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巨眼
単于は手ずから李陵の
縄を解いた。その後の待遇も
鄭重を極めた。
且鞮侯単于とて先代の
呴犁湖単于の弟だが、
骨骼の
逞しい
巨眼赭髯の中年の
偉丈夫である。
兎角する
程に
怪の
船はます/\
接近し
來つて、
白、
紅、
緑の
燈光は
闇夜に
閃めく
魔神の
巨眼のごとく、
本船の
左舷後方約四五百
米突の
所に
輝いて
居る。
加ふるに
前檣々頭に
一點の
白燈と、
左舷の
紅燈は
見えで、
右舷に
毒蛇の
巨眼の
如き
緑色の
舷燈を
現せる
他は、
船橋にも、
甲板にも、
舷窓からも、
一個の
火影を
見せぬかの
船は