平地へいち)” の例文
それからしばらくたって、白いガチョウは、ニールスをせなかにのせて、山の平地へいちをよこぎり、地獄穴じごくあなのほうに、むかっていきました。
すると、私は退屈するから、平地へいちに波瀾を起して、すねて、じぶくッて、大泣に泣いて、そうしてお祖母ばあさんに御機嫌を取って貰う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
てつづくりのもんはしらの、やがて平地へいちおなじにうづまつた眞中まんなかを、いぬやまるやうにはひります。わたしさかすやうにつゞきました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
前回記する処の崖といささか重複ちょうふくする嫌いがあるが、市中しちゅうの坂について少しく述べたい。坂は即ち平地へいちに生じた波瀾である。
平城というのは、天嶮てんけんによらず平地へいちにきずいた城塞じょうさいのことで、要害ようがいといっては、高さ一じょうばかりの芝土手しばどてと、清冽せいれつな水をあさく流したほりがあるだけだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
 日本につぽん𤍠帶林ねつたいりんにはひるものは、臺灣たいわん平均へいきん一千いつせん五百尺ごひやくしやく以下いか平地へいち琉球本島りゆうきゆうほんとう南半分みなみはんぶん小笠原群島をがさはらぐんとう新領土しんりようどのマーシャル、カロリン、マリアナ列島等れつとうなど
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
平地へいちを行く時は大得意、馬上ゆたかに四囲の山々を眺め回わし、微吟びぎんに興をやって、ボコタリボコタリ進む。
こういって、むらひとは、平地へいちといわず、山地さんちといわず、なしの栽培さいばいして、これを名産めいさんにしようとくわだてました。やがてこのむらは、なしの名産地めいさんちとなりました。
これはえず蒸氣じようき火山灰かざんばひ鎔岩ようがんとう中央ちゆうおう小丘しようきゆうからあふたものであつて、かゝる平地へいち火口原かこうげんづけ、外輪山がいりんざんたいする中央ちゆうおう火山かざん中央火口丘ちゆうおうかこうきゆうづける。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
木曾きそのやうに山坂やまさかおほいところには、その土地とちてきしたうまがあります。いくら體格たいかく立派りつぱうまでも、平地へいちにばかりはれた動物どうぶつでは、木曾きそのやうな土地とちにはてきしません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
左伝に(隠公八年)平地へいちしやくみつるを大雪とえたるは其国そのくに暖地だんちなれば也。たう韓愈かんゆが雪を豊年ほうねん嘉瑞かずゐといひしも暖国だんこくろん也。されど唐土もろこしにも寒国は八月雪ふる五雑組ござつそに見えたり。
一男がもう一度、板張の上に帰って来て、「お邪魔じゃましました」と挨拶してからまるで平地へいちを歩くような様子で急な段階を下りて行く姿を、監督は残り惜しそうな眼で見送っていた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
山が尽きて、岡となり、岡が尽きて、幅三丁ほどの平地へいちとなり、その平地が尽きて、海の底へもぐり込んで、十七里向うへ行ってまた隆然りゅうぜんと起き上って、周囲六里の摩耶島まやじまとなる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたくし修行場しゅぎょうばすこしたりたやま半腹はんぷくに、ぢんまりとしたひとつの平地へいちがございます。
愈〻いよ/\平地へいちはなれて山路やまぢにかゝると、これからがはじまりとつた調子てうし張飛巡査ちやうひじゆんさ何處どこからか煙管きせる煙草入たばこいれしたがマツチがない。關羽くわんうもつない。これを義母おつかさんおもむろたもとから取出とりだして
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
野田のだからは十らぬ平地へいちみち鬼怒川きぬがは沿うた自分じぶん村落むらまでるのに、ふゆみじか雜木林ざふきばやしこずゑかれたなかつた。かれ自分じぶんいへいたとき醤油しやうゆげたいたほどえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くがけば平地へいちあゆむがごと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
これを垂直的すいちよくてきれば、平地へいちでは𤍠帶ねつたいぞくする臺灣たいわんでも、新高山にひたかやまのようにたか一萬三千尺いちまんさんぜんじやくにもあまる高山こうざんがあるので、まへ温帶林おんたいりん上部じようぶにこの寒帶かんたいがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
秀吉ひでよしは、きゃつめかならずこうくるな——と手を読んでいたから、四ほう平地へいちや森の人家のかげに、堀尾茂助ほりおもすけ黒田官兵衛くろだかんべえ福島市松ふくしまいちまつ伊藤掃部いとうかもん加藤虎之助かとうとらのすけ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガンたちは、平地へいちの上を飛ぶときぐらい、たのしいことはありません。そんなときには、農場のうじょうから農場へと飛んでいっては、つぎつぎに家畜かちくをからかってやるのです。
ヴェスヴィオに登山とざんしたひとは、通常つうじよう火口内かこうないには暗黒あんこくえる鎔岩ようがん平地へいち見出みいだすであらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
てんじると、あぶなげな岩鼻いわばなをおろした、まつがありました。おなまつながら、あるものは、安全あんぜん平地へいちをおろしているし、こうして、たえずおびやかされるものもある。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
隣り寺を境に一段高くなった土手の上に三坪ほどな平地へいちがあって石段を二つ踏んであたりの真中にあるのが、御爺さんも御父さんも浩さんも同居して眠っている河上家代々之墓である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは丁度ちょうど人間にんげん平地へいちけるとおなじく、指端ゆびさきひとれずに、大木たいぼくみきをばって、そらけてあがるのでございますが、そのはやさ、見事みごとさ、とてもふで言葉ことばにつくせるわけのものではありませぬ。
 おな平地へいちでも臺灣たいわん本州ほんしゆう北海道ほつかいどうとでは樹木じゆもくちがつてゐるように地球上ちきゆうじよう緯度いどにつれて、ひかへると赤道せきどうからみなみきたとへむかつてたひらにすゝんでいくとすれば
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
キツネのほうは、何もない平地へいちで、ガチョウをつかまえることは、とてもむりだと知っていましたから、さいしょのうちは、ガチョウのあとを追うのは、よそうと思いました。
竹童のあわい影が平地へいちからがけへ、がけから岩へ、岩から渓流けいりゅうへと走っていくほどに、足音におどろかされたおおかみうさぎ、山鳥などが、かれの足もとからツイツイと右往左往うおうざおうに逃げまわる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに、あかしおなかから、一つのうつくしいしままれました。天使てんしは、そのしまそらびまわりました。見下みおろすと、そこには、しろ大理石だいりせき建物たてものが、平地へいちにも、おかうえにもありました。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちはだらだらとして、平地へいちうえよこたわっているばかりであります。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)