)” の例文
こまかきあめははら/\とおとして草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをもみださず、かぜひとしきりさつふりくるはにばかりかゝるかといたまし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
無暗にそれが気になつて、ぢよの心持は妙な寂しさに覆はれました。哀愁とでも云ふやうなうら悲しさが心に迫つて来るのでした。
美智子と歯痛 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
後にして之を想へば、よし真に自ら釣りしとするも、の時携へし骨無し竿にて、しかも玉網たまも無く、之をげんことは易きに非ず。
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
何もも話さねば判らぬが、僕が今の妻と知合になって、正式に結婚を申込もうしこんだ時、仲にたって世話してくれたのは、この今井であった。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
やまおきならんでうかこれも無用なる御台場おだいば相俟あひまつて、いかにも過去すぎさつた時代の遺物らしく放棄された悲しいおもむきを示してゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
(四三)しんへいは、もと(四四)悍勇かんゆうにしてせいかろんじ、せいがうしてけふす。たたかもの(四五)其勢そのいきほひつてこれ利導りだうす。
何もも忘れ果てて、狂気の如く、その音信おとずれて聞くと、お柳はちょう爾時そのとき……。あわれ、草木も、婦人おんなも、霊魂たましいに姿があるのか。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父がここへ来たのは丁度ちょうど幸いである。市郎はの𤢖について父の意見をただすべく待ち構えていた。が、父の話はんな問題で無かった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「驚いたかヤンセン、僕はこの間きた時に何もも見ておいたのさ。そのけ道もさ——ところで頸飾はこの金庫の中にあるんだね」
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それもそうだ、一旦吐いてしまった自分の息は取り還せるわけはないからな。ではいっそ、何もも初版どおりにまたり直しだな。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
からになつた渡船とせんへ、天滿與力てんまよりきかたをいからしてつた。六甲山ろくかふざんしづまうとする西日にしびが、きら/\とれの兩刀りやうたう目貫めぬきひからしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その夜、の女は謙作の頭を己の胸のあたりに持って来さして、その耳に何かささやいていたがなんと思ったのかその体を起さなかった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
海坊主の横手にすやすやと夢路を辿っているのは、意外にものモガ崩れのマスミだった。僕はただ訳も分らず、無暗に腹が立った。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
回復しましたチウテナ。法学士出のホヤホヤの署長じゃが、学生上りの無邪気な男でな。そのついでに何もも喋舌って行きよりましたよ
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かたわらにある刀の小柄を抜く手も見せず打った手裏剣は、の女の乳の上へプツリと立ちましたから、女はひーと身を震わして倒れる。
なになりとたずねてもらいます。研究けんきゅうめとあれば、わしほうでもそのつもりで、差支さしつかえなきかぎなにけてはなすことにしましょう。
彼は母山吹の故郷さと! の血統窩人の部落! 信州八ヶ嶽笹の平へ、夢遊病者のそれのように、フラフラと歩いて行ったのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「御領土の下に生れ、日頃からまた、仕えるなら御方おかたと、胸に思い込んでおりましたため、つい、口にも出たものと思われます」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
持給ふか知ねども當地の金貸渡世かねかしとせい大坂おほさかかけ極大身代ごくだいしんだいの者なりと云に靱負ゆきへいやの大身代の金貸渡世とは違ひ小體こていに致し手早く高利かうり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
赤、黄、緑、青、何でも輪郭の顕著なる色彩を用い、悠々ゆうゆうたる自然や、黙静もくせいの神秘を物哀ものあわれに写す力があったのがの人の特長である。
ガムペル Gampel、ラロン Raron を経て、のツェルマット Zermat の支点ヴィスプ Visp に着く。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
三國屋に居ると何んのので日に十五錢宛られるがな。そすると月に積つて四圓五十錢で、私は五十錢しか小遣が殘らなくなるでな。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
命あつての物種ものだねと云ふ時にや、何もも忘れてゐるんだからね。芸術も勿論もちろん忘れる筈ぢやないか? 僕などは大地震どころぢやないね。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今まで余の集め得たる証拠はすべれのほかまことの罪人あることを示せるに彼れ自ら白状したりとは何事ぞ、かゝる事の有り得べきや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
