)” の例文
それは今日の昼飯ひるめしに怪しい僧にもけ、じぶん達もったような三個みっつ黍団子きびだんごであった。顎髯の男はうんと云って背後うしろに倒れて気を失った。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「私は佐瀬でございます」三十を少し越したかと思われる頭髪を綺麗にけた、色白の背の高い紳士は云った。友は椅子をすすめながら
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
そのうわさを聞き伝へ、近隣諸国の人々貧富貴賤きせんかちなく南蛮寺に群集し、つは説教を聴聞ちょうもんし、且つは投薬の恵みにあづかる。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
夏目漱石さんはあらゆる方面の感覚にデリケートだったのは事実だろうが、けても色に対する感覚は特にそうだったと思う。
温情の裕かな夏目さん (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
勉強家べんきようかける、懶怠なまけられてはこまるけれど、わづらはぬやうにこゝろがけておれ、けておまへは一つぶものおやなし、兄弟きようだいなしとふではいか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女の首筋から両肩へかけての皮膚の純白さとふくらみ、彼女の笑凹ゑくぼ、彼女の歯列び、とりけて、その魂の火がともつてゐるやうな大きな瞳——
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
怪談の種類も色々あって、理由のある怪談と、理由のない怪談とにけてみよう、理由のあるというのは、例えば、因縁ばなし、怨霊などという方で。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けて必要なのは西班牙スペイン舞妓まいこのボエールのような斑黒点はんこくてんがコケティッシュな間隔かんかくで振り撒かれなければならなかった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
此方こち向けば子鴉あはれ、其方そち向けば犬の子あはれ。二方ふたかたの鳥よけものよ。ひとしけくかはゆきものを、同じけくかなしきものを、いづれきいづれ隔てむ。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
青木君に対する貴女あなたの後悔として、青木君の弟丈は弄んで呉れるな。弟さん丈は何うか、誘惑して呉れるな。私は、そう云って事をけて頼んだのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
然るに理智の反省は、これを概念によって分析し、有機的な統一を無機的に換え、部分を箇々の戸棚とだなけ、見出しカードの抽斗ひきだしを付けて索引に便利にする。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
さも無かりし人の顔の色のにはかに光を失ひたるやうにて、振舞ふるまひなどけて力無く、笑ふさへいと打湿うちしめりたるを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
村の人数が殖え田畠が多くなると、管理が届かぬという理由ですぐにこれを二つにけてしまったのである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
散銭ばらせんに色々文字替りがあるやうに、顔立かほだちけると女にも色々種類はあるが、大抵はみんな男に親切なものさ。
次に通俗小説と純文芸とを何故に分けたのか、けたのが間違いだと云った大通だいつうは、幸田露伴氏である。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
武田家において土屋といえば非常に立派な家柄であって、無論甲陽二十四将の一人、代々武功の士を出したが、けても惣蔵昌恒は忠義無類として知られていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と言うより、つまりそれは、彼女が彼に充分な儲けをけてらなかったからだが、そこで当然リンピイは、妻の一使用人として以外に自分だけの内職を持っていた。
惜しげもなく巨額の富をけ与えることによって、訳もなく彼等の口をかんすることが出来たのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或る英人の書いた本に教育のやり方を二つにけて一つを実益的学問(Utility studies)、第二を修養的学問(Culture studies)とし
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
先頃キネマ倶楽部で上場されたチェーラル・シンワーラーの「ジャンダーク」は大評判の大写真で、けてもその火刑ひあぶりの場は凄惨せいさんを極めて、近来の傑作たる場面であった。
活動写真 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
栄螺さざえの内臓でなくして、実は、君の血肉ちにくけた、あの胎児たいじだったとしたら、ハテ君は矢張り
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見ないのも残念とあって、二人、人をけて桟敷さじきに押し上がり、一角に陣取って活動を見る。
これは若者の私が老媼などと連立つて歩いてゐるからだといふ意味である。云ふことが通俗だが、独逸ドイツ語で云はれると、そこに情味が出て来るやうでけて悪い気持はしない。
日本媼 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
いゝえ、私の苦悶くもんが何で教会の損害になりませう、篠田さん、私の苦悶の原因と申すは、今日こんにち教会の上に、けても青年の人々かたがたの上に降りかゝつた大きな不幸悲哀で御座います」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けても女中のお徳は年こそだ二十三であるが私はおうちに一生奉公をしますという意気込で権力が仲々強い、老母すら時々この女中の言うことを聞かなければならぬ事もあった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おな工場こうじょうつくられたあめチョコは、おな汽車きしゃって、ついここまで運命うんめいをいっしょにしてきたのだが、これからたがいにらない場所ばしょかれてしまわなければなりませんでした。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
