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紅
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あか
ふりがな文庫
“
紅
(
あか
)” の例文
「まるで作り物のようでござりまする。七夕の
紅
(
あか
)
い色紙を引裂いて、そこらへ一度に吹き付けたら、こうもなろうかと思われまする」
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
が、
紅
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
で、色白な娘が運んだ、
煎茶
(
せんちゃ
)
と
煙草盆
(
たばこぼん
)
を袖に控えて、さまで
嗜
(
たしな
)
むともない、その、
伊達
(
だて
)
に持った煙草入を手にした時、——
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
耕地の向うには、静かな雑木林があって、燃えるように
紅
(
あか
)
い木の葉や、金色のように黄ろい木の葉が、梢にまだたくさん残っていた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
さうした
紅
(
あか
)
に
黄
(
き
)
に
色
(
いろ
)
どられた
秋
(
あき
)
の
山
(
やま
)
や
林
(
はやし
)
も、
冬
(
ふゆ
)
が
來
(
く
)
ると、すっかり
葉
(
は
)
がおちつくして、まるで
枯
(
か
)
れ
木
(
き
)
ばかりのような
寂
(
さび
)
しい
姿
(
すがた
)
になり
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
母はお愛想を云うのさえ顔を
紅
(
あか
)
らめてしまう風だし、ぼくらは奥へ逃げ込んで女中を呼びたてる始末なので、何とも妙な事であった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
私の眼には
到
(
いた
)
る所にナオミの
紅
(
あか
)
い唇が見え、そこらじゅうにある空気と云う空気が、みんなナオミのいぶきであるかと思われました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
『まあ、何と申上げて
可
(
いゝ
)
か解りませんけれど——』とお志保は耳の根元までも
紅
(
あか
)
くなつて、『私はもう其積りで居りますんですよ。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
朝の汽車はたいへん
爽
(
さわや
)
かに走っています。野も山も鮮やかな緑に
萌
(
も
)
えたって、つつじの花の色も旅を誘うように
紅
(
あか
)
い色をしていました。
新生の門:――栃木の女囚刑務所を訪ねて
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お
父
(
とう
)
さん、しゃくやくも、
紅
(
あか
)
い
芽
(
め
)
を
出
(
だ
)
しましたよ。また
今年
(
ことし
)
も、きれいな
花
(
はな
)
を
咲
(
さ
)
くでしょうね。ああ、
☆
げんぶきも
芽
(
め
)
を
出
(
だ
)
しましたよ。
さまざまな生い立ち
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
人混みを掻き分けて入ると、亀沢町のとある路地に、
紅
(
あか
)
い
鹿
(
か
)
の
子絞
(
こしぼり
)
の
扱帯
(
しごき
)
で首を絞められた若い男が
虚空
(
こくう
)
を
掴
(
つか
)
んで死んでいるのでした。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その
紅
(
あか
)
い口びるを吸わして首席を占めたんだと、厳格で
通
(
とお
)
っている米国人の老校長に、思いもよらぬ浮き名を負わせたのも彼女である。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ホノルル・ブロオドウェイの
十仙店
(
テンセンストア
)
で、ぼくは、
紅
(
あか
)
のセエム
革
(
がわ
)
表紙のノオトを買いました。初めて、米国の金でした買物、金五十仙
也
(
なり
)
。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
目と眉と
睫毛
(
まつげ
)
は黒きを要し、唇と頬と爪は
紅
(
あか
)
きを要し、胴と髪と手は長きを要しとは、手の長い者は盗みすると日本でいうと違う。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その
蝋
(
ろう
)
のように艶のある顔は、いくぶん青褪めてはいたけれど、形のいい弾力のある唇は、まるで薔薇の
花片
(
はなびら
)
を置いたように
紅
(
あか
)
かった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とあまり露骨に語り出されてお登和嬢急に顔を
紅
(
あか
)
くし半分は聴かぬ
振
(
ふり
)
してサッサと我家へ帰り去りぬ。去られても今は惜しくなし。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そして
太郎
(
たろう
)
さんの
紅
(
あか
)
い実のような頬や、若い草のような髪の毛をそよそよと吹いた。けれど子供は、何も知らぬほど深く眠っていました。
朝
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
「そうかねえ……」と、自分は彼女のニコニコした顔と
紅
(
あか
)
い模様や
鬱金色
(
うこんいろ
)
の小ぎれと見
較
(
くら
)
べて、
擽
(
くすぐ
)
ったい気持を感じさせられた。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
天神の山には祭ありて
獅子踊
(
ししおどり
)
あり。ここにのみは軽く
塵
(
ちり
)
たち
紅
(
あか
)
き物いささかひらめきて一村の緑に映じたり。獅子踊というは
鹿
(
しか
)
の
舞
(
まい
)
なり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
凡
(
す
)
べて
神聖
(
しんせい
)
な
物
(
もの
)
の
終
(
はて
)
は
悦
(
よろこび
)
に
在
(
あ
)
る。われらが
主
(
しゆ
)
の
君
(
きみ
)
はこの
