足跡あしあと)” の例文
足跡あしあとばかりたくさんに残っている。第三番目の餌肉えにくへきてみたが、ここにも肉塊はなくて、足跡はさらに第四番目へつづいている。
大唐西域記に依れば、お釈迦様の足跡あしあとが今も摩掲陀国に遺っているが、足の長さが一尺八寸、廣さが六寸、両足に輪相があるとしてある。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
をあせればあせるほどよけいみちからなくなって、とうとう人の足跡あしあとのないふか山奥やまおくたにの中にはいんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
年雄としおは、その足跡あしあとに、なんとなくしたしみをおぼえたのです。たかっているむらはいると、おみやがありました。また、百姓家しょうやがありました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
余が口笛くちぶえいたら、彼女かのじょはふっと見上げたが、やがて尾をれて、小さな足跡あしあとを深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして気をつけて見ると、そこらには、ひづめの二つある足跡あしあとのついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「それぢや此處で考へて見よう。證據がないと思ひ込んでも、下手人は飛んだところに足跡あしあとを殘して居るかも知れない」
道に積った雪の上の足跡あしあとでそれがわかる。二人の人間の足跡、自転車の輪のあとが二本、それに自動車の太いタイヤの跡が道の両側についていた。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
もつとも或る所までは雪の中に、はつきり足跡あしあとが残つてゐる。が、それぎりどうしたか、あとにも先にも行つた容子ようすがない。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すべて物になるればその妙あり、山猟さんれふなれたる者は雪の足跡あしあとを見てそのけものをしり、またこれは今朝のあしあと、こは今ゆきしあとゝその時をもしる也。
縁側えんがわに小さきどろ足跡あしあとあまたありて、だんだんに座敷に入り、オクナイサマの神棚かみだなのところにとどまりてありしかば、さてはと思いてそのとびらを開き見れば
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それは僕だって聖人君子じゃないから、純粋な精神修養とはいえない。乃木坂から虎の門まで歩けば、大将の足跡あしあと
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
道翹だうげうかゞめて石疊いしだゝみうへとら足跡あしあとゆびさした。たま/\山風やまかぜまどそといてとほつて、うづたかには落葉おちばげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
でも、森のほうへいくせまい道に足跡あしあとがついています。それで、ニールスはそのあとをたどっていきました。
あゝわが望みを強うする者、わが救ひのために忍びて己が足跡あしあとを地獄に殘すにいたれる淑女よ 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その足跡あしあとは余りに広くてつまびらかでないが、彼が、遊歴の地を多く西国方面に求めたことはたしかであろう。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたし北海道ほくかいだうつても、れにもつたひとはふとはおもひませんわ。わたしはたゞそつと自分じぶんまへのこした足跡あしあとを、くるまほろあひだからでもてくれゝばいゝんですもの。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
わが玉太郎たまたろう少年が、恐竜島きょうりゅうとう足跡あしあとをつけるようなことになったのも、ふしぎな運命のしわざである。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鉄砲疵てっぽうきずのございます猿だの、貴僧あなた、足を折った五位鷺ごいさぎ種々いろいろなものがゆあみに参りますからその足跡あしあとがけの路が出来ますくらい、きっとそれが利いたのでございましょう。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゆきおほはれたそのくづしの斜面しやめんに、けもの足跡あしあとが、二筋ふたすぢについてゐるのは、いぬなにかゞりたのであらう、それとも、雪崩なだれになつてころりてかたまりのはしつたあとでもあらうかと
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
というのはその小道が、ちょうどその場所で人が乗り越えたらしい足跡あしあとの残っている垣根の下を、へびのようにけて、アカシアばかりでできている円い四阿あずまやへ、通じていたからである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
こえ迯行にげゆきしと見え足跡あしあとの付てあれば追駈おつかけよとひしめき合ふに以前いぜんの旅僧未だ車のかげに居たりしが此騷このさわぎを聞我此所に居るならば盜賊たうぞくうたがかゝりてとらへられんもはかがたし早く此處このところを立去べしと立上りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌日よくじつ見まわると、ロボの足跡あしあとはわなからわなへと続いていたが、わなはみなほじり出されて、鉄鎖てっさ丸太まるたもむきだしになっている。