カンパニーニは第二幕が長すぎるのでこれを二つにけて、蝶々さんが待っている夫ピンカートンを乗せた軍艦が長崎に入港して蝶々さんがピンカートンとの再会を待つ夜明け前の
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
けて心持のえい朝であった、土用半ばに秋風が立って、もう三回目で土用も明けると云う頃だから、空は鏡のように澄んでる、田のものにも畑のものにも夜露がどっぶりと降りてる
姪子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
田舎から出て来た叔母の弟嫁が良人と一緒に入って来た。そうして鞄からそこに出しておいた着物の包みをほどきながら、良人の羽織やはかまを取りけて、着替えをさせに取りかかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これからのかたが大切なので、上手に截れば楽に肉が取れて何の造作ぞうさもありませんけれども下手に截って一つ順序を間違えると肉が彼方あっちへ付き此方こっちへ付きして始末になりません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
三十二三の旅人は、振りけの荷物を肩に、陽ざしを眺めながら腰をあげました。
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
食事の時にはとても座ってうなんとうことは出来た話でない。足も踏立ふみたてられぬ板敷いたじきだから、皆上草履うわぞうり穿はいたって喰う。一度は銘々にけてやったこともあるけれども、うは続かぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これはいつの時候でなければ喰えないとか、これはまたどういう時に喰えばよいとかというような事は、皆立派なお医者さんが草の有毒無毒あるいはその性をかつごとくに知って居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しゞゆう泣腫なきはらしてゐる發狂はつきやう中風患者ちゆうぶくわんじやあたまさゝへてぢつすわつて、一つところみつめながら、晝夜ちうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほかの人に心を移すようなことは自分にできるはずがない、そんな恥知らずなことは自分の趣味でない、性格のよしあしで尊重すべき女と、そうでない女はけらるべきであるなどと思っていた。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
のぶは丁寧に自分の腰掛こしかけた草をけて老母を腰かけさせ升た、私は麦藁むぎわら螢籠ほたるかごを編んで居りましたから、両人の話しを聞くとはなしに聞いて居り升た。のぶはい話し合手を見つけたといふ調子で
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
泥海んぢやちえ(泥海も別け出でて)
八坂瓊之曲玉考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
此方こち向けば子鴉あはれ、其方そち向けば犬の子あはれ。二方ふたかたの鳥よけものよ。ひとしけくかはゆきものを、同じけくかなしきものを、いづれきいづれ隔てむ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
東に西に興行の都度つど、日取の都合が付きさえすれば、伊勢路に廻って遊ぶのが習いで、けて夏は、三日なり二日なり此処に来ない事はないのであった。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女といふものは、男の悲しみは半分けて呉れる、喜びは倍にして呉れる、そしておまけに費用は三倍にして呉れる——といふ程、男にとつて無くてならないものである。
源右衛門『事をけて頼んでいるのに、どうしても通さぬと言うなら、腕立ては嫌いな源右衛門だが仕方もねえ。琵琶湖の浪で鍛え上げた腕節うでっぷし。押しても通るが、それで承知か』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「わたしの荷は、重くてしようがない、すこしけて持ってくれてもいいじゃないか」
累物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其中そのなかけて苦勞性くろうせうのあるおひとしのびやかにあとをやつけたまひし、ぐりにぐればさて燈臺とうだいのもとらさよ、本郷ほんごう森川町もりかはちようとかや神社じんじやのうしろ新坂通しんざかどほりに幾搆いくかまへの生垣いけがきゆひまわせしなか
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しにいきも同じ心と結びてし友やたがはむ我も依りなむ」(巻十六・三七九七)、「紫草むらさきを草とく伏す鹿の野はことにして心は同じ」(巻十二・三〇九九)等が参考になるだろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
問屋には、数人の職人が居て、品物をけたり、特別のものを作ったりして、その上に商標しょうひょうのついた帯をつけ、重いたばを天井に一杯釣り上げ、別に箱におさめて積みあげるのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
... どうしてけるね、俗に細長いのがおすまるいのがめすだというがそうかね」中川
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
昼のうち頭重つむりおもく、胸閉ぢ、気疲劇きづかれはげしく、何を致候も大儀たいぎにて、けて人に会ひ候がうるさく、たれにも一切いつせつくち不申まをさず唯独ただひと引籠ひきこもり居り候て、むなしく時の候中さふらふうちに、此命このいのちの絶えずちとづつ弱り候て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いつも物憂そうな彼ではあったがこの日はけても物憂そうであった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しじゅう泣腫なきはらしている発狂はっきょう中風患者ちゅうぶかんじゃあたまささえてじっとすわって、一つところみつめながら、昼夜ちゅうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
芙蓉の様な種類の女性は、二つ面の仁和賀にわかと同じ様に、二つも三つもの、全く違った性格をたくわえていて、時に応じ人に応じて、それを見事に使いけるものだということを、彼はすっかり忘れていた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)