つか)” の例文
ここによきはかりごとこそあれ、頃日このころ金眸きんぼう大王が御内みうちつかへて、新参なれどもまめだちて働けば、大王の寵愛おおぼえ浅からぬ、彼の黒衣こくえこそよかんめれ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
自己の余生を亡き夫の遺業の完成のためにゆだねるは、なおます夫につかうる如き心地がして、この上もない楽しみではあるけれども
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
イエス彼にいいけるはサタンよ退しりぞけ主たる爾の神を拝しただこれにのみつかうべしとしるされたり、ついに悪魔かれを離れ天使てんのつかいたち来りつかう。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
二は学術、芸術等文化に価値ある仕事につかえることによって間接に万人に奉仕すること。三は直接に個々の隣人に奉仕することである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しかし今は貧しき者が目の前で飢えているのでもなく、父母につかえる場合でもない。今目の前で悩んでいるのは、イエス御自身なのだ。
此の人の先祖は東山将軍義政よしまさつかえて、東山という苗字を貰ったという旧家であります。其の家に東山公から拝領の皿が三十枚あります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
処が、翌月の事、家持の生前東宮大夫ダイブとしてつかへて居た早良サハラ皇太子が、新都造営主任であつた藤原種継を暗殺せしめられた事件が起つた。
万葉集のなり立ち (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
細君は顔色を変えておそれた。王成は老婆に義侠心ぎきょうしんのあることを説明して、しゅうとめとしてつかえなければならないといったので、細君も承知した。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
さづたまふ所ならん然るに久八は養父五兵衞につかふることむかしまさりて孝行をつくみせの者勝手元の下男に至る迄あはれみをかけ正直しやうぢき實義じつぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やがて「ノア酒さめて其若き子の已に為したる事を知れり。是に於て彼言ひけるはカナンのろはれよ、彼はしもべ等の僕となりて其兄弟につかへん」
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
古の人曰へらく、人は神と財とに兼ねつかふること能はず。されば生命の爲に何を食ひ、何を飮み、また身體の爲に何をむと思ひわづらふ勿れ。
美的生活を論ず (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
私が其の名音にった時は、昭和三年で六十位であった。其の名音は、最初いずみの某と云う庵にいて有徳の住持につかえていた。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
平生へいぜいよくつかへくれ、しきこととてさらし、此度このたびとりすゝめしも、おもうての眞心まごころなるを、なにとてあだにおもふべき。じつうれしくおもひしぞよ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
徳川のそんする限りは一日にてもそのつかうるところに忠ならんことをつとめ、鞠躬きっきゅう尽瘁じんすいついに身を以てこれにじゅんじたるものなり。
乃公おれは総領で家督をして居るが、如何どうかしてむずかしい家の養子になって見たい。何ともわれない頑固な、ゴクやかましい養父母につかえて見たい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
顧盻こけいおのずから雄厳にして、しかして他人のこれに接する生ける鬼神につかうるがごとく、慇懃いんぎんに尊恭するもまたはなはだし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
巍は遼州りょうしゅうの人、気節をたっとび、文章をくす、材器偉ならずといえども、性質実にこれ、母の蕭氏しょうしつかえて孝を以て称せられ、洪武十七年旌表せいひょうせらる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
龐涓はうけんすでつかへ、惠王けいわう將軍しやうぐんるをて、みづか以爲おもらへく(一五)のう孫臏そんびんおよばずと、すなはひそかに((人ヲシテ))孫臏そんびんさしむ。ひんいたる。
これに対して右の『論語』からの引用は鬼神につかえることの非なるを述べたものであり、親鸞が儒教のヒューマニズムを重んじたことが知られる。
親鸞 (新字新仮名) / 三木清(著)
『宝星陀羅尼経』三に仏が首楞厳三昧しゅりょうごんざんまいに入ると竜につかうるもの象に事うるものの眼には竜象と見え兎神に事うるものは仏を兎形に見るとあるから
親につかえて孝、士と交わって信、常に奮って身を顧みずもって国家の急に殉ずるはまことに国士のふうありというべく、今不幸にして事一たび破れたが
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
婢はいとけなくして吉原の大籬おおまがきつかえ、忠実を以て称せられていた。その千住の親里に帰ったのは、年二十をえたのちである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
後われ皇帝クルラードにつかへ、その騎士の帶をさづけられしほどいさをによりていと大いなる恩寵めぐみをえたり 一三九—一四一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その後政府につかえて実地の政務に当たり、学説を弘むるのことはまったく福沢、尺の両氏に譲りたるもののごとし。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
われは數題中に就いて其一をえらみ取る自由あり。初なる一紙には侍奉じぶ紳士と題せり。こは人妻ひとづまつかふる男を謂ふ。中世士風の一變したるものなるべし。
