一切いつさい)” の例文
芋蟲いもむしうでんで其頂そのいたゞきにすわり、悠々いう/\なが水煙草みづたばこ煙管きせるふかしてゐて、あいちやんや其他そのたものにも一切いつさいをくれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
我等の内にある一切いつさいのものはいやが上にも伸ばさねばならぬ。それが我等に与へられた、唯一ゆゐいち成仏じやうぶつの道である。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
我れ三文字屋さんもんじや金平きんぴらつと救世ぐせい大本願だいほんぐわんおこし、つひ一切いつさい善男ぜんなん善女ぜんによをしてことごと文学者ぶんがくしやたらしめんとほつし、百でツたむまの如くのたり/\として工風くふうこら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
原告げんこくだの被告ひこくだのといふひとたのんでたもおほくあつたれど、それをわたし一切いつさい受附うけつけなかつたは、山口昇やまぐちのぼるといふ裁判官さいばんくわんつまとして、公明正大こうめいせいだいことわつたのでは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この時などは実に日夜にちやねむらぬほどの経営けいえいで、また石橋いしばし奔走ほんそう目覚めざましいものでした、出版の事は一切いつさい山田やまだ担任たんにんで、神田かんだ今川小路いまがはかうぢ金玉出版会社きんぎよくしゆつぱんくわいしやふのに掛合かけあひました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
えうするにかれぐらゐ年輩ねんぱい青年せいねんが、一人前いちにんまへ人間にんげんになる楷梯かいていとして、をさむべきことつとむべきことには、内部ないぶ動搖どうえうやら、外部ぐわいぶ束縛そくばくやらで、一切いつさいかなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
繪畫かいがその一切いつさい品物しなもの、これを私共わたしども遺物いぶつといつてをりますが、その遺物いぶつによつて人間にんげん過去かこ時代じだい生活せいかつ模樣もようだとか、文化ぶんか状態じようたいだとかを研究けんきゆうする學問がくもんであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
大島小學校おほしませうがくかう命名めい/\して老先生らうせんせい紀念きねんとなし一切いつさいのことを若先生わかせんせい伸一しんいちまかしてしまつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
御存ごぞんじのかたは、武生たけふへば、あゝ、みづのきれいなところかとはれます——みづかねきたへるのにてきするさうで、かまなべ庖丁はうてう一切いつさい名産めいさん——むかしは、きこえた刀鍛冶かたなかぢみました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一切いつさい快樂けらくを盡し、一切いつさい苦患くげんに堪へて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「どうか明日みやうにちまで、何事もおたづね下さいますな。明日になればわたくしは私の親戚やこの町のおもな方々に来て頂いて、その前で、一切いつさいの事情を申し上げます。」
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
這麼こんなふう中坂なかさかしやまうけてからは、石橋いしばしわたしとが一切いつさい処理しよりして、山田やまだ毎号まいごう一篇いつぺんの小説を書くばかりで、前のやうに社にたいしてみつなる関係くわんけいを持たなかつた、とふのが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一切いつさい衆生しゆうじやうすてものに、わがまヽらしき境界きやうがいこヽろにはなみだみて、しや廿歳はたちのいたづらぶし、一ねんかたまりてうごかざりけるが、いはをもとほなさけさとしがことにしみそめ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのかは宗助そうすけ自分じぶん家屋敷いへやしき賣却方ばいきやくかたつい一切いつさいこと叔父をぢ一任いちにんして仕舞しまつた。はやふと、急場きふば金策きんさくたいする報酬はうしうとして土地とち家屋かをく提供ていきようしたやうなものである。叔父をぢ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もののいろもすべてせて、その灰色はひいろねずみをさした濕地しつちも、くさも、も、一部落ぶらく蔽包おほひつゝむだ夥多おびたゞしい材木ざいもくも、材木ざいもくなか溜池ためいけみづいろも、一切いつさい喪服もふくけたやうで、果敢はかなくあはれである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さとしわれながらあきれるばかり、天晴あつぱ未來みらい文學者ぶんがくしや此樣このやうのことにて如何どうなるものぞと、しかりつけるあとよりこヽろふらふらとるに、是非ぜひもなし是上このうへはと下宿げしゆく世帶しよたい一切いつさいたヽみて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれはまづ眞直まつすぐるきした。左右さいうにも行手いくてにも、だうやうなものや、ゐんやうなものがちよい/\えた。けれどもひと出入でいり一切いつさいなかつた。こと/″\寂寞せきばくとしててゝゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、多少注意をすれば、其処そこには必しも幸福のみが住まつてゐない事がわかるかも知れない。これは遠い何物かに、惝怳しやうけいを持つた微笑である。同時に又手近い一切いつさいに、軽蔑を抱いた微笑である。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
談話だんわ次手ついでに松川が塾の荒涼たるをかこちしより、予は前日藪をけんせし一切いつさいを物語らむと、「実は……」とわづか言懸いひかけける、まさに其時、啾々しう/\たる女の泣声なきごえ、針の穴をも通らむず糸より細く聞えにき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自分はそれ程の影響を此女のうへに有して居る。——三四郎は此自覚のもとに一切いつさいおのれを意識した。けれどもその影響が自分に取つて、利益か不利益かは未決の問題である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いかゞぢや、それでて、二階にかいで、臺所だいどころ一切いつさいつき、洗面所せんめんじよも……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一切いつさいを放擲して仕舞つたかも知れなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一切いつさい事実じじつだ、と老爺ぢゞいこたへたのである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)