつうく」の名吟を世に残してより、明治に至るまでおよそ二百有余年
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かゝる光景ありさまは雪にまれなるだん国の風雅人ふうがじんに見せたくぞおもはるゝ。およそちゞみをさらすには種々しゆ/″\所為しわざあれども、こゝには其大略たいりやくをしるすのみ。
此差このさおよそ二年半餘はんあまりにして一月ばかりなるゆゑ、其時そのときいた閏月しゆんげつき十三ヶ月を一年となし、地球ちきうすゝんもとところ行付ゆきつくまつなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
禅林寺のは、製作動機から見れば、やや後出を思わせる発展がある。併し画風から見て、金戒光明寺のよりも、幾分古いものと、およそ判断せられて居る。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
まちしに此度は是迄とはかはおよそ百五十人餘りの大勢にて名主甚兵衞方へ着しすぐ村中むらぢうへ觸をいだして十五歳以上の男子なんし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それを今一々、列記する事は出来ない。が、彼の篠枝ささえの酒を飲んで、あと尿いばりを入れて置いたと云ふ事を書けば、その外はおよそ、想像される事だらうと思ふ。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが明治十五年三月に県道の三等となって、戸倉までは幅九尺、戸倉から国境まではおよそ六尺幅の定めであった。
尾瀬の昔と今 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ある人は字余りとは余儀なくする者と心得候へども、さにあらず、字余りにはおよそ三種あり、第一、字余りにしたるがために面白き者、第二、字余りにしたるがためあしき者、第三
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
茂兵衛もへゑの四人の手で銀に換へさせ、飢饉続きのために難儀なんぎする人民にほどこすのだと云つて、安堂寺町あんだうじまち五丁目の本屋会所ほんやくわいしよで、親類や門下生に縁故のあるおよそ三十三町村のもの一万軒に
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その前年の蓮根を掘らずに置いて春の八十八夜の前後十日すなわち八十八夜を中にしておよそ二十日位の間にこの掘らずに種に残して置いた蓮根を掘り来ってこれを栽え付けるのですが
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
盲腸が折々つれたり、左脚の痛むの(これは内からの土産)がいやだから、七月二十日頃からおよそ一ヵ月ばかり、三共のモクソールという、お灸で発生する精分の薬の注射をやっていました。
そんなにねんいりにいはないでも、およそからす勘左衞門かんざゑもんすゞめ忠三郎ちうざぶらうなどより、とりでこのくらゐ、こゑ合致がつちしたものはすくなからう、一度いちどもまだ見聞みききしたおぼえのないものも、こゑけば、すぐわかる……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからわたくし神様かみさまみちびかれて、あちこちあるいてて、すっかり岩屋いわや内外ないがい模様もようることができました。岩屋いわやなりおおきなもので、たかさとはばさはおよそそ三四けん奥行おくゆきは十けんあまりもございましょうか。
およそ芸術の制作に関するや、ことに東洋の美術において、科学の知識の必要なるや否やにつきては容易に断言する事あたはざるものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
およそ織物おりもの専業せんげふとする所にては、織人はたおりかゝへおきておらするを利とす。ちゞみにおいてはべつき一国の名産なれども、織婦はたおりをんなかゝへおきておらする家なし。
日は仲春、空は雨あがりの、さわやかな朝である。高原の寺は、人の住む所から、おのずから遠く建って居た。唯およそ、百人の僧俗が、中に起き伏して居る。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
もつて功徳くどくちやうと成べきと智化ちけの上人へ桂昌院樣けいしやうゐんさま一位樣御尋おんたづね遊ばされしに僧侶そうりよこたへて申上げるはおよそ君たる人の御功徳くどくにははしなき所へ橋をかけ旅人りよじんのわづらひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが互に膝をつき合せておよそまん中どころにうづくまつたが、何分舟が小さいので、窮屈な事おびただしい。そこへ又人が多すぎたせゐか、ともすれば、ふなべりが水にひたりさうになる。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
中津なかつ奥平おくだいら藩士はんしの数、かみ大臣たいしんよりしも帯刀たいとうの者ととなうるものに至るまで、およそ、千五百名。その身分役名を精細にわかてば百余級の多きに至れども、これを大別たいべつして二等に分つべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
守武死後およそ八十年にして貞徳起り、貞徳起りし後凡三十年にして談林起る。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この曼陀羅は横およそ三尺ばかりにして、極楽の諸仏の図を写し著わしてあります。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
シカモソノ取ツテ以テ今日ニ用フベキ者ヲ求ムレバ僅僅きんきんノミ。予ちかごロ『聖武記』ヲ一貴権ノ家ニ借観ス。およそ十四巻。清ノ人魏源ノ撰述ニ係ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
されば三月の末にいたれば我さきにと此垣を作る事なり。さて又雪中は馬足ばそくもたゝず耕作かうさくもせざれば、馬はむなしうまやにあそばせおく事およそ百日あまり也。
此だけの語が言いよどみ、淀みして言われている間に、姥は、郎女の内に動く心もちの、およそは、どったであろう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)