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おちつ
ふりがな文庫
“
落付
(
おちつ
)” の例文
しかし
外面
(
おもて
)
から
見
(
み
)
たのとは
違
(
ちが
)
って、
内部
(
なか
)
はちっとも
暗
(
くら
)
いことはなく、ほんのりといかにも
落付
(
おちつ
)
いた
光
(
ひか
)
りが、
室
(
へや
)
全体
(
ぜんたい
)
に
漲
(
みなぎ
)
って
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
凝
(
じっ
)
と
蒲団
(
ふとん
)
の上に
落付
(
おちつ
)
いていられない彼女は、枕を外して右を向いたり左へ動いたりした。男の健三には手の着けようがなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
卯平
(
うへい
)
は
勘次
(
かんじ
)
との
間
(
あひだ
)
は
豫期
(
よき
)
して
居
(
ゐ
)
た
如
(
ごと
)
く
冷
(
ひやゝ
)
がではあつたが、
丁度
(
ちやうど
)
落付
(
おちつ
)
かない
藁屑
(
わらくづ
)
を
足
(
あし
)
で
掻
(
か
)
つ
拂
(
ぱ
)
いては
鷄
(
にはとり
)
が
到頭
(
たうとう
)
其
(
そ
)
の
巣
(
す
)
を
作
(
つく
)
るやうに
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
何となくいらいらと
落付
(
おちつ
)
かなかったり、黒くだまり込んで、半日も一日も考えこんだりします。桜が、その上へ、薄明の花の
帳
(
とばり
)
をめぐらします。
病房にたわむ花
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
落付
(
おちつ
)
く場所は道庁のヒュッテ
白銀荘
(
はくぎんそう
)
という小屋で、
泥流
(
でいりゅう
)
コースの近く、
吹上
(
ふきあげ
)
温泉からは五
丁
(
ちょう
)
と
距
(
へだ
)
たっていない所である。
雪の十勝:――雪の研究の生活――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
「人間には所持慾つて奴があつて自分の
有
(
もの
)
にしないでは
落付
(
おちつ
)
いて娯まれないのだ。兎一つ
棲
(
す
)
まないやうな禿山だつて自分の
有
(
もの
)
にするとまた格別だからな。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
エミリアンはじろじろ三人の様子を
眺
(
なが
)
めました。そして盗賊だとわかつてしまふと、
却
(
かへ
)
つて
落付
(
おちつ
)
きました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
暫くは体が硬張って息もつけぬ程だったが、漸く身も心も
落付
(
おちつ
)
いてからよく見れば、それらの山の一つ一つが皆違った形を持っている。富士山も勿論其中にあった。
北岳と朝日岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
雲に乗って飛んでいる様な、夢を見ている様な、一方では限りなき
焦燥
(
しょうそう
)
を感じながら、一方では
落付
(
おちつ
)
きはらっている様な、何とも形容の出来ない心持でありました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
此
(
この
)
種
(
しゆ
)
の
海鳥
(
かいてう
)
は、
元來
(
ぐわんらい
)
左迄
(
さまで
)
に
性質
(
せいしつ
)
の
猛惡
(
まうあく
)
なもので
無
(
な
)
いから、
此方
(
こなた
)
さへ
落付
(
おちつ
)
いて
居
(
を
)
れば、
或
(
あるひ
)
は
無難
(
ぶなん
)
に
免
(
まぬが
)
れる
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
たかも
知
(
し
)
れぬが、
不意
(
ふい
)
の
事
(
こと
)
とて、
心
(
しん
)
から
顛倒
(
てんだう
)
して
居
(
を
)
つたので
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「お駒さん、腹を立てるのも尤もだが、これには深いわけがある、
落付
(
おちつ
)
いて聴いてくれ」
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫
(
そ
)
れから家督相続と云えば
其
(
そ
)
れ相応の
勤
(
つとめ
)
がなくてはならぬ、藩中
小士族
(
こしぞく
)
相応の勤を命ぜられて居る、けれども私の心と云うものは
天外万里
(
てんがいばんり
)
、何もかも
浮足
(
うきあし
)
になって
一寸
(
ちょい
)
とも
落付
(
おちつ
)
かぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
揃
(
そろ
)
へて申すにぞ傳吉も佛前へ
供
(
そな
)
へ夫より
夜食
(
やしよく
)
も
濟
(
すみ
)
て傳吉は今こそ我家へ立ち歸りし
故
(
ゆゑ
)
心
(
こゝろ
)
落付
(
おちつ
)
き
草臥
(
くたびれ
)
出しにやこくり/\と
居眠
(
ゐねぶ
)
りけるを叔母は見るより傳吉どのも
嘸
(
さぞ
)
や
勞
(
つか
)
れしならんお梅や
床
(
