昨年さくねん)” の例文
ぱう貿易外ぼうえきぐわい受取超過額うけとりてうくわがく毎年まいとしおく六七千萬圓まんゑんあるから大體だいたいおい昨年さくねん海外支拂勘定かいぐわいしはらひかんぢやう受取勘定うけとりかんぢやうつぐなることとなつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
昨年さくねん、ご当地とうちで、おどおりいたしましたむすめは、さる地方ちほうにおいて、たわらかさねまするさいに、腹帯はらおびれて、非業ひごう最期さいごげました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくし昨年さくねんの十二ぐわつ芝愛宕下しばあたごした桜川町さくらがはちやうしまして、此春このはる初湯はつゆはいりたいとぞんじ、つい近辺きんぺん銭湯せんたうにまゐりまして「初湯はつゆにもあらひのこすやへそのあか」
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨年さくねんあき鳥部寺とりべでら賓頭盧びんづるうしろやまに、物詣ものまうでにたらしい女房にようぼう一人ひとりわらはと一しよにころされてゐたのは、こいつの仕業しわざだとかまをしてりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんと……おなこと昨年さくねんた。……篤志とくし御方おかたは、一寸ちよつと日記につき御覽ごらんねがふ。あきなかばかけて矢張やつぱ鬱々うつ/\陰々いん/\として霖雨ながあめがあつた。三日みつかとはちがふまい。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可笑をかしいことひますね、昨年さくねんあんなに世話せわになつたひとひたいのは當然あたりまへだらうとおもふ。』
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
赤とんぼの休んでいる竹には、朝顔あさがおのつるがまきついています。昨年さくねんの夏、この別荘べっそうの主人がえていった朝顔の結んだ実が、またえたんだろう——と赤とんぼは思いました。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
昨年さくねんわたしがドイツを旅行りよこうして、ミュンヘンといふまちへまゐりましたとき、そこにあるおほきい美術博物館びじゆつはくぶつかん附近ふきんに、ちひさいけれども考古學博物館こうこがくはくぶつかんがありましたので見物けんぶつかけました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
海軍部内かいぐんぶない其人そのひとありとられたる豫備海軍大佐櫻木重雄氏よびかいぐんたいささぐらぎしげをしは一昨年さくねん英國エイこくあそ歸朝きてう以來いらいふかくわだつるところあり、おどろ軍事上ぐんじじやう大發明だいはつめいをなして、我國々防上わがくにこくぼうじやう貢獻こうけんするところあらんと
クリスマスと新年の祝いも、いつしか過ぎ去りまして、はや今日は二十日はつか正月となりました。昨年さくねんの御正月には、御なずかしき御家に上りまして、御雑煮おぞうにの御祝いに預りました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
女子教育上ぢよしけういくじやう意見いけんとしては別段べつだん申上まをしあげることも御在ござませんが、わたくしが一昨年さくねんはる女子英學塾ぢよしえいがくじゆくひらいてから以來いらい種々いろ/\今日こんにち女子ぢよしすなは女學生ぢよがくせいつい經驗けいけんしたことがありますから
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
昨年さくねんくれおしつまつてから産聲うぶごゑをあげて、はじめて此赤このあかかほせてれましたときわたしはまだ其時分そのじぶん宇宙うちうまよふやうな心持こゝろもちたものですから、いまおもふとなさけないのではありますけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この方たちのお母さんは一昨年さくねんくなられました。ええ、ボートはきっとたすかったにちがいありません、なにせよほど熟練じゅくれん水夫すいふたちがいで、すばやく船からはなれていましたから
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかるに昨年さくねん十一ぐわつ二十一にちに、今年こんねんぐわつ十一にちおい金解禁きんかいきん決行けつかうすることに決定けつてい發表はつぺうたことは我國經濟わがくにけいざいため非常ひじやう仕合しあはせである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それは、一昨年さくねんなつのことでした。わたくしはちいさいおとうとをつれて、つりにいったそのかえりです。おとうとは、あしがつかれたといって、とうとうきだしてしまいました。
どこかで呼ぶような (新字新仮名) / 小川未明(著)
同時どうじに一昨年さくねんふゆ衣絵きぬゑさん、婿君むこぎみのために若奥様わかおくさまであつた、うつくしい夫人ふじんがはかなくなつてる……新仏しんぼとけは、夫人ふじんの三年目ねんめに、おなじ肺結核はいけつかく死去しきよしたのであるが……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其子そのこ昨年さくねんくれチプスにかゝつてんださうにきゝました、をんなはませなものではあり、ぎはにはさだめし父樣とゝさんとかなんとかふたので御座ござりましよう、今年ことしれば五つになるので御座ござりました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
湯原ゆがはら温泉宿をんせんやど中西屋なかにしや女中ぢよちゆうである! いまぼくふでつてうち女中ぢよちゆうである! 田舍ゐなか百姓ひやくしやうむすめである! 小田原をだはら大都會だいとくわい心得こゝろえ田舍娘ゐなかむすめ! このむすめぼくつたのは昨年さくねんなつ
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
昨年さくねんの夏、彼は大きなかめを買った。わたり三尺、深さはたった一尺五寸の平たい甕である。これを庭の芝生のはしに据えて、毎朝水晶の様ないどの水をたして置く。大抵大きなバケツ八はいであふるゝ程になる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これによつて短期期限付たんききげんづき金解禁きんかいきん決行けつかうたのであるが、結局けつきよく昨年さくねん貿易ぼうえき豫想以上よさういじやう好成績かうせいせきにして輸入超過額ゆにふてうくわがく内地分ないちぶんだけで六千七百萬圓まんゑん
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
やはり人々ひとびとにもまれながらてら境内けいだいはいると、片側かたがわたか軽業かるわざ小舎こやがあって、昨年さくねんたときのような絵看板えかんばんかっていました。かれは、木戸銭きどせんはらってのぞきました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此處こゝ空屋あきやつてります……昨年さくねんんでましたつてなんえんもありませんものが、夜中やちうことわりもなしにはひつてまゐりましたんですもの。れましては申譯まをしわけがありません……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昨年さくねんなつ女中ぢよちゆうから小田原をだはらのお婿むこさんなどなぶられてたのを自分じぶんつてる、あゝ愈々いよ/\さうだ! とおもふとぼくいやになつてしまつた。一口ひとくちへば、うみやまもない、おき大島おほしまれがなんだらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
としちゃんは、一昨年さくねんなつ田舎いなかへいったときのことをおもしました。
古いてさげかご (新字新仮名) / 小川未明(著)