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鮮
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あざ
ふりがな文庫
“
鮮
(
あざ
)” の例文
窓の半分を明るくした、秋の夜の月明り、
芒
(
すゝき
)
の中にしよんぼり女の立つて居るのが、影繪のやうに
鮮
(
あざ
)
やかに障子に映つて居るのです。
銭形平次捕物控:308 秋祭りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
紅き
石竹
(
せきちく
)
や紫の
桔梗
(
ききょう
)
を
一荷
(
いっか
)
に
担
(
かた
)
げて売に来る、
花売
(
はなうり
)
爺
(
おやじ
)
の笠の
檐
(
のき
)
に
旭日
(
あさひ
)
の光かがやきて、乾きもあえぬ花の露
鮮
(
あざ
)
やかに見らるるも嬉し。
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
町幅一杯
(
まちはばいっぱい
)
ともいうべき
竜宮城
(
りゅうぐうじょう
)
に
擬
(
ぎ
)
したる
大燈籠
(
おおどうろう
)
の中に
幾
(
いく
)
十の火を点ぜるものなど、火光美しく
透
(
す
)
きて
殊
(
こと
)
に目ざましく
鮮
(
あざ
)
やかなりし。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
鮮
(
あざ
)
やかな勝ちっぷりではあったが、執念深い敵がこのままで退くことはけっしてない。今日の敵軍だけでも優に三万はあったろう。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しかし、それよりも、周さんをして長大息を発せしめたものは、この短いたよりの中に貫かれている
鮮
(
あざ
)
やかな忠義の赤心であった。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
かえって夢幻を
鮮
(
あざ
)
らかにし、われひと共にひとしい時代の抱く哀歓と、それが求める救いの滑稽とを、一種の妖気のように
醸
(
かも
)
していた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清さんと一緒に出てみますと、入口に立てかけた大看板に(只今オリムピックボオト選手一同御来店中)と
墨痕
(
ぼっこん
)
鮮
(
あざ
)
やかに書いてあります。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
竹はまた「暮春には春服已に成る」と云った様に
譬
(
たと
)
え様もない
鮮
(
あざ
)
やかな明るい緑の
簑
(
みの
)
をふっさりとかぶって、何れを見ても眼の
喜
(
よろこび
)
である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その
所作
(
しょさ
)
から起る
手数
(
てかず
)
だの
煩
(
わずら
)
わしさだの、こっちの好意を受け取る時、相手のやりかねない
仰山
(
ぎょうさん
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
も
鮮
(
あざ
)
やかに描き出された。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
饂飩
(
うどん
)
屋のガラスの
箱
(
はこ
)
の中にある饂飩の玉までが
鮮
(
あざ
)
やかである。往来には軒先に
莚
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
いたり、
箕
(
み
)
を置いたりして、それに
消炭
(
けしずみ
)
が
乾
(
ほ
)
してある。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
驢馬
(
ろば
)
に至るまで
鮮
(
あざ
)
やかに浮かび
出
(
い
)
でしが、たちまちみな霧に包まれて消え、夢に見し春の流れの岸に立つ
気高
(
けだか
)
き
少女
(
おとめ
)
現われぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
四邊
(
あたり
)
を
見𢌞
(
みまは
)
せば
不圖
(
ふと
)
眼にとまる
經机
(
きやうづくゑ
)
の上にある薄色の折紙、取り上げ見れば維盛卿の筆と覺しく、
水莖
(
みづぐき
)
の跡
鮮
(
あざ
)
やかに走り書せる二首の和歌
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
手振り身振りの
鮮
(
あざ
)
やかさと、
眼鼻立
(
めはなだ
)
ちのキリヽとして
調
(
とゝの
)
つたのとは、町中の人々を感心さして、一種の
嫉
(
そね
)
みと
惡
(
にく
)
しみとを起すものをすら生じた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼は偶然、それ等の木の或る緑
鮮
(
あざ
)
やかな茎の新らしい枝の上に花が咲いて居るのを見出した。赤く、高く、ただ一つ。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
それらの夢の景色の中では、すべての色彩が
鮮
(
あざ
)
やかな原色をして、海も、空も、
硝子
(
ガラス
)
のように透明な
真青
(
まっさお
)
だった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
西半球の猴は一同この原皮を欠き、アフリカのマイモン猴は顔と尻が
鮮
(
あざ
)
やかな朱碧二色で
彩
(
いろど
)
られ獣中最美という。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
春の陽光は眼覚めるばかりにその輝きを増し、緑色の
木洩日
(
こもれび
)
の
耀
(
かぎろ
)
いは一段と
鮮
(
あざ
)
やかになって行く。子供達は何やらみな一様に眼を輝かして、太陽を仰ぐ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