紅
(
あか
)
い
茨
(
いばら
)
の
上
(
うへ
)
に、このわが
口
(
くち
)
に、わが
貧
(
まづ
)
しい
言葉
(
ことば
)
にも
宿
(
やど
)
つていらせられる。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
女は少年の左の頬の処へ白い顔を持って往ったが、やがて
紅
(
あか
)
い唇を差しだしてそれにつけた。少年は死んだ人のように眼も開けなかった。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
おせい様は
鼠小紋
(
ねずみこもん
)
の重ねを着て、どこか
大家
(
たいけ
)
の後家ふうだった。小さくまとまった顔にくちびるが、若いひとのように
紅
(
あか
)
いのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ある
画家
(
ゑかき
)
の使つてゐる
紅
(
あか
)
の色が、心憎いまで立派なので、仲間は吸ひつけられたやうにその
画
(
ゑ
)
の前に立つた。そして不思議さうに訊いた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
飲みつけもしない酒の酔いに目の縁をほんのりと
紅
(
あか
)
くした葉子が、どうかするとあの時の新聞記事のことで、ちくちく愚痴をこぼすので
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この神秘的な事件の閉幕を、僕はこういうケルネルの詩で飾りたいのですがね。色は黄なる秋、夜の
灯
(
ともしび
)
を過ぎれば
紅
(
あか
)
き春の花とならん——
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
博士は彩色の
飾文字
(
かざりもじ
)
を散らした聖典を見つめてゐて、たまに眼を放てば、うつすり曇る水盤の中に泳ぐ二
尾
(
ひき
)
の魚の
金
(
きん
)
と
紅
(
あか
)
とを眺めるのみだ。
欝金草売
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
そのゆったりした肩には
紅
(
あか
)
い光のある
靄
(
もや
)
がかかって、かっ色の毛きらずビロードをたたんだような山の
肌
(
はだ
)
がいかにも優しい感じを起させる。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして傾斜地を埋めた青黒い
椴松
(
とどまつ
)
林の、白骨のように雨ざらされた
枯
(
か
)
れ
梢
(
こずえ
)
が、雑木林の黄や
紅
(
あか
)
の
葉間
(
はあい
)
に見え隠れするのだった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
私
風情
(
ふぜい
)
のなま/\に作り候物にまでお眼お通し下され候こと、
忝
(
かたじけな
)
きよりは先づ恥しさに顔
紅
(
あか
)
くなり候。
勿体
(
もつたい
)
なきことに存じ候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と青年は寒気の中を急いだためにその健康な色の
頬
(
ほほ
)
をなおりんごのように
紅
(
あか
)
くし、汗ばんだその額を一ぬぐいして、息を吐きながらいった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
白い真珠色の
衣服
(
きもの
)
の
袖口
(
そでくち
)
には、広い
黒天鵞絨
(
くろびろうど
)
のやうなものでふちが取つてあつて、頭には
紅
(
あか
)
い絹で飾りをつけてをりました。
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
爺
(
をぢ
)
が張る四つ手の網に、月さしていろくづ二つ。その魚のくちびる
紅
(
あか
)
き、この魚の背の鰭青き、
現
(
うつつ
)
とも
思
(
も
)
へばつめたく、幻と見れば
霧
(
き
)
らひつ。
篁
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
朝の空気を吸う唇に
紅
(
べに
)
は付けないと言い切って居るその唇は、四十前後の体を
身持
(
みも
)
ちよく保って居る健康な女の唇の
紅
(
あか
)
さだ。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いいえ、もうすっかりいいの」と彼女は答えて、小さな
紅
(
あか
)
いバラを一輪
摘
(
つ
)
み取った。——「すこし
疲
(
つか
)
れているけれど、これもじきに直るわ」
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
いよいよ
蝋管
(
ろうかん
)
に声を吹き込む段となって、文学士は吹き込みラッパをその
美髯
(
びぜん
)
の間に見える
紅
(
あか
)
いくちびるに押し当てて器械の制動機をゆるめた。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
公主は
紅
(
あか
)
い
錦
(
にしき
)
で顔をくるんでしっとりと歩いて来た。二人は
毛氈
(
もうせん
)
の上へあがって、たがいに拝しあって結婚の式をあげた。
蓮花公主
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
戸外
(
そと
)
の楓の木が枝を差し入れ、虫のために
紅
(
あか
)
く色づいている葉を、いっそう紅く血のような色に、その焔は照らしていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
松は墓標の上に
翠蓋
(
すいがい
)
をかざして、黄ばみ
紅
(
あか
)
らめる桜の落ち葉点々としてこれをめぐり、近ごろ立てしと覚ゆる
卒塔婆
(
そとば
)
は
簇々
(
ぞくぞく
)
としてこれを
護
(
まも
)
りぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
紅
(
あか
)
と白の派手なだんだら縞を染め出した
大檣帆
(
メンスル
)
の裾は長い
檣柱
(
マスト
)
の後側から飛び出したトラベラーを滑って、恰度カーテンを拡げたように展ぜられ
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
銀鼠
(
ぎんねずみ
)
の空に、くっきりと
紅
(
あか
)
く染め抜かれたアドバルーンの文字が、勝利の
狼烟
(
のろし
)
のように、たかだかとあがっているのだ!
