まう)” の例文
まうけ仕事の宗教なンですもの。私を警察へ突き出せばあの教会のぼろが出ちまふでせう。——薮蛇やぶへびをつゝくやうな事はしない筈だわ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
因より正當せいたうの腕をふるつてまうけるのでは無い、惡い智惠ちえしぼツてフンだくるのだ………だから他のうらみひもする。併し金はまつた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
文右衞門の方へつかはせしにより思ひ思はれし中なれば兩人のよろこび大方ならずいと睦敷むつまじく暮しけるに程なく懷妊くわいにんして一人の男子をまうけ其名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
銭といふものは、大人がまうけて大人が使ふのである。だから銭は大人の手から大人の手に渡るのであつて、子供には関係しないのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
かうして一年生から六年生まで、みんないつしよに働いて、とても良いことをして、それで一人が八銭づつもまうけたのでした。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
だれ戦争せんそうまうけ、だれなんうらみもない俺達おれたちころひをさせるか、だれして俺達おれたちのためにたたかひ、なに俺達おれたち解放かいほうするかを
もつとも大阪にゐる頃は、品玉使ひのやうな妙な祈祷で人をだまし、散々金もまうけたが、所の役人にも睨まれて江戸へ逃げて來たといふことでした
しか宗助そうすけ邸宅やしきつてまうけたとはれては心持こゝろもちわるいから、これ小六ころく名義めいぎ保管ほくわんしていて、小六ころく財産ざいさんにしてる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私より年上の権八は毎朝造船部へかん/\たゝき(鉄のさびを叩き落す少年労働者)に出て二十銭づつまうけて帰つた。次の弟はまだ小学校に通つてゐた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
岩野氏は何かしら働いて、その日その日の生活くらしまうけねばならなかつた。で、友達に頼んで方々就職口を探すと、口は案外なところに転がつてゐた。
数百年を経たる牡丹の老樹の枝ぶりだけにても観賞の価値は充分有之と存じ居候間、これにも参りて一見を惜しまざるつもりなれど、まうけ物としては
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お父さん! おつ母さん! 私は今日からしばらくの間お暇を頂戴ちやうだいしたうございます。私は今日から遠い遠い国へ行つて、うんとお金をまうけて帰ります。」
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
お前はうこの家業を不正ぢやの、けがらはしいのと言ふけど、財をまうくるに君子の道を行うてゆく商売が何処どこに在るか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しな酒店さかだな豆腐とうふいてはそのぜにだけさけれてもらふので豆腐とうふまうけだけやすさけつて勘次かんじよろこばせるのであつた。それはおしなとしのことだけである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さいこ槌を振り上げてゴロ/\と叩けば五五の二十五文、ゴロ/\と叩けば五五の二十五文まうかつた、といつた塩梅あんばい咄家はなしかのやうな道化た口調で話して聞かせ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
まうけて他所よそぜにを持つて戻る者は十人に一人もありやせん。大抵はこの貧乏村の錢を持ち出して都會へ捨てに行くんぢやから、村はます/\貧乏になるばかりぢや。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
見も知らぬ他人の中で苦勞をしてゐる姉さん達! 私は——自分が働いてまうけたのでも、受ける權利があるのでもないお金をむさぼつて——お金持で、あなた方は文無もんなし。
木山の納屋なやには、米杉べいすぎの角材や板や、内地ものの細かいものが少しあるだけだつたが、方々駈けまはつてやつ入用いりようだけのものを取そろへ、今度こそはまうけする積りで
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
けれども猫とも虎ともつかない、何か怪しげな動物になれば、古来野師やしまうけたのはかう云ふ動物恩恵である。我我は面白いと思はないものに一銭の木戸銭きどせんをもなげうつ筈はない。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
四ヶ月以前、ウラスマルは、本国に唯だ一人残されてゐた母親を、横浜へ呼び寄せようとして、自分のまうけた可成り大きい金子きんすを故郷へと送つたのであつた。母は直ぐ旅に立つた。
アリア人の孤独 (新字旧仮名) / 松永延造(著)
なんぢおきなよ、そちはすこしばかりのいことをしたので、それをたすけるために片時かたときあひだひめくだして、たくさんの黄金おうごんまうけさせるようにしてやつたが、いまひめつみえたのでむかへにた。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
正太しようた此日このひがけのあつめをやすませもらひて、三五らう大頭おほがしらみせ見舞みまふやら、團子屋だんごや背高せいたか愛想氣あいそげのない汁粉しるこやをおとづれて、うだまうけがあるかえとへば、しようさんおまへところ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「もう、雨はらねえ、これから、照つただけがまうけだ。」
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