鮮
(
あざ
)
やかな色の着いている方だ。そうしてその夢の冒頭は、私のそういう種類の夢の中にそれまでにも
屡々
(
しばしば
)
現われて来たことのある、一つの場面から始まる。
鳥料理
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
裝飾
(
さうしよく
)
といつても
夜目
(
よめ
)
に
鮮
(
あざ
)
やかな
樣
(
やう
)
に、
饅頭
(
まんぢう
)
や
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
の
物
(
もの
)
を
包
(
つゝ
)
む
白
(
しろ
)
いへぎ
皮
(
かは
)
を
夥
(
おびたゞ
)
しく
括
(
くゝ
)
り
附
(
つ
)
けて
置
(
お
)
くのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
赤
(
あか
)
い
牛乳屋
(
ぎゅうにゅうや
)
の
車
(
くるま
)
が、ガラ、ガラと
家
(
いえ
)
の
前
(
まえ
)
を
走
(
はし
)
っていきました。
幸吉
(
こうきち
)
は、
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びた、その
鮮
(
あざ
)
やかな
赤
(
あか
)
い
色
(
いろ
)
が、いま
塗
(
ぬ
)
りたてたばかりのような
気
(
き
)
がしました。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼女の身を包んでいた、多分自分で編んだ、あの初夏らしい白い肩掛は深く
鮮
(
あざ
)
やかに彼の眼に残った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして彼は
鍵
(
キイ
)
にさわった——ピアノの中間部の、幾つかの音を、半オクターヴばかりかなり
鮮
(
あざ
)
やかに。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
というのは、第一見た所がいかにも派手で、
鮮
(
あざ
)
やかで、しかも図の様が変って珍しい。非常に綺麗なものであるから
見栄
(
みばえ
)
がある。材が檜であるから水々しく浮き立っている。
幕末維新懐古談:55 四頭の狆を製作したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
日を経るに従ってその顔は次第に彼の心にくっきりとした映像を
灼
(
や
)
きつけ、眼をつぶってみると、業病のために醜くゆがんだその顔の線の一つ一つが
鮮
(
あざ
)
やかに浮き上って来
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
中洲
(
なかず
)
を出た時には、外はまだ明るく、町には豆腐屋の
喇叭
(
らっぱ
)
、油屋の声、点燈夫の姿が忙しそうに見えたが、俥が永代橋を渡るころには、もう両岸の電気燈も
鮮
(
あざ
)
やかに輝いて
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
つづいて俺が、大杉栄の訳したクロポトキンの『青年に訴う』を読んだときの昂奮は、今もって
鮮
(
あざ
)
やかに記憶に残っている。伏せ字だらけのそれには、こんなことが書いてあった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「お
柳
(
りう
)
、」と
思
(
おも
)
はず
抱占
(
だきし
)
めた
時
(
とき
)
は、
淺黄
(
あさぎ
)
の
手絡
(
てがら
)
と、
雪
(
ゆき
)
なす
頸
(
うなじ
)
が、
鮮
(
あざ
)
やかに、
狹霧
(
さぎり
)
の
中
(
なか
)
に
描
(
ゑが
)
かれたが、
見
(
み
)
る/\、
色
(
いろ
)
があせて、
薄
(
うす
)
くなつて、ぼんやりして、
一體
(
いつたい
)
に
墨
(
すみ
)
のやうになつて、やがて
三尺角拾遺:(木精)
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その力は、
目醒
(
めざ
)
め、燃えた。そしてまづ、今までは
蒼
(
あを
)
ざめた
血
(
ち
)
の
氣
(
け
)
のないものとしか見えなかつた、彼女の頬の
鮮
(
あざ
)
やかな紅となつて輝き、次には彼女の眼の
潤
(
うるほ
)
ひにみちた艷となつて光つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
矢立
(
やたて
)
をパチンとあけて、紙をスラスラと
展
(
ひろ
)
げる、その音まで
鮮
(
あざ
)
やかに響いて来るのです。竜之助は男女の
挙動
(
ようす
)
を手にとるように洩れ聞いて、どういうものか、これを哀れむ気が起らなかった。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
尾上
(
おのえ
)
に残る
高嶺
(
たかね
)
の雪はわけて
鮮
(
あざ
)
やかに、
堆藍
(
たいらん
)
前にあり、
凝黛
(
ぎょうたい
)
後にあり、打ち
靡
(
なび
)
きたる尾花野菊
女郎花
(
おみなえし
)
の間を行けば、石はようやく繁く松はいよいよ風情よく、
灔耀
(
えんよう
)
たる湖の影はたちまち目を迎えぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
その
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
は、
紺碧
(
こんぺき
)
の
空
(
そら
)
の
幕
(
まく
)
からくり
拔
(
ぬ
)
いたやうに
鮮
(
あざ
)
やかだつた。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
ある時は
眼
(
まなこ
)
ひきあけ驚くと
鮮
(
あざ
)
やかなる
薔薇
(
ばら
)
の花買ひにけり
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
大江山課長は
鮮
(
あざ
)