とこ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「こつちなんぞぢや、
後
(
あと
)
幾
(
いく
)
らでも
出來
(
でき
)
らあな」といひながらたどりを
持
(
も
)
つた。
卵
(
たまご
)
が
少
(
すこ
)
し
動
(
うご
)
くと
秤
(
はかり
)
の
棹
(
さを
)
がぐら/\と
落付
(
おちつ
)
かない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『お
爺
(
じい
)
さま、
何
(
ど
)
ういうものか
今日
(
けふ
)
は
気
(
き
)
が
落付
(
おちつ
)
かないで
困
(
こま
)
るのでございます……。
私
(
わたくし
)
はどこかへ
遊
(
あそ
)
びに
出掛
(
でか
)
けたくなりました。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
三四郎は
真逆
(
まさか
)
、
左
(
さ
)
うかとも云へなかつた。
薄
(
うす
)
笑ひをした丈で、又
洋筆
(
ペン
)
を
走
(
はし
)
らし始めた。与次郎も
夫
(
それ
)
からは
落付
(
おちつ
)
いて、時間の終る迄
口
(
くち
)
を
利
(
き
)
かなかつた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ひどいのになると一日に五六度オキシフルか、
昇汞水
(
しょうこうすい
)
で手を消毒しないと、
落付
(
おちつ
)
いて仕事が
出来
(
でき
)
ぬというようなのがある。悪いことではないが
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
うるさい。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
結局散々頭をしぼった末、一生一代の名文の手紙を書いて、とうとう平井さんからその墨を譲り受けて、やっと
落付
(
おちつ
)
いた。誠に
芽出度
(
めでた
)
い結末になったわけである。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
徐
(
おもむ
)
ろに
之
(
これ
)
を
縦
(
はな
)
ってその趣くところに赴むかしめたのがあの如何にも
落付
(
おちつ
)
きのある坐りのいい裾の線だ。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
いくらかずつ
落付
(
おちつ
)
きを
取返
(
とりかえ
)
して、やがて、平静な心持で話し
会
(
あ
)
うようになると、何より先に、お鳥の豊満な裸体、月の光にさらされて、ほんのり
霞
(
かす
)
むような美しい
身体
(
からだ
)
が気になります。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
今
(
いま
)
、かく
心
(
こゝろ
)
が
落付
(
おちつ
)
いて
見
(
み
)
ると、
今度
(
こんど
)
吾等
(
われら
)
が
此
(
この
)
大危難
(
だいきなん
)
をば、
同
(
おな
)
じ
日本人
(
につぽんじん
)
の——しかも
忠勇
(
ちうゆう
)
義烈
(
ぎれつ
)
なる
帝國海軍々人
(
ていこくかいぐんぐんじん
)
の
手
(
て
)
によつて
救
(
すく
)
はれたのは、
實
(
じつ
)
に
吾等
(
われら
)
兩人
(
りようにん
)
の
幸福
(
こうふく
)
のみではない
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
真暗
(
まつくら
)
な、しいんとした夜です。どこにも人の足音も、物の動くけはひもしません。空には星がいつぱい出てゐます。茂みの間からその星を
眺
(
なが
)
めてゐると、エミリアンはやうやく
落付
(
おちつ
)
きました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
長崎に
落付
(
おちつ
)
き、始めて横文字の abc と
云
(
い
)
うものを習うたが、今では日本国中到る処に、
徳利
(
とくり
)
の
貼紙
(
はりがみ
)
を見ても横文字は
幾許
(
いくら
)
もある。目に慣れて珍しくもないが、始めての時は中々
六
(
むず
)
かしい。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
噺
(
はなし
)
の
容子
(
ようす
)
ではそれ
程
(
ほど
)
でもないのかと
思
(
おも
)
つても
見
(
み
)
たが、それでも
勘次
(
かんじ
)
は
口
(
くち
)
を
利
(
き
)
くにも
唾
(
つば
)
が
喉
(
のど
)
からぐつと
突
(
つ
)
つ
返
(
かへ
)
して
來
(
く
)
るやうで
落付
(
おちつ
)
かれなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『イヤそろそろ
修行
(
しゅぎょう
)
に一
段落
(
だんらく
)
つくところじゃ。
本人
(
ほんにん
)
が
生前
(
せいぜん
)
大
(
たい
)
へんに
気
(
き
)
に
入
(
い
)
った
海辺
(
うみべ
)
があるので、これからそこへ
落付
(
おちつ
)
かせることになって
居
(
お
)
る……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
どうかして、此東京に
落付
(
おちつ
)
いてゐられる様にして
遣
(
や
)
りたい気がする。代助はもう一返
嫂
(
あによめ
)
に相談して、
此間
(
このあひだ