まうけむといふ友なりき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
六十万円の金位は、あの人達にとつては自動車を一台こはしたやうなものですもの……。何の資本もいらなくてまうけた、不浄ふじやうの金ですもの……
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
見る時は不便心が彌増いやまほどこすことのすきなる故まうけの無も道理ことわりなり依て六右衞門も心配なしいつそ我弟が渡世とせい先買さきがひとなりはぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「若い娘がそれだけ信用するなら、大抵間違ひはあるまい。まうけづくでないから、お前さんの心は鏡のやうなものだ」
「なになか呉服屋ごふくやまうぎてるのさ」と宗助そうすけ其道そのみちあかるいやうことを、このたん銘仙めいせんから推斷すゐだんしてこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「酒には苦労しますぜ。かういふ時世になると何ぞボロイまうけでもせなんだら酒のために落ちぶれまんな。第一にナリがくづれますぜ。この通り、乞食こじきみたいに……」
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
上海シヤンハイがへえつちやぐつとさがつちやつてな、あつちぢやどれほどやすいもんだかよ、しなすくねえときやすくなるつちうんだから商人あきんどまうからねえ」天秤てんびんかついでかれまたさら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それからお金をまうけやうといふ考へがある。遠い所へ独りで行かうといふ勇気がある。帰つて来たなら蚊帳を買つて呉れようといふ情深い心がある。あれは馬鹿でも何でもない。
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
正太はこの日日がけの集めを休ませもらひて、三五郎が大頭おほがしらの店を見舞ふやら、団子屋の背高せいたか愛想気あいそげのない汁粉やをおとづれて、どうだまうけがあるかえと言へば、正さんお前好い処へ来た
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
右篠と申候は、百姓惣兵衛の三女に有之これあり、十年以前与作方へ縁付き、里をまうけ候も、程なく夫に先立たれ、爾後再縁も仕らず、機織はたお乃至ないし賃仕事など致し候うて、その日を糊口ここうし居る者に御座候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
好いまうぐちがあるからと言つて、飛びこんで来た知り合ひの大工は、外神田の電車通りに、羅紗らしやや子供服やボタンなどの、幾つかの問屋にするのに適当な建築を請負つて、その材料を分の好い条件で
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
イライザは、もしそれで、いゝまうけがあるなら、頭から自分の髮を賣り拂つてしまつたゞらう。そのお金はと云ふと、最初彼女はそれをぼろや古い縮らし紙カアルペイパアにくるんで方々の隅つこに隱しておいた。
洋画家の鹿子木孟郎かのこぎたけしらう氏は、結婚した当座といふもの、子供が無いのをひどく苦に病んでゐたが、巴里パリーで秘方の薬でも授かつたものか、二度目の洋行から帰つて来ると、程なく花のやうな女のまうけた。
たし屋敷方やしきがた普請ふしんばかりにても二千兩まうけありしとなりしかれども彼の加賀屋長兵衞かがやちやうべゑより借請かりうけし二百兩の事はちう八が算盤そろばん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その間を縫ふやうに、言問こととひの近くまで——實は飛んだまうけもののつもりで、花を眺め乍ら行くと、いきなり突き當つて喧嘩を吹つ掛けたものがあります
夫婦ふうふはなしはそれから、坂井さかゐ生活せいくわつ餘裕よゆうのあることと、その餘裕よゆうのために、横町よこちやう道具屋だうぐやなどに意外いぐわいまうかたをされるかはりに、ときとすると織屋おりやなどから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うでもよろしい、なんとなりあそばしませ、わたしわたしかんがとほりなことして、わるければわるくなれ、萬一まんいちよければそれこそまうものといふやうな無茶苦茶むちやくちや道理だうりけて、今頃いまごろわたしなにつてましたか
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「生意気いふな。あんたがまうかる訳ぢやないだろ。」
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
飛んだまうものだ位は心得てゐる。
伊太郎と照吉は無二の仲でしたが、近頃伊太郎が何にかでまうけた樣子で、パツパして居りました。多分昨夜此處ではして、照吉が無心を吹つ掛け、それを
出來星できぼしの金持ですよ。米相場でまうけたとか言つて、大變な景氣で、その妹のお辰はまた、小格子から引つこ拔いて來て、裝束しやうぞくを直したやうな恐ろしい女ですせ」
亡くなつた御主人がよくわかつた方で、俺もまうけるが、お前も儲けろと仰しやつて、大層なお手當を
親讓りの縫箔屋ぬひはくやを嫌ひ、色々まうかり相な仕事に手を出して、派手な暮しをして居りましたが、その爲に内輪が苦しくなるばかりで、近頃はひどい借金に惱んで居りました。
「この紙の匂ひを嗅いで御覽、勝負事でまうけた金を、こんな紙に包む奴があるだらうか」
「さうぢやあるまい。——この家で、主人とお内儀が死んで、まうかるのは誰だらう?」
さうぢやないか、おひなさんと坊ちやんを殺してまうかるのは、先代の弟の番頭友二郎だ。
その番頭は下つ引に見張らせて置け、——ところで曲者は錦太郎を殺すつもりは無かつたかも知れないが、——お福は確かに殺すつもりだつた、——お福を殺して一體誰がまうかるんだ