そして気をつけて見ると、そこらには、ひづめの二つある足跡あしあとのついたいわが、四角しかくに十ばかり、きれいに切り取られて番号ばんごうがつけられてありました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれは、きたい気持きもちになって、ひと川辺かわべあるいていました。なつのころ、どこの子供こどものつけた足跡あしあとかしれないが、浅瀬あさせのどろのうえのこっていました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「畑の中には、參詣人の踏み荒した足跡あしあとに交つて、重い物を置いた、四角な跡や、繩の跡などがあるだらう」
僕等はMのこう言った時、いつのまにかもう風の落ちた、人気ひとけのないなぎさを歩いていた。あたりは広い砂の上にまだ千鳥ちどり足跡あしあとさえかすかに見えるほど明るかった。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の足跡あしあとを踏み傳ひて直く進みしかれの家族やからは全くその方向むきを變へ、指をかゝとの方に投ぐ 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おの/\雪をぐべき(ふかき雪をゆくを里ことばにこぐといふ)ほどに、身をかため山刀をさし、銕炮てつはう手鎗てやりぼうなどもちて山に入り、かの足跡あしあとをたづねあとにしたがへばかならず鹿を見る。
五七 川の岸のすなの上には川童の足跡あしあとというものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の足と同じく親指おやゆびは離れて人間の手のあとに似たり。長さは三寸に足らず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かれは、彼自身かれじしん足跡あしあとをふりかへつてしづかに嘆息たんそくするやうにつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
この夜、ロボがただ一ぴきで来たことは、その足跡あしあとで知った。そしていつもとちがって、とても不注意にかけまわったようすである。
こうおもいながら、かたから、鉄砲てっぽうをはずして、弾丸たまをこめて、その足跡あしあと見失みうしなわないようにして、ついてゆきました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、見附みつけたぞ。この足跡あしあときた所には、きっとこいつがたおれたまま化石している。巨きな骨だぞ。まず背骨なら二十米はあるだろう。巨きなもんだぞ。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
我既にかの魂等とわかれてわが導者の足跡あしあとに從へるに、このとき一者ひとり後方うしろより我を指ざし 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「これは大變。——だが、そんなに荒しちや後が困る、無暗に足跡あしあとをつけないやうに。——それから、外科と町役人に飛ぶんだ。若旦那はどうした、此騷ぎの中に見えないやうだが」
されどすがたはさらに見せず、なきやみてのち七人のものおそる/\ちかくなきつる所にいたりて見るに、いてたる雪にふみ入れたる猫の足跡あしあとあり、大さつねの丸盆ほどありしとかたりき。
「また、吹雪ふぶきになってきた。」と、おじいさんはひとごとをして、野原のはらみちいそいでいました。わずかに昼間ひるまひととおった足跡あしあとが、ゆきおもてがついているばかりでした。
夜の進軍らっぱ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「今更駈引をいふ私ではございません。そのうちに、仲間が私の足跡あしあといで、此處へ來ると事面倒になります。私は一と走り、方角をれさして來ませう。こゝを動いてはなりません、親分」
ことに人間にんげんが、足跡あしあとってから、まったく清浄せいじょうとなった山中さんちゅうで、かれらは、あわただしくれていく、うつくしいあきこころからしむごとく、一にちたのしくあそんだのでありました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
家の中に泥の足跡あしあとのなかつたのを第一番に氣が付いたよ。
おもくるまんでゆく、荷馬車にばしゃ足跡あしあとや、わだちからこる塵埃じんあいあたましろくなることもありましたが、はなは、自分じぶんすえにいろいろなのぞみをもたずにはいられなかったのです。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どこへいったろう……。」と、おくさまは、あたりをおさがしになったけれども、かげかたちえなく、ただ、ゆきうえに、ひと足跡あしあとが、あたらしいゆきされて、うすくのこっているばかりです。
奥さまと女乞食 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆきうえには、二ひきのさるの足跡あしあとと、ところどころにちたあかのあとがのこっていましたが、かみさまは、この親子おやこをかわいそうにおもわれて、かりゅうどのいかけてこぬようにと、夜明よあがたから
「あ、くまの足跡あしあとだ!」と、猟師りょうしおもわずさけびました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、まえに、おおきな足跡あしあとつけました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)