臣を使うに礼をもってし臣、君につかうるに忠をもってす、これが孔子こうしの言葉だ、これこそ日のもとの国体にかなう教えだ、サアこれでも貴様は孟子が好きか。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかし他にならい他につかえた痕跡のみであろうか。そこには真に動かし得ない朝鮮固有の美があるではないか。私はその窟院を訪ねた日を忘れる事は出来ぬ。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
子游曰く、君につかえて(責)むればすなわ(則)ちはずかしめられ、朋友に(交わりて)むればすなわうとんぜらる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
数ヶ月来彼等の大長官としてつかえて来たこの人物が、白蝙蝠団員などと、どうして信じることが出来よう。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其星巌集の序を読めば彼が多少人才を監識するの才を具せるを見るに足る。然れども襄は臣礼を取りて日野氏につかへざりき。只賓として友として日野氏と交れり。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
正成は、孝を説き、その『壁書』に、「親の心に背かずして、好くつかうるを孝という。」と書いている。
しゅうとはそうもなかったのですが、しゅうとめがよほどつかえにくい人でして、実は私の前に、嫁に来た婦人ひとがあったのですが、半歳はんとし足らずの間に、逃げて帰ったということで
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
〔譯〕君につかへて忠ならざるは孝に非ざるなり、戰陳せんじんゆう無きは孝に非ざるなりと。曾子そうしは孝子なり、其の言かくの如し。彼の忠孝兩全りやうぜんせずと謂ふは、世俗せぞくの見なり。
かつテ山東洋ニ問フテ曰ク、我、君ニつかフルコト三年、技進マズ、其ノ故如何。洋子のたまはク、吾子ごしすべからク多ク古書ヲ読ミ、古人ト言語シテ以テ胸間ノ汚穢おえヲ蕩除スベシ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
子曰く、生には之につかうるに礼を以てし、死には之を葬るに礼を以てし、之を祭るに礼を以てすと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
寂しい旅の半程で、駱駝は急に獅子と化つて、これまで主人としてつかへた大きな龍と鬪つた。龍の名は“Thou shalt”獅子のは“I will”といふのだ。
久米の仙人 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
昨夜までは自分につかうること、主従の如くであったが、ここに至って無邪気なる彼は、いつの間にか自分の生命から二番目の赤毛布ケット——山中唯一の防寒具——を奪って
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
それを見ると生前検校がまめまめしく師につかえてかげの形にうように扈従こしょうしていた有様がしのばれあたかも石にれいがあって今日もなおその幸福を楽しんでいるようである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夫の留守にはこの家のあるじとして、彼はつかふべき舅姑きゆうこいただかず、気兼すべき小姑こじうとかかへず、足手絡あしてまとひの幼きもだ有らずして、一箇ひとり仲働なかばたらき両箇ふたり下婢かひとに万般よろづわづらはしきをまか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
忠臣は二君につかえず、烈女は二夫に触れず……これを得一と申します。天下の理はかように一を得て初めて泰平といたしますが、世が衰えみだれる時にはこの理が崩れてくる。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
われいえを継ぎいくばくもなくして妓を妻とす。家名をはずかしむるの罪元よりかろきにあらざれど、如何にせんこの妓心ざま素直すなおにて唯我につかへて過ちあらんことをのみうれふるを。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これは我が方に年久しくつかへし下女おんなの梅といふが、浅草の西仲町に嫁ぎゐたるをたよりゆきて。これは我がある方様と、契りてのかくし子なるが、面目なきに連れて立退きぬ。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
これ村野の人後患をえんするの法なり云々とあって、昔はさしも大切につかえた地方の神が、次第に軽ぜられのちついに絶縁して、いつとなく妖怪変化ようかいへんげの類に混じた経路を語っている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おきみさんとても姑につかへ子を育つることを無駄のやうに思ひてはならぬ事と存候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
唯心ばかりはしゅうとも親とも思ッて善くつかえるが、気がかぬと言ッては睨付ねめつけられる事何時も何時も、その度ごとに親の難有ありがたサが身にみ骨にこたえて、袖に露を置くことは有りながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
墨江の中つ王に近くつかへまつる隼人はやびと一五、名は曾婆加里そばかりを欺きてのりたまはく
これより耶蘇ヤソ教に身をゆだね神につかえてしょうが志をつらぬかんとの手紙を残して、かくは上京したるなれば、妾はもはや同志の者にあらず、約にそむくの不義をとがむることなく長く交誼こうぎを許してよという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「汝らのつかふべき者を今日こんにち選べ」(約書亜記よしゆあき二十四、十五)
主のつとめ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
身に添ひて父はいませりはぐくみて母いませりと思ひつかへん
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
眞面目に其のつかふる所に孤忠を盡すつもりであつた。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)