)
の
金
(
かね
)
を調達する工面をして見やうかと思つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯
(
ただ
)
岩蔭である為に風が当らないのは
幸
(
さいわい
)
であった。体が少し
落付
(
おちつ
)
くと腹の空いていることに気が付く。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
此塲
(
このば
)
の
光景
(
くわうけい
)
のあまりに
天然
(
てんねん
)
に
奇體
(
きたい
)
なので、
私
(
わたくし
)
は
暫時
(
しばし
)
、
此處
(
こゝ
)
は
人間
(
にんげん
)
の
境
(
きやう
)
か、それとも、
世界
(
せかい
)
外
(
ぐわい
)
の
或
(
ある
)
塲所
(
ばしよ
)
ではあるまいかと
疑
(
うたが
)
つた
程
(
ほど
)
で、
更
(
さら
)
に
心
(
こゝろ
)
を
落付
(
おちつ
)
けて
見
(
み
)
ると、
總
(
すべ
)
ての
構造
(
こうざう
)
は
全
(
まつた
)
く
小造船所
(
せうざうせんじよ
)
のやうで
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「少し気を
落付
(
おちつ
)
けさせて下さい、
直
(
す
)
ぐ治ります」
芳年写生帖
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
健三の心はこうした
諷刺
(
ふうし
)
を笑って受けるほど
落付
(
おちつ
)
いていなかった。周囲の事情は雅量に乏しい彼を
益
(
ますます
)
窮屈にした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
渓間に
漲充
(
ちょうじゅう
)
された軟熟な翠色の空気は、画面に一段の
幽邃
(
ゆうすい
)
と
落付
(
おちつ
)
きとを加えている。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
此
(
この
)
僧
(
そう
)
は
若
(
わか
)
いに
似合
(
にあ
)
はず
甚
(
はなは
)
だ
落付
(
おちつ
)
いた
話振
(
はなしぶり
)
をする
男
(
をとこ
)
であつた。
低
(
ひく
)
い
聲
(
こゑ
)
で
何
(
なに
)
か
受答
(
うけこた
)
へをした
後
(
あと
)
で、にやりと
笑
(
わら
)
ふ
具合
(
ぐあひ
)
などは、
丸
(
まる
)
で
女
(
をんな
)
の
樣
(
やう
)
な
感
(
かん
)
じを
宗助
(
そうすけ
)
に
與
(
あた
)
へた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
朽葉の
積
(
つも
)
った柔い土の香と軽い
樹肥
(
やに
)
の香とが苛立った神経を
落付
(
おちつ
)
けて呉れる。緩やかなうねりが二度三度続いた。尾根が痩せて岩が露れると、石楠や
躑躅
(
つつじ
)
の類が
蔓
(
はびこ
)
り出して足に
搦
(
から
)
まる。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
こんな具合にして
漸
(
やっ
)
と東京に
落付
(
おちつ
)
いた健三は、物質的に見た自分の、
如何
(
いか
)
にも貧弱なのに気が付いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然
(
しか
)
し今日は
落付
(
おちつ
)
いて身を任せては居られない。足早にトットと進んで行く。一の隆起を踰え、大きなガレの縁を辿り、小笹原を通って茅処の原に出た。これが今いうカワグルミ沢の頭であろう。
初旅の大菩薩連嶺
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
黒
(
くろ
)
い
夜
(
よる
)
の
中
(
なか
)
を
歩
(
あ
)
るきながら、たゞ
何
(
ど
)
うかして
此
(
この
)
心
(
こゝろ
)
から
逃
(
のが
)
れ
出
(
で
)
たいと
思
(
おも
)
つた。
其
(
その
)
心
(
こゝろ
)
は
如何
(
いか
)
にも
弱
(
よわ
)
くて
落付
(
おちつ
)
かなくつて、
不安
(
ふあん
)
で
不定
(
ふてい
)
で、
度胸
(
どきよう
)
がなさ
過
(
す
)
ぎて
希知
(
けち
)
に
見
(
み
)
えた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
落付
(
おちつ
)
いて考へれば、考へは
蓮
(
はちす
)
の
糸
(
いと
)
を引く如くに
出
(
で
)
るが、出たものを纏めて
見
(
み
)
ると、
人
(
ひと
)
の
恐
(
おそ
)
ろしがるもの
許
(
ばかり
)
であつた。仕舞には、
斯様
(
かやう
)
に考へなければならない自分が
怖
(
こわ
)
くなつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
其癖
(
そのくせ
)
彼
(
かれ
)
の
性質
(
せいしつ
)
として、
兄夫婦
(
あにふうふ
)
の
如
(
ごと
)
く、
荏苒
(
じんぜん
)
の
境
(
さかひ
)
に
落付
(
おちつ
)
いてはゐられなかつたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
付
常用漢字
小4
部首:⼈
5画
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