つまらんな、無意義むいぎだ………もう何もも放擲つて了はうかしら!穴籠あなごもりしてゐると謂や、かにだつてもう少し氣のいた穴籠をしてゐるぜ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其の一刹那せつな、己が彼女から真先に受けた印象は、じょの体中に星の如く附着してピカピカと光って居る、無数の宝石類ほうせきるいであった。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
の一円に満たざる借銭のために身を水中に投ぜし小婦は痴愚にして発狂せしなりと、彼婦かのふは世に己れの貧を訴うるの無益なるを知り
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
の島津殿と申すは、かたじけなくも清和天皇の御末、多田満仲ただのみつなかよりこのかた、弓箭ゆみやの家に誉を取り、政道を賢くし給へば……」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
恐らくは、の木の葉のアーチの快い均整にも、落葉の床の踏み心地にも、凡て注意深い人工が加味されているのではないでしょうか。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
面附つらつきこそはれよりもよけれ、脛附すねつきが十人並にんなみ以上いじゃうぢゃ、それからあしどうやはふがほどいが、ほかには、ま、るゐい。
女王樣ぢよわうさまこと大小だいせうかゝはらず、すべての困難こんなん解决かいけつする唯一ゆゐいつ方法はうはふ御存ごぞんじでした。『れのあたまねよ!』と四邊あたりずにまをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
のあるいは世をなげき、時をののしり、危言きげん激語げきごして死にく者の如き、壮は則ち壮なりといえども、なおこれ一点狂激の行あるを免れず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
断然の兵士の巡廻じゅんかいを廃し、改めて巡邏じゅんらうものを組織し、後にこれを巡査と改名して東京市中に平和穏当の取締法が出来ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この小屋こやは清潔で雨風を防いで呉れますし、家具も十分で便利でございます。此處にある何もも、私を落膽させずに感謝させました。
恋愛を除きたる暁には恐らく美術も文学も価なき珠となりつべけん、の軽佻なる元禄文学は遊廓内の理想家とも言つべき魔道文学者
「兄上には恐れ多いかはぞんぜぬが、われには何のかかわりのない母上、兄上がわれの身の上になったら何もも分り申そう。」
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
これをの「モロッコ」の冒頭に出て来るアラビア人と驢馬ろばのシーンに比べるとおもしろい。後者のほうがよほどあかが取れた感じがする。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おなぎの話を聞て黙つて涙を拭いて居り、だしぬけに「一杯ついでくれ」と湯呑を出し、それから何のの理窟をつけては飲む処面白し。
「駒鳥さん、——私はもう我慢が出来ません、何もも言ってしまいます。——私共に取って、あなたはその禁園の果物だったのですね」
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
妖怪変化、悪魔のたぐいが握っているのだか、何だかだかサッパり分らない黒闇〻こくあんあんの中を、とにかく後生ごしょう大事にそれにすがってしたがって歩いた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二人さへゐなければ、富岡はおせいと自由に第二の人生を歩み出せるやうな気がした。何もも肉親のきづなを捨てきれる自信はあつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
づよく思ひ立つて巴里パリイを立つて来たものの、今マルセエユを離れやうとすると心細くもあるらしい。れは黙つて涙ぐんで居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
私は結婚後しばらく親の家へ帰っていた。ちょうどそれを境にしての金谷おきせさんは穀屋の店を畳んで堀田原ほったわらの家に世帯を引き取りました。
しかし人間の眼は自在に動く。の少女を捕へた好奇の瞳は、やがて軒下をはばかつて歩くお葉の亂れた銀杏返しから、足元に到つたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
二月二十日の総選挙は、れ自身に於ては未だ吾々を満足せしめるに足りないが、日本の黎明れいめいの総選挙より来るであろう。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
の事ありてこのかた、神に対する愛慕一しほ強く相成申候あひなりまうしさふらふ如何いかにすればこの自覚を他に伝へ得べきとは、この頃の唯一問題にて候也。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
の舶来の舞踏など、余程高尚な積りでおるかは知らぬが、その変梃へんてこな足取、その淫猥いやらしき腰は、盆踊りより数倍も馬鹿気たものである。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
の人の眠りは、しづかに覚めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え圧するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて来るのを覚えたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
己れ炊事をみずからするの覚悟なくばの豪壮なる壮士のはいのいかで賤業せんぎょううべなわん、私利私欲をててこそ、鬼神きしんをも服従せしむべきなりけれ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
の『奥の細道』の冒頭に「人生は逆旅げきりょ」と言っておるが、そういう見地からいえば、いずれの人生か旅中ならざるであるが
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)