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
私は
紅
(
あか
)
い花の模様のある毬を大きいのと小さいのと二つを取った。屋台店の上にはまだいろいろなのがあった。私はそれらにぼんやりと見とれた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
得もいわれぬ優しい匂やかなばら色の光が、隅から隅まで満ち渡って、四壁と家具を金で染めた上、紗のとばりを柔らかく
紅
(
あか
)
く燃え立たせている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そこへ来るとふらりふらり
辿
(
たど
)
って来た足を、ものうげに
薄野原
(
すすきのはら
)
の中にとどめて、ふっと後ろを顧みると、東山を打越えて見透し、島原の灯が
紅
(
あか
)
い。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
憲ちやんは色白く唇
紅
(
あか
)
き美少年にして、予は曾てこの友の如く無邪氣に尊き子供心を長く失はざりし人を見たる事なく世にもめでたき人に思ひしが
貝殻追放:008 「その春の頃」の序
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
雨
(
あま
)
あしがたち消えながらも
何處
(
どこ
)
の
樹
(
き
)
からとなく私の
膚
(
はだ
)
を冷してゐる時、ふと
紅
(
あか
)
い珊瑚の人魚が
眞蒼
(
まつさを
)
な腹を水に潜らせる
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
見よ、
朝
(
あした
)
近きとき、わたつみの
床
(
ゆか
)
の上西の
方
(
かた
)
低きところに、濃き霧の中より火星の
紅
(
あか
)
くかゞやくごとく 一三—一五
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
紅
(
あか
)
い
薄様
(
うすよう
)
に包まれたお
文
(
ふみ
)
が目にたつので院ははっとお思いになった。幼稚な宮の手跡は当分女王に隠しておきたい。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その砂利の間の薄暗がりから、頭だけ出している小さな
犬蓼
(
いぬたで
)
の、血よりも
紅
(
あか
)
い茎の折れ曲りを一心に見下していた。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
兎角
(
とかく
)
する
程
(
ほど
)
に
怪
(
あやし
)
の
船
(
ふね
)
はます/\
接近
(
せつきん
)
し
來
(
きた
)
つて、
白
(
しろ
)
、
紅
(
あか
)
、
緑
(
みどり
)
の
燈光
(
とうくわう
)
は
闇夜
(
やみ
)
に
閃
(
きら
)
めく
魔神
(
まじん
)
の
巨眼
(
まなこ
)
のごとく、
本船
(
ほんせん
)
の
左舷
(
さげん
)
後方
(
こうほう
)
約
(
やく
)
四五百
米突
(
メートル
)
の
所
(
ところ
)
に
輝
(
かゞや
)
いて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
北野
(
きたの
)
を
出
(
で
)
はづれると、
麥畑
(
むぎばたけ
)
の
青
(
あを
)
い
中
(
なか
)
に、
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
の
黄色
(
きいろ
)
いのと、
蓮華草
(
れんげさう
)
の
花
(
はな
)
の
紅
(
あか
)
いのとが、
野面
(
のづら
)
を
三色
(
みいろ
)
の
染
(
そ
)
め
分
(
わ
)
けにして
其
(
そ
)
の
美
(
うつく
)
しさは
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれなかつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
空が赤く焼けて、燃えるやうな雲がたな引き、地上には木々の青葉が
紅
(
あか
)
らんで、林の深さを思はせ、その中を吹き出して来る風が胸の中に流れ込んで来る。
牧場の音楽師
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
紅
常用漢字
小6
部首:⽷
9画
“紅”を含む語句
紅玉
淡紅
淡紅色
紅潮
紅色
紅葉
真紅
薄紅
口紅
微紅
爪紅
雁来紅
紅毛
頬紅
紅提灯
紅羅
紅絹
紅殻
紅々
鮮紅
...