やかに号令を下した。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
平次のはしやぎ樣も尋常ではありませんが、それより膽を冷したのは、日頃堅いで通つた平次の、この日の
鮮
(
あざ
)
やかな呑みつ振りです。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
同時に、柳の蔭から、それにあわせて、忍び足で、そろり、そろり、と前へすすみだした女は、夜目にも
鮮
(
あざ
)
らかな、美人だった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紅
(
くれない
)
を
弥生
(
やよい
)
に包む昼
酣
(
たけなわ
)
なるに、春を
抽
(
ぬき
)
んずる
紫
(
むらさき
)
の濃き一点を、
天地
(
あめつち
)
の眠れるなかに、
鮮
(
あざ
)
やかに
滴
(
した
)
たらしたるがごとき女である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこへ又後から貞盛は将門の横暴を
直訴
(
ぢきそ
)
して頂戴した将門追捕の官符を持つて帰つて来たのである。これで
極
(
きは
)
めて
鮮
(
あざ
)
やかに前後の事情は分る。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
田圃向うの黒い村を
鮮
(
あざ
)
やかに
劃
(
しき
)
って、東の空は月の出の様に明るい。何千何万の
電燈
(
でんとう
)
、
瓦斯
(
がす
)
、
松明
(
たいまつ
)
が、彼夜の中の昼を
作
(
な
)
して居るのであろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
中はそんなに暗いのだけれど、無双窓の
櫺子
(
れんじ
)
の外はまだうす明るく、
楓
(
かえで
)
の青葉が日中よりは
却
(
かえ
)
って
冴
(
さ
)
えて織り物のような
鮮
(
あざ
)
やかな色を
覗
(
のぞ
)
かせている。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
冬の寒い夜の暗い晩で、大空の星の数も読まるるばかりに
鮮
(
あざ
)
やかに、
舳
(
へさき
)
で水を切ってゆく先は波暗く島黒く、僕はこの晩のことを忘れることができない。
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
事件の中における彼らの姿の描出は
鮮
(
あざ
)
やかであっても、そうしたことをしでかすまでに至る彼ら一人一人の
身許
(
みもと
)
調べの欠けているのが、
司馬遷
(
しばせん
)
には不服だった。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
いろいろな
色
(
いろ
)
に
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
までが、
彼女
(
かのじょ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ると、いっそう
鮮
(
あざ
)
やかに
輝
(
かがや
)
いて
見
(
み
)
えるのでありました。
灰色の姉と桃色の妹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
虎
(
とら
)
さんが、ボオルを
握
(
にぎ
)
って、モオションをつけると、いきなり黒ん坊が
鮮
(
あざ
)
やかな日本語で、「
旦那
(
だんな
)
はん、やんわり、
頼
(
たの
)
みまっせ」と言い、ぼく達が、
驚
(
おどろ
)
き
呆
(
あき
)
れていると
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
いろいろな紅や黄色の花が方々にどっさり
咲
(
さ
)
いている。
眩
(
まぶ
)
しいように
鮮
(
あざ
)
やかな色をしている。
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そうしていま私のぼんやり立っているこの
小径
(
こみち
)
からその芝生を
真白
(
まっしろ
)
い
柵
(
さく
)
が
鮮
(
あざ
)
やかに
区限
(
くぎ
)
って。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
東光院
(
とうくわうゐん
)
の堂塔は、
汽動車
(
きどうしや
)
の窓から、山の
半腹
(
はんぷく
)
に見えてゐた。青い
木立
(
こだち
)
の中に黒く光る
甍
(
いらか
)
と、白く輝く壁とが、
西日
(
にしび
)
を受けて、今にも燃え出すかと思はれるほど、
鮮
(
あざ
)
やかな色をしてゐた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
白い雲の山にかかる時は、かえって
五月晴
(
さつきば
)
れの空の色を
鮮
(
あざ
)
やかにします。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私の生れつきの性質の中には愚直なものもあるらしく、胸の思いが、どうしても「右大臣実朝」から離れることが出来ず、きれいに気分を転換させて別の事を書くなんて
鮮
(
あざ
)
やかな芸当はおぼつかなく
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鮮
(
あざ
)
やけし、
雑草
(
あらくさ
)
の
青
(
さを
)
、さみどり
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
平次のはしゃぎようも尋常ではありませんが、それよりも胆を冷したのは、日頃堅いで通った平次の、この日の
鮮
(
あざ
)
やかな呑みっ振りです。
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
鮮
常用漢字
中学
部首:⿂
17画
“鮮”を含む語句
鮮血
鮮明
新鮮
朝鮮
鮮麗
鮮紅
朝鮮人
鮮魚
鮮鯛
朝鮮征伐
鮮新
鮮鱗
鮮少
色鮮
鮮血淋漓
鮮卑
朝鮮風
朝鮮牛
朝鮮笛
